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第15章 山積みな課題
第538話 山積みな課題と洞窟最奥部

「……どうやらここが最奥部だな」


 進み続けてどれくらい経っただろうか。

 あれから途中、通常の骨人スケルトンも現れたので時間的にそこそこかかった気もする。

 ただ、通常の骨人に加え、骨小魔術師や骨兵士もこの洞窟をうろうろしていたことで、ここが骨人たちの発生源である可能性はより強まったのも確かだ。

 実際、最奥部に辿り着いてみて、その可能性は確信に変わった。


「ここで骨人が発生していた……のでしょうか?」


 リブルが俺の少し後ろに立ち、尋ねる。

 何がいるか分からないから十分に注意して俺の背後にいてくれ、と指示してあるからだ。

 俺は彼の質問に頷いて答える。


「間違いないだろうな。リブルに感じられるかは分からないが……ここには邪気が漂っている」

 

 邪気、という言葉には様々な意味があるが、この場合には“淀んだ魔力”というくらいの意味合いだな。

 それらが凝り、一所に溜まって淀み続けると、そこが魔物の発生源になる、という現象は確認されている。

 俺たち冒険者からするとかなりありふれた現象なので、今回のような場合にはこれをまず疑うものだ。

 実際、そうだったようだし予測は正しかったようだ。

 

「邪気ですか……。少し嫌な感じがする場所だなとは思いますが、狭まった空間だからなのかその邪気によるものなのかは分からないですね……」


「魔力を感じられないと分からないものだからな。リブルにも少し魔力はあるようだから修行すれば分かるようになるかもしれない」


「……私に魔力があるなんて、知らなかったです。でもそういうことなら、嫌な感じの方は気のせいなんでしょうね」


「まぁな……ともあれ、とりあえず邪気を散らすか。そうすればもう骨人なんて発生しなくなるはずだ……」


 と、そこまで言ったところで、洞窟最奥部の中心に、強い魔力が収束し始めた。


「……何が……!?」

 

 流石にこの異変についてはリブルも感じられたようだ。

 俺は彼に言う。


「リブル、下がれ。魔物が発生する瞬間だ!」


 迷宮での湧出ポップに似ているが、あれとはまた異なる現象だ。

 あっちは本当に何にももないとこに突然現れるからな。

 まぁどちらも目の前で見ることが出来ることは冒険者以外では稀で、リブルはある意味貴重な体験であるのは間違いない。

 目の前で魔物が生まれる瞬間を見れることが喜ばしいことかと言われると謎だが。

 リブルは俺が叫んだと同時頷いて、大きく後ろに下がっていく。

 ここに来るまではほぼ一本道だったので、背後から骨人が来る可能性は少ないだろうし、大丈夫だろう。

 一応、リブルに後ろも警戒するようには言ってあるから来たとしても時間稼ぎくらいは可能だろうしな。

 しかしそれにしてもどんな魔物が発生するのか……。

 普通の骨人だったとしたら拍子抜けだが、比較的容易に倒すことが出来るのでありがたい。

 だけどな……。


「……やっぱりそんな上手くはいかないか」


 俺がついそう呟いたのは、魔力が凝ったところ、邪気の集約点の地面からボコリ、と這い出てくるように新たに現れたその存在を見た瞬間だった。

 そこにいたのは普通の骨人ではない。

 そうではなく、鎧を纏い、剣と盾を持った骨人……骨騎士(スケルトン・ナイト)と呼ばれる存在だった。


 ◆◇◆◇◆


 ――キィン!


 と、俺の剣が盾に弾かれる。

 それから剣が素早く突き出されたので、俺はバックステップでそれを避け、間合いを取った。

 ……駄目だったか。

 と残念に思いながら。

 魔物は発生した瞬間が最も気を抜いた状態であることが多い、と言われているので先制攻撃を狙って飛びかかったのだが、結果は失敗である。 

 流石は骨兵士スケルトン・ソルジャーよりも上位の個体と言われる骨人系の魔物だけある。

 俺もああいう進化をしても良かったかも知れないな……。

 そうすれば、また違う強さが身についたかもしれない。

 もちろん、俺の目的はあくまでも人に戻ることであるからしてああいう中身スカスカな骨人系で進化し続けるわけにはいかなかっただろうが。

 骨人系統はどれだけ上位の魔物になっても結局は骨だからな……。

 どうやったって街の中を出歩けないのでは困る。

 

 それにしても……どう攻めるかな。

 骨騎士(スケルトン・ナイト)は骨人系でもかなり攻守のバランスが良い魔物として知られている。

 特に盾持ちは厄介だとも。

 骨騎士(スケルトン・ナイト)骨兵士スケルトン・ソルジャーと同様に、個体によって持っている武具が異なる。

 その肉体……というか、骨体といえばいいのか、ともかくその体の元になった持ち主が持っていた武具をそのまま持っているためであることが多い。もちろん、徘徊しているうちに武器を持ち変えることもあるが……。

 ちなみに今目の前にいる奴は初めから持っていたわけだから、この洞窟でかつて死んだ者の亡骸がここに埋まっていて、そいつがこういう武具を持っていた、ということなのかもしれない。 

 こんな洞窟になぜ、という疑問が生じなくもないが、こういうところは様々な魔物の住処になってきたところであるのが普通だ。

 前もゴブリンが住んでいたと言うし、もっと前は強力な魔物が住んでいて、討伐するために入った者がそのままここで力尽きたということもあるだろう。

 そしてそんな者が骨人になってしまうわけだが……元の体の持ち主の力が強ければ強いほど上位の個体になるわけで、骨騎士(スケルトン・ナイト)になりうるような力の持ち主で、かつ盾を扱える技術を身につけていたというのなら……手強いことは言うまでもない。

 骨人はその体を支える骨がむき出しだから色々と狙いやすいものだが、鎧を纏われ、盾で防御されるとそれだけでかなり倒しにくくなるものだからな。

 まぁ、それでも頑張って倒すしかない。

 洞窟はここで終わりであることを考えれば、もう聖気でもって力押しをするのでも良い気もするが……。

 いや、今はまだ温存しておいたほうが良いだろう。

 依頼は帰るまでが依頼だからな。

 ここから村まで戻るときにまた何か出ないとも限らない。

 まだピンチ、というほどでもないのだし、出し惜しみではないが、とりあえず普通に戦ってみてから考えよう。

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