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第15章 山積みな課題
第531話 山積みな課題とレント商店

「色々あるぞ。欲しいものがあったら言ってくれ……あぁ、もちろんタダじゃないけどな」


 俺がそう言って村の広場に広げたのは様々な雑貨や食料などである。

 俺には大容量の魔法の袋があり、そこに入る物品の量は馬車数台に匹敵する。

 そして俺はその中に色々なものを常に入れている。

 ロレーヌがたまにそこから出てくるものの意外性に「なんでそんなものが入っているんだ……便利だから使わせてもらうが」などと言うことも頻繁だ。

 実際俺もなんでこんなもの入れたんだっけ?というものもなくはないのだが、意外な場面で意外なものが役に立ったりすることがあるのが冒険者という職業である。

 だからこそ、この収集家気質については特に問題を感じていない。

 もちろん、整理整頓はしっかりやっておかないとならないが、その辺りについては俺は結構マメな方だ。

 ロレーヌの家の片付けだって前は完全に俺が請け負っていたからな。

 今ではロレーヌも普通に片付けられる人になったが、それでも研究に打ち込み始めると途端にごちゃごちゃし始める。

 人間が一日に使える集中力というか自律力みたいなものは魔力や気のように総量が決まっているものなのかもしれないな。

 ともあれ、そんな俺の魔法の袋の中身を村の広場で広げたのにはちゃんとした理由がある。

 かなり色々なものが破壊されたりボロボロになっていたりするこの村の復興のためには多くの物品が必要になってくるが、少しくらい俺のコレクションでまかなえないか、と思ったのだ。

 もちろんのこと、これらをすべて無料で提供する、なんてことはするつもりはない。

 俺にだって生活がある……というのは使わないのに集めている品も多数あるので理由にはならないが、ただで譲ると言っても村の人々は拒否するだろうしな。

 変に安値なものは怪しくて逆に迷惑というのもある。

 こういうものは正当に取引をしなければ余計な押しつけというものだ。

 まぁ、それこそガラクタについては本当に無価値なのでただでもいいが、そんなものは欲しがる者はあまりいない。 

 ゼロではないのはどんなものでも物好きというものがいるからだな……俺もその一人、と。


「……冒険者の人が持っている魔法の袋ってこんなにものが入るんですね……行商人の人が持ってきてくれる品よりも、種類も量も多いですよ」


 リブルが驚き半分呆れ半分でそんなことを言いながら物品を物色している。

 皿とかコップとかフォークとかの食器類を主に見ているな。

 というか、大半の村人がその辺りを見ている。

 これは村の状況を見るに当然で、一番、骨人が荒らした結果使い物にならなくなったのがその辺りの品だからだ。

 ガラス製品は流石にないが、陶器のものは少なくなかったようで、魔物に荒らされれば必然的にすぐに壊れる。

 元々木製のものが多いのでそこまで被害が大きい、というわけでもないだろうが、たまの祝いの日とかには少し良いものを使いたい、というのは町の人間のみならず、こういった小さな村の者でも思うことだからな。

 そしてそういうときに使うのは色の入った陶器の品が多いわけだ。

 逆に大きな街だと緻密な彫刻のされた木製の品は結構人気で、それこそ大きな商家や貴族の家でも重宝されているというのは面白い話だな。

 そういう風に場所によって需要と供給が違うから、あっちこっちにものを運び歩いて価値を上乗せして売り払う行商人が成り立つわけだ。

 

「俺が持っている魔法の袋はここだけの話、かなり大きめなものだからな。普通は背嚢三、四個分くらいが関の山だぞ。それでも金貨が何十枚何百枚と飛ぶような価格がする」


 俺が人間時代から使っている魔法の袋はまさにそういうものだったからな。

 今、主に使っている魔法の袋は金貨どころか白金貨が飛んだが……。

 ニヴがいなければこんなもの一生買えなかっただろうな。

 しかし元を取っているのか、と聞かれると微妙なところだったりする。

 というか今のところ全然なのは言うまでもない。

 銅級じゃ、白金貨なんてそうそう稼げるものではないからな……だが俺は欲しかったから買った。後悔はない。これは先行投資というものなのだ。

 白金貨を貯め込んだところで俺にとってはそもそも意味がないというのもある。

 俺の目標はあくまで神銀ミスリル級冒険者になることであって、金持ちを目指しているわけではないからな。

 そのために必要なのであれば手持ちの金がゼロになったとしても払うのだ。


「金貨何百……っ! 冒険者の人は高給取りと聞きますが、そんなにお金持ちなのですね……」


「おいおい、俺は何年も貯めたぞ。とはいえ、普通の職業よりはもらいは良いのは確かだな。その代わり掛け金は常に自分の命だ」


 それを聞いてリブルは息を呑む。

 端的な事実であるが、それを割に合うと考える者がやるのが冒険者だ。

 そして普通はまず、そうは思わない。 

 いくら金をもらっても割に合うわけがない。

 そう思うのが普通だ。

 冒険者なんてやる奴は、多かれ少なかれどこかネジが抜けている。

 常識的な人間はそう考えるのだ。

 実際、俺自身のネジがどの程度しっかりとはまっているかと聞かれると首を傾げざるを得ない。

 そもそも、多くの冒険者が武勇伝がてらに酒場でよくいう台詞『何度も死にかけた』、どころか少なくとも本当に一度は死んでいる俺だ。

 多少ネジがおかしくなっていなければこうしていられないだろう。

 

「……本当に、冒険者の方々には頭が下がりますよ。それに……レントさんはそれだけ稼げるのに私の依頼を受けてくださいましたし」


「稼げるときは稼げるが、稼げないときは稼げないものだからいつも金に困らないってわけじゃない」


「そういうものなんですか……あ、これは……」


 話しながらもリブルは色々と品を見ている。

 その中でも気になったものがあったようだ。

 彼が今見ているのは食器類ではなく、今回魔物から奪った品が並んでいる場所だ。

 その中でも、骨兵士が持っていた槍に彼は注目していた。

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