「歯が生える薬」実現へ…京大発スタートアップ

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「歯の治療の選択肢を広げる」ことが目標だという喜早さん(手前)と高橋さん(大阪市北区で)
「歯の治療の選択肢を広げる」ことが目標だという喜早さん(手前)と高橋さん(大阪市北区で)

トレジェムバイオファーマ(京都市上京区)

 「歯が生える薬」の実用化に取り組む京都大発のスタートアップ(新興企業)。2024年の治験開始、30年頃の発売を目標に研究開発を急いでいる。生まれつき永久歯が欠けている「無歯症」と呼ばれる患者の治療に加え、いずれは虫歯などで失った歯の再生も目指す。喜早ほのか社長(42)は「歯を失うことが怖くない社会を実現したい」と意気込む。

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 サメの歯は何度も生え替わるのに対し、人間の場合は永久歯が抜けると新しい歯は生えてこない。特定のたんぱく質が歯の成長を止める働きをするためだ。開発中の薬は、このたんぱく質の機能を阻害する抗体によって患者の歯の成長を促すという。

 喜早社長は中学生の頃、あごの骨の病気で歯を2本失った。診察してくれた医師に憧れて歯科口腔外科を志し、08年に京大大学院に進学。当時京大准教授で、歯の再生治療薬を研究していた高橋克・北野病院歯科口腔外科主任部長(59)に出会い、研究チームの一員として薬の開発に取り組んだ。

 18年に抗体を投与してマウスの歯を増やすことに成功した。実用化に向けて京大の起業支援プログラムに応募し、特許を取得して20年に会社を設立。喜早氏が社長に、高橋氏が最高技術責任者(CTO)に就いた。

 子供で生まれつき6本以上の永久歯がない「先天性無歯症」は0・1%、1~5本がない「部分無歯症」は1割に上るとされる。先天性は遺伝的な要因もあり、喜早氏は「子供の発症に親はショックを受ける」と話す。入れ歯やインプラント治療もあるが、「かみ応えは自然の歯に劣る」(高橋氏)という。

 前例のない治療薬のため当初は資金調達に苦労したが、日本医療研究開発機構(AMED)などの支援を得て事業化のめどが立ちつつある。30年には150万円程度(歯3本分)で発売し、先天性無歯症の治療では保険適用の対象となることを目指している。2人は「歯を失ってつらい思いをする人をなくしたい」と力を込める。(升田祥太朗)

                  ◇

 社名の「トレジェム」は、歯の再生治療薬を意味する英語「Tooth Regeneration Medicine」のそれぞれの単語から「ToRegeM」を抜き出したもの。従業員は5人。

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4993127 0 企画・連載 2024/02/01 12:53:00 2024/02/01 12:53:00 2024/02/01 12:53:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/02/20240201-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail
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