長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

1980年代前半の真空管エフェクタです。
Guyatone から世界初の真空管エフェクタとされる TD-1 が先行発売されており、
TD-1 が Tube Distortion に対して、 後発のTO-2 は Tube Overdrive です。

TD-1 はすでに回路図を採取して公開しておりますが、TO-2 は TD-1 とどのような
違いがあるのかに興味があります。

今回入手した TO-2 は元箱入りでした。珍しいので撮影しておきます。

DSC03292A

元箱だけでなく、取扱説明書も付いてきました。

DSC03301B

さて、TO-2 本体を見ていきます。上部。
DSC03312C

AC100V を電源としています。消費電力は 4W との記載があります。
左側面に電源スイッチがあります。

DSC03314D

右側面。入力ジャックと出力ジャックが並ぶ珍しいレイアウト。

コントロールは2つありますが、二軸二連ボリュームが使われており、
左のコントロールは内側が GAIN, 外側が LEVEL,
右のコントロールは内側が TREBLE, 外側が BASS になっています。

裏面のネジを4ヶ所外すと回路が現れます。
DSC03319E
中央のヒューズは 1A 。まだ電源は入れていませんが、ヒューズの
断線もなく、規定通りの 1A が付いています。
中古で入手した場合に最初にチェックする箇所です。

真空管は 12AX7。SOVTEK のものが付けられていました。
前のオーナーが交換したのでしょう。

DSC03322F

電源トランスは ETPV-51C の型式がありました。
下に写っている白い二本の線が一次側、橙色と茶色の対が二次側です。
真空管 12AX7 のヒーター電源は茶色の線。AC 6.3V のようです。
橙色の線は B 電源用なのですが、電圧値も電流値も表示がありません。

電源基板 EPK-185-1
DSC03324F

TD-1 と異なり、倍電圧整流回路が使われています。電解コンデンサの
耐圧が 160V, 倍電圧整流後が 350V なので、トランス自体の二次電圧は
100V 付近ではないかと考えられます。トランスのコストダウンを
計ったのでしょう。

メイン基板 EPK-185-2。片面基板。
DSC03328G

真空管ソケットは基板用ではない通常の端子形状のもの。
ソケットの交換は苦労するだろうと予想します。



Guyatone の80年代の真空管エフェクタ TO-2 の回路図を
採取したので公開いたします。

DSC03298A

回路図

20220720 初出
20220724 電源電圧測定値記入

PNG:

PDF:

先日投稿した Guyatone Metal Monster MM-X の真空管部の
LTspice によるシミュレーションを行いました。

回路図中の参照した部分はこちら。

positve grid bias

1段目、2段目とも +12V の正電圧でバイアスを加えるという暴挙。
「ダイオードクリップの代用」と予想していましたが、やはりそのような
結果になっています。ダイオードと違って電圧増幅も行っています。

まず、1段目の 12AX7 の回路について解析してみます。

MM-X1

シミュレーション結果。12AX7 のプレート電圧
MM-X_1_tran
入力波形は正弦波(1kHz)。正弦波の先端部分だけを取り出して歪ませた
ような波形になっています。安定するとほぼ矩形波になっています。
最初の数周期は過渡状態のようで、振幅が抑えられています。
抵抗 R1 が小さいためか、R1 を 1MΩにするとこの過渡状態がなくなります。

MM-X1_R1=1M
さて、次は12AX7 2段の回路。
MM-X2
図中、回路の出力 R5 の端子電圧を示します。

MM-X_2_tran
正弦波のアタックの部分が無音状態になっています。
過渡状態を少し過ぎてから、おもむろに波形が現れ、矩形波のような
波形で安定しています。

なかなか独特な挙動をしています。
回路全体としては C級増幅回路になっているようです。
ほとんど矩形波になっており、原音のニュアンスがどれだけ
含まれるかはこの解析ではわかりません。
回路の基本動作としてはなんとか理解できました。

CB3 の回路図を採取したので公開いたします。

IMG_0557

知人の依頼で本体をお借りして回路図を作成しました。
回路図を探っているあいだ写真撮影を失念してしまい、上の写真しか
残っておりません。

クリーンブースターで、Treble を減衰/増幅できるようになっています。
いわゆる「ミレニアムバイパス」を採用しています。

回路図

20220503 初出

PDF:

GA-940 はおそらく60 年代のベンチャーズブームの頃のアンプかと思います。
その頃はエレキギターが注目を浴びますが、ベースやベースアンプには
あまり注意が払われなかったようで、「初歩のラジオ」などでの回路図の
公開記事からは抜け落ちています。
また当時の慣例であったケースに貼り付ける回路図もありません。
もしかすると当時の取扱説明書には回路図がついていたのかもしれませんが
少なくともこの個体には付属品は皆無でした。

ベースアンプなので、前面操作パネルは至ってシンプル。
記載はないけれど High と Low の2つのインプット、VOLUME, BASS,
TREBLE のコントロール、ST-BY スイッチ、パイロットランプが並びます。

背面を見てみます。
DSC02603A
3A のヒューズ、AC SW(電源)、サービスアウトレット、スピーカージャックが
2つ。スピーカー出力のインピーダンスが記載されていません。
専用のキャビネットを使うことを前提としていたためか。

シャーシを取り出します。
DSC02606B
入手した時には出力管がなかったのですが、6L6GC x 2 ということは
分かっていました。プリアンプ部は 12AX7 一本と位相反転段の
12AT7 が一本。

DSC02607C
出力トランスは入力インピーダンス 6kΩのプッシュプル入力。
出力インピーダンスは4Ω。う〜ん。4Ω かぁ。スピーカーやキャビネットを
選ばなければ。

シャーシ内部。
DSC02609E

電源トランス。
DSC02610F
電源トランスに整流ダイオード SE-05 が2つ取り付けられています。
倍電圧整流回路なのですが、電源トランスの二次側高圧巻線のタップには
"450V" の印刷があります。本当にそうであれば倍電圧整流で 1000V 以上の
電圧が加わることになりますが、おそらく「倍電圧整流で450V」という意味
なのだと解釈しています。注意が必要です。

DSC02613G
EPK-054 基板。プリアンプ、トーンコントロール、位相反転段が
一枚に収められています。
修理した跡があります。おそらくもともとはオイルコンデンサであった
ところにフィルムコンデンサが付けられています。また、6L6GC の
グリッド抵抗 220kΩ も交換されているようです。
ほぼ全ての配線材が劣化のため緑青を吹いており、交換が必要。
またカーボンコンポジット抵抗も抵抗値が劣化しているので交換すべき。
メンテナンスには手間がかかりそうです。

Guyatone の 1960年代のベースアンプ GA-940 の回路図を
採取したので公開いたします。

この個体は修理の跡があり、いくつかの抵抗やコンデンサが交換されて
います。交換されているのはオイルコンデンサだったと思われますが、
耐圧が不明です。グヤトーンの他の真空管アンプの同等の回路の
値を参考に耐圧を記入しています。C9 は 3900pF 1.25kV に交換されて
いましたが、ちょっと怪しい。GA-1050D などで使われている 1000pF 600V
でも大丈夫だと思います。

DSC02598A

回路図

20220406  初出
20220407 電源:C13 追加
20220408 プリアンプ: R6 訂正


PNG:

電源

プリアンプ + パワーアンプ

PDF:

METAL MONSTER MM-X の回路分析を行います。

その前に。

私ごとですが、ここ数ヶ月 Facebook に再入会しています。
目的は Facebook の 「真空管ギターアンプ製作センター」に
再度参加するため、それだけです。

6年前にも Facebook を始め、同グループを中心に活動して
おりましたが、「友だち」が増えるにつれ雑多で不本意な
情報ばかり入ってきて自分の時間が奪われるようになりました。
また、自身の Facebook ページをギターアンプに関する
データベースにしようという意図があったのですが、
タイムライン優先で過去記事が下に消えていくような
システムではデータベースとしては大きな問題があります。
そんなこんなでその1年後(5年前)には Facebook を
完全退会しております。
そういう経緯があるので、現状では Facebook での「友だち」を
増やすつもりは毛頭なく、「友だち」申請することも
「友だち」承認することもありません。ご了承願います。
(ちなみに「友だちを増やすつもりはない」という趣旨のことを
Facebook の自己紹介に書いて、アカウント停止になった
こともあります。こんな不自由なシステムなんですよ。)
Facebook 退会後はギターアンプ回路のデータベースを作るべく、
本 BLOG を充実させるよう活動してきました。

それでも林正樹氏が主催する「真空管ギターアンプ製作センター」は
とても興味深い。公開グループなので Facebook にアカウントが
なくても読めると思うかもしれませんが、読める部分は断片的だし、
しつこくアカウント作成を要求するなどの妨害も多い。
それにグループでの議論に参加したいという思いがずっとあったので
昨年末に Facebook に復帰し、「真空管ギターアンプ製作センター」に
再入会しました。

で、ここからが本題。
Guyatone METAL MONSTER MM-X の回路図を採取し、本 BLOG で
公開(2022年3月30日)したのち、同グループに回路図を投稿しました。
その時の内容はこちら。

Guyatone METAL MONSTER MM-X の回路図を採取しました。
DC 12V 電源(昇圧なし)で動作させています。
回路を追っていて目を疑ったのはグリッドに +12V(Vcc) のバイアスを
加えていること。Positive Grid Bias !! なんと大胆な。
動作解析はまだ行なっていませんが、ダイオードクリップなどの
歪み回路が他にないのでこれで歪みを作ってるのだろうと推測しています。
こんな使い方もあるんですね。


回路図中の参照した部分はこちら。

positve grid bias

「真空管ギターアンプ製作センター」での議論の中で、
METAL MONSTER MM-X に使われている simulated inductor に
ついて BOSS MT-2 の回路解説サイトを引用して紹介して
いただきました(Kazushi Kimura氏)。当該サイトでは 
simulated inductor は gyrator と呼ばれています。

ここで分かったのは、METAL MONSTER MM-X の回路構成は 
BOSS MT-2 に(回路定数の違いがあるにせよ)よく似ている
ということです。
上に示した 12AX7 の回路は MT-2 のダイオードクリップ回路を
置き換えたものになっています。
(1) 300 Hz を中心とした前段ブースト回路(Pre-distortion tone shaping)
MM-X_1

(2) ゲインステージ(Gain stage)
gain-stage

(3) 後段ブースト回路 (ただし単一周波数帯)(Post-distortion tone shaping)
post-distortion

(4) 2素子のグラフィックイコライザ (High and low tone control)
graphicEQ2

(5) 周波数帯可変 middle トーンコントロール(Sweepable mid tone control)
sweepable

など回路構成が一致します。

というわけで、上記の MT-2 回路解析サイトの解説を読めば
今回の METAL MONSTER MM-X の動作は理解できるものと
思います。

真空管搭載のエフェクター、METAL MONSTER MM-X です。
電源は DC12V。内部には昇圧する回路もないので、
プレート電圧 12V で動作させています。

DSC02413C
背面のネジを4ヶ所外すと中身が現れます。
真空管は SOVTEK の 12AX7 が入っていました。
Foot SW はシンプルな1回路2接点。このスイッチで
内部のアナログスイッチ (2SK30A) を ON / OFF することで
Effect / Bypath を切り替えます。

上面パネルのポットやスイッチ、ジャックをすべて外して基板を
取り出します。
DSC02417D

写真に写っていませんが、FREQUENCY と MIDDLE 兼用の
VR2 は同軸ポテンショメータ。それも FREQUENCY 側は
2連になっています。かなり特殊。壊れたら代替部品はないでしょう。

基板上には NJM4558L が6つ。SIP なのでコンパクトに収まって
いますが、結構複雑な回路になっています。
回路規模から言うと今週メンテナンスした YAMAHA F100-112 の
プリアンプ部と同程度。回路解析の難問が続きます。
ただ 2SC1815 と 2SK30A 以外は製造終了品もなく、これらのトランジスタも
代替品への置き換えが容易なので特に問題にはならないでしょう。

DSC02423E

真空管 12AX7 の取り付け。12AX7 の先端はゴム製クッションで
固定しています。

トーンコントロール部。

Tone-ctrl

一般のオーディオ用に使われるトーンコントロールの構成です。
原音忠実のオーディオではあまり使われなくなった回路ですし、
せいぜい Treble と Bass が使われるくらいでしょう。
HP-300A では Middle が加わっています。

なお、HP-300A には Presence コントロールがありますが、
これはパワーアンプ部の帰還量を調整することで得られる効果
なので、トーンコントロール部とは別の回路です。
(パワーアンプ部参照)

Treble, Middle, Bass のポットにはそれぞれセンタークリックがついており、
12時の位置を基本として音色を増減させるようになっています。
ツマミの目盛りは12 時の位置を0として、7時の位置が -10, 5時の
位置が +10 との表示されています。

このトーンコントロールの周波数特性を LTspice でシミュレートして
みました。
まず基本の設定:Treble 0, Middle 0, Bass 0

tone_5-5-5
緑色の実線はゲインで左の縦軸(dB)、破線は位相(角度)を示します。
いやぁ、まっ平ですねぇ。どこかの周波数範囲に特長があるわけでは
ない、原音に忠実な周波数特性です。
ただし、すべての周波数帯域で -20dB (1/10) になっている(つまり
音が小さくなる)ということは注意してください。

ちなみにギターアンプでよく使われる Fender tone stack での特性
(Treble 5, Middle 5, Bass 5) は次のようになります。
Fender-tone-5-5-5
よく知られるように、1kHz 付近の中音が削られています。

以下、上記の基本の特性をベースにHP-300A のトーン特性を調べます。

 TREBLE の特性(1) : Treble +10, Middle 0, Bass 0
tone_10-5-5
1kHz 以上の帯域が増大することがわかります。
30kHz くらいで増大率も頭打ちになります。

TREBLE の特性(2) : Treble -10, Middle 0, Bass 0
tone_0-5-5
2kHz 以上の帯域が減少しています。

MIDDLEの特性(2) : Treble 0, Middle +10, Bass 0
tone_5-10-5
あまり顕著な変化ではありませんが500Hz 以上の帯域が数dB 上がって
います。中域だけが増加しているわけではなく、高域も上がっています。
ただ Treble と異なり、3kHz 以上での増大はなく、頭打ちになっている
ことがわかります。

MIDDLE の特性(2) : Treble 0, Middle -10, Bass 0
tone_5-0-5
1kHz 以上の帯域が減少します。5kHz 前後で減少率も底をうちます。
Middle を増大するよりも減少させる時の方が変化が顕著です。

BASS の特性(1) : Treble 0, Middle 0, Bass +10
tone_5-5-10
400Hz以下の周波数帯が増大しています。

Bass の特性(2) : Treble 0, Middle 0, Bass -10
tone_5-5-0
やはり 400Hz 以下の帯域が減少しています。

HP-300A のトーンコントロールでは Treble と Bass については
よく効くものの、Middle は効き方が比較的薄いということが
わかります。
また、特にどの帯域を強調する/抑制する、という特徴もなく、
オーディオ的な特性にまとまっていることがわかります。
オーディオ用の回路を使えばこのようになるかと言えばそうでもなく、
各種の定数の変更で特徴を作ることは可能です。
HP-300A ではそれをせずにフラットな特性がでるようにしています。

ちなみに同様のオーディオ用回路を使っている Jugg Box (Micro Jugg) 
のトーンコントロール部も解析してみました。(Treble 5, Middle 5, Bass 5)
tone_5-5-10

Fender tone stack と同様、中域が減衰した特性になっています。
すべては設計次第ということですね。

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