長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

シャーシ内部。

DSC06199A

非常にコンパクトにまとまっています。

前面パネルに搭載されているのは EPK-1000 基板。
FLIP 1000, FLIP 2000X, FLIP 1500 と共通の基板です。
ZIP 400 ではこれらの機種の基本機能に「ハーモニックス・
セレクター」のフィルター等を加えて差別化しています。

中央に四本のバネで宙吊りになっているのはリバーブユニット。
これは同時期の FLIP シリーズと同様の構造。2スプリングのリバーブ
であることも同様。
これまで扱った FLIP シリーズのアンプでは、スプリングが切れて脱落
していることがよくありました。金属のスプリングが脱落すると
電源部などにショートする可能性があり、危険です。
できればリバーブユニットごと取り替え、キャビネット底部に取り付ける
改造を行うのが好ましいです。

DSC06207D

電源部。
FLIP シリーズだとこの部分に電源基板や出力管があるのですが、
ZIP 400 ではパワーアンプに供給する正負電源も EPK-1000 上の
ダイオードブリッジ KBL02 x 2 で整流しており、ブロックコンデンサ
 4700uF 63WV x 2 があるだけのシンプルなものになっています。
そういえば FLIP シリーズではダイオードブリッジの部分が空きパターンに
なっており、何のパターンか謎でした。なるほど。 FLIP と ZIP で
共通に使える設計にしたわけですね。

DSC06204C

パワーアンプ基板  EPK-118。
基本構成は Guyatone の標準
ディスクリートパワーアンプ構成とほぼ同じ。
終段が両方とも NPN の 2SD676 であることが違いではあるけれど、
回路構成は大きくは変わりません。

DSC06210D

 プリアンプ+電源基板 EPK-1000 を取り外そうとなるとちょっと厄介です。
FLIP 3000 ほど厄介ではないですが、「ハーモニックス・セレクター」の
3つのスイッチが前面の化粧パネルを取り外さないと外れない構造になっています。
スイッチ両端にネジ穴があるのがわかると思います。これらが皿ネジで留められ、
化粧パネルの下に隠れているのです。
前面の全てのジャック(4個)、ポット類を固定するボルト(7個)、パワースイッチのボルト、
ネオンランプのボルトを外してやっと化粧パネルが外れます。
(ネオンランプに関してはボルトが内側にあるので、配線を切らなければなりません。)

写真中央右よりにインダクタ(コイル)があります。トランス、と言った方が
通じる形状をしていますが、二次巻線がないのでインダクタです。
「ハーモニックス・セレクター」の MIDDLE で BEF を構成しています。
同様の回路は FLIP 2000 でも採用されています。

DSC06212E

EPK-1000 基板の部品面。
見慣れた回路です。
この個体は修理した形跡があり、Q101 として 2SK66 が半田面に搭載されて
いました。そのため本来の FET の型名が不明なのですが、
公開している回路図では Q101 を他の EPK-1000 搭載機種と同様であると
判断して 2SK30A としています。

では ZIP 400 の外観を見ていきましょう。

前面コントロール部。
DSC06176A

入力部は NORMAL, OVERDRIVE のそれぞれ H と L の4つのジャック。
OVERDRIVE 入力はプリアンプが1段あり GAIN を通過して NORMAL 入力と
合流する Mesa Boogie で一般的になったスリーボリューム方式。
そういえば当時4つの入力ジャックがあるモデルは FLIP 2000, FLIP 3000 と
この ZIP 400 しかありません。 フルチューブアンプの FLIP 2000 に
相当するモデルであったようです。

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トーンコントロール HIGH, MID, LOW とリバーブ。トーンコントロールの
それぞれのノブの上にはロッカスイッチがあります。
これが「ハーモニックス・セレクター」のようです。
Bright スイッチのようなものをイメージしてしまいそうですが、
回路的には HIGH のスイッチはパワーアンプのフィードバックの
定数を変えており、PRESENCE の働きをさせているようです。

背面。

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左端から ACアウトレット(故障)、AC 電源切り替え(100V/117V)、
電源ヒューズ(5A)、スピーカーヒューズ(8A)、LINE OUT, REVERB フット
スイッチ、 ヘッドフォンジャックと並びます。

DSC06184D
スピーカーは GSG301018  8Ωの 12 インチ。

背面パネルを外してみます。
DSC06189E

電源トランスとブロックコンデンサ、終段のパワートランジスタが
取り付けられています。

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終段のパワートランジスタは日立の 2SD676。
大きな放熱フィンが取り付けられています。


今回は知人から ZIP 400 のメンテナンスの依頼があったので、
許可を得て回路図の採取・公開を行いました。

ZIP 400 (GA-400) は1978年8月ごろの発売で、ロッキンf 1978年9月号の
新製品紹介で取り上げられています。
1978年 Guyatone は 1月に初のハイブリッドアンプである FLIP 1000 を
発売し、3月には ZIP 200 と ZIP 300 を発売しトランジスタアンプの
ZIP シリーズを立ち上げています。ZIP 400 は当時の ZIP シリーズの
最高機種に位置付けられています。

1978年7月のカタログに初登場します。

DSC06235B

内容を引用いたします。

--- ここから ---

GA-400 新製品 ¥85,000

ZIP シリーズの最高峰。ヒアリングと
測定を繰り返し、繰り返し重ねて創りあ
げた ZIP400 は、現在考えられるトラン
ジスター・アンプの究極tもいえるもの
です。倍音(高調波)を変えるハーモニ
クス・セレクター装備。
平均出力/100W  スピーカー/30cm

規格
平均出力 100 W (RMS), 連続最大出力 200W
スピーカー 30 cm
コントロール ボリューム 3, イコライザー 3, リバーブ 1,
       ハーモニックス・セレクター
ラインアウト 1, リバーブフットスイッチ 1, ヘッドフォン 1
寸法 445(H) x 506(W) x 275(D) mm, 重量 20 kg

--- ここまで ---

2003年の Guyatone カタログ Vol. XV から仕様を抜粋。

--- ここから ---
HR-2
ハードロッカー ¥5,500

■プレイヤーの感性を第一に考慮した
サウンドとシンプルな機能設計。全音
域にわたり、音やせ、音のつぶれが無く
群を抜いた重量感のある、ず太いディ
ストーション・サウンドが楽しめます。

■コントロール:レベル、ゲイン
■端子:入力、出力、ACアダプター・ジャック
■その他;ノーマル/エフェクト切換スイッチ、インディケーター
■消費電流:DC9V 6mA (エフェクト時)
■電源:DC9V 006P(1個)/ACアダプター
■外形寸法:70(W) X 53(H) X100(D) mm
■重量:200g

--- ここまで ---

シリアルナンバーから 1996 年製のようです。

DSC05625B

Guyatone の MICRO シリーズの特徴の一つ、ゴム製のエスカッション。
鉄製のケースと底板を繋ぐ役割を果たしており、プレイ時の滑り止めにも
なっています。
経年変化により無数のひび割れが入っており、脱着時に慎重になります。
このエスカッションは現在入手難で、代替が効きません。
これが切れた時がこのエフェクタの寿命と言って良いかもしれません。

DSC05627C

エスカッションを外せば容易に内部を見ることができます。
背面からは片面基板一枚と 006P の電池スナップが見えます。

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さらにポット、フットスイッチ、ジャックのナットを外すと基板が
取り外せます。

メイン基板 EPK-315-1
DSC05631E

OP アンプは SIP の NJM4558L。

DSC05633F

4558 の周辺を4つのトランジスタが取り囲んでいますが、
そのうち3つ(2SK30A)はエフェクト切換のアナログスイッチ。
バイポーラトランジスタ 2SC1815 はエミッタフォロワによる
バッファとして使われています。

4558 の片方の OP アンプで歪みを作り、もう片方の Gain 1 の反転増幅回路
で出力インピーダンスを下げています。
回路構成としてはディストーションに分類されますが、ダイオードクリップ回路に
ゲルマニウムダイオードとシリコンダイオードを組み合わせています。

ノーマル時には1段目のエミッタフォロワと Gain 1 の反転増幅回路の
組み合わせになるため、Gain 1 のバッファとして動作します。
バッファとしてエフェクトボードの最初段に置いて常にノーマルで
使うことも考えられそうです。

リバーブは底面パネルにネジ留めされています。
DSC04464A

なお、リバーブユニットの入力部の直流抵抗を測定しようとすると
正しい値が出ません。断線している可能性があります。
中を見てみることにします。

4ヶ所の木ネジを取り外すと
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厚紙がリバーブユニットの下部に貼り付けられています。
埃が入らないようにするためどのメーカーも行なっていることですが、
しっかりと糊付けされています。

中を見ないわけにはいかないので (^^;) 糊付け部分にカッターを入れて
厚紙を取り外します。

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ダブルスプリングですね。リバーブ自体は Guyatone の製品でよく見る
もの。おそらく国産のユニットでしょう。
よく見ると左側の入力端子への網線が切れていました。
これなら修理可能。半田付して修理完了。

GA-960 の内部を見てきたわけですが、ここまでだと 60 年代後半の製品だろうと
想像できるのですが、違和感があった部分をひとつ。

DSC04536A

メイン基板の SPK-017 の裏面です。
グリーンレジスト処理されています。 60 年代にレジスト処理があった?
高級機種なので当時最先端の技術を基板に導入した、ということも
考えられますが...
Guyatone の基板でレジスト処理が一般的になるのは80年代以降。
70年代中頃には TK80 などの基板に採用されていたのは知っていますが、
60 年代に存在していたかは疑問です。
そのためこの個体の製造が 70 年代ではないかと推測しています。
もう少し情報を集める必要がありそうです。

おそらく 60 年代から 70 年代にかけての製品だと思われますが、
資料がないためはっきりしたことが言えません。
Ventures が来日公演で使った Guyatone GA-950 コンサートデラックスと
よく似たコントロール部なので、GA-950 の後継にあたる機種ではないかと
推測していますが、入手した個体に70年代中盤の技術も投入されている
ところからロングセラーだったのかとも考えています。

コントロール部は2チャネルになっています。
DSC04436A

DSC04438B

それぞれのチャネルに2つの入力ジャック、VOLUME, TREBLE, BASS の
コントロール。CHANNEL 1 には BRIGHT スイッチが搭載されています。
LPF を通すか否かという動作なので BRIGHT スイッチと呼ぶにはちょっと
語弊があるかもしれません。

DSC04440C

遠くから見ると3チャネルに見えそうですが、REVERB とトレモロの
SPEED, INTENSITY コントロール。
リバーブは CHANNEL 2 にしか効きません。
SPEED の下にあるスイッチは GROUND スイッチ。
ON /  OFF でハムノイズが少なくなる方を選びます。
TREMOLO と REVERB のフットスイッチも前面パネルに設置されています。


背面。電源コードのフックがあって取りまとめに便利。
DSC04442D

DSC04444E
背面にはスピーカージャックが2つ。出力はどちらも4Ω。
出力トランスの個別の巻線から引き出しているので、4Ω負荷を同時に
両方のジャックに接続しても OK という構成になっています。

DSC04447F
背面パネルを開けると、内部の回路が見渡せます。
左端のブロックコンデンサの隣にあるのが整流管 5AR4。

DSC04456G

出力は 7591 のプッシュプル。あまり聞きなれない出力管だと思いますが、
60年代の国産アンプではよく使われていました。エーストーンの Model 601 や
Roland の Bolt-30 など。この 7591 は東芝製。
もし取り替えるならば現行品では JJ や ElectroHarmonix の 7591 がありますが、
この筐体に収めるには背の低いものを選ばなければなりません。
JJ だと背が高すぎて背面パネルと干渉するのではないかと思います。

DSC04457H

プリアンプ、位相反転段の基板 SPK-017。
Guyatone は早い時期から真空管回路にプリント基板を使っていました。
真空管は右から 6AV6, 12AX7, 6BM8, 12AX7, 12AU7。


背面パネルを外した途端に目に入ったのがこの巻線抵抗。
巻線がほどけています。電源を入れたら他の部品に故障が飛び火しかねない
状況です。
DSC04466J

この抵抗はプリアンプ部の真空管のヒーターに対するハムバランサーの
ようです。正確に言えば単なる抵抗ではなく巻線半固定抵抗。
困ったことに抵抗値がわかりません。
ただハムバランサーであることが分かれば適当な可変抵抗で代替しても
よいし、固定抵抗でハムバランスを取る手も使えます。
回路図には抵抗値は UNKNOWN と記述しています。

(20221130 追記)
壊れていた巻線半固定抵抗の裏側に "100Ω” の記載があったので
回路図とも訂正します。

60年代から70年代初頭のアンプ Guyatone GA-960 "BLACK 5" の
回路図を採取したので公開いたします。


DSC04435A

回路図 schematics

  20221119  初出
  20221130  電源:VR01  UNKNOWN -> 100 Ohm
  20221204  電源:電源電圧実測値記入
  20240107  電源:V6, V7 名称訂正 6CA7 -> 7591

PNG:

電源  Power Supply

プリアンプ  Pre-amplifier

パワーアンプ  Ppwer Amplifier

PDF:


schematics GA-960.pdf

TO-2 と TD-1 を比べて目立った違いを挙げておきます。

まずは B 電源。

Power-B



倍電圧整流回路になっています。
TD-1 では電源トランスの二次側にAC 214V の巻線があり、全波整流で
B 電源 270V を作っていました。
TO-2 の電源トランスには二次側の電圧の記載がありませんが
実測値で交流 100V が出ており、これを倍電圧整流回路を使って
+250V の B 電源を作っています。
二次側が 6.3V と 100V なので、一般的なトランスを使用することができ、
コストダウンが図れたと考えられます。

プリアンプ部。
overdrive


12AX7 三極管による2段増幅回路です。
2段目から1段目のカソード抵抗にフィードバックがあり、
その途中にダイオード2個が接続されており、ここで歪みを作っている
ようです。

TD-1 の回路と比較してみます。
TD-1 distortion

TD-1 の方はダイオード2つとも一方の端子が GND に接続されており、
クリップ回路を構成しているのがわかります。ディストーションで
よく使われる構成です。

TO-2 の回路はフィードバックループに直列にダイオードが挿入されて
おり、OD-1 や TS-9 と同様な働きをしているようです。
おそらくこの回路構成を以て Overdrive と称しているのでしょう。

すでに TD-1 は手元にないので、回路図での比較しかできませんが、
TO-2 の歪みは軽めで、Overdrive にふさわしい音質だと思います。

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