長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

Guyatone の70年代のフルチューブアンプ FLIP 3000 (Model GA-3000) の
回路図を採取したので公開いたします。


DSCN3726A

6バンドのグラフィックイコライザを搭載しています。
この部分の回路図を含んで4パートの回路図になっています。

DSCN3729B

PNG :
電源 Power Supply  

プリアンプ Pre-Amplifier

パワーアンプ Power Amplifier

グラフィックイコライザ Graphic Equalizer

PDF:


schematics GA-3000.pdf

もうずいぶん前に(7、8年前?)採取した Guyatone TD-1 の
回路図を公開いたします。
残念ながら回路図を採取した個体はすでに売却してしまいましたので
間違い等があっても確認できないのでご了承願います。
(よって写真もなし。)

80年代に世界初の真空管エフェクターとして発売されたということです。
真空管 12AX7 の本来の性能を発揮する高電圧(DC270V)で動作させて
います。
ただディストーションとして歪みを作っているのが初段へのフィードバック
に仕組まれたダイオードクリップ回路。12AX7 単体では歪まなかったんだろうなぁ。

PNG :

PDF :


schematics Guyatone-TD1.pdf

Guyatone Tube 10 です。

私自身は80年代から2000年代中ごろまで音楽から離れていたため、
この時代のアンプには思い入れはありませんし、あまり詳しくも
ありません。

FLIP-400FJ で Guyatone のアンプを見直したということもあり、
今回も Guyatone のアンプを解析することにしました。
電源コードの年代表示から 1990 年以降の製造ということがわかっています。

前回、Tube10 の前面の写真を掲載しました。
左から INPUT ジャック、OVERDRIVE スイッチ、 GAIN、VOLUME、
BASS、MIDDLE、TREBLE、PRESENCE、POWER スイッチの順に並んでいます。

PRESENCE があるのが特徴でしょうか。真空管アンプの Presence は
回路的には NFB の深さを変化させることで実現していますが、
半導体アンプではあまり搭載されないコントロールです。

バックパネルを外した背面を見ます。
DSCN3099A

背面に配置されたジャック類は左から
NORMAL / OVERDRIVE フットスイッチ、HEADPHONE、RETURN、SEND の順。

バックパネルを外すと見える真空管は 12AX7。
DSCN3106B
オレンジ色で FLIP と書かれた真空管ですが、中国製ですね。
90年代は Fender などの真空管アンプも中国製を使うようになっています。

ケースを取り出して内部の回路をみてみます。
DSCN3101C

前面パネルに入力ジャックと6つのポットで固定されているのが
 EPK-339 基板。電源関係とパワーアンプ部、プリアンプ部が一枚の
基板にまとめられています。
リバーブが搭載されている TUBE10R と共通の基板のようで、リバーブ用の
回路部分に部品が搭載されていないので、若干すきまが目立ちます。

パワーアンプ部はワンチップで構成されています。

DSCN3118D

SANYO の LA4460N という 12W 程度のモノラルパワーアンプIC。
もちろん製造終了品ですが、現時点では若松通商などに在庫があるようです。

FLIP-400FJ はプリアンプに真空管(12AX7, 12AX7A)、パワー・アンプ部に
半導体というハイブリッドアンプです。

Dual Mode Switch がアンプのバックパネルに搭載されており、
NORMAL と DRIVE の切替ができます。残念ながら、バックパネルに手を伸ばして
切り替えるしかなく、フットスィッチで切り替えるというような代替手段は
ありません。また、「Dual Mode Switch を操作する場合は Volume をゼロにして
切り替えてください」という旨がバックパネルに印刷されています。

ちょっと使いにくい Dual Mode Switch ですが、DRIVE にセットした時の歪みは
モダンなもので、ハードロックやヘビーメタルによく合いそうです。
実は FLIP シリーズの初期のモデル、FLIP 1000mkII を修理したことがありますが、
低音が主体の歪みになっており、あまり美しいとは感じませんでした。
 それがあって、Guyatone のハイブリッドアンプには手を出さなかったのすが、
今回の FLIP-400FJ は見直しました。うまい具合にエネルギーの大きな低音を
カットして高音主体の倍音の多いカラッとした歪みに仕上がっています。

よく「真空管の歪み」などという言葉を聞くことが多いのですが、
実際には真空管で歪ませるのは大変です。オシロで波形をみると歪んでいるのが
わかるのですが、アンプからの音を聞くと「クリーン」な音に聞こえてしまいます。
ゲインを上げれば歪みは大きくなりますが、発振を起こしやすくなり動作が不安定に
なります。なんとも痛し痒し。
そのため、いわゆる「真空管の歪み」を標榜する真空管搭載のアンプやエフェクタには
ダイオードによるクリップ回路がこそっと入っているものが多いのです。
ダイオードや LED で歪ませて真空管で倍音を増やす、という構成。

ところが、今回の FLIP-400FJ にはクリップ回路がありません。
NORMAL ポジションと DRIVE ポジションの違いは V1 の 12AX7 (並列)を
バイパスするか否かの違い。あと Fender トーンスタックによるトーン回路に
C6 680pF を並列接続するか否か。これは BRIGHT switch と似た回路ですが、
これを DRIVE ポジション専用にして高音を強調しているようです。

歪みは良いのですが、あまりクリーンが嬉しくないというのが私の感想。
ちょっとそっけないかなぁ。出力段がトランジスタなので、出力段で加えられる
倍音成分が少ないのかと思います。

回路図に追加を行いました。
主な変更点は電源部。実測した電圧を記入しました。
VB = 264V,  Vcc = 36V, Vee = -36V,  IC1 4558 の電源は± 15.5V です。

誤解のないように。
FLIP-400FJ のプリアンプ部の真空管 12AX7 と 12AX7A は
プレート電圧 170V で動作しています。
つまり、真空管が本来の性能を発揮する電圧で動作しているという
ことです。回路内で最大 300V の電圧がかかっています。

そのため、感電の危険があります。

真空管を使ったエフェクタの中には DC9V のような真空管としては
非常に低い電圧で動作させているものもあります(例:Tube Driver )。
それらとは同等に考えないでください。

ケースを開けてみます。

DSCN3064A

写真中央部に放熱用アルミ板に搭載された終段出力トランジスタが2つ見えます。
右が 2SB816, 左が 2SD1046。

アルミ板の右に真空管ソケットがあり、12AX7 (V1) と 12AX7A (V2) が搭載されています。
真空管はプリアンプにのみ使われているので周辺の配線もシンプルです。

電源部の整流回路、プリアンプ部、パワー・アンプ部の終段の手前のドライブまでが
前面パネルに固定されている EPK-300 基板に搭載されています。
EPK-300 基板の部品面を示します。
DSCN3071B

写真右側がプリアンプ部に相当するのですが、12AX7 と 12AX7A で
電圧増幅しているので、基板に搭載されている部品が比較的少ない。
V1 12AX7 の初段を通過するのが DRIVE ポジションで、バイパスするのが
NORMAL ポジション。 12AX7 は並列接続されて一つの三極管として
動作しています。おそらく片方だけでも動作すると思いますが、
使用しない片方の処理のために並列にしていると思います。
(ただし片方だけで動作させるにはカソード抵抗は要変更)
 60年代〜70年代であれば 6AV6 などを使っていたのでしょうが。

この写真の中央部にリバーブのドライブ回路、(ワイヤと電解コンデンサに
隠れている)4558 による電圧増幅およびリバーブの信号増幅が配置されて
います。 

DSCN3073C

基板の左側は電源・整流部とパワー・アンプドライブ回路です。
このあたりはほとんどディスクリートで作られています。

トランジスタは電力増幅に 2SD1046, 2SB816 (SANYO),
ドライブ段に 2SD600, 2SB631 (SANYO), 
リバーブドライブに 2SC1570, 2SD313 などが使われています。
SANYO のトランジスタは製造終了でしょう。

最近のアンプはたとえば VOX pathfinder 10 の TDA2030 などのような
IC による電力増幅が主流ですが、これらの IC が製造終了になった場合に
入手困難になって修理不能になることがよくあります。
ところがディスクリート構成でパワー・アンプが作られている場合には
たとえトランジスタが製造終了になっても代替のトランジスタが存在する
ので修理が可能です。場合によっては当時よりトランジスタが
ローノイズになっていたり、却って改良になることもあります。

というわけで、ひととおり回路周りを見てみましたが、
特に大きな問題はありませんでした。
実際、このあと電源を繋いでギターを鳴らしてみましたが
全く問題がありませんでした。

Guyatone FLIP-400FJ です。


DSCN3044A

製造年の詳細は不明ですが、電源コード(交換されていなければ)に 1986 の
記載があったので、1986年頃のものと判断します。

前面操作部は左から入力ジャック、Gain, Volume, BASS, MIDDLE, TREBLE,
PRESENCE, REVERB, 最右端の Power Sw. の順に並んでいます。 


DSCN3047B

背面右側に Dual mode switch があり、クリーンとオーバードライブの
切替ができます。
ジャックは右から SEND, RETURN, HEADPHONE, LINE OUT の順。
ヒューズは 2A が付いています。

Guyatone の製品名で FLIP は真空管を使用したモデルで、
ZIP はトランジスタのモデルに付けられています。
FLIP-400FJ は真空管をプリアンプ部に使用したモデルです。
DSCN3059C

左が DRIVE ポジションでゲインを付加する真空管 12AX7 (V1)。
右が常にプリアンプとして働いている 12AX7A。

DSCN3060D

パワー・アンプをトランジスタで構成しているハイブリッドアンプなので
出力トランスはなく、かつ電源トランスも小ぶりなものが搭載されています。
そのため全体の重量が軽くできており、持ち運びがとても楽です。

外観はこのようなアンプです。
次回は回路内部をみていくことにします。

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