長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

背面パネルの AC アウトレット、すべてのジャックを取り外し、
リバーブユニットをシャーシから外してやっと回路図の採取が始まります。

そうだよなぁ。10年前も修理した時はこの密集した構造がめんどくさくて
回路を採取しようとは思わなかったんだよ。
DSCN3865A

スプリングリバーブの内面。2スプリングで問題はなさそう。
コイルの断線もありません。
リバーブのアルミケースの底に汚い接着剤の後がありますが、
これはスプリングの振れ止めのスポンジのあと。
シャーシ開封後、変質してさらさらになったスポンジがシャーシの
底に落ちていました。またスポンジが粉末になってあちらこちらを
汚していたので掃除。
スポンジはフスマなどに貼る(隙間風対策の)スキマテープで代用しました。

回路を目視していると、リバーブのドライブ用トランジスタ Tr8 2SD313 と
そのコレクタ抵抗 R126 820Ω 2W の半田にクラックが生じているのを
見つけました。

DSCN3871A

ちょっと見にくいですが、よく見るとひび割れがわかると思います。
熱が加わる場所なので、膨張を繰り返し疲労が蓄積されたのでしょう。
半田をやり直せば問題はなくなります。
何度も繰り返してクラックがでるようであれば放熱対策をするのが
ベターでしょうが、とりあえず現状ではこれで収めます。

問題になったのは次の写真。黒い絶縁チューブを被った白い導線。
DSCN3878C

これは出力トランスから出ている線ですが、どこにも接続されていません。
作業中に基板に装着している導線が切れる、ということはよくあることですので
最初はそれかと思いました。
「シャーシ開けた時にしっかり写真を撮っておけばよかった」
後悔しました。
ただ導線が切れた後が電源基板のどこにもないのです。
導線側の断面も千切れた、というよりはスパッとカットしたような
綺麗な断面。
出力トランスからなので NFB のための線かと思ったのですが、
おそらく4Ω などの使っていないタップからの線だろうと結論付けました。

ただ疑問は残ります。
NFB は写真の白い線の真下にあるパターンにつながっています。
最初はこのパターン(なにも接続されていない半田のあとがある)に
白い線をつなげるべきなのかとも思っていました。
しかしヘッドフォンジャックとスピーカージャックを経由した
灰色の線が NFB としてすでに接続されています。
ここに接続する理由がない。
なので白い線はどこにも接続しないで(他の部分とショートしない程度に)
放置しています。
ところが問題なのはこの接続だと、ヘッドフォンジャックを使用した時に
NFB が効かなくなってしまう構成なのです。
これは狙ってこうしているのか、設計ミスなのか。
悩ましいところです。

いまのところヘッドフォンジャックは使っていませんが、
まともに動作しています。

(20201127 追記)
FLIP 2000MKII でも同様な白い導線が見つかりました。
やはり出力トランスからの線で、未接続のまま写真と同様の
黒い絶縁チューブを被せて、ヘッドフォンジャックにタイラップで
固定していました。未接続のままで正解のようです。

FLIP-1000 MKII の修理はほぼ10年ぶり。
趣味でギターアンプの修理を始めて間もない時期に一度入手しています。
そのころは回路図を採取して公開するなどということも考えてなかったし
真空管アンプが手に入ってラッキー、くらいしか考えていませんでした。
どのような修理をしたかも記録をとっていません。

シャーシの中身はこんな感じ。
DSCN3889A

小さなシャーシに電源+パワーアンプ基板、プリアンプ基板を収め、
さらにリバーブユニットをスプリングでシャーシに宙吊り。
ずいぶんと密度の高い配置です。

実はこの写真は修理完了後のものです。すでにコンデンサが交換してあるのが
わかるかと思います。
普段は回路図を採取する前に現状の写真をとるのですが、今回はうかつなことに
シャーシを開けたとたんに回路図採取作業にかかってしまいました。
それというのも手前にみえる電源+パワーアンプ基板(EPK-145) を取り出すには
どうすればいいかを考えるのに注意がそれてしまったため。
EPK-145 自体は4点のネジ止めなのですが、ネジの上に背面のジャックが
配置されており、ネジが外せたとしてもジャックを全て外さない限り
基板を取り出せません。
さらに電源トランスからの線5本が短くて基板から取り外さないと部品
の取り替え作業ができそうにありません。
また宙吊りのリバーブユニットがことごとく邪魔。
シャーシ内に手を入れるのを拒むかの如く。

気がついた時にはリバーブユニットをシャーシから外し、背面の4つの
ジャックと AC アウトレットを取り外し、電源線5本を外し、
450V 33uF の電解コンデンサを外したあとでした。

DSCN3860B

普段は回路図の採取が完了したあとに修理やメンテナンスをするのですが、
今回は回路図採取と並行して部品交換などを行うことにしました。


Guyatone FLIP 1000MKII の回路図を採取したので公開いたします。
DSCN3879A
6L6GC x2 によるプッシュプルと位相反転段の 12AX7 の真空管の
出力段と J-FET を使ったディスクリートのプリアンプによるハイブリッド
アンプ。CMOS IC 4016 が2個ありますが、単なるアナログスイッチで
回路を切り替えるだけなのでディスクリート回路と言ってよいかと思います。

Ver. 20200628 初出

Ver. 20201127 誤り修正


PNG :
電源 Power Supply

プリアンプ Pre-Amplifier

パワーアンプ Power Amplifier

PDF :


schematics GA-1000MK2.pdf

リバーブケーブルを交換しました。

DSCN3821A

市販のオーディオ用ケーブルです。
リバーブが動作しないとか効きが悪いとかの不調はケーブルが原因ということが
よくあります。新しいものに交換するに越したことはありません。
樹脂モールドの市販品を使うのはシールドや芯線が空気に触れないので
劣化が進みにくいためです。
また接触を改善するために金メッキのものを選んでいます。
プラグが L 型でないため装着した時に出っ張るのがタマにキズ。
以前 Twin Reverb に同様のケーブルを繋いだら、ぶつけて RCA プラグの
芯を折ってしまったことがあります。
ただ L型で金メッキでかつ樹脂モールド、となると手に入りません。
L型の RCA プラグを部品で買ってきてケーブルを作ったことも
ありますが、プラグ自体が出来が悪かったので以来使っていません。


さて、最後に落穂拾い。
次の写真は電源基板の 500V 33uF x 3 に隠れている部分。
DSCN3762

"GA-2000-1" の表示がありました。
 ということはこの基板は FLIP-2000 (GA-2000) と共通?
もっともトランスなど電源仕様が違うのでコンデンサの容量まで
共通ではないでしょうが。
実はもう一つのプリアンプ+位相反転基板にも "GA-2000-2" の
表示がありました。(写真はありません)
これも共通かもしれません。


さて FLIP 3000 のメンテナンスも完成に近づきました。
クアッドマッチの出力管として SOVTEK 5881WXT を注文して
到着を待ちました。真空管、高いなぁ。
6L6GC だけでなく、12AX7 あたりも在庫がなくなっているよう。
5881 は 6L6 互換ですが、6L6 の改良版 6L6GC に比べると
出力が少し小さいスペックになっています。バイアス設定も低めになります。
まぁ、そこらへんは妥協というもので。

ここ数日、FLIP 3000 でギターを弾いていて気づいたのは
グラフィックイコライザにハムノイズが乗っていること。
例の TL022 を 4580 に変えたことでグラフィックイコライザが正常に
動き出したのですが、イコライザのスライド抵抗を一番下に下げたり、
一番上に上げたりするとハムノイズが混入します。
それが6素子のすべてのバンドで、です。もちろん、ハムノイズの
高調波成分が強調されるのですが。
スライド抵抗を中央(0dB)に設定するとハムノイズが消えるので
最初は気づかなかったのですが、操作するうちに気になってきました。

グラフィックイコライザ部を取り出すには前面パネルに装着している
ポットなどの部品をすべて取り去らなければならないので面倒です。
ただ以前予定していたように、暫定的に TL022 の代替にしていた
4580 を TL062 に付け替える作業をするので、ノイズ対策も行いました。

前面パネルに取り付けられているポットやジャック類を全て取り外して

DSCN3783A

前面パネルを外すとグラフィックイコライザを取り付ける皿ねじが現れます。
これを外してやっとグラフィックイコライザ基板をとりだせます。

DSCN3784B

OP アンプを全て TL062 に取り替えます。

DSCN3787C

ノイズ対策のため、電源ラインを撚り対線にしたり、バイパスコンデンサを
OP アンプごとに設置したりしました。積層セラミックコンデンサの 0.1uF を
4ピンと8ピンの間に接続します。
現在だと当たり前のように行われる方法ですが、この時代は一般的ではありません
でした。もっとも 0.1uF のコンデンサがこれだけ小さくなった時代だから
当たり前になっているのでしょうけれど。

DSCN3789D

とりあえずの対策をして、グラフィックイコライザ基板をパネルに取り付け、
分解した順と逆にパネルに部品を取り付けて使用可能な状態に戻します。

ハムノイズは消えました。何が原因だったのか?と言われるとはっきりしません。
作業中にGND をプリアンプ基板とつなぐ線が切れたので、GND の
接続が不安定になっていたのかもしれません。
ノイズ対策は怪しげな点を一つずつ潰していくしかありません。

このあと出力管を 5881 WXT に取り替え、バイアス調整をしました。
バイアス設定でアイドリング電流が 35mA より下がらないので、
少しだけ上げて 36 mA 程度に設定しました。

DSCN3792E

さて。これでほぼメンテナンス完了です。
ゲッターの減っていたリバーブドライブの 12AT7 も交換。
気持ち良いクリーントーンで鳴ってくれます。

あと細かいことですが、リバーブの RCA ピンプラグが接触不良を
起こしてリバーブが効かないことがあるのでケーブルごと交換したほうが
良さそうです。リバーブケーブルは市販のケーブルを使います。
自分で作っても良いけれど、長持ちさせたいので半田付けするよりも
樹脂でモールドしている市販品を使うことにしています。
これは明日買いに行くことにして、と。

本日はこれまで。

以前、回路図を公開した Guyatone ZIP-100 です。

実はあまり強い興味があった機種ではなく、すでに手元にはありません。
回路図を採取する際に撮影した写真を記録として残しておくことにします。

シャーシ内部はこのようになっています。

DSCN3245A

シングルスプリングのリバーブがシャーシに吊られています。
見えているのは電源部とパワーアンプ部。電力増幅用のトランジスタ
2SC2484 と 2SA1060 は冷却のためケースに直接取り付けられており、
基板の端のハトメにリードが接続されています。

反対側から見た回路は次の写真。プリアンプ部が見えます。
DSCN3244B

プリアンプ部は 2SK30A を使っており、NORMAL では3段、OVERDRIVE
では入力部にさらに1段の増幅段を付け加えています。GAIN コントロールは
OVERDRIVE 入力専用のコントロールになっています。

プリアンプ部は三極管 12AX7 を(定数は変わりますが)2SK30A で
入れ替えたような回路構成になっています。
トーンコントロールは定数もほとんど同じ Fender Tone Stack ですね。
そのためプリアンプ部の回路図を採取する際、とても楽だったと記憶しております。

バイアス調整をしました。
ちょっと引っかかってます。前々回に B電源電圧を測定したら 408V だった、と
書きましたが、本日測ってみると全体的に 50 V ほど高い!?
おかしいなぁ。テスター/マルチメータの読み間違いかとも思いましたが、
2つ以上の測定器で傾向が一致していたので、なにか電源関係のトラブルが潜んでいるの
かもしれません。とりあえず電源の回路図には本日測った電圧に変更しました。
ver. 20200616 です(電源回路のみ)。

バイアスを調整してアイドリングカソード電流を 40mA に調整しました。
と、4本の 6L6GC のうちの1本がカソード電流が流れていない( 0 mA) と
いうことが判明しました。

あ〜。6L6GC 4本交換確定。(- -;)
最近、真空管が高いんだよなぁ。コロナで輸入が止まってるのかなぁ。 

とりあえず、テスト用に確保している JJ の 6L6GC クアッドマッチを
取り付けて再度バイアス調整しました。
アイドリング電流は 40mA 。グリッドのバイアス電圧は -46.4V でした。
マッチングがとれていると他の真空管もアイドリング電流がきれいに揃います。
新しい真空管が届いたら交換して再々度バイアス調整します。う〜ん。

昨日の記事を書きながら思いました。
「なんでグラフィックイコライザに TL022 を使ってるんだろう」

FLIP 3000 の電源トランスには銘板もなく、外部からは
仕様が一切わかりません。そのためトランスからの紫色の線に
繋がれているグラフィックイコライザ用の電源基板の回路を採取しながら
比較的大きな電圧と電流容量を扱っているのだろうと予想していました。
リップルフィルターに 2SC495。1A まで流せます。
470uF 35V の比較的大きな電解コンデンサが3本。
11V 1mA を供給するためだけの電源とは思えませんでした。
電源基板は他の機種からの流用だったのかもしれません。

流用、という言葉でハッとしたのが、Guyatone の古いエフェクタに
6素子のグラフィックイコライザがあったのを思い出したからです。
というか、持ってました。引き出しの奥に。
Guyatone の古いエフェクタを集めていたことがあって、その頃の一台。

DSCN3780A

Guyatone PS-105。おそらく FLIP 3000 と同時期、1970年代後半の
グラフィックイコライザです。6バンド。周波数の設定も FLIP 3000 と
同じ 100, 200, 400, 800, 1.6k, 3.2k。
小さく見えますが、スライド抵抗の大きさもほぼ同じ。

そういえばこのエフェクタはジャンクで購入した後、手を入れていません。
基板の取り外し方がよくわからない(ねじがどこにもない)ので
そのままになっていたものです。

DSCN3781B

裏蓋を開けると部品面はこのようになっています。
基板を取り出せないのでこの面から想像するしかないのですが、
シミュレーテッドインダクタを構成する抵抗・コンデンサの
値や配置がほぼ同じです。
基板パターンを流用したのだと推測します。

OP アンプは4個。SN72L022P と SN72558P が2つずつ。
どちらも Texas Instruments (TI) の OP アンプ。
SN72L022P はおそらく TL022 の同等品だと思います。
SN72588P には MC1458 という記載もありますので、
1458 のセカンドソースかと思います。
このエフェクタの方が今回扱っている FLIP 3000 の個体より
古そうです。
 
PS-105 に採用したグラフィックイコライザの回路を FLIP 3000 に
流用したので同じ TL022 が使われているのでしょう。
コンパクトエフェクタだと TL022 (SN72L022P) を使うことで
低消費電力になり、電池寿命が伸びます。
写真には写っていませんが、このエフェクタ、電源は 006P の 9V 
電池だけです。そもそも AC アダプタなるものが珍しい時代の
製品です。電流容量の少ない 006P を長く持たせなければならなかったはず。
本来なら PS-105 に4個 TL022 を使うのが理想でしょうが、2個にとどめています。
SN72L022P (TL022) が高価だったのか、安定供給に難があったのか、
そういう理由だと思います。それでも電池寿命はかなり改善されるはずです。

PS-105 の回路のレイアウトや定数を参考にFLIP 3000 の
グラフィックイコライザを設計したのだと推測いたします。

FLIP 3000 だとTL022 を使う理由はあまりありません。
いまだったら同じ低消費電力の TL062 あたりを使うのが妥当でしょうか。
それでも R008 の 3.3kΩ にジャンパ線をつけておくのもカッコよくないので、
TL062 が届き次第取り替えてジャンパ線を撤去したいと思います。

FLIP 3000 のメンテナンスが終わりました。
2日かかりましたが、現在問題なく動作しています。

この個体は入手してから全く電源を入れてませんでした。
ヒューズを開けてみると 4A であるべきところが 15A のものが
ついていました。恐ろしい。前のユーザーがヒューズを飛ばした際に
取り替えたのでしょうが、規定の 4A のものを入れても何度も飛ぶので
大きいものを入れて使っていたとも考えられます。その場合、火災に
繋がるようなトラブルが起こる可能性があるので、安易に電源を
入れられません。電源を入れる前に危険な故障がないかチェックすべきです。

前回の記事の写真に見られるように特に危険そうな症状はありませんでした。
また 6L6GC を2本交換していること以外は修理や改造など手が入った
形跡はありません。
フルチューブアンプなので回路図採取はそれほど難しくはありませんでした。
グラフィックイコライザ部分は分解が必要でしたが、回路的には
定番のものなのでこれも問題なし。

問題だったのはプリアンプ・位相反転段の 9ピンソケットの金具部分が
割れていて交換が必要だったこと。ねじ止め付近が割れており、
真空管の固定ができない状態。
12AX7, 12AT7 全4本のソケットのうち3本に同様の割れがあります。
そのうち2つが2つのねじ止めとも割れており、真空管が導線に
ぶら下がっている状態。電極がシャーシに接触してショートしそう。
交換が必要でした。
DSCN3769C

ついでなので 9 ピンのソケットは全て交換しました。

とりあえず危険そうな部分はなくなったので、コンデンサの交換を行いました。
電解コンデンサの交換、高圧オイルコンデンサをフィルムコンデンサに交換、
熱によって変色した抵抗の交換等を行いました。

コンデンサ交換後の電源関係基板はこちら。
DSCN3767A

プリアンプ、位相反転段の基板はこちら.
DSCN3768B

グラフィックイコライザ基板は特に交換すべき部品はありません。

ここまでで問題がなさそうなので真空管を装着して音出しをします。
もちろんヒューズは 4A に替えています。
電源を入れて std-by を ON。
異音、異臭なし。よしよし。

グラフィックイコライザの効きが悪いなぁ。スライド抵抗に接触不良が
あるようです。スライド抵抗は入手が難しいので接点復活剤で対処します。

リバーブユニットはスプリングが2本とも切れていましたが、
何年か前にジャンクで入手した accutronics (型式不明) と入力出力とも
直流抵抗値がほぼ同一だったのでこれに取り替え。安く上がりました。

わかっていた問題点はほぼ解決できたので、試奏していると....
「ガサッ、ガサガサ」
不連続で突発的なノイズ。MASTER VOL を絞るとノイズの音量も小さくなるので
プリアンプ部で発生していることがわかります。
電圧増幅管は 12AX7 が2本、12AT7 が2本。
どれも交換すべき時期が近づいている状態なので、真空管から出ている
ノイズかと思いました。ところが用意していた新品と交換してみますが、
ガサガサノイズは消えません。

残った回路はグラフィックイコライザ。この回路に手を入れるとなると
前面パネルを外さなければならないので手間がかかります。
あんまりやりたくない作業。
とりあえず、グラフィックイコライザの部分をバイパスしてみると...
ノイズが消えました。
ということはグラフィックイコライザ部の OP アンプが怪しい、という
ことがわかったところで昨日は終了。

グラフィックイコライザで使っている OP アンプは TL022。それが4個。
昔からあるものですが、使ったことがありません。TI の OP アンプは
 TL082 (汎用), TL062 (低消費電力), TL072 (ローノイズ) の J-FET 入力
のものはよく使うのですが、TL022 は低消費電力ですが、J-FET 入力でも
ありません。
グラフィックイコライザの6つのバンドのうち4個のOP アンプが
どれもいずれかのバンドを担当する回路になっています。
とくに特徴のある OP アンプが必要というわけでもありません。
逆に言えば TL022 でなければならないという理由もなさそうです。
シミュレーテッドインダクタにボルテージフォロワが使われるので
5532 は避けた方が良さそうですが、それくらいか。
4個そろっていた方が良さそうなので、手持ちの OP アンプ から 
4580 を選びました。日曜日になってしまったので、地元のパーツ屋は
休み。これでダメなら月曜日以降。

朝起きて、めんどくさい前面パネルを外し、グラフィックイコライザの
基板を取り出し、 TL022 を4個取り外します。
DSCN3778E

ふだんなら OP アンプを一つずつ取り外しては電源を入れて症状を
確認し... というように犯人を探していくのですが、今回はいっぺんに
4個とも全部取り外しました。それもこれもめんどくさい前面パネルのため。
取り外した OP アンプのあとには 8 pin の IC ソケットを装着して、
4580 を4つ搭載しました。
う〜ん。ここまでほんとに朝飯前。

そそくさと前面パネルに部品をとりつけ、試奏してみました。
ん? 歪んでる。それもあまり Volume も MASTER も大きくしていない
状態で。ガサガサノイズは消えましたが、歪みがひどい。
クリーントーンが出ません。グラフィックイコライザもどのバンドも
効いていません。音質がほとんど変化しない状態。
音量も以前と比べて小さくなりました。
4580 ではまずかったのか? とりあえず TL072 か TL062 に交換する
つもりで通販で注文しました。続きの修理は次の週末かなぁ。

回路を採取して回路図を公開するまでにいちども電源を入れていなかったので
電源電圧が回路図にありません。電源電圧を測定することにしました。
FLIP 3000 の電源トランスには銘板も電圧表示もないので、どれくらいの
電圧がでるのか測定してみないとわかりません。
B 電源はいちばん高いところでも 408V。案外低めです。
グラフィックイコライザ基板に供給する電圧は....  2V ?
トランスから平滑して 2SC495 でリップルを除去しているところでは 11V。
R008 の 3.3kΩ で 9V も降下してる?
あ、そうか。
TL022 は低消費電力 OP アンプだから4個あっても 1mA も流れないのです。
これを 4580 にすると 30mA ほど流れるから、電圧が保てない。
とはいえ、とても 30mA も流せないような電源回路ではありません。
2SC495 は 1A は流せるし。
単に TL022 を使って省電力だから、と R008 に 3.3kΩ という大きな抵抗を
使っているわけですね。
ぢゃ、この抵抗いらないからショートしちゃえば 4580 でも OK なはず。
DSCN3772D

赤い導線でショートしました。
これで音出し。
をを。歪みがなくなった。ガザガザノイズもない。
音量が元に戻って真空管らしいブライトなクリーントーンが
出ています。グラフィックイコライザの効きもよくなりました。
よしっ!

とりあえずこれで様子をみてみます。
あとバイアス調整をしなければ。ま、これはのちほど。

FLIP 3000 は 6L6GC x 4 の出力段を持つフルチューブアンプ。
カタログによると出力は 120W 。

DSCN3736A
入手した個体の 6L6GC は2本バラバラに取り替えられている模様。
ゲッターも減っているのでそのうち4本とも交換することにしますが、
とりあえずこの4本で様子をみます。

シャーシの中を見ます。

DSCN3738B

6L6GC の周辺と電源部。左の大きい方の基板は真空管向け高圧電源。
基板の右下にバイアス調整用の可変抵抗が見えます。
右の小さな縦長の基板はグラフィックイコライザに供給する半導体用電源。

プリアンプ、位相反転段までを含んだ基板はこちら。
DSCN3740C
プリント基板ですが、片面基板です。部品がパターンと同じ面に搭載
されています。メンテナンスしやすそうですが、このパターンの
至る所に高電圧がある訳ですから、通電中の取扱は注意が必要です。

前面パネルに搭載されているジャック、可変抵抗、スイッチ、ネオンランプを
外すと黒いパネルを外せます。パネルで隠されている皿ねじを外して
やっとグラフィックイコライザが現れます。
DSCN3748D
スライド抵抗が6個。基板パターンがスライド抵抗で隠れているので
これを取り去らなければ回路を読むことができません。
やるしかないのか。
DSCN3749E
やっちゃいました。
う〜ん。一部パターンが剥がれてしまいました。銅箔がそれほど
厚くないようです。ただリカバーは難しくないですね。
裏面はこんな感じ。

DSCN3751F
TL022 が4個ついています。バンドごとにシミュレーテッドインダクタを
構成しています。

ちょうど今月のトランジスタ技術(2020年7月号)にグラフィック
イコライザの記事がありシミュレーテッドインダクタが解説されて
いましたが、それを見たのは回路の解析が終わって回路図を作成して
公開したあとでした。
グラフィックイコライザの回路の動作を理解したい方は必見です。

↑このページのトップヘ

ライブドアブログでは広告のパーソナライズや効果測定のためクッキー(cookie)を使用しています。
このバナーを閉じるか閲覧を継続することでクッキーの使用を承認いただいたものとさせていただきます。
また、お客様は当社パートナー企業における所定の手続きにより、クッキーの使用を管理することもできます。
詳細はライブドア利用規約をご確認ください。