長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

出力アンプは終段が SANYO 2SD1046 と 2SB816 のコンプリメントペア
による プッシュプル。写真のようにパワーアンプ基板 EPK-144 のラグ端子に
半田付けして接続されています。

DSCN3331F

出力 30 W くらいであれば、トランジスタの放熱はシャーシ底面に取り付ける
程度ですむようで特に大きな放熱フィンはついていません。
EPK-144 基板は FLIP-200F と共通な基板ですが、出力トランジスタペアと
R214, R215 の抵抗(耐電力)を変えるだけで各種出力のアンプに対応できる
構成になっています。

前面コントロールパネルにポットのボルトで取り付けられている
プリアンプ基板EPK-264B。
DSCN3340H

すべての回路の電源(B電源、ヒーター電源、パワーアンプ電源)が
電源トランス ETPV-80C の単一の2次巻線から供給されるため、
電源部がシンプルです。大きくて面積を取る平滑コンデンサ
(3300uF 35V x2)を別基板に外付けすることでプリアンプ部と
同じ基板に電源部をまとめています。
ダイオードブリッジによる平滑回路によって±30V を作っており、
すべての電源をここから供給しています。

DSCN3345K

プリアンプ部の 12AX7 のヒーター電源も上記の +30V から供給しています。
12AX7 の4 pin と 5 pin のヒーター端子(12V接続)に 100Ω 5W のセメント抵抗を
直列接続しています。およそ 0.15A の電流が流れるわけですから 4.5W の
電力を消費し、そのうち 56 % はセメント抵抗で熱になって消費されます。
エンジニアとしてはなんとももったいないと感じてしまう方法ですが、
回路がシンプルにはなります。

真空管の B 電源には±30V から ±20V を作り、あわせて40V を供給しています。
もちろん 12AX7 本来の使い方ではありません。
使えないわけではありませんが 12AX7 のデータシート
(例えば JJ  https://www.jj-electronic.com/en/ecc83s-12ax7-7025 )
の Eb-Ik  (Ua-Ia) 特性グラフに負荷線を引こうとしても引ようがない、つまり
まともな設計ができない領域での使い方です。
おそらく昔ながらの真空管アンプのエンジニアだったら採用しないであろう
回路方式で、製品化に際して社内で異論があったのではないかと推測します。

かなり間が開いてしまいましたが、H&M Celestion の周辺を掲載します。
実は回路図を採取してメンテナンスを施したあと、手放しております。
私自身としてはあまり気に入ったアンプではありませんでした。
そのため残っている写真も限られています。

とりあえず(以前投稿しておりますが)正面写真

DSCN3318A

操作部は HI, LO の入力と GAIN, VOLUME, TREBLE, MIDDLE, BASS, REVERB

DSCN3322C

MASTER,  SEND, RETURN, GAIN SW, (HEAD)PHONE, POWER。
DSCN3323DJPG

背面。

DSCN3319B

右に銘板がありますが、TOKYO SOUND の名前はありますが、 Guyatone の
ブランドはありません。
スピーカージャックの横に MIDNIGHT ジャックがあります。
深夜の練習のためにスピーカープラグを通常のスピーカージャックから
このジャックに差し替えて歪ませたままスピーカー出力を減少させるジャックです。
回路図を見ると拍子抜けするはず。スピーカーに直列に 1kΩ 1W の
抵抗を接続するだけのジャックなのです。
出力段がトランジスタなので、接続する負荷(スピーカー等)のインピーダンスが
大きい限りはトランジスタが壊れるようなことはありません。
トランジスタ出力がゆえに実現できた回路です。
出力が真空管+出力トランスでスピーカーを鳴らしているアンプでは使えない
回路です。(真似してはいけません。)

このモデルのセールスポイント Celestion G8L-35。
DSCN3325E

スピーカーは 8inch, RMS 20W, 8Ω の SP-2012。
 
DSC00132A

下に見えるリバーブタンクの内側は
DSC00134B

このようになっております。
作りからすると HOKUSEI 製のリバーブユニットではないかと思います。
スプリングは2本。
トランジスタ回路でドライブするため入力インピーダンスは高め。
入力、出力とも直流抵抗は 160Ω (測定値)。


プリアンプ部真空管(12AX7) + パワーアンプ部半導体という
組み合わせのハイブリッドアンプは1980 年代中盤に入って主流に
なります。Jugg Box などそれまでのタイプのハイブリッドアンプ
(パワーアンプ部真空管)はその後影を潜めます。
おそらく出力用真空管(6L6GC, EL34, EL84など)の安定供給が
難しくなってきたこと、出力トランスを省けないので小型化
軽量化が難しいことなどが挙げられるかと思います。

背面はこのようになっています。
DSC00161B
背面ジャックは左から Reverb Foot Sw. , O.D./NORM Foot Sw., LINE OUT,
HEADPHONE の4つ。Recording Model を標榜しているのは
LINE OUT ジャックを搭載しているからか?

ケース内部はこちら。

DSC00136D

半導体回路用の電源平滑用のコンデンサ(2200uF 35V x2) 専用基板が
中央部に見えます。汎用の蛇目基板を使っています。(今はユニバーサル
基板と言うんだよな。年がわかるぞ。)平滑用コンデンサを別基板(汎用)に
搭載するのは後年の H&M Celestion でも見られます。
上の写真ではプリアンプ部のポットのボルトを外しております。
この基板を裏返すとプリアンプ部の回路が現れます。

DSC00142E

FLIP-1000MKII と同様にCMOS-IC 4016 アナログスィッチで NORMAL と
OVERDRIVE のチャンネル選択をする構成になっています。
写真の基板右側に 14 pin の IC が2つありますが、それが 4016 です。
FLIP-1000MKII と同様、ディスクリート構成ですが、増幅素子が
J-FET でなく 12AX7 真空管です。FLIP-1000MKII の 2SK30A による
増幅回路を 12AX7 に置き換えた回路構成と言っても過言ではないと
思います。
また、OVERDRIVE チャンネルの回路は Guyatone の真空管エフェクタの
TD-1 とほぼ同じ。2段目の 12AX7 のカソード抵抗が違うくらい。
TD-1 は Guyatone の 1983 年のカタログに掲載されていますが、
FLIP-200F はその後の製品のようです。
特徴としては真空管2段目の出力をダイオードクリップ回路を介して
1段目のカソード抵抗にフィードバックさせていることです。
真空管回路ではギタリストが望む歪みが充分に得られないため
このような構成にしていると考えられます。

パワーアンプ部:
DSC00138C

ディスクリートによるトランジスタパワーアンプです。
回路構成は ZIP-100 で使われていた回路の定数を変更したもので、
パワーアンプ部のみを EPK-144 基板として分離したものです。
同じ基板が H&M Celestion でも使われています。

1980 年代のハイブリッドアンプです。
電源コードに記載された製造年が 1984 年。
これより少し前の機種が FLIP-1000MKII でプリアンプ部が半導体、
位相反転段+パワーアンプが真空管というハイブリッド構成
だったのが逆転します。
FLIP-200F ではプリアンプ部に 12AX7 x 2 を使い、パワーアンプは
トランジスタで構成されています。


DSC00158A

回路図
PNG:
プリアンプ Pre-Amplifier

電源+パワーアンプ Power Supply and Power Amplifier

PDF:


schematics GA-200F.pdf

プリアンプ部は操作パネルに取り付けられています。
入力ジャック、SEND, RETURN のジャックのボルト、4つのポットの
ボルトで固定されています。
DSC00086A
手前のスライドスイッチは EQUALIZER スイッチ。
トーン回路の一部のパラメータを変更するスイッチです。

パネルからプリアンプ部を取り外すと次のようになります。

DSC00093B

J-FET の 2SK163-M (NEC) は製造終了のようです。
ランク(-M) に拘らなければ 2SK163 は入手可能です。

今回はハーモニカアンプです。
Guyatone が営業を停止して以前の製品が供給されなくなりました。
ギターアンプに比べると出荷数は多くなかったとは思いますが、
ハーモニカアンプ HP-300A, HP-200BT が手に入らなくなったことを
惜しむハーピストは多いことでしょう。

今回は HP-200BT を入手できたので回路図を採取しました。
将来的には妹尾隆一郎氏が真空管周辺を設計した HP-300A も解析したいと
思います。(20211102 追記 HP-300A 回路図)

操作部と背面はこのようになっています。

DSC00076A

上面操作部は右から入力ジャック、GAIN, VOLUME, TREBLE, BASS の各コントロール、
SEND, RETURN のプラグが並びます。
TREBLE と BASS のコントロールは 0 ~ 10 の目盛ではなく、-10 ~ 0 ~ +10 の
目盛が付けられており、0 の位置で中点クリックがあります。
中点クリックのあるボリュームはちょっと特殊な部品ですが、
抵抗値はTREBLE、 BASS  ともに1MΩ A カーブです。(20200825 TREBLE, BASS 抵抗値訂正)
トーンコントロール回路はオーディオで使われる回路で、さすがに
Fender トーンスタックではないですね (^^;)
周波数特性等はいまのところ解析しておりませんが、このあたりがハーモニカ用に
工夫している部分でしょう。

背面操作部は右から LINE OUT, AUX IN, DC IN 12V, 電源 SW が並びます。
電源 SW は DC - OFF - AC で、 交流電源と直流電源の切り換えができるように
なっています。 HP-200BT はアウトドアでも使えるようになっており、
アンプ底面に単1電池 8 本が入る電池ボックスが取り付けられています。

バックパネルを外した写真がこちら。
DSC00081BJPG

8 インチ 20W 4Ω のスピーカーが取り付けられています。
トランスには ETPM-134 の型式が記載されています。 

電源部とパワーアンプ部の写真はこちら。

DSC00084C

奥にアルミシャーシに取り付けられた uPC1335V (NEC) がパワーアンプ。
入手難。これが壊れたら修理は難航することが予想されます。

Guyatone のハーモニカアンプ HP-200BT の回路を採取したので公開いたします。
上位機種の HP-300A がよく見受けられますが、この機種(HP-200BT)は妹尾隆一郎氏が
監修していないという話が以下のリンクで述べられています。

妹尾隆一郎公認サイト 2018

もっとも機種名が HP-150 となっていますが、誤記でしょう。

正面のプレートに「 The Harpist Junior」という名前が刻まれています。

DSC00070A

コードデートから 1995 年製造であることが伺えます。
発売が 1994 年ですから、発売間もないころですね。
ソリッドステートによるアンプで、出力段には uPC1335V というパワーアンプ IC が
使われています。またまた入手難です。

PNG :
プリアンプ Pre-Amplifier

電源+パワーアンプ Power Supply and Power Amplifier

PDF:



schematics  HP-200BT.pdf

以前取り上げた FLIP-400FJ とよく似た構成です。
大きな違いはやはり、Celestion G10L-35 が付いている点。

DSCN3891B
当時としては当然のことですが、made in England. 
あと、フラッシュの加減で見えにくくなっていますが、背面パネルに LINE ジャック
が追加されています。

DSCN3909C

回路での大きな違いは電源トランス。これだけだと言っても過言ではありません。
FLIP-400FJ の ETPV-92C に対して ETPV-76C が搭載されています。
すこし小さくなったよう。二次電圧の 200V は真空管用なので変わりませんが、
パワーアンプ用の電源電圧が変更されているようです。

DSCN3912D

FLIP 印の真空管 12AX7A 2本。中国製。

シャーシの中はこちら。
DSCN3913E
メインの基板の型式は EPK-300。
FLIP-400FJ と同じ型式です。未搭載部品や追加部品がないので、回路構成は
ほぼ同じであることが予想されます。実際、回路解析が終わっている時点では
電源部の数点、リバーブ変更に伴う若干の変更等の数えるほどの変更しか
ありませんでした。
回路解析作業中に切れやすいので 、写真中、トランジスタに繋がる線は基板のところで
前もってわざと切っています。どちらも左から赤、白、青の順に接続します。
DSCN3914F
メイン基板表面。とくに目立った違いはありません。



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