長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

とりあえず、次回予告ということで。

FLIP 2000 の修理も完了していませんが(リバーブ交換)、その後継機
である FLIP 2000MKII を取り上げます。
DSC00752A

1978 年のカタログ(Vol2) によると FLIP シリーズが ZIP シリーズと同時に
発表され、その先兵として FLIP 1000, FLIP 2000, FLIP 3000 の3機種が
発売されます。上記カタログには使用真空管についての記載が一切ありません。
80年代に入って、第2世代を示す Mark II を付したモデル、
FLIP 1000MKII, FLIP 2000MKII が発売されます。

FLIP 2000MKII は新開発の GHV-3 スピーカーを標準搭載し、
プロモーションに力を入れたモデルでした。

回路図の採取、回路解析はこれから行いますが、
FLIP 2000 や FLIP 1000MKII との比較を交えて解析できればと
思います。

FLIP-600FX は 80年代後半のモデル。この個体の製造は 1987 年頃。

DSC00382A

スイッチでクリーンチャネル(Normal) と歪みチャネル(Overdrive) を切り替える
タイプでそれぞれにトーンコントロールがあります。
Overdrive (O.D.) は Gain, Level, Volume の3ボリュームで歪みを作ります。

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背面には Speaker (8Ω), Ext. SP, LINE OUT, O.D./NOR FOOT SW, REVERB FOOT SW,
HEAD PHONE のジャック。
底にリバーブユニットが見えますが、"HOKUSEI" と刻まれていました。(とても見辛い)

背面パネルを外すと
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プリアンプ部に 12AX7 x 3, 位相反転に 12AT7, パワーアンプは 6L6GC x 2
によるプッシュプル。
リバーブのドライブと信号増幅はトランジスタのディスクリート回路で
行っているのでリバーブには真空管は関与していません。
この時期の Guyatone はいろんな機種で Celestion のスピーカーを搭載
しておりますが、FLIP-600FX では G12H-100 を使用しています。

シャーシの中を開けてみます。
DSC00405D
電源基板 EPK-223A です。
33uF 500V の電解コンデンサが4本並んでいます。
今回は修理・メンテナンスではなく、回路図採取のために基板をみているので
部品の交換等の作業は行いませんが、 耐圧 500V の電解コンデンサ、それも
アキシャルリードは入手が難しいのでいつもなら頭を悩ますところです。
稼働状態での電圧を測定しましたが、左の3本には +490V が加わっており
500V の耐圧のものを使わざるを得ません。 400V とか 450V なら
まだ入手が容易なのですが。

プリアンプ部の基板 EPK-293 はこちら。まずは Normal 側。
DSC00395E

Overdrive 側
DSC00397F

プリアンプ基板の中でも 12AX7 のプレート用電圧を平滑するための
電源回路があるので注意が必要です。 22uF 500V が2本。10uF 500V が
2本。電解コンデンサを交換するとなると結構出費がかかりそう。

Overdrive 側の写真中央に V1 の 12AX7 のソケットが見えます。
 12AX7 には3極管が2つ入っていて通常は独立に機能させるのですが、
V1 ではこの2つを並列にして一つの増幅素子として使っています。
この構成は FLIP-400FJ や FLIP-300FC の歪みチャネルの初段に
同様に使われています。3極管の一方が余ったから並列にしている、
という解釈をしていましたが、なんらかの意味があるのかもしれません。
このあたりは実験してみないと確認できないので、二の足を
踏んでいます。

定番の電解コンデンサとオイルコンデンサの交換をしながら細部の
点検を行いましたが、回路関係に大きな異常はなかったようです。

とはいえ、いろんな部分が痛んでおり、前面パネルのノブは全て交換。
オリジナルによく似たノブは秋葉原の門田無線から取り寄せましたが
そろそろこのノブも在庫限りか。
背面の電源スイッチ、前面のST-BY スイッチともレバーが折れていた
ので交換。
リバーブはスプリングが全部折れており、修理不能。
Accutronics の 4AB2C1B か 4AB3C1B のどちらかでしょうが、
新品を投入するかは思案中。リバーブはペンディング。
スピーカーも交換されていましたが、断線していたので廃棄。
手持ちの Roland のスピーカーを取り付けて音が出る
状態まで漕ぎ着けました。

これでやっと前面の写真を撮影できるようになりました。
DSC00452A

Guyatone のエンブレムがないことに最近になって気がつきました。

回路上は大きな問題もなかったので、電源 ON 後、音が出ました。
ただボリュームを上げても音が小さい。
V4 の位相反転段の 12AT7 のゲッターがほとんどない状態であることを
思い出し、手持ちの Electro Harmonix 12AT7EH に交換。

DSC00455B

なんとか(リバーブ以外は)正常に動作するようになりました。
バックパネルをどう処理しようか、頭が痛いところです。

本機の 上位機種 FLIP 3000 の回路を調べている時に、基板に
”GA-2000-1” (電源基板 EPK-134), "GA-2000-2" (メイン基板 EPK-133)の
記載があることを述べました。

http://juggbox.blog.jp/archives/6678943.html

ここで FLIP-3000 の基板は "FLIP-2000 (GA-2000) と共通?" と
疑問を残した形になっておりましたが、今回これを確認しました。

まずは電源基板。
DSC00367A

EPK-134 ですね。同じ型式です。やはり "GA-2000-1" の記載があります。
通常はこの部分は 500V 33uF の電解コンデンサが3つ並んでいて
この型式が目につかないようになっています。
回路や部品配置は FLIP-2000 も FLIP-3000 も同じようです。

メイン基板はこちら。
DSC00411B

この部分も比較的大きなオイルコンデンサで隠れているので確認しづらい
ところですが、やはり共通の部品を使っているようです。
FLIP-3000 の時はこの部分の写真を取り損なっています。
FLIP-2000 が製造されたのは 70 年代後半ですが、この機種は高圧コンデンサ
としてオイルコンデンサを使っています。高圧フィルムコンデンサに変更
するときにこの部分が露出します。

グヤトーンのこの時代の基板はちょっと特殊です。片面基板の銅箔側に
部品を搭載しています。回路図を採取する側としては基板を取り外して
何度も部品面と半田面(銅箔パターン)を何度も見比べるという作業から
解放されるので楽ちんなのですが、動作時にはこの銅箔に 400V 以上の
直流電圧が加わっていることを考えなければいけません。
EPK-133 基板のオイルコンデンサ 0.1uF 600V の交換作業途中の
写真です。
DSC00407D

コンデンサが横に配置されるわけですが、+475V の
パターンが下をくぐります。この少しあとの時代の基板だと緑色の
レジストが塗布されるのですが、この基板は絶縁されていません。
装着するコンデンサには絶縁皮膜があるのですが、安全のため
基板のこの部分の絶縁を確保しておきます。
今回は絶縁用に寺岡のポリエステルフィルム(黄色)
https://www.monotaro.com/g/00696859/
を使用しました。絶縁破壊電圧 6kV。一般の店舗では入手できません。
この絶縁テープの上にフィルムコンデンサを装着しました。
DSC00408E

フィルムコンデンサのリードにもエンパイアチューブを被せています。
このサイズのコンデンサだと絶縁テープがないとリードとパターンの
間でショートや沿面放電が起こりそうなのがわかると思います。

ちなみに FLIP-3000 の時には適切な大きさにガラスエポキシ材質の
ユニバーサル基板を切って貼り付けて絶縁を確保しました。
該当する部分が写っている写真はこちら。
https://livedoor.blogimg.jp/show_nagata-m8l9mwkz/imgs/7/8/78e2def3.jpg
なかなか手間がかかっていました。

80年代後半の Guyatone フルチューブアンプ GA-600F を知人から
お借りして回路図を採取いたしましたので、公開いたします。

本体には MODEL GA-600F としか記載がないため、 ”FLIP-600FX"が
妥当か少々自信が持てません。こんな機種です。
DSC00380A

ver.20201017 初出
ver.20201025 誤記入修正
リバーブユニット詳細追加(プリアンプ部)
電源電圧測定値記入(電源部)

回路図
PNG:

電源 Power Supply

プリアンプ Pre-Amplifier

パワーアンプ Power Amplifier


PDF:


schematics GA-600F.pdf

今回の個体はダメージが大きく、入手してから回路図採取に至るまで
時間がかかりました。
キャスターが取り付けられ、スピーカーは交換され、
リバーブユニットは取り外されたあと固定されてないし、
ノブがポットに接着剤で着けられて外れなくなっているし....
電源スィッチも ST. BY スイッチもレバーが折れてる。
外観上のツッコミどころ満載。
なのでいまのところ正面から写真を撮影しておりません。

いちばんの問題点は背面パネルの取り付けネジ。
普通の4mm の木ネジなのですが、4つが全部錆び付いていました。
ネジ頭だけが錆びているのではなく、ねじ山が錆びて木部に固着している
ため、ネジ溝を舐めた場合の対処くらいでは外れません。
仕方がないのでネジ頭をねじり切る、という方法で背面パネルを
外しました。4つのネジのうち1本だけはなんとかネジ全体が
外れましたが、他の3本はこの力技を使わざるを得ませんでした。

DSC00276B

写真は背面パネル取り付け部の左側ですが、上のネジはなんとか取り外せた
のですが、下のネジは木部に残ってしまっています。
背面パネルを再度取り付けるためにはこのネジを取り外すなどの処置を
しなければなりませんが、いまのところ良いアイデアがありません。

背面パネルに苦戦しましたが、これでやっとシャーシを開封できます。
外観上、かなり手が入れられていることがわかっているので
シャーシ内部の回路に改造が施されているのではないかと思っていました。
回路図を採取するのが目的の一つなので、回路がオリジナルではなく
修理やメンテナンス、改造等がなされていると目的が果たせません。

シャーシを開封。

DSC00282C

意外なことに、手がつけられた痕跡がありません。オリジナルの回路だと
判断しました。

DSC00284D

おそらく背面パネルが外せなくなったので回路を弄られなかったのかと
思います。シャーシにも錆が出ていますが、内部は埃も少なく回路的には
大きな問題はなさそうです。
この状態で回路図の採取を行いました。

どうも私はギターアンプのシャーシを開けてしまうと
スイッチが入ってしまうのか、現状確認のための回路の
写真撮影を忘れてしまうことがよくあります。
この FLIP-1000 でも40年以上前の製品なので、
手を加えられていない(修理や改造がされていない
オリジナルの)回路の情報は貴重です。なので、回路図の
採取の前に充分に現状の写真を残すべきなのですが。

プリアンプ部の基板 EPK-1000 の写真を示します。
すでにオリジナルの状態ではありません。
DSC00273A


DSC00272B

この個体は動作に問題のないものでしたので、回路図を採取したあと
全ての電解コンデンサを交換しています。ポットに赤い文字の番号が
ありますが、接点復活剤を使用する際に基板からポットを取り外した
時の整理のために記入したものです。

回路的には目だつ特徴はありません。J-FET 2SK30A を使った基本的な
ソース接地回路です。回路図を見ていただけるとわかりますが、
全ての 2SK30A でソース(S) と ドレイン(D) が反対に接続されています。
J-FET はこのような接続でも仕様通りの性能が出ることはよく知られて
おり、問題はありません。ただ回路の理解に誤解を生じさせることが
あるので、現代ではこのような使い方をすることはまずありません。
70年代後半の製品にたまに見られる接続でした。同時期の ELK Vesser シリーズ
でも同様の接続がされており、最初に Vesser 30 で目にしたときには
回路図の採取を停止してしまいました。のちに Vesser 60 でも同じ接続が
なされていたので「確信犯」だと理解したものです。
なおFLIP 1000 以降の Guyatone のアンプには頻繁に 2SK30A が使われて
いますが、ドレインとソースが正常に接続されています。
おそらくこの時期だけの特徴だと思われます。


メンテナンスが終了し、試奏すると美しいクリーントーン。
真空管らしいキラキラとした音が出ています。
結構気に入っています。

気になったのは本体を少し揺らしただけでもリバーブが
「ガシャン!」と大きな音を出してしまうことです。

DSC00265C

スプリングリバーブをひっくり返してみるとこんな状態。
2箇所にスポンジがついていた跡があります。
長めのスプリングが使われているので、ちょっとした振動でもスプリングが
リバーブユニットのアルミケースに接触すると大きな雑音が生じます。
それを防ぐために本来はスポンジを貼り付けてあったのですが、40年も
経過するとスポンジはボロボロ。シャーシ底部にゴミとして落下していることが
よくあります。
対策は簡単。新しいスポンジを代わりに貼り付けるだけ。
私がよく使うのはホームセンターで売っている「すきまテープ」。
厚さ10mm 幅 15mm のすきまテープを適当な長さに切って貼り付けます。

DSC00269D

これで OK。これを2箇所に貼り付けています。
写真ではスプリングがスポンジに接触しているように見えますが、
このリバーブユニットは下向きに設置するタイプなので、使用時には
垂れ下がってスポンジとは距離ができます。なので特に問題ではありません。

1978年頃の製造のハイブリッドアンプ。
当時はまだ国産の出力真空管が入手できていたためか、
プリアンプ部が半導体、出力部が真空管という構成のハイブリッドが
一般的でした。Jugg Box, ELK Vesser, Roland Bolt など。

FLIP-1000 は出力管に 松下の 6CA7 / EL34 を使用したシングル出力を
採用しています。平均出力 15W。
DSC00231C

シングル出力のアンプとしては Fender Champ が有名ですが、70年代以降の
国産アンプではあまり使われることのない構成です。
同じ 6CA7 シングルといえば同時期の Jugg Box Stuff 020G が挙げられますが、
それだけです。70年代以降、アンプのハイパワー化が進んだため、
効率の悪いシングル出力では分が悪かったのでしょう。
この機種の後継機であるはずの FLIP-1000MKII でも 6L6GC x 2 の
プッシュプル出力に変更されています。

シングル出力の利点としては回路構成がシンプルになる、カソードバイアスに
すれば調整箇所がいらなくなる、という点でしょうか。

DSC00233D

手前が電源+パワーアンプ基板の EPK-140 基板。
ドライブ段 12AX7 と出力管 6CA7 のソケットが直付けされています。
12AX7 の2つの3極管のうち1つは使用していません。
基板の右半分しか占有していないことがわかります。とてもシンプルです。

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EPK-140 の裏面。大きくて嵩張る電源平滑用電解コンデンサを部品面に
搭載しているので、こちらの面はとてもシンプルです。
右端にあるのが 6CA7 / EL34 のカソード抵抗 95Ω 5W 。

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