長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

FLIP-500 の回路について忘備録。

FLIP-500 の出力トランスの二次側の回路を示します。

FLIP-500_output

GA-1050D でも指摘しましたが、J6 スピーカージャックのスイッチが
GND に接続されています。スピーカープラグを抜くとスイッチが ON に
なり、短絡してしまいます。出力トランスおよび 6L6GC に大きな負荷が
加わるので故障のもとです。スイッチを無効にする配線に変更しました。
この問題は GA-1050D, FLIP-1000MKII でも確認されています。

Guyatone の FLIP シリーズでヘッドフォンジャックが搭載されたのは
FLIP-2000X や FLIP-1500 が最初で、FLIP-500 はそれらに続いて
搭載されています。
その後、FLIP-2000MKII や FLIP-1000MKII にも搭載されますが、
ヘッドフォンジャックにプラグを差すと NFB が無効になる仕様に
なっていました。
FLIP-500 では ヘッドフォン使用時も NFB が有効な配線になっています。
上の回路図で図の上に伸びている線が NFB の線で、ヘッドフォンジャックの
状態に依らない構成になっていることがわかります。
なぜ  NFB を無効にするのか謎な仕様だったわけですが(わざわざ)
そういう仕様にしたのが「改良」の結果だったと考えられます。
とすると、 ヘッドフォンジャックを使う時にはダンピングファクタを
低減する必要がないから、という理由が考えられます。
このあたりは他のメーカーのアンプでも例がないので考察が必要です。

回路図も採取し、電解コンデンサの交換も終了しました。

DSC00997P

回路図を採取しているので部品に異常がないことは確認しています。
ヒューズ(2A)が飛んでいたので、なんらかの異常があるはずなのですが、
特に問題はないように思えます。

ただ電源を入れると2秒ほどするとヒューズが飛びます。
回路に異常がないようなので、それ以外となると 真空管 が問題であること
があります。ためしに 6L6GC を抜いてみるとヒューズが飛びません。
6L6GC を JJ の新品に交換してみると... 正常に動作します。
あぁ、6L6GC の中でショートでもしているんだね。
それにしてもハム音がひどい。真空管が温まっている状態で
全コントロールをゼロにしても大きめのハムが出ます。う〜ん。
それに焦げ臭いというわけではないにしろ、背面から普通以上に熱気が
上がってくるのがわかります。6L6GC を見てみると、明るく光っている
のですが「赤熱」というほどではありません。

バイアス調整を行います。6L6GC のアイドリング電流を測定してみると...
170mA !!
 大きすぎます。それで6L6GC が高温になっていたようです。
バイアス電圧が -20V と非常に浅く設定されています。
あわててバイアス調整ポットを回し、アイドリング電流が 45mA に
なるように調整しました。その際にハム音がす〜〜っと小さくなりました。
過電流が流れていたため B電源が降下し、リップルが増えていたのでしょう。

FLIP-500 はバイアス調整ポットがユーザーの手の届くところにあります。

DSC01002Q

上は全ての調整が終了した状態ですが、画面中央、12AT7 の左側の銀色の突起が
バイアス調整ポットです。背面パネルを外すと簡単に目につきます。
これは危ない。なんだろう、とイジってみたくなる配置です。
発売当時トラブルが多発したのではないかと推測します。

以上でメンテナンス・調整が終了しました。問題はすべて解決。
スタンバイスイッチがないので、Power ON から真空管が温まるまでの
数分ほど待機時間が必要です。

真空管らしいブライトな音圧のある音が飛び出します。
スピーカーが8インチと小さめなためか、高音がちょっと強いように思えます。
ストラトのリアピックアップで Treble フルにすると耳が痛くなりそうな
高音が出ます。だからと言って音のバランスが悪いわけではありませんが。
新品の真空管に取り替えたので、もう少し安定するとまた感想が変わるかも
しれません。

Guyatone の真空管アンプシミュレータ FTS-1 の回路図を採取したので
公開いたします。 1990 年頃の製品。

DSC00979A

回路図

20210312 初出
20210320 電源部: 電源電圧測定値記入
プリアンプ部: (誤) 12AX7 -> (正) 12AX7A

PNG:

プリアンプ Pre-Amplifier

電源+ヘッドフォンアンプ Power Supply and Headphone Amplifier

PDF:


schematics FTS-1.pdf

背面パネルを外します。

DSC00952D

真空管のラインナップは松下の 12AT7 x 1 と日電の 6L6GC x 2。
入手した個体の真空管はおそらくオリジナルのままでしょう。
スピーカーは 8インチ。モデル名 GSG-200436。
諸元がわかりませんが、8Ω で 40W 以上であることは間違いないでしょう。

シャーシを取り出してトランス類を確認します。
まずは電源トランス。
DSC00966F
ETPV-25C という型式。これは FLIP 1000MKII でも使われています。
二次側の電圧や電流の諸元は書かれておりません。
LOT NO. の横の T と O を組み合わせたマークは
東静工業(http://www.to-ind.co.jp/) の製造であることを示しています。
(最近、トレードマーク変えました? > 東静工業)

DSC00964E

中心は SCH-002 チョークコイル。
右端はプッシュプル用出力トランス ETOO5P34。
これらも FLIP 1000MKII と同じ。

シャーシの内側、回路を見てみます。
DSC00958G

小型のシャーシに似つかわしくないほど大きな面積を占有している
電源・パワー部基板が見えます。見覚えのある基板です。
FLIP-2000MKII, FLIP-1000MKII でも使われていた EPK-145 基板ですね。
左から2番目のコンデンサの片足を外してみると基板の型番がわかります。

DSC00977H

FLIP-500 は FLIP-2000MKII, FLIP-1000MKII よりも先行して販売されて
いたモデルなので、 EPK-145 基板の採用はこのモデルの方が先という
ことです。
FLIP-500 の EPK-145 基板を初めて見た時に「あの基板!」という
感覚と同時に、違和感も感じました。違和感の正体は「電解コンデンサが
一つ足りない」ということでした。バイアス電圧電源の 47uF 160V の
電解コンデンサ、詳しくはバイアス調整ポットで調整した電圧を安定化
するための電解コンデンサがないのです。
FLIP-2000MKII, FLIP-1000MKII では基板に対して横向きに搭載されていた
電解コンデンサです。これらの機種で改良のために追加された部品なの
でしょう。

さて例によって過密状態の基板レイアウトですし、リバーブユニットが
シャーシに吊るされており、とても邪魔です。
リバーブユニットをずらすとなんとかプリアンプ部の回路が覗けます。

DSC00973K

DSC00972J

プリアンプ部は 2SK30A を多用した半導体アンプ。
基板自体はこの機種独自に設計したものでしょうが、回路構成は
FLIP-1000 や ZIP-100 に共通なもののようです。アナログスイッチを
多用する FLIP-1000MKII, FLIP-2000MKII とは異なる基板です。

基板の裏面は...
DSC00975M

基板の型式 EPK-147 の表示が見えます。
ポット類の半田付け部に半田クラックが散見されます。半田の質はあまり
よくないようです。ポットの取り付け部くらいは古い半田を除去して
付け直しすべきでしょう。

リバーブユニットは単一スプリングのシンプルなもの。
搭載スペースからするとこんなものか。
DSC00970N

電源ランプ(ネオンランプ)が外されているので、いまのところ
電源を入れていないのですが、FLIP-1000MKII と同等程度の性能と予想
できます。スピーカーが8インチ、リバーブが単一スプリング、という点が
劣るところですが、演奏してみないとわからない部分ですね。

FLIP シリーズが発売されたのが 1978年。FLIP 1000, FLIP 2000, FLIP 3000 が
最初にラインナップされました。
その後、1979 年のカタログには FLIP 1000 が消え、
FLIP 2000X, FLIP 1500 が加わり、次に FLIP 500 が加わります。

モデル名の数字が大きくなるほど出力が大きくなるので、
FLIP 500 は当時のGuyatone の真空管アンプの最下位機種ということになります。
ただ、FLIP 1000 が EL34 のシングル出力で15W であったことを
考えると 6L6GC プッシュプル出力 40W の FLIP 500 は FLIP 1000 よりも
上位機種と言うこともできます。
FLIP 1000 から FLIP 1500 (60W, 10 inch SP)に発展させ、
その下位機種としてコンパクトにまとめたのが FLIP 500 (40W, 8 inch SP)
ということなのでしょう。まだ FLIP 1500 の解析をしていませんが。
Jugg Box シリーズの Micro Jugg と同じ時期にリリースされており、
同じコンセプトのように思われます。重量 13kg という軽量は
なかなか魅力的です。

当初カタログには "mild FLIP 500" という名称が記載されていますが、
アンプ本体には "mild" の記載は一切ありません。
1978 年ごろ、最も売れていたタバコが 「セブンスター」から
「マイルドセブン」に変わった時期で、「mild」が時代を象徴するワードでした。
おそらく半導体と真空管のハイブリッド構成であることを
暗示していると考えられますが、カタログには明記されていません。

1979年のカタログから引用します。

---- ここから ---- 
mild FLIP500     GA-500  ¥49,800
真空管アンプの世界に "Mild" という全く
新しい音を実現した FLIP1500 の設計思想を完璧なまでに受け継いだ FLIP500。よりコン
パクトになったぶんだけコスト・パフォーマンスがアップしました。 FLIP シリーズおなじみのオ
ーバー ドライブ・チャンネル、3バンド・イコライザーを装備。80年代のアンプの在り方に
対する Guyatone の解答が、まさにこの FLIP500 にこめられています。
・平均出力:40W    ・スピーカー:20cm
・チャンネル:ノーマル x 1, オーバードライブ x 1
・コントロール:ボリューム(ゲイン、ボリューム、マスター)、イコライザー x 3、リバーブ x 1
・ラインアウト、ヘッドホン・ジャック装備
・寸法:335(W) x 315(H) x 225(D) mm    ・重量:13kg
---- ここまで ----

DSC00944B

前面パネル。
入力ジャックは OVERDRIVE と NORMAL。
3ボリュームと HIGH, MID, LOW の EQUALIZER、REVERB の
7つのコントロールが並びます。 
電源は POWER スイッチのみ。 Stand By スイッチはありません。
この個体は故障したのかネオンランプが取り外されていました。

DSC00950C

背面。
ヒューズは2A。
ジャック類は左から REV. FOOT Sw, HEAD PHONE, LINE OUT, SPEAKER
の4つ。LINE OUT は 10kΩ 0dB、SPEAKER は 8Ω です。

Guyatone FLIP 500 の回路図を採取したので公開いたします。

DSC00940A


回路図

20210309 初出
20210309-1 プリアンプ部 C11 修正
20210312 パワーアンプ部  修正  (誤) 12AX7 -> (正) 12AT7 
20210314 電源部+プリアンプ部 電源電圧 測定値記入


PNG:

電源 Power Supply

プリアンプ Pre-Amplifier

パワーアンプ Power Amplifier

PDF:


schematics GA-500.pdf

Guyatone のオーバードライブ OD-2 の回路図を採取したので
公開いたします。

正面はこのようになっています。Level と Drive のみでトーンコントロールの
ないシンプルな構成。

DSC00200A

底部のゴムパッキンを外すと底板が外れ、回路基板が現れます。
DSC00203B

コントロールのポット2つは二階建て基板に搭載され、フラットケーブルで
接続されています。
OP アンプは NJM4558L。シングルインラインパッケージ(SIP) でコンパクトに
回路がまとまっています。

DSC00205C

回路図を見ればわかりますが、ほぼ TS-9 と同じ回路です。
 TS-9 のTONE コントロール (20kΩ Bカーブ)を固定抵抗に置き換え
目盛 9 (90%) に固定した回路になっています。 


回路図

PNG: 

PDF:


schematics OD2.pdf

GA-1050D のメンテナンスが終了しました。
電解コンデンサ、オイルコンデンサは全て交換。
焼けて断線していたスクリーングリッド抵抗 470 Ω 1W x 2 を交換。
Master Volume, Volume x 2, Middle x 2, Tremolo Speed, Intensity
のポット、合計7個交換。
まだ仕様が明らかではない ヒューズ ながら 3A を装着。

ここで電源を入れて確認。
異音、異臭なし。正常。
ギターをつないで音出し確認。正常。

パイロットランプの断線を確認したので 6.3V 0.15A に交換。

各種電源電圧を測定。回路図 Ver. 20201217 に追加記入。

JJ 6L6GC のバイアス設定
Eb 463 V
Eg2 460 V

これより 32 mA ~ 48 mA の間にカソード電流を設定すれば良いので
40 mA になるようにバイアスを調整。 Eg1 = - 47 V。
バイアス調整も正常に動作することを確認。

ただし Sovtek 5881 で使うことにしたので、再度バイアスの設定。
この場合 25 mA ~ 36 mA の間に設定することになるが、
バイアス調整ポット VR001 を下限まで回してもこの範囲にならないので
37 mA で妥協。とりあえずこの状態で使うことにします。


Guyatone の REVERB シリーズは 1978 年のカタログによると
9年間販売されたロングセラーのようです。
何度かのマイナーチェンジがあったものと考えられます。
回路構成等は70年代の Fender Twin Reverb を(必ずしも
完全ではないけれども)模したものでになっています。
Twin Reverb は Black Face 期と Silver Face 期で出力以外の
基本構造はあまり変わっていないのですが、それでも数回に
渡ってマイナーチェンジしています。それを基準に模している
のであれば、9年間のうちに GA-1050D も何回かマイナーチェンジ
しているはず。
私の GA-1050D には MASTER VOLUME がついていますが、
Twin Reverb の Silver Face 初期(1970年頃)にはついていないわけですから
私の個体はそれ以降のモデルだと考えられます。

今回公開した回路図一種類だけでは "GA-1050D REVERB JAZZ" を
カバーできないということになります。
回路図の記事に寄せられたコメントによると最低でも3種類の回路が
あるようです。
機会があれば再度回路図の採取を試み、差異を記録したいと思いますが、
なかなか先が長いプロジェクトになりそう。

話は変わりますが、私の GA-1050D の個体で見つかった問題点・疑問点について。
同じモデル GA-1050D であっても該当しない場合もあるとは思いますが
次の3点について情報をお持ちの方はコメントをください。

(1) 電源ヒューズが不明
GA-1050D_fuse


私の GA-1050D には使用ヒューズの表示(〇〇A) がありません。
そのため回路図にヒューズの規格を記入できないでいます。
安全上極めて重要な項目ですので、無責任に推測の値を記入する
ことはできません。
困ったことに入手した時に着いてきたヒューズは極めて大きな
電流値のものでした。間違いなく交換されたものでしょう。

このヒューズの電流値が(推測でなく)明らかである個体を
お持ちの方、コメントをいただければ幸いです。

(2) スピーカージャック
私の GA-1050D は 15 inch Speaker と SPEAKER ジャックを介して
接続されています。このジャックが危ない。

GA-1050D_SPJack

スピーカープラグを抜くと 8 Ohm のタップが GND に
ショートしてしまいます。あぶねぇ〜。
出力トランスが飛んでも知らんぞ。
こんな仕様になっているアンプは見たことがありません。
何度もこのジャックを見直していますが、間違いありません。
私はジャックのスイッチ部と GND をつなぐ線をカットしました。

(3) リバーブ フットスイッチジャック
これも危ない。フットスイッチでリバーブを OFF にする
(短絡させる)と 12AX7 の出力が交流的に短絡になります。
GA-1050D_REVjack

このジャックはリバーブユニットの Output か、 REVERB ポットの出力
(2端子)に接続するべきです。


回路図を公開したので安心してしまいました。続編です。
リクエストもありましたので、リバーブ周辺を。

GA-1050D のリバーブは黒いリバーブバッグに納められて底面に
搭載されています。

DSC00886A

底面に段差があり、リバーブバッグの両側を2箇所ずつ「釘」で止めています。
くぎぃ〜?
釘抜きを持ってません (-.-;)
仕方がないのでちょっと力任せにリバーブバッグの釘周りを引っ張り、
穴を大きくしてバッグを底面から外します。
両側とも外すと面倒なのでリバーブの引き出し線が出ている(背面から見て)
右側だけを外し、靴下を脱ぐ要領でリバーブユニットを取り出します。

DSC00889B

Accutronics の 4AB3C1B が出てきました。リバーブユニットの底には
段ボールが貼られていました。

入力、出力とも直流抵抗値は妥当なものだった(値は回路図に記入済み)
し、特に異音がしなかったので今回は段ボールを剥がしての中身確認は
していません。

釘からリバーブバッグを外すともとに戻せないので、3.5 mm の木ネジで
リバーブバッグを留めました。釘を抜いていないのでちょっと斜めに
留めてしまいましたが。




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