長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Guyatone

資料がないので製造年等は詳しくは不明ですが、60年代後半から
70年代前半の製品と思われます。 
DSC01629A

入力は2つ、VOLUME, TONE, REVERB, TREMOLO の4つのコントロール。
VOLUME はパワースイッチを兼ねています。
TREMOLO は 0 のポジションで OFF になるようスイッチ付きで、
トレモロスピードのみ調整できます。この時代の他のアンプの例に漏れず
強烈にトレモロがかかります。インテンシティがないので、うっすらと
効果を加えるということができず、使い道に困るかもしれません。

DSC01630B
背面。
スピーカー口径は18cm。他にインピーダンス等の表記はありません。
スピーカー横に出力トランスが設置されています。出力3W 程度と
推測します。

DSC01634C

上部背面パネルを外したところ。
プリント基板でコンパクトに構成されています。
真空管は東芝の 12AX7A が2本と松下の 6BQ5 (EL84) が1本。
電源トランス横に40uF x 2 + 20uF のブロックコンデンサ(1本)が
あります。交換すべきですが、同じ容量、同じサイズのブロックコンデンサは
入手が難しいので、独立した電解コンデンサ(3本)で代替します。
基板上の抵抗はほとんどがソリッド抵抗(カーボンコンポジット)。
また無極性のコンデンサはオイルコンデンサ。
これらはすべて交換することになると思います。

DSC01641D

プリント基板裏面とパネル設置部品。
この時代の製品だとラグ板等を使った空中配線が主流ですが、
Guyatone は早い時期からプリント基板を採用していました。
修理・メンテナンスの観点からは部品交換に手間がかからない
メリットがあります。

リバーブは圧電素子によるシングルスプリング。


FLIP 500 は小型で軽量(10kg) なので持ち運びが楽です。
8インチスピーカーが物足りない気もするのですが、
外部スピーカーを接続できるのでそれほどデメリットとも
思えません。

唯一、不満があるとすると「リバーブ」。
スプリングが一本しかないためか、薄くて単調なリバーブに
なっています。なんとかならないものか。

FLIP 2000 や FLIP 1500 などリバーブが壊れたモデルが
ずっと修理待ち状態になっておりましたが、このたび一念発起。
これらのモデルのリバーブユニットを交換することにしました。

リバーブユニットをいろいろと物色しているうちに、aliexpress で
中国製のリバーブを見つけました。価格は¥2,197 (発注時)。
Accutronics - Belton のリバーブに比べると半額程度。
ただ驚くのはこれが送料込みの値段だということ。実質いくらの商品?
怪しそうだけど、ちゃんと動けばめっけものです。
モデル名が TPSB2EB2C1B。Accutronics の規格に準じた型式規則
であれば Type 2 (ショートタイプ、2 スプリング) で入力インピーダンス
600 Ω、出力インピーダンス 2250Ω。FLIP 500 や FLIP 1500 ならば
トランジスタでリバーブをドライブするので入力インピーダンスが
高めでも問題にはなりません。

んぢゃ試してみようかね、と発注して2週間ほどで到着。
その間に FLIP 1500 には中古の Accutronics 8EB2C1E を入手できたので
それを搭載。 FLIP 2000 には新品の Acctronics - Belton  4AB3C1B を
奮発しました。
残念ながらこれらの作業はまったく撮影しておりません。夢中だったもので。

到着したリバーブは FLIP 1500 に繋いで動作確認しました。
ちゃんと動作しました。悪くない、というかまともです。
Accutronics 8EB2C1E に比べると輪郭がはっきりした印象のリバーブ。
FLIP 500 に良く合うのではと思い付き、換装することにしました。

リバーブユニットは FLIP 500 のキャビネットの底部に取り付けることに
しました。

DSC01535A

M4 x 20 mm のタッピングビスで4箇所留め。
ここまで作業してリバーブユニットの内側を撮影していないことに
気がつきますが、時すでに遅し。
RCA ピンジャックは赤色が INPUT、白色が OUTPUT。
プラグの抜き差しに余裕があるよう(背面下部のパネルとの距離)配置に
気をつけて装着します。

さて、本体シャーシからリバーブケーブルを引き出さなければなりません。
シャーシ底部に1箇所、直径 9 mm のケーブル引き出し穴をあけます。
DSC01533B

FLIP 500 の場合、プリアンプ基板と電源基板の隙間がないため、
電源スイッチ後部のこの位置に引き出し穴を開けることにしました。
この穴にリバーブケーブルを通すのですが、ケーブルが穴のエッジで
擦れるのを防ぐためにゴム製のグロメットを取り付けております。

DSC01534C

DSC01537D

グロメットにリバーブ用ケーブルを差し込み、リバーブユニットへの
配線を行います。

FLIP 500 にもともとあったリバーブは取り外さずに残しておきますが、
配線は取り除きます。
リバーブの入出力端子は次の写真のようになります。DSC01541E

青いタンタルコンデンサの下にある3つのハトメがリバーブの
入出力端子。左から OUTPUT, GND, INPUT の順に並んでいます。
(上述の OUTPUT, INPUT はリバーブユニットの端子名に揃えています。)

この3つの端子にリバーブケーブルを接続します。なお、OUTPUT 端子には
Reverb Foot SW からのシールド線も接続しなければならないので、
半田付けがちょっと面倒です。仕上がりはこちら。

DSC01542F


これで作業は終了。リバーブユニットにリバーブケーブルを接続して
試奏します。
リバーブの存在感が増しました。従来のリバーブだと残響が単調で
演奏中にリバーブがかかっているか疑うこともあったのですが、
厚みのあるリバーブが得られています。リバーブのノブをいっぱいに
回すとピチャピチャという残響が聞こえますが、これは好みの問題でしょう。
リバーブはあまり効きすぎるとハウリングを起こすことがあります。
その場合はリバーブのコントロールポットに直列に抵抗を入れて
レベルを下げるなどの対処をしなければなりません。
今回のリバーブユニットは出力レベルも適正だったようで
ハウリングを起こすこともありませんでした。
なかなか良い買い物だったようです。

さてシャーシの中を覗いてみます。

DSC01389G

例によってリバーブユニットがシャーシの真ん中に吊られています。
FLIP 1000 や FLIP 500 ほどの密接配置ではないものの、回路に手を
いれるにはリバーブユニットが邪魔。リバーブを吊っているスプリングは
シャーシから以前外した跡があって簡単に取り外せました。
そしたらあれま。
DSC01393H
スプリングがない!
スプリングの振れ留めのスポンジも無くなっているので、リバーブが
壊れて手を入れたようです。この写真を撮った後、電源基板の下から
スプリングが一本だけ出てきました。
危なかったぁ! シャーシ開ける前に電源入れなくて良かった!!
おそらく2本あったスプリングの一方が切れて、残った一本で動かすように
取り付けたのだと思いますが、不充分な処置だったのでしょう。
残りの一本が振動で外れたのだと思いますが、再度外れると危険なので
このリバーブは使わないことにします。

リバーブへの配線を切って除去すると作業がとても楽になります。
改めて電源基板をみると、おなじみの基板であることがわかります。
電解コンデンサをひとつ外すと基板の型式がみえるはず...
DSC01400J
あ、やっぱり。EPK-145 だね。
なんども回路を探った、電源+真空管周辺回路の基板。
バイアス電源関係の定数が少し変わるものの、FLIP 2000MKII や
FLIP 500 と回路構成はほぼ同じでした。

次にプリアンプ基板。
DSC01402K

EPK-1000 の型式があります。FLIP 1000 と同じ型式です。
FLIP 1000 と回路構成がほぼ同じということ。
FLIP 500 とは回路構成は近いものの、 FLIP 500 では EPK-147 という
基板を使っていました。

DSC01404L
コンデンサがずいぶん交換されているようです。
同じ基板の FLIP 1000 の部品に比べるとコンデンサの容量値は同じですが
ところどころ定格電圧が大きめになっているものがあります。

FLIP 1500 は 1979年に発売されたハイブリッドアンプ。
1978年に誕生した FLIP シリーズのうち、FLIP 1000 の
後継として発売されたモデルのようです。

1979年秋のカタログから引用します。

---- ここから ----
mild FLIP 1500  GA-1500 ¥62,800
80年代の主流となるべく一味違
った先進の真空管アンプです。プリアンプ増幅段をはじめ、トーン回路、ドライブ段な
どは徹底的にマイルドトーンを意識した回路設計。真空管アンプ特有の柔らかな音に甘
さをプラスしました。 25cm S.D. スピーカー、 RMS 60W と迫力も十分です。もち論、 FLIP
シリーズおなじみのオーバードライブ・チャンネル、3バンド・イコライザーも標準装備です。
・平均出力 : 60W ・スピーカー : 25cm スペシャル・デューティー型。
・チャンネル : ノーマル x 1、オーバー・ドライブ x 1
・コントロール : ボリューム、ゲイン、マスター、リバーブ、イコライザー x 3
・ラインアウト・ジャック、EXT スピーカー・ジャック、ヘッドホン・ジャック
・ 寸法 : 455(W) x 390(H) x 250(D) mm ・重量 : 16kg
---- ここまで ----

前面のコントロール
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DSC01378C

背面のバックパネルを外した状態
DSC01382D
出力管 日電製 6L6GC が2本見えます。
奥に位相反転段の 12AX7 があるのですがそれは後ほど。

DSC01387E

電源トランス ETPV-24C。FLIP 2000MKII でも使われるものと同一型式。
右に見えるのはチョークコイル SCH-002。

DSC01388F

6L6GC に隠れて見えなかった位相反転段の 12AX7。
交換されたと思われる中国製がついています。
出力トランスは ETO 05P 30。
これも FLIP 2000MKII と同一。2000MKII では ET005P30 と読めたの
ですが、ET0 ではなくて ETO なんだね。

Guyatone FLIP 1500 の回路図を採取したので公開いたします。

DSC01370A

入手したものの、各種修理で手が入れられた個体のようで、
コンデンサが所々変更されていました。
FLIP 1500 という機種は FLIP 1000 (EL34 シングル)を 6L6GC 
プッシュプルに変更した機種で、FLIP 1000、FLIP 500 と
プリアンプの回路構成が同様のものになっています。
なので変更されたコンデンサの値も上記の2機種に準じるはず
ですが、とりあえず本個体についていたコンデンサの値を
記入しておきます。容量よりも定格電圧が変わっているようです。

回路図

20210518 初出
20210901 プリアンプ:基板型式修正 EPK-147 -> EPK-1000
20211031 電源:電源電圧測定値記入

PNG:

電源

プリアンプ

パワーアンプ

PDF:

VA-1000 のセールスポイントは 12AX7 を使ったプリアンプ部。
先の記事でも書きましたが、12AX7 の使い方が他の Guyatone の
アンプと趣を異にしています。
回路を見てみましょう。

tube
 B電源となる Vcc1 はヒーターを点火している直流 12V (実測10.4V)。
低電圧です。H&M も低電圧でしたが、それでも 40V をプレートと
カソードの間に印加していました。
おそらく80年代にTubeDriver (Chandler) などの エフェクタで 12AX7 を
9V 電源だけで動作させていることに倣ったのだと思います。
2段になった 12AX7 の三極管はどちらもバイアス電圧 0V で動作させて
います。このような構成だとグリッドに電流が流れ始め歪みやすくなります。
それを狙っているのでしょうが、この場合の歪みはブーミーで面白みに
欠けるものになります。ただ、この回路の前の段でダイオードによる
オーバードライブが構成されているので、 12AX7 の段は味付け程度の
歪みが加えているのだと思います。

また、12AX7 は Drive チャネルにしか使われていないため、 Clean には
全く関与していません。

トーンコントロールは基本的に変形 Fender tone stack です。
Contour という見慣れないコントロールがあります。
tone


私も回路図を整理してやっと意味がわかった回路。
シミュレーテッドインダクタによる単一のグラフィックイコライザです。
共振周波数は 950Hz。この構成だとこの周波数帯を増幅することも減衰させる
こともできます。この回路は Clean / Drive 共通です。
このシミュレーテッドインダクタによる共振回路は Drive チャネルの最初の段にも
搭載されており、同じ周波数帯を強調するようになっています。
この周波数帯を強調して歪みを作るのが VA-1000 の特徴のようです。


 

この VA-1000 も資料を持っていません。90年代の製品だと思いますが。
10年ほど前、やはり入手して回路図を採取しようとトライして
挫折したことがあります。その個体もさっさと売り飛ばしてしまいました。
ノウハウが溜まって回路図採取も容易になってきたので今回は再トライ。
ただ、前回のトライでも真空管 12AX7 周辺の回路は調べており、
30V 以下の低電圧で 12AX7 を動かしているということは理解していました。
その時は Guyatone のアンプを分析したのは初めてだったので、
「Guyatone のハイブリッドアンプは低電圧で動作させている」という
先入観を持ってしまいました。どちらかといえばこの機種が例外的に
低電圧だったということは本 Blog で公開している Guyatone の複数の回路図を
参照していただければ理解していただけると思います。
そういうことで、Guyatone のハイブリッドアンプ(FLIP シリーズ)に
対する先入観を払拭できた状態で改めて VA-1000 にトライすることに
しました。

前面の操作パネルには左から
INPUT ジャック、CLEAN VOLUME, CLEAN/DRIVE スイッチ、Drive チャネルの
GAIN, VOLUME, トーンコントロールとして BASS, MIDDLE, TREBLE, CONTOUR が
並び、HEADPHONE ジャック、Power SW が並びます。

背面はこちら。

DSC01272B

MIDNIGHT SW と SEND, RETURN が装備されています。
H&M で採用されていた MIDNIGHT ジャックが MIDNIGHT SW として
搭載されています。入手した時に試奏したら VOLUME をフルにしても
音が小さいので故障かと思いましたが、 MIDNIGHT SW が ON に
なっていたのに気づきました。注意が必要です。

Guyatone ブランドで 東京サウンド社が販売しているのですが、
背面に MADE IN KOREA の印刷があります。

DSC01275C

背面パネルを外すとシールドを被った真空管とスピーカーが現れます。
スピーカーには全く何の表示(インピーダンス、出力、型式)もありません。

DSC01276D

シールドを外すと 12AX7  MADE IN CHINA。おそらく交換されていないと思います。

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シャーシの中身はこのような構成。電源回路、プリアンプ、パワーアンプが
一つの基板にまとめられています。
基板から 12AX7 へはコネクタを通じて配線されています。

DSC01282G
ヒートシンクに取り付けられているパワーアンプは TDA2030A。
10W クラスのアンプ(VOX Pathfinder 10など)によく使われます。

基板にはシルクスクリーン印刷で抵抗やコンデンサなどの値がそれぞれ
印刷されていることがわかります。ただダイオードに関しては 1N4004 の
表記に対して実際には 1N4007 が搭載されているという違いがあるので
注意が必要です。

FLIP Tube Amp.  Simulator で FTS-1 だそうです。

真空管 12AX7A を使ったプリアンプで、この単体でスピーカーは鳴らせません。
ヘッドフォン専用のアンプ(4558 x 2) は装備しており、ヘッドフォンを
接続して演奏することは可能です。

前面には GAIN, VOLUME, BASS, MIDDLE, TREBLE のコントロール。
ギターアンプと同様のコントロールです。

DSC00979A

背面:
DSC00981B

SEND, RETURN の他、 ステレオでの LINE 入出力用 RCA 端子があります。

さて、これからシャーシの中の回路を見ていくことにしますが、
真空管 12AX7A の B 電源として直流 230V が電源から供給されています。
当然ながら感電の危険があります。回路に詳しくない方は絶対に
シャーシを開けないでください。

DSC00984C

真空管 12AX7A が見えます。ガラスにオレンジ色で型式(12AX7A)等が
印刷されていますが、この設置角度では"FLIP" と印刷されているのが見えませんね。
中国製の 12AX7A です。80年代後半から中国製真空管が使われるように
なっています。

コントロールポットのネジで固定されている手前の基板がプリアンプ+電源基板の
EPK-306.
背面に取り付けられている基板が LINE IN/OUT アンプ, ヘッドフォンアンプを
搭載している EPK-341.

EPK-306 の部品面を示します。
DSC00993D

INPUT ジャックからの信号は 4558 で電圧増幅され、トーンスタックを通って
12AX7A の三極管2段での増幅がなされます。さらにもう一段の 4558 で
電圧増幅を行っていますが、これは次段の SEND ジャックに充分な
電流を供給する役割もあります。

12AX7A には DC 230V の B 電源が供給されています。つまり真空管ギターアンプの
プリアンプ部と変わらない動作をすることになります。
このことが Tube amp. Simulator を名乗る理由です。

EPK-341 は次のようになっています。
DSC00986E

SIP の 4558 が3つ搭載されています。4558 の片方の OPアンプだけでは
ヘッドフォンを鳴らすための電流を充分には供給できないので2つの
OPアンプを並列に接続して電流を稼いでいます。


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