炎上トラブル対応の専門家です。レゴランドで顧客対応の不手際があった件について、同社社長による被害者への謝罪が「誠意が感じられない」「謝罪というより保身では?」と炎上しています。何が問題で、どう対応すればよかったのか、考察していきましょう。
経営者にとっていかに不本意であっても、「炎上」状態にあるということは、「不快に感じた人が一定割合存在する」ことに他なりません。その際は釈明や反論より先に、まずは「迅速な謝罪」から入ることが基本となります。最初に「ご迷惑をお掛けしたことをお詫びする」「不適切な点があったと重く捉えており、真摯に対応していく」という姿勢を示すことで、批判者側でも「その後の釈明を聞こう」といったスタンスにもなるはずです。
しかし今般の場合、迅速におこなったはずの対応が「拙速」になっていたうえ、社長の伝え方のせいでまったく謝罪になっておらず、却って被害者に「高圧的」「話もしたくない」と感じさせる逆効果になってしまいました。問題点は次のとおりです。
(1)最初に社長個人が直接DMで対応したこと
一般的にクレームはカスタマーサービス部門や広報部門が一次対応をおこなうもので、社長が出てくるとすれば最終段階での謝罪場面でしょう。「初手から社長本人が被害者にDMを送付」という時点で既に感覚がズレており、役割分担や指揮命令系統が機能していない組織であるように感じられてしまいますし、社長で対応をしくじってしまったら、その後挽回できる人が誰もいなくなってしまうのがリスクです。
(2)謝罪DMの内容が稚拙、かつ謝意が伝わらないこと
社長から被害者宛に送られたDMの内容が、謝罪文の体を成していないばかりか大いに不適切であり、被害者の心を閉ざしてしまう結果となってしまいました。しかるべき部門が対応していれば、言葉を慎重に選んで発信できたはずなのに、拙速に進めたことがマイナスに作用してしまったようです。
・「問題提起、ありがとうございます」
⇒被害者は問題提起したわけではなく、不快な思いをしたことを率直に述べたわけなので、まずは一連の経緯について謝罪から入るべき。
・「我々の対応が悪かったと思います」
⇒口語的な表現で稚拙な印象を与えるうえ、「対応が誤っていた」「不適切だった」と言い切らない点で、完全に非を認めたくないかのようなニュアンスが伝わってしまう。
・「別ラインでチームから連絡取らせて頂きます」「電話番号がわかりませんので、Twitterを通じてまずは連絡させて頂くと思います」「よろしくお願いします」
⇒高圧的で不躾な印象を与える。そもそも「別ラインでチームから」というのが何のことか不明であるし、本来「直接謝罪のご連絡を差し上げたいのですが可能でしょうか」と伝えるべきところ、「連絡するのでよろしく」という姿勢はあまりに一方的で失礼。
・「取り急ぎ、まずは私から謝罪」
⇒謝罪を「取り急ぐ」時点で、相手を適当にあしらっているかのような失礼な印象を与えてしまう。
・「99%のスタッフはいいスタッフです」
⇒いいか悪いかは客側が判断すること。そもそも割合の問題でもなく、「実際に被害者が酷い対応を受け、心証を害してしまった」ことが問題。組織の考えを客に押し付け、問題に向き合っていないように感じられるし、スタッフ側にも「何かトラブルがあったら『1%の悪いスタッフ』として切られるんだ…」と思わせてしまう。せめて「たとえ1人でも、そのような対応をおこなったスタッフがいたことは許されません」くらいの意思表明がほしい。
・「最後に我々に1度チャンスを」
⇒謝罪を受け容れてもらえるかどうか、という状況にあってこの要求はずいぶん厚かましい印象。
(3)Xで謝罪投稿するも削除、DM開示で保身疑惑を抱かれたこと
レゴランドで発生した一連の経緯にまつわる被害者の投稿を受けて、社長が謝罪投稿をすぐにおこなったところまではよかったのですが、その内容において「自身をクリアにする必要」を訴え、被害者個人に送付したDM内容を公開していたのは、あまりに自己中心的で、配慮に欠けていると言わざるを得ません。
しかも当該投稿は削除され、その後本件については何ら言及されていません。これにより、「消したということは、何かやましいことがあるんだ!」とばかりに、削除前より却って拡散してしまう「ケストフエールの法則」が発動してしまっています。
仮に詳細が不明で確定的なことが言えないとしても、
「この度お客様よりご投稿頂いている件につきまして、お騒がせしており大変申し訳ございません」
「現在社内調査をおこなっております。詳細が確認でき次第、お客様にはご報告のうえ対応させて頂きます」
といった形で投稿しておけばよかったですね。結果として現在、社長のXアカウントでは本件と無関係な投稿に対して「レゴランドにはもう行かない」といったネガティブなコメントが溢れてしまっています。
起きてしまった事態、そして投稿を削除してしまったことについてはもう仕方ありませんので、改めて本件にまつわる謝罪と、トラブルに至ってしまった原因究明および改善対処について説明し、今後に向けた前向きな宣言をおこなうことで挽回してほしいですね。
引用
滝沢ガレソ
@takigare3
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