王都
受付も、依頼受注、依頼達成、新人登録用、パーティー申請用、などなど分かれているが、それでも結構並んでいる。
いずれも複数あってそれなのだから、王都
時間帯の問題もあるだろうが、こうして見るとマルトとは全然違う。
王都から都落ちしてくる冒険者が少なくないのも頷ける。
ただ、あんまり辺境を舐めてかかってくるような冒険者はマルトですらもやっていけずに引退するか死ぬ羽目になるのだがな。
辺境は辺境で厳しいのだ。
「やっぱり、何度来ても活気が違うね」
オーグリーがそう言ったので、俺も頷く。
「マルトと比べるとなぁ……あそこも辺境にしてはそれなりの都市だ。閑散としてるってわけでもないんだが、王都と比べたらな」
「そうそう……マルトじゃ大抵の冒険者の顔くらいは知ってたけど、王都だと誰が誰だか分からないくらいだしね」
「そういうもんだろうな。なんとなく寂しい気もするが、それが都会って奴なのかもな」
「田舎者っぽい台詞だね」
そんな風に雑談をしていると、依頼の完了報告をするための受付が空く。
「おっと、じゃあ、行こうか。レント。カゴ、落とさないようにね」
カゴ、というのは
また中に入っている
捕獲したところで何度も俺たちが浴びせられたような水の魔術の刃を放つことが出来ないようにする特殊なものだな。
村を出る前にロレーヌが嵌めたのだ。
貴族からペット用に、という依頼が絶えないが、様々な段階で逃亡してしまうという困った奴でもある。
そしてそうなった結果、依頼料が減ったりすることもあるので、先んじてロレーヌが逃げないようにしておいたのだ。
少なくとも魔術さえ使えなければ、
王都の
魔物を捕まえることは容易ではないが、この状態なら、というわけだ。
「……はい、では次の方」
「本日のご用件は?」
「あぁ、この三つの依頼の達成報告だよ」
そう言って、オーグリーは依頼票の写しを手渡す。
マルトだと誰がどの依頼を受けたのかは
依頼票の写しを受注の際に渡されていて、それを提出することで何を受けたのか報告することになる。
これがなくても少し待てば調べることは出来るらしいが、かなり時間が無駄になるので写しを出してしまった方が早いのだな。
同じ
「ええと……
「あぁ、まずは……
俺が頷いてカゴを受付台の方に置くと、職員は頷く。
「……はい、確かに。ですが、これは
本来、採取に必要なビンなどと言った低廉で大量に購入できる物ならともかく、こういった捕獲系の依頼に必要な高価なものは
でなければ冒険者側に多大なる出費が要求されるし、そもそも受注それ自体に冒険者が委縮し、片付かなくなると言う現実的な問題もある。
魔物の動きを封じる魔道具の類は値も張るし、金を持っていてもどこにも売っていないなんてことはザラだからな。
だから
そのため、貸与される物品についてはおおよそ中程度の品質のものが大半で、しかもかなり使い込まれているものも少なくない。
その結果として、依頼の最中に破損し、依頼を失敗してしまう、なんてこともある。
こういった場合にはそれが不可抗力によるものであるなら依頼の失敗について責任を問われることはないのだが、それを確定するために様々な質問や状況調査がされることも多く、極めて面倒くさい。
だからこそ、今回の依頼において、俺たちは貸与された道具の類は使うことなく依頼を終えた。
カゴも、首輪も、ロレーヌ手製の魔道具、ということだな。
そんなことをすれば一般的にはかなりの出費が要求されるのだが、ロレーヌは一流の魔術師であると同時に、極めて腕のいい錬金術師でもある。
魔道具の製作はお手の物で、今回のカゴも首輪もかなりお安く仕上げてくれた。
カゴの方は結構、彫刻など凝っているように思えるのだが、ロレーヌ曰く、型押しのようなもので簡単に仕上げたので見た目ほど手は込んでいないと言う話だった。
「うちのパーティーメンバーに錬金術師がいてな。そいつが作ったのものだ。あとで返してくれればそれでいい」
とはいえ、もちろん
本来の
このカゴと首輪についてもそのように扱ってもらえればそれでいい。
「なるほど、錬金術師の方が……。それにしてもこれは極めて出来のいいものですね。
カゴの中で、
たまにおっかなびっくりカゴの縁を触ろうとするが、やはりピリッ、と電撃が走るので諦めて寝転がる。
そんなことを繰り返している。
あまり大きなダメージを受けていないのは、ロレーヌがそのように作ったからだな。
あれでそこそこ動物は好きな女だ。
魔物とはいえ、むやみやたらに苦痛を与えるのは好みではないらしい。
実験のために必要なら何でもするんだけどな……その辺りの線引きは難しいところである。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。