なにぶん戦闘シーンって書いてて楽しいし筆が乗るので、めちゃくちゃ早く書けちゃいました。ところで今回ってFGOの生放送観ながら完成させたんですけど……あの、面々が本気でセルランの頂点取りに来てません?あれ。
さて、今回は一高vs二高の後編です。
無敵の鎧を持つ葉山隼人を、比企谷八幡はどう攻略するのか。
ちなみに作者は突破法を悩みながら書いてます。『仮面ライダーエグゼイド』でクロノスの攻略法が思いつかなかった制作陣ってこんな気持ちなのかな。
どちらが切欠か、それはもうわからない。誰も気にしない、誰もが忘れ去っていた。
「はははははっ!!!!!」
「っははははは!!!!!」
笑いながら激突し、大暴れを続ける2人。八幡が周囲の岩石を射出し地形を変えれば、隼人が自身の魔法によりそれを纏めて吹き飛ばし再び地形が変わる。控えめに言って大災害大激突である。……そして、その最大の問題は。
「うわうわうわ」
「幹比古、ここに居たら巻き込まれるぞッ!」
「えっ、あ、ああ!」
互いに移動しながら暴れていることだった。互いに相手のこと以外を気遣う余裕などなく、それ故に周りのことなどお構い無しになっている。
「っ、クソっ!」
そんな中、二高の選手の一人が八幡へと空気弾を放ち、隼人の手助けをしようとする。……が、しかし。
「うぜぇ──────頭が高い」
隼人の魔法の余波による砂の壁を吹き飛ばす片手間に打ち消され、心地好い極小の大戦争を邪魔された苛立ちをぶつけるかのように加重魔法を行使。頭部を地面に叩きつけさせられた。
「あっやべっ」
しかし、その加重魔法はすぐさま解除された。何せ結構デカめの隙である。それを見逃すような奴ではなく、隼人がすぐさま襲いかかってくる。それを砂嵐で視界を防ぎ対処する八幡。当然秒で吹き飛ばされる程度のお粗末な代物ではあるが……そもそも、その秒さえあれば充分なのだ。八幡のCADが光を放ち、隼人を暴風雨が襲う。
「『
土砂降り大豪雨と暴風で、周囲から視認できない隼人。……十数秒して、ようやく隼人の影が見えてきた。その姿は──────。
「……撥水加工してる?」
「してないが?(全ギレ)」
『鎧』によって降ってくる雨が全部弾かれた結果、なんか撥水加工されてるみたいな絵面になっていた。ぶっちゃけ結構滑稽である。
「……ん?」
「はあっ!」
ふと、何かに気付いた八幡。その隙を付いた隼人に顔面を蹴り飛ばされ、数十メートルほど吹き飛ばされた。咄嗟の硬化魔法によりダメージこそ少なかったものの、この一撃の衝撃により軽度の脳震盪を起こしてしまったのだろう。ややふらついている。
「……セカンドインパクト症候群*1は不味い」
そう呟いて自らの頭部にCADを向け、残った衝撃の緩和・中和を行う八幡。脳機能への干渉故に繊細な調整が必要となるため、隙だらけになることを余儀なくされてしまう。そのため、八幡が取った手段は。
「『フリクション・キャンセル』ッ!」
自身を中心とした上で自身を除いた一定範囲内の魔法の行使。隼人がそれすらも恐れずに魔法圏内に入り込んだその時──────
「……っ!」
「……っ、良し!」
どうにか応急処置を終えた八幡が立ち上がり、『フリクション・キャンセル』を解除。隼人が立ち上がる前に空気弾の雨霰を隼人とその周囲の地面に撃ち込み土煙を上げてその場を離れる。
「目標は……っ、あそこだ!」
自身の目標地点に辿り着いた八幡。隼人に向き直ったところで、数メートル離れたところに隼人が降り立つ。
「『
単純な波動は隼人に届かない。ならばどうするか。答えは……
「ッ、地面が……!」
隼人の
「……液状化現象かっ!」
「
地盤に強力な振動を叩き込み、先程『風来招雷』で地面に
「『
移動・加速の複合による液体操作魔法『大水害』と振動系魔法による冷却『大寒波』。その二つの波状攻撃により、隼人を大量の水で覆いながらそれを纏めて凍らせる。……が、しかし。
「はあっ!」
『鎧』の力でへし砕かれた。何せそもそもが『自身へのほぼあらゆる運動エネルギーベクトルの反転』なのだ。例え周囲を凍らせても、
「……手は、揃った」
比企谷八幡は、そう呟いた。
「……将輝。君ならあの魔法、どう対処する?」
「司波達也クラスの想子保有量であれば、『術式解体』で無力化する。だが……そうでない以上、葉山隼人自身に彼の干渉力を上回る出力で魔法を行使して打ち破るしかないな」
三高の天幕にて。将輝と真紅郎は一高vs二高の一戦を観戦しながら話し合っていた。
「逆に、真紅郎ならどうする?」
「……僕なら、『不可視の弾丸』で終わらせるかな」
「だろうな。あの魔法は『視認』出来ればいい。物理的な遮断がない以上、無敵の鎧であっても防ぐのは不可能だ」
準決勝でありながら、新人戦どころか本戦であってもそう見られない激戦を繰り広げる八幡と隼人を見て、改めて今回の『モノリス・コード』が一筋縄ではいかないことを再認識した2人であった。
「さーて」
「来週のサザエさんは?」
「マスオです。……じゃねぇよ。何日曜夕方にしようとしてんだボケが」
互いに軽口を叩き合いながら相対する俺と比企谷。……先程の『破壊の咆哮』とは違う、何らかの形で。俺はあいつがこの鎧を攻略してくると確信していた。そして、その上で俺は比企谷に勝つ覚悟を決めている。
「とりあえず、手は揃った。……攻略開始だ」
……来る!
「『
その言葉と共に、視覚と聴覚がやられる。……振動魔法による閃光と耳障りな音だ。おそらく魔法で再現した『
どさり、という音と共に
──────何で、倒れているんだ。……まさか!
「三半規管ッ!」
「
直撃して機能していない耳では、何を言っているのかわからない。だが、俺の知る比企谷八幡なら……更に詰めてくる!
「──────!」
次の瞬間、腹に何かが触れた。そしてすぐさま、腹部に押しつぶされるかのような圧力がかかり痛みが走る!
「ぐ、がああぁぁあぁっ!?!?!?」
葉山が痛みに叫ぶ。そりゃそうだ、何せ
俺が気付いた葉山の魔法『
一つは『音や光は防げない』こと。これに関しちゃ……防がないって言った方がいいか。周囲を知覚出来なきゃ何も出来ないからな。
二つ目の弱点は、『一定以上の速度にしか対応していない』こと。これもぶっちゃけ仕様だから仕方ないが……逆に言えば、『一定未満の速度の攻撃』であれば、こいつの『鎧』は対応できず素通りする!
だから『小通連』を伸ばし、さっきの空気弾の速度を参考に指定した速度……
「だが、これは時間稼ぎ!」
……そう。最後の弱点を突き、葉山を仕留めるための時間稼ぎでしかない。俺は小通連の硬化魔法を解除し、地表へと向かう。達也と幹比古は……っ、相手選手がぶっ飛ばされた!ほぼ勝ち確だが、それはそうとして
「追い炊きスタン食らってけ!」
立ち上がった葉山がこちらを視界に入れた瞬間に再度『閃響』を行使!今回はもう耳は放置して、目を可能な限り長い時間潰す!
「させる、かあっ!」
「っ!」
マジかよ、何で見えて──────
「……片目だけ瞑ったな、最優先で!」
片目潰して片目を守りやがった!これじゃあ視界潰してる隙にどうこうは無理だ──────いや、まだ手はある!
「はああああぁぁぁっ!!!」
葉山が回し蹴りを放つ。……ある程度の範囲を見込める、合理的な一手だ。だが!
「第一の弱点、『光と音に対応できない』」
それは第三の弱点をつくのに、
「第二の弱点、『一定以下の速度に対応できない』」
そう呟きながら、小通連の刃を伸ばし、弓の弦を引くかのように右腕を引き絞る!
「第三の弱点──────」
……それは。
「『足元を、カバー出来ない』ッ!」
CADによる突き技が、葉山の
「なっ──────」
返す刀で小通連を振るい、地についている方の足を打ち抜き体勢を完全に崩す!……だが、両腕はどフリーだ。ならば、こうするしかない!
「今出来なくてどうするんだ……『
「──────まだだ」
声が響いた。
「や、ら、せ、る、かぁぁぁっ!!」
俺の腹に、腕が振るわれる。
「マジ、かよ……最っ高だぜ、葉山ぁっ!!」
こちらに視線は向いていない。つまり、
「もっと激戦を繰り広げたかった。もっと楽しい戦いをしたかったが──────」
俺の、勝ちだ。
俺の指が、葉山のヘルメットに触れた。即座に硬化魔法を行使し、俺の手と葉山のヘルメットの相対位置を固定する。そして俺が腕を振ると同時に、俺の身体が葉山の『鎧』により吹き飛ばされた。……今気付いた。『鎧』の第四の弱点。
アレは『鎧』だ。『鎧』なんだ。
『鎧』は、身につける者を護るものだ。
それ故に……『
そのため俺の振り上げた腕が弾かれることはなく、ヘルメットは俺の手の中のまま、俺と共に葉山から弾かれたのだった。
「っ、隼人!」
「おい、気を抜くな!」
「……幹比古、頼んだ!」
「ああ!」
チームのリーダーであった隼人が落とされたことで、残った二高選手に衝撃が走る。それを見過ごすことなど万に一つもなく、達也はその場を幹比古に任せて二高のモノリスへと向かう。
「待て!」
「行かせない!」
「いや、行かせてもらうよ。『雷童子』!『土遁陥穽』!」
古式魔法『雷童子』を放つ幹比古。電撃が直撃し、筋肉が痙攣してしまい二高選手の一人が動けなくなる。そして『土遁陥穽』により視界を塞いだ上で地面の穴に落とし、もう一人の選手もその自由を奪った。その状態で妨害出来るほど……というか万全の状態であろうと達也の妨害は至難の業。それがろくに動けない状態である以上、不可能に等しいのだ。そして達也は二高のモノリスにたどり着き、無系統魔法により外装を解除。コードを打ち込んだことで……一高は、決勝進出を果たしたのだった。
「……つっかれたー」
仰向けに寝転がる。いや、マジで疲れた。動きたくない。でも決勝があるからなるべく早めに回復しとかなきゃ。
「……なあ、比企谷」
「んー……?」
ふと、葉山が口を開く。
「……一つ目の弱点は、俺がお前を視認して会話が出来ているから分かったんだろう。二つ目も、多分どさくさに紛れてゆっくりとした弾丸を放って察したんだろう。……三つ目の弱点は、どこで分かった?」
『強襲拒鎧』は、あらゆるものを弾く無敵の鎧であるが故に……
『……ん?』
あの時俺が気付いたこと。それは
そこで俺は考えた。『蹴りなども使用する以上脚部にもある程度の範囲はカバーされているが、
俺がそう語ると、葉山は突如笑い声をあげた。
「……はは。はははははっ」
「……」
「……あー。そりゃ勝てないな。万全を期したはずなのにな」
葉山はそう笑って、言った。
「……無敵も最強もあってもな、完璧だけはこの世には無いんだよ。俺にも、お前にもな」
俺はそう言って、控え室である天幕に戻るために体を起こす。
「……比企谷」
「……何だよ」
「勝てよ」
「……誰に物言ってんだよ。ったりめーだろ」
俺は、その場を後にした。
天幕に戻ってきて。俺は備え付けの椅子を並べて即席のベッドにしながら今にも寝こけそうになっていた。
「……八幡、大丈夫か?」
「なわけねぇだろボケがよぉ……」
葉山とめちゃくちゃドンパチしたせいで普通に疲れた。しんどい。眠い。寝ていいかな。ダメか。……と、その時。
「決勝進出おめでとー!」
「黙れ殺すぞ」
「ひえっ…」
嬉しげな顔で入ってきた会長に脅しをかける。マジで疲れてるんだからでかい声出させないでください。
「……で、会長。どうしましたか」
「……一先ず、決勝進出したもう一つの高校は三高に決まったわ」
「でしょうね」
「ですよね」
「そりゃそう」
三者三様の反応を見せる俺たち。いや、あの二人が揃って八高みたいなさして強いのもいない雑魚どもに負けるなんて万どころか億に一つもねぇだろ。
「で、これを見て欲しいの」
そう言って七草会長が見せたのは、三高vs八高の映像。俺は眠気を強制的に払って意識を叩き起し、向き直って映像を見ることにした。
「……これは」
「……移動型干渉装甲、ですか」
そう。映像の中では、将輝が十文字先輩の『ファランクス』のような防壁を張って単独侵攻を行い、真っ向から八高の選手全員をねじ伏せていた。
「……八幡、どう見る?」
「ん?ああ。これ挑発だろ」
「やはりか。先程の葉山との一戦……『強襲拒鎧』の性質を見極めるためとはいえ、八幡の動きは撹乱や時間稼ぎの側面が強かった。おそらくアレは『小細工は通用しない』というアピールだろうな」
それ以外にないだろ。要は将輝は俺とのタイマンをご所望だ。
「……で、どうする?乗るのか?」
「んー……
「……ただ?」
「その前にやっときたいことがあるから、それまでは将輝の相手は達也か幹比古、頼んだ」
「「……」」
何も言えない二人であった。
オリジナル魔法
『
収束・放出による相転移・移動により大雨や暴風、落雷などの天候を操る魔法。正確には気象の擬似再現であり、気象そのものを操っているわけではない。流石に気象兵器として国際問題になる。
『フリクション・キャンセル』
放出魔法により摩擦係数を操作する。『
『
局所的に地震のようなものを引き起こす振動系魔法。
『
移動・加速の二系統を利用した液体操作魔法。簡単に言うと大波。出力を上げれば津波クラスの面制圧が可能。
『
振動系魔法による冷却・凍結魔法。広範囲を冷却出来るのが特徴。
『
魔法閃光手榴弾。ただし音などの波動の分野に極めて長けている比企谷八幡が使った場合、三半規管にすら影響を及ぼすほどの強力な音を発生させられる。