人物デザイン

人物デザインの創作現場から vol.13 ~ 悔いなく生きる ~

個性豊かな登場人物が一年にわたって数多く登場する大河ドラマ「どうする家康」。その登場人物ひとりひとりのキャラクターを際立たせているのが、着物、履物、髪型、ひげ、眉毛、化粧、武具、装身具……つまり扮装ふんそうです。登場人物全員の扮装を統括している柘植伊佐夫さんが、人物デザイン監修の立場から、キャラクター表現の可能性について語ります!

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柘植伊佐夫つげいさお 人物デザイン監修

1960年生まれ、長野県出身。「人物デザイナー」として作品中の登場人物のビジュアルを総合的にディレクション、デザインする。主なNHK作品は『龍馬伝』『平清盛』『精霊の守り人』『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』『岸辺露伴は動かない』『雪国』など。主な映画は『おくりびと』(08)、『十三人の刺客』(10)、『シン・ゴジラ』(16)、『翔んで埼玉』(19)、『シン・仮面ライダー』『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)。演劇はシアター・ミラノ座こけら落とし公演『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』(23)などがある。第1回日本ヘアデザイナー大賞/大賞、第30回毎日ファッション大賞/鯨岡阿美子賞 、第9回アジア・フィルム・アワード 優秀衣装デザイン賞受賞。

ごあいさつ

1年にわたるご視聴をありがとうございました。お声をかけていただいてから準備期間を含めますと2年余り、『どうする家康』に関わらせていただきました。2023年10月26日にクランクアップ、また12月17日に無事放送を終えることができましたことを心から感謝いたします。

私が初めて大河ドラマを担当させていただいた2010年『龍馬伝』の舞台は幕末でした。つづく2012年『平清盛』は平安末期。そして2023年『どうする家康』は戦国時代で、思えばすべて「乱世」です。こうしてみると「安寧な世」というのはとても稀で、貴重な期間なのだと心に沁み入ります。

大坂の陣で豊臣家が滅び徳川安寧の世は260年余り続きます。けれども家康はその時代の始まりしか見ていません。三河家臣団もほとんど家康よりも先に逝きます。私たちは後世の人間として徳川幕府の平和な時代を知っていますが、当人たちは確証のない思いで皆この世を去っていきます。

そのような事実に基づくドラマを通じ、さまざまな人生に触れ、人物デザインを作りながら改めて学んだのは、「悔いなく生きる」ということでした。人はいつまで生きどのように死ぬかわかりません。ならば目の前のことに誠心誠意あたり懸命にやる。悔いなく生きることへ純粋に取り組む。

『どうする家康』チームはそれぞれの立場や思いを背負いながら、制作の瞬間瞬間を悔いなく生きました。そのような機会を与えていただいたことにこれ以上の感謝はありません。ドラマを通じて少しでも熱意と希望が届いていましたら幸いです。皆さまからの多くの応援、本当にありがとうございました。

2023.12.17
人物デザイン監修
柘植伊佐夫

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