長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: ACE TONE / NIHON HAMMOND

ROCKEY のメンテナンスが終わりました。
ラグ板を使った「空中配線」のモデルのメンテナンスはこれまで
何回か行なっておりますが、今回は手こずりました。

無極性のコンデンサがほとんどオイルコンデンサ。さらに抵抗の
ほとんどがソリッド抵抗(カーボンコンポジット)。
配線材の絶縁皮膜が劣化していたり、表面がベトベトになっていたり。
これらの部品はすべて新しい部品に取り替えることにしました。
交換しなかった部品の方が圧倒的に少なかったのです。

もともとラグ板の端子に部品のリード線を固く巻きつけて半田付け
されているので交換する部品を取り外すこと自体が大変。
ラグ板1枚の部品交換に2時間程度かかることもあり、
ここ1週間のあいだ、断続的な作業が必要になりました。

本日、メンテナンスが終了した状態がこちら。
DSC01549A

入手したばかりの頃の写真と比べると違いがわかると思います。
DSC01445H

電源の平滑回路にはブロックコンデンサが3本使用されていましたが、
すべて廃棄。代わりにラジアル型の電解コンデンサ4つを使います。

DSC01551B

シャーシ底の丸い穴がブロックコンデンサ(3個)が取り付けられていた跡。
ブロックコンデンサの代わりをどうするか、どう固定するかは毎回のように
悩まされます。

メンテナンスが終わって試奏してみました。
60年代の国産アンプによくある縦長キャビネットのモデルでしたが
12インチスピーカーを搭載していることと、ある程度重量があるためか
低音もよく出ています。オーディオ向けのトーンコントロール回路ですが、
あまり効きがよくありません。音がちゃんと変化するのですが、使える音を
探すのが難しいです。TREBLE と BASS だけなので、MIDDLE を増強させたいなぁ。

60年代のアンプですから歪みに関する回路は一切ありません。
出力は 10 ~ 20W と言ったところでしょう。クリーントーンが気持ちいいですし、
ヘッドルームが大きいですね。

リバーブはスプリング2本なので残響が長く、リバーブらしく仕上がっています。
ただリバーブの音質が高音に寄っているようです。聞苦しいというわけでは
ありませんが。

トレモロもしっかり効いております。酔いそうなほどではないですが。
どういう曲調でトレモロを効果的に使うかはこのアンプに限らずむずかしいですね。

この blog に掲載しているアンプは回路図を採取したあと、
修理やメンテナンスを行なって動作可能な状態に復旧しています。
最近、回路図を採取する間隔が短くなってメンテナンスが追いつかない
状態になっております。何台か修理待ち。
なかなか ROCKEY のメンテナンスに取り掛かれません。
ちょっと時間がかかりそうです。

エーストーンのアンプによくあるヒューズがこちら。
DSC01458K
ヒューズソケットが2つ並んでおり、一方はヒューズが取り付けられていません。
これはヒューズを取り付けるソケットで商用電源電圧の違いに対応する
方法です。日本国内で使う場合は写真のように 100V の表記のあるソケットに
ヒューズ(2A) を取り付けます。米国などの 120V の国で使う場合は
100V のソケットのヒューズを抜き、117V のソケットに取り付けます。
ソケットが空いているからと、もうひとつヒューズを用意して
両方のソケットにヒューズを取り付けてはいけません。
ACE TONE Model 201 を修理した時に、わけがわからずヒューズを追加したら
ヒューズが飛びました。
商用電源電圧の切り替えスイッチをヒューズの取り付け位置で代用している
わけです。

さて、リバーブです。
DSC01460L
底部の背面パネルを外した状態がこちら。
白い紙で包まれている部分がリバーブユニット。振動が伝わらないように
スポンジで囲まれているのが分かります。
この状態ではリバーブを取り出せません。取り出すにはリバーブの上面を
覆っている木製の蓋を取り外します。
と言うと簡単そうですが、3点を釘で打ち付けられています。
小さな釘で、頭が小さいので引き抜くのに苦労しました。
で、やっと蓋が開いた状態がこちら。
DSC01463M

リバーブユニットを上に持ち上げ、取り出すことができました。
ユニットを包んでいる白い紙はちょっと厚手のキッチンペーパーのような
もの。埃除けのようです。とくに問題はなさそうなので無理に剥がしません。
ただ、リバーブの中の構造は見たい。

DSC01466N
リバーブの入力側。2スプリングのようです。
特筆すべきはリバーブの駆動方法が磁気式であることです。
コイルがあるのがわかるでしょうか。
これは意外でした。真空管アンプで磁気式ならばインピーダンス整合用の
リバーブトランスがあるはずなのですが、それがないのです。
てっきり Teisco Express5 のような圧電式だと思っていました。
おそらくコイルの巻き数を増やし、入力インピーダンスを増加させて
真空管でもドライブできるようにしたのでしょう。
リバーブをドライブするのは 6AQ8 三極管。プレート電流を 10mA まで
流せます。プレート抵抗には 10kΩがついており、これならリバーブトランスが
なくてもドライブできそうです。

圧電式だと思っていたので、あまりリバーブに期待していませんでしたが
興味が湧きました。どんな音がするのか楽しみです。

エーストーンの真空管アンプ ROCKEY (A-2S) の回路図を採取したので
公開します。


DSC01424A

回路図

20210605 初出
20210625 プリアンプ、パワーアンプ:誤り修正
20210626 プリアンプ、パワーアンプ:誤り修正
20210626A 全図:誤り訂正
20210706 プリアンプ:誤り修正

PNG:
電源部

プリアンプ

パワーアンプ

PDF:

入手して初めて見た感想は「でかい!」でした。
60年代のエレキブームの頃のアンプは縦長で奥行きが小さいキャビネットに
収まっているものがありました。
以前修理した ACE TONE model 201 や Guyatone GA-330D, つい最近の
Teisco Express5 などがそれにあたります。
軽量に作られているのは持ち運びに便利なのですが、低音にしまりがなく
迫力不足。5W 程度の出力という点も加味しなければならないのでしょうが。

この ROCKEY も縦長のアンプなので、入手前は上記のモデルより少しマシか?
程度にしか考えておりませんでした。
ところが予想に反して2回りほど大きいのです。45 (W) x 22 (D) x 56 (H) cm。
写真だけでは大きさは分かりません。
12インチスピーカーが搭載されているので、キャビネットも大きくなるわけです。
メンテナンスが終わっていないので、まだ電源を入れていませんが、
どんな音がでるか楽しみになってきました。

前面パネル
DSC01427B

DSC01428C

入力ジャックは3つ。NORMAL x 2 と TREBLE。独特です。
コントロールは VOLUME と TREBLE, BASS のトーンコントロール、
TREMOLO.D (DEPTH),  TREMOLO.S (SPEED) 、REVERB の
エフェクトがついています。
TREMOLO.D は TREMOLO の ON / OFF のスイッチも兼ねており、
ノブを0の位置に回すと OFF になります。

背面。
DSC01430D

左の窓にあるのは GROUND スイッチと AC コンセント。
右の窓には TREMOLO と REVERB のフットスイッチジャック。

DSC01435E

12インチスピーカーが搭載されていますが、型式や仕様が分かりません。
エーストーンのラベルを剥がしたい衝動に駆られます。
アルニコマグネットか?

DSC01434F
キャビネット底部にはリバーブと思しき木製の箱があります。
リバーブにつながる2本のシールド線が硬くなっているので交換する予定。
そのためにはこの木の箱を開けなければならないようです。

背面パネルを外すと
DSC01438G

右側面に貼ってあるのが、回路図。
真空管が6本使われているようです。
このままでは真空管の名称も読みにくいのでシャーシをキャビネットから
取り出します。
回路を探っている間はスピーカーケーブルとリバーブのシールド2本は
切断してキャビネットとシャーシを分離します。

シャーシ内部。
DSC01445H

当時の日本製の電子回路としては当然なのですが、「空中配線」です。
回路を探るにはそれほど面倒にはならないのですが、部品交換に
手間がかかります。
積年の埃を払わなければならないのはちょっと憂鬱ですが、
それはこの個体が修理や改造などで手を入れられていないということでも
あります。おそらくオリジナルのままの回路でしょう。

DSC01448J

真空管は全部で6本。
6BQ5 (EL84) のプッシュプルのようです。
写真右手前 V1 12AX7, 右奥 V2 6AQ8,  2列目手前 V3 6AV6, 2列目奥 V3 12AU7
出力トランスの奥にある背の高い2本が 6BQ5。

電源トランス、出力トランスとも仕様や型式の表示がまったくありません。


60年代のエレキブームの頃のアンプだと思います。
オークションでは比較的よく見かけるモデルなのですが、
あまり資料がありません。

DSC01424A

型式名は A-2S。 "Rockey" はその愛称のようです。
昭和41年の「初歩のラジオ」には「市販品のギター・アンプ」という
記事が掲載され、10社49種のアンプが取り上げられています。
私が見ているのはその復刻版「おとなの工作読本 2004 No.5 」
誠文堂新光社 2004年1月 (ISBN4-416-80353-2)。
エーストーンではマイティ6、A1-D "Fighter", A-2, A1-R "Elite", A2-R "Duet",
A3-R "Eroica" が紹介されています。
これらと同時期、あるいは少し後のモデルではないかと推測します。
昭和41年だと 1966年。55年前のモデルということになります。

いまのところ回路図は採取していませんが、明日以降に回路を探る予定です。
背面から見て右側面に回路図が貼付していることは確認していますが、
とりあえず詳しくは見ないまま、回路を探って公開可能な回路図を
作成しようと思います。

最近はトランジスタアンプの回路図を採取して公開しています。
回路図を採取するには回路構成がどんな機能を果たしているかをある程度
分析、理解しなければ回路図にまとめることができません。
トランジスタアンプは回路構成が小さく安価にまとめられるため、
性能が向上する代わりに回路が複雑になり理解が難しくなる傾向があります。
ただ複雑化する回路は集積化し、OP アンプなどの IC, LSI として供給され
新たな回路技術が進展していきます。
今回の G-15 は70年代後半のトランジスタ回路技術を使って
設計されています。この時代であれば OP アンプを使うという選択肢も
あったでしょうが、ディスクリート(個別部品)回路のこだわりが感じられる
回路構成です。

たとえば次のリバーブドライブ回路。

ReverbDrive

2石の増幅回路ですが、フィードバックが二重にあり難しい回路です。
もっともこの回路は2石トランジスタの当時の定番回路です。
トランジスタ技術 2006年7月号 p.142 に「典型的な2石直結回路」
として同じ回路が掲載されています。
もう14年も前の雑誌記事ですが、記事中にも
「『直結方式』が1960年代に台頭しました」
とあるように忘れられた回路構成のようです。
この回路は同じ ACE TONE の Mini-8 でも採用されていました。

ちょっと回路構成が変わりますが、 NPN トランジスタと PNP トランジスタを
組み合わせた2石直結回路がプリアンプ初段に使われています。

FirstStage


交流帰還にダイオードクリップ回路が入っており、ここで歪みを加えています。
回路構成としては Distortion というよりは Overdrive か?

この他にもパワーアンプ部に記述した差動増幅回路などディスクリート技術を
駆使して設計されていることが分かります。詳しくは分析しておりませんが
かなり複雑です。

電力増幅部(パワーアンプ部)は Mini-8 とほとんど変わりません。
このあたりは製造技術も含めて実績のある回路を使うべきなのでしょう。

ACE TONE のトランジスタアンプです。

同じACE TONE の mini8 は最初期のトランジスタアンプですが、
気に入っていて手放せません。今回はその後継機の G-15 です。
Jugg Box シリーズと同じメーカー(日本ハモンド)かつ同時期の製品なので
半導体部分について技術的な共通性を探るためにも解析を行いました。

背面パネルを外した状態がこちら。
DSC00108B

スピーカーには松下のマークが見えます。
同じ大阪のメーカーで、ナショナルブランドの電子オルガンを ACE TONE が
OEM 製造していた関係からか、(Jugg Box を含めて) 松下製の部品が
しばしば使われています。

DSC00117E
リバーブユニットには RE-4-13 の型式が印刷されており、入出力とも2kΩ のインピーダンス。
本体シャーシ底面の丸穴から覗いている白いノブは基板中の半固定抵抗 100kΩ。
リバーブの効き具合の調整用のようです。とりあえず触らないようにしています。
もしかしたらリバーブが効きすぎるとハウリングを起こすことがあるので
その抑制用途かもしれません。

DSC00150G

リバーブの中身は記述はありませんが ACE TONE の製品のようです。
DSC00111C

シャーシの中身はこのようになっています。

コンパクトにシンプルにまとめられています。
コントロール用ポットが基板と独立した配線で取り付けられており、
メンテナンスがしやすくなっています。
電源回路、プリアンプ、リバーブ回路、パワーアンプが一枚の
226-17201D 基板に収められています。

基板のアップはこちら。
DSC00113D

部品面に白いシルクスクリーン印刷で部品番号が記載されています。
後年の Jugg Box シリーズでも部品番号が記載されていない基板が
多く、部品を指定するときに困ることが多いのですが、この基板は
記載されています。
トランジスタアンプだと電源トランスと出力のコンプリメントペアの
トランジスタで出力電力値が決まるので、出力違いの他モデル(G-35, G-50)
にも基板を共通にすることができます。
そのためか基板上に未搭載部品があるのが目立ちます。おそらく
(G-35, G-50 には搭載されている)トレモロ回路でしょう。定数は
分かりませんが。

部品番号が印刷されて良くなったか、というとそうでもありません。
抵抗やコンデンサを基板に搭載されると部品番号が隠れてしまう所に
印刷されているため、回路を採取する時に部品番号を見るだけで苦労しました。
ほとんど製造時の便宜のためしか考えてないようです。
「C8 のコンデンサを交換してみて」などと言ってもどのコンデンサか
探すだけでも一苦労。
まぁ、そんな時代だったのでしょうが。

DSC00120F

出力トランジスタペアは 2SD234 と 2SB434 。
壊れても代替トランジスタには苦労しないとは思います。



日本ハモンドの ACE TONE ブランドのギターアンプ G-15 の回路図を
採取したので公開いたします。


DSC00095A

この個体のコードデートは 1977 年。
1978年の ACE TONE カタログには以下の記述があります。

G-15 25,800 円

・出力 / 15W (R.M.S) 8Ω 負荷・スピーカー30cm(8Ω) x 1
・コントロール部分 / ボリューム、トレブル、バス、ディストーション、リバーブ
・ノイズ / 20mV 以下・感度 / HIGH: 15mV、LOW: 45mV
・トランジスター x 13 ・ダイオード x 6
・外形寸法 / 405 (W) x 200 (D) x 470 (H) mm・重量 / 10kg・消費電力 / 25W


回路図
PNG:
プリアンプ Pre-Amplifier

電源+パワーアンプ Power Supply and Power Amplifier

PDF:


schematics G-15.pdf

もうずいぶん前(7、8年前)にアンプ部だけ回路図を採取していた
のですが、清書していなかった ACE TONE Mini 8 の回路図を公開
いたします。
公開するに当たって、リバーブとトレモロの回路を採取して図に
まとめました。

ACE TONE Mini 8 

DSCN3275A

PNG :
電源部+アンプ部

リバーブ+トレモロ部

PDF:


schematics Mini8.pdf

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