長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: ACE TONE / NIHON HAMMOND

13年前に所有していた5W クラスのアンプです。
IMG_2342a

私が真空管アンプをジャンクで入手して修理することを始めた時期。
すでに売却して手元にはありませんが、修理の際に回路図を採取して
いたので今回清書して公開いたしました。

当時の修理記録は mixi 記事1記事2記事3記事4に残っているので
詳細はこちらを参照してください。
当時は情報を持っていなかったので「1970年代の製品」と断じていますが、
1960年代と推測されます。

なお今回は当時の mixi に掲載していない写真を中心に Model-201 の記録を
残すことにします。

前面パネルには入力ジャック1, 2、VOLUME, TONE, TREMOLO, REVERB。
REVERB ノブが電源スイッチを兼ねています。
TREMOLO は frequency の変化のみで intensity は固定。やはりスイッチ付きで
トレモロが不要な時は0の位置で off にします。

背面パネルを外したところ
IMG_2247b

真空管は左から 6GW8, 6AV6, 12AX7。
6GW7 は三極管と五極管の複合管で三極管が 12AX7 相当、五極管が
6BQ5 (EL84) 相当のオーディオ用に開発されたもの。

電源部
 IMG_2249c
電源トランスとブロックコンデンサ (40uF 350V x 2)、ヒューズソケット。
輸出仕様なのか 117V の巻線があります。AC117V で使う時には
AC100V のソケットについているヒューズを外し、AC117V のソケットに
付け替えます。2つのヒューズソケットのうち一つだけにヒューズを
取り付けることに注意が必要です。

メイン基板。
IMG_2250d

オイルコンデンサとソリッド抵抗で回路が構成されています。

リバーブは圧電素子式のシングルスプリング。
IMG_2251e

確かこの個体はリバーブが正常に機能していました。

スピーカーと出力トランス
IMG_2254f

この時代のスピーカーには出力トランスを搭載することも多かったようで
スピーカー自体に取り付けのためのネジ穴がありました。
出力トランスの取り付けスペースが稼げるメリットもありますが、
高圧のかかった端子が露出するので触らない工夫をする必要があります。

基板裏面。
IMG_2256g

これ以前のアンプに比べて、プリント基板を使うことで空中配線が少なくなり
メンテナンスが容易になりました。

当時(13年前)、秋葉原では 6GW8 (ECL86) の ヒーター14V 版である 14GW8
(PCL86) が一本 500円くらいで販売されており、PCL86 を2本使った
オーディオアンプキットがいろんな店で売られていました。
ラジオデパート3階のサンエイ電機の店頭前の床に100本入りくらいの箱に
入れられてユーゴスラビア(EI)製の PCL86 が売られていたのを思い出します(当時の記事)。
6GW8 はすでにその頃から入手が難しかったので、Model-201 についていた
6GW8 は保存して PCL86 に付け替える改造を施しました。
ヒューズ直下のAC 100V から 15V 1A の ACアダプタを接続し、PCL86 の
ヒーターに供給するという改造でした。
プリント基板にヒーター電源を供給するパターンがなく、AC 6.3V を青黒の
より線で別途供給する配線になっていたので改造は容易でした。
でももう PCL86 も売っているのを見ることはなくなりました。
あの時もう少し多めに買っておけば良かったかなぁ。

Ace Tone Model-301 のメンテナンスが終わりました。
修理した跡のあったリバーブはやはり動作しませんでしたが、
アンプとしての基本機能及びトレモロは動作しています。

DSC03400A

12AX7 x 2 + 50H-B26 シングル出力なので回路規模はそれほど大きなものでは
ないのですが、経年劣化の激しい部品、電解コンデンサ、オイルコンデンサ、
カーボンコンポジット抵抗を交換対象にするとほとんどの部品を取り替えることに
なりました。

この回路は複数のラグ板を配置し、真空管ソケットとの間に部品を個別に接続
することで構成されています。プリント基板が一般的でなかったこの時代の国産の
電気製品(ラジオやテレビ)はこのような「空中配線」で配線されていました。
コンデンサや抵抗の自重をリードで支えなければならないため、ハンダ付部分も
厳重でラグ板の端子にリードを幾重にも巻きつけています。
なので部品をひとつ取り替えるにしてもリードを取り外すのに手間がかかり、
さらにラグ板の端子を共有する部品を全て取り外さなければならないため、
作業を完了するまで時間と手間がかかりました。
ギターアンプの修理のプロだと修理代とアンプの価格を天秤にかけて
修理を断る可能性が高いですね。

メンテナンス終了時点でのシャーシ内の全体。DSC03394B

大部分の部品を交換していることがわかります。

DSC03396C

電源部に使われていたブロックコンデンサは撤去し、100uF 200V の
ラジアルリードの電解コンデンサに交換しました。
倍電圧整流回路なので回路が少し複雑なため、ラグ板を使った回路の
配置に苦慮しました。

プリアンプ部
DSC03397D

オイルコンデンサはフィルムコンデンサに、カーボンコンポジット抵抗は
カーボン皮膜抵抗(1/2W)に交換しています。

DSC03399E

トレモロの SPEED コントロール(SW付 500kC)のスイッチ部分が壊れていた
ため、トレモロが効かない状態でした。
500kC のスイッチ付は特殊。500kB のスイッチ付ならギター用で入手も可能ですが
部品としては高価。ついでに今は旧盆。パーツ店も休業中。
手元に 1MA のスイッチ付があったので代用することにしました。
ポットの1-3間に 1MΩ の抵抗を並列に接続して最大500kΩにして使いました。
抵抗変化がほぼ A カーブになりますが、使ってみて違和感がなければ OK と
いうことにします。

DSC03401F

最後にスピーカーケーブルの交換。
4Ωのスピーカーが並列につながっていますが、出力トランス直付けでは
修理やメンテナンスで本体からシャーシを取り外すのに不都合。
中継ジャック(出力トランス側)とプラグ(スピーカー側)をつけて
取り外しできるようにしました。ついでにスピーカーケーブルも交換。

これでメンテナンスは終了。
長い作業でした。
50H-B26 シングル出力がどんな音をするのか聞きたくて。
幸い 50H-B26 は良好に動作しており、ハリのある音を出しています。
50H-B26 のシングル出力で 10W くらいでしょうか。6V6GT シングルより
大きな音が出ているように思います。
トーンコントロール回路はベース固定、トレブル可変の構成になっており、
ちょっと硬めな音になっています。 TONE を 12時にすると落ち着いた音に
なります。高音というよりは中音が良くでているため硬めな音になっている
のかと思います。
懸案のトレモロの SPEED コントロールは問題なく、スムーズに動作しています。
とりあえずこれでも OK か。

60年代から70年代初頭にかけての製品と思われます。
ベンチャーズブームの頃の資料に掲載されていません。
資料には A-1D や A-2R などが掲載されていますが
それ以前なのか、それ以降なのかもはっきりしません。
ただ エーストーンブランドでは Model-101, 201, 301, 601 というモデルが
存在したことは確かで、これらの機種はオークションで見かけます。
以前、 Model-201 を入手して修理したことがありますが、
その上位機種です。


DSC03258A
前面のコントロール。
入力ジャックは2つ。回路的には区別がありません。
VOLUME, TONE, REVERB, TREMOLO の4つのノブ。
TREMOLO は スイッチ付きで0の位置に合わせると OFF になります。
DEPTH は固定で SPEED だけ変化できる仕様のようです。

DSC03259B

背面。当時としては一般的だった縦長のキャビネットにスピーカーが2発。
並列に接続されています。スピーカーはアルニコのようですが型式等の
表示がありません。

キャビネットの板厚が薄く、軽いです。チルトスタンドが背面についており、
演奏時に角度をつけることができます。これは Model-201 にもありました。

背面パネルを外してシャーシを取り出します。
DSC03265C

作業をする間、真空管が破損しないようにソケットから抜きますが、
その前に真空管の名称をチェックします。指で摘んだだけで
真空管の表示が消えてしますことがあります。特に松下製は消えやすい。

出力管の 50H-B26。松下製。
国内規格の真空管なので入手難。これが壊れていたら修理が頓挫します。

DSC03266D

残り二本は 12AX7 でした。これも松下製。

50H-B26 のソケット。
DSC03270E
50H-B26 は MT 管を一回り大きくしたサイズで、 ST 管よりは小さい。
ソケットは9ピンですが、 MT 管とは違い特殊なものになっています。

DSC03272F

シャーシ内部。
う〜ん。空中配線ですねぇ。
電解コンデンサやオイルコンデンサ、カーボンコンポジット抵抗など、
交換対象がほとんど。メンテナンスの手間がかかりそう。一週間ほど
かかりきりになりそう。

DSC03273G

手前、リバーブユニットを開封してみました。
単一スプリングの圧電式リバーブでした。左の出力側に修理した跡が
あります。圧電素子を追加したような。動作するのかは未確認ですが。



エース電子工業の Model-301 の回路図を採取したので公開いたします。

DSC03254A

回路図

  20220712   初出
  20220713   V3  誤)  50H-B29 -> 正)  50H-B26
  20220815   電源部:C21 追加、電源電圧測定値記入
   プリアンプ部:C17 値修正 0.05uF -> 0.005uF
  20231002   電源部:C7 値修正 1000uF -> 100uF
     


PNG:
電源部

プリアンプ+パワーアンプ


PDF:

回路としては大きな特徴はありません。
TA7136 を使っていることといい、ACE TONE L-20 の回路と
よく似た構成になっています。

それでもこの機種の特徴を挙げるとするならば、初段の回路。

CHselect

OVERDRIVE 入力が通常のスイッチ付きモノラルジャックではなく、
ステレオジャック(スイッチなし)になっていること。
回路を探っている間は OVERDRIVE チャネルと NORMAL チャネルに
入力の違いがないので疑問に思っていました。OVERDRIVE ジャックに
モノラルのプラグを接続することにより R48 10kΩ が短絡されて
交流ゲイン(NORMAL では 3 倍)が約 50 倍に増大するようになって
います。OVERDRIVE と NORMAL のチャネル間の差を際立ったものに
しています。


80年代初頭のアンプだと思います。
OZ シリーズは 79年末に OZ-660 と OZ-660B のハイブリッドアンプが
日本ハモンドから発表されています。Micro Jugg が発売された数ヶ月後
のことです。OZ-340 はその後のモデルのようです。
この頃になるとエース電子から引き継いだ「ACE TONE」ブランドの
表示がなくなります。が、内部を見るとちょこちょこと ACE TONE の
文字が現れます。

DSC02741A
入力は OVERDRIVE と NORMAL。
VOLUME, MASTER, TREBLE, MIDDEL, BASS, REVERB と並ぶコントロール。
オーソドックスな構成です。
MASTER VOL. 以外に歪みに特化したコントロールはありません。

背面。
DSC02746B
スピーカーに貼られたギターに跨った魔法使いのイラストがファンキー。
OZ-660 もそうでしたが、注意書きが英語で記載されています。
輸出を意識したモデルだったのかもしれません。

DSC02748C

背面にはヘッドフォンジャック、LINE OUT ジャック、REVERB フットスイッチが
並びます。

DSC02782D

スピーカーは 10 inch。魔法使いのラベルの下にもっと詳しい仕様が
書かれているかもしれませんが、いまのところ剥がしていません。
よく見ると松下のマークがあります。

シャーシを取り出してみます。
DSC02777C
電源トランス。ACE TONE 307-01213 の部品番号が見えます。
一次側から見ていますが、 100V と 120V のタップがあることが
わかります。緑色の線が 120V のようですが、この線は未使用で
シャーシ内部で絶縁処理されています。やはり輸出モデルだったのか?

シャーシ内部
DSC02755D
ん〜。この感じ。Jugg Box を作ってた会社だねぇ。造りが似ています。
向きを変えてみます。
DSC02759E

松下製の薄紫の電解コンデンサ。Jugg Box を思い起こします。

DSC02769G

終段は 2SD718 x 2 のプッシュプル。
リバーブにACE TONE 315-05040 の製品番号。Micro Jugg などに
ついていたものとよく似た構造です。インピーダンスは違うようですが。

DSC02770F

で、やはり、というか。
プリアンプに使っているのがお馴染みのTA7136AP 。
この機種でも2個使っています。
これまでの機種と違うのは改良型の TA7136A になっていること。
修理した後もなかったので工場出荷時からついていたようです。

L-20 の背面。

DSC01599A

フットスイッチやラインアウト、SEND-RETURN も何もない至ってシンプルな
背面。
スピーカーは 12 インチ。カタログには自社製、と書いていますが松下のマークが
あります。型式 EAS-30P46SA。おそらく G-15 に付いていたものと同一。

背面パネルを外してみます。
DSC01604B

リバーブユニットはシャーシ底面に取り付けられています。
この状態で基板が見えますが、一枚の基板で構成されており、
シンプルにまとまっています。

DSC01607C

ん〜ん。シンプルながら Jugg Box のハイブリッドタイプを思わせる基板。
松下のコンデンサを多用しているので見た目(色合い)も似ています。

DSC01609C

部品が密集している部分なので撮影に苦労したのですが、SIP 7ピンの IC が
2つ並んでいるのがわかります。 Stuff シリーズや Micro Jugg でおなじみ
TA7136P。同じ IC を使っていますが、回路構成は異なっています。
L-20 では歪みに重点を置いているためか、TA7136P のフィードバックに
ダイオードクリップが加えられています。
Micro Jugg の Volume 1 に相当するのが OVERDRIVE。Micro Jugg だと
Volume 1 のポットに2番端子にフットスイッチが接続され、Volume 1 を
ON/OFF できるようになっていました。L-20 でも同様にフットスイッチを
接続するような基板パターンがあるのですが、実装されていません。
トーン回路はオーディオに使われるオーソドックスなもの。
定数も Micro Jugg のものとよく似ています。 

リバーブは2石トランジスタ増幅回路でドライブしています。他のメーカーの
アンプだとリバーブからの出力に電圧増幅を行なってメインの信号をミキシング
するのですが、リバーブポットのみを経由してミキシングされます。
このあたりの構成も Jugg Box シリーズと同様。
ただ Jugg Box シリーズだと入力 8 Ω のリバーブに拘ったためか、BA521 という
パワーアンプ IC (最大 5.4W)でドライブしています。拘る理由があったのか?

DSC01610D
 
終段のトランジスタは 2SD234 x 2 。 G-15 でも同じものを終段に使って
いましたが G-15 ではコンプリの 2SB434 とペアでプッシュプルを
構成していました。

DSC01613E

パワーアンプ部の差動入力は Q3 2SA798。PNP ペアトランジスタ。
製造終了ですが、まだまだ入手可能。

"ACE TONE" というブランド名で分類していますが、もともとの
エース電子での製造ではなく、日本ハモンドが製造していたアンプです。
DSC01598A

L-20 は ACE TONE ブランドの1980 年6月のカタログに以下の記述が
あります。

---- ここから ----
L-20 "ビッグ"なコンパクトモデル
26,800円

コンパクトなボディながら、新
しいノウハウを満載した "BIG"
と言わせるギターアンプです。
本格的トリプルボリューム、き
め細やかなサウンドが得られる
オーバードライブ回路装備、多
彩なバリエーションが楽しめま
す。ビギナーからベテランまで
思う存分使いこなしていただけ
るハイパフォーマンス機です。

仕様
■出力/20W(R.M.S) 8Ω負荷■
入力/1CH、2INPUT■感度/HIGH
:15mV、LOW:45mV(1kHz)■コ
ントロール/オーバードライブ、、
ボリューム1、マスター1、トレブル
1、バス1、リバーブ1■端子/ヘッ
ドホンジャック1■スピーカー/
30cm1(自社製)■消費電力/40W■
外形寸法/405(H)x455(W)x225
(D)mm■重量/10.5kg

---- ここまで ----

L シリーズのラインナップとしては L-20, L35, L-50、
ベースアンプの L-50B が掲載されています。

先に回路図を公開した G-15 は1978年のカタログに
掲載されていましたが、1980 年のカタログからは消えています。
同カタログで新発売となっていたのが OZ-660, OZ-660B 。

日本ハモンドのイメージ戦略なのか、これらの製品のカタログと
Jugg Box のカタログは明確に分離されており、L-20 が発売されている
同時期の Jugg Box がどのようなラインナップになっていたのかが
わかりづらいです。
Jugg Box 特に Stuff シリーズや Micro Jugg などのハイブリッドアンプの
半導体アンプ部分が日本ハモンドの他の製品とどのように影響しあって
できたのか、という点に興味を持っています。
以前解析したOZ-660 は Jugg Box のブランドを付けられなかった製品ですが、
Jugg Box の開発に密接に関わっていたと思われる点がいくつもありました。
そこで、日本ハモンドの当時のトランジスタアンプを解析して
Jugg Box との共通点などを探ってみることにしました。

G-15 では特筆すべき共通点はありませんでした。強いて挙げれば
Jugg Box の Stuff シリーズと Micro Jugg に使われていた
オーディオ用途のトーンコントロールが使われていることでしたが
定数等は異なっていました。

L-20 は販売時期が Stuff シリーズ、Micro Jugg と同時期なので
共通点もあるかと期待して解析に臨みました。
スピーカーグリルの布が Jugg Box と同一のベージュ色。
期待してしまいますね。

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