長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Jugg Box

OZ-660B のメンテナンスが終了しました。

プリアンプ基板 PA-66 を除き、電源基板 PS-101、パワーアンプ基板 PW-66 は
Micro Jugg と共通なのでメンテナンス方法は Micro Jugg のメンテナンスに
準じます。ただし、若干の差異があります。

DSC06758A

(1) PS-101 基板(Micro Jugg でのメンテナンス方法はこちら

60W の電源構成なので、電解コンデンサと抵抗の数と定数に違いがあります。
(Micro jugg は 40W)

  C1 100uF 350V,  C2 100uF 350V,  C3 33uF 350V,  C4 47uF 500V
  R1 150kΩ 1W,  R2 150kΩ 1W,  R3 3.9kΩ 1/2W,  R4 1.5kΩ 3W

このうち電解コンデンサ全部(C1~C4)とカーボンコンポジット抵抗 R3 を
新品に交換しました。
R1, R2, R4 の抵抗値は誤差範囲内に収まっていれば交換の必要はありません。


(2) PW-66 基板(Micro Jugg でのメンテナンス方法はこちら

最初に真空管ソケットの半田クラック対策を行います。
8pin ソケットの半田づけ部分を合計16ヶ所加熱します。

電解コンデンサと抵抗を新品に交換しますが、部品番号(C1 など) は
Micro Jugg などの機種の PW-66 基板にはシルク印刷されていますが、
OZ-660B では印刷がありません。回路図と Micro Jugg でのメンテナンス
方法を見ながら基板上の部品を特定してください。

電解コンデンサの交換:
C1, C10 : 47uF 63V x 2
C2, C9 : 47uF 6.3V x 2

抵抗(1/2W) の交換:
R11 820 kΩ
R14 100 kΩ
R17, R20 68 kΩ x 2
R18 330 kΩ
R19 680 kΩ

Micro Jugg のメンテナンスでは触れていませんが、EL34 のカソード抵抗として
カーボンコンポジット抵抗が装着されているのでこれも新品に交換します。

カソード抵抗の交換:
R3, R25: 4.7Ω 1/2W x 2


(3) PA-66 基板

電解コンデンサを全て交換します(11個)。
C126, C129 220uF 63V x 2
C127, C130 100uF 25V x 2
C128, C131 100uF 16V x 2
C104 220uF 6.3V
C119 47uF 6.3V
C106, C110, C115 1uF 50V x 3

ポット6点を基板から取り外し、接点復活剤を少量塗布します。
(ガリ対策)


以上のメンテナンスを行いました。
電源スイッチ、STD-BY スイッチ、入力ジャックの交換も適宜行うと
良いかと思います。


アイドリング電流測定(Micro Jugg での測定はこちら)

PW-66 基板にはバイアス自動調整が搭載されているので、
バイアス電圧の手動調整を行う必要はありません。
ただ自動調整が正しく動作しているかを確認する必要はあります。
PW-66 基板の EL34 のカソード抵抗 R3, R25 (4.7Ω) の両端の電圧(Vk)から
カソード電流(Ik)を算出し(Ik = Vk / 4.7)、無音時に120mA ± 20mA の範囲に
入っていれば正常に動作していると考えられます。

私の場合、上に示した写真のように真空管のピンに加わる電圧、電流を
計測する装置(自作、パネルメーターを3台使用)を使って測定しています。
これだとアンプのシャーシを開けずに測定することができるのが大きなメリット。
カソード電流の測定にはパネルメーターの分流抵抗 1Ω が与える影響と
誤差は小さいとは言えませんが、おおよその目安にはなります。
(正確にカソード電流を測定するには上記のカソード抵抗の両端電圧から
算出するのがベターです。)

今回の測定結果は次のとおり。
 共通の電源電圧条件

プレート電圧 Eb 454 ± 2 V
スクリーン電圧 Eg2 409 ± 2 V

  V1:  6CA7/EL34
バイアス電圧 Eg1 -26.7 V
カソード電流 Ik 134  mA

  V2:  6CA7/EL34
バイアス電圧 Eg1 -26.7 V
カソード電流 Ik 116  mA

V1 の EL34 のアイドリング電流が大きめではありますが
異常というほどではなさそうです。
ただしプレートが赤熱します。

DSC06760B

測定中の EL34 (V1) が赤熱しているのがわかります。
もっとも、カソード電流は少し大きいもののバイアス自動調整が
働いていることもあり、安定しています。
いまのところ熱暴走の兆しはないのですが、V1 だけの現象なので
そろそろ EL34 自体を交換する時期なのかもしれません。

OZ-660B のコントロール部。
DSC06644A

左から入力1, 2、 VOLUME、MASTER、TREBLE、
MIDDLE に関しては LEVEL と FREQUENCY、BASS の6つの
ノブが並びます。
TREBLE はプルスイッチで BRIGHT、BASS は DEEP の切り替えを
兼ねています。
コントロールはギターアンプ OZ-660 の 3 ボリュームが2つになり、
REVERB がない配置。
OZ-660 と同様、 MIDDLE のパラメトリックイコライザーも装備されて
いるようです。
パイロットランプの右には ST. BY スイッチと電源スイッチが並び、
右端には LINE OUT ジャックと HEAD PHONE ジャックがあります。

OZ-660B 背面。
DSC06656B

背面パネルのスリットから出力真空管2本が見えます。
このアングルからは見えませんが、背面パネルの奥に AC アウトレットと
電源ヒューズがあり、その規格(AC OUTLET MAX. 300W  FUSE 2A)を
示すプレートが付けられています。

通常であればこのアングルから内蔵スピーカーが見えるわけですが、
前述のバックロードホーンの密閉構造のため仕切り板があり、スピーカーが
見えません。

DSC06660C

背面パネルを外すと見えるシャーシ内部の回路。
な〜んだか見覚えのある基板がそこかしこ....

DSC06663D

出力真空管は松下の 6CA7 x 2。オリジナルでしょう。
このアングルでは見にくいですが、"6CA7/EL34" の記載があります。
ギターの世界では EL34 の方が通りがよいので、以降 EL34 と呼ぶことに
します。

Jugg Box シリーズでは出力管に 6L6GC が使われていました。
例外として STUFF 020G の EL34 シングルの構成もありますが、
プッシュプルの出力段をもつ機種では 6L6GC が搭載されています。

一方、OZ シリーズ(OZ-660, OZ-660B) では EL34 のプッシュプルが
採用されています。出力真空管による音質の差で Jugg Box シリーズとの
差別化を図ったのかもしれません。

電源トランス。

DSC06670E

DSC06673G

部品番号が 307-01193。一次側に 100V と 120V のタップ、二次側に
360V と 42V のタップが2つずつ、ヒーター用 6.3V のタップが
あります。
Jugg Box の 60W のハイブリッドアンプ、STUFF 060G, JBX-60、
および OZ-660 と共通の電源トランスのようです。

OZ-660 の記事でも書きましたが、307-01193 は EL34 x 2 の
構成でも使える容量があるようで、Jugg Box シリーズの出力管を
EL34 に変更する改造も可能であることを示しています。
(出力管まわりの回路定数の変更が必要。改造するなら自己責任で。)

出力トランス
DSC06672F

部品番号 307-03012。
これも Jugg Box シリーズの 60W アンプと共通のようです。
ONE, V-1, STUFF 060G, JBX-60, OZ-660 と幅広く使われています。

電源基板
DSC06676H

PS-101 基板です。
Micro Jugg, JBX-40, JBX-60, OZ-660 (Rev.1) と共通。

プリアンプ基板
DSC06679J

DSC06684K

PA-66 基板ですね。 部品番号 419-52056。OZ-660 と共通です。
OZ-660 の VOLUME1 に該当するポットと REVERB のポットが
取り付けられていません。回路が省略されていることがわかります。

PA-66 基板ということは...
DSC06687L

やはりこれよね。日立 HA1457W x 2。入手難のプリアンプ IC。
これが壊れたときの対処法は OZ-660 の記事ですでに公開しています。

あと入手が難しいのがパラメトリックイコライザのポット2つ。
DSC06689M

FREQUENCY の 50kC の二連ポットと LEVEL の中点タップ付き 20kB ポット。
C カーブの二連ポットはまず手に入らないので、これが壊れた場合は
周波数設定の使用感が変わるのを覚悟の上 50kB 二連に交換するしかないでしょう。

パワーアンプ基板
DSC06666N

DSC06697P

PW-66 基板。部品番号 418-24076 です。
ということはバイアス自動調整回路がついているということです。
これまで確認できている PW-66 搭載機種(改良版 418-24076e を含む)は
Micro Jugg, OZ-660, OZ-660B, JBX-40, JBX-60 の5機種になりました。
ベースアンプにまで搭載されているとは予想していませんでした。
未着手の真空管ベースアンプ JBX-100B にも搭載されてかもしれませんね。

これまで本 BLOG で取り扱った Jugg Box シリーズのベースアンプは
 BASS-100 と STUFF 060B の2機種。
ベースアンプに興味がないわけではないのですが、なかなか手が出ません。
一つには Jugg Box のギターアンプに比べて販売台数が少なかったため、
オークションやリサイクルショップに出回る機会が少ないのが理由。
もう一つの理由としては、ギターアンプに比べて図体のでかいモデルが
多く、オークションの場合送料が高くつくことと解体や保存に場所を
大きく取ることがあります。
実際、STUFF 060B を入手した時にはオークションでの落札価格がかなり
安かったにもかかわらず送料がその何倍にもなったし、修理中に部屋が
とても狭く感じられたことを覚えています。そのため不完全ながら
回路図を採取して修理完了後に早々に売ってしまったので写真も
残っていないわけです。

今回の OZ-660B も入手までに悩みました。落札価格と送料が同程度。
スピーカーの横にはバックロードホーンと思しき構造。
STUFF 060B もホーンがスピーカー下部にあるバックロードホーンでした。
OZ-660B はそれに輪をかけて大きそう... しかも真空管アンプ(ハイブリッド)
なのでトランス2つの分だけ重いはず...

実際、そのとおりでした。

DSC06645A

いつもアンプの撮影をする場所(2階)まで持っていくのを断念しました。
アンプ上部に取手が2つあるので持ちやすくはなっているのですが、
カタログ上の重量は 40kg。気をつけないと腰を痛めそう。
本体の奥行きが 40 cm とぶ厚く、狭い部屋でカメラとの距離がとれないため
全体像を撮影するのが困難。部分アップの写真ばかりになってしまいます。

バックロードホーンのホーン部。
DSC06701P

奥の方に長円のスリットがあるのが見えます。そこからホーン部が
手前になるにつれて開口しているのがわかります。

スピーカーグリルの右下「mounted.... !  HELL FLAME」というエンブレム。
HELL FLAME スピーカーを搭載していることを誇示しています。

その HELL FLAME スピーカー。
DSC06702Q

15 インチ(38 cm)。表からでもスピーカーフレームに塗られた
オレンジ色が目を引きます。
前面から M5 のネジ8本で固定されています。Jugg Box 同様、
鬼目ナットを使って固定しているので、ネジの取り外しには注意。
ネジがまだ完全に外れていない状態でネジを押し込んでしまうと
鬼目ナットが簡単に外れ、それ以降スピーカーを固定できなくなります。
Jugg Box シリーズでは何度かこの失敗をしているので要注意です。

注意深くネジを外し、取り出した HELL FLAME スピーカー。
DSC06708S

オレンジ色のアルミダイキャストフレーム。型式は SD-1508B。
OZ-660 に搭載されていた 12インチの HELL FLAME SD-1265
同様の特徴を有しています。
OZ-660B の場合、背面からはスピーカーが見ることができないため、
この姿を見たければ前面のネジを全て外すしか手がありません。

DSC06704R

スピーカーを外した状態でのキャビネット内部がこちら。
前述のバックロードホーンの長円のスリットが右奥に見えます。
背面の仕切り板でスピーカー部が密閉されていることがわかります。
仕切り板の外側に回路を搭載したシャーシがあるのですが、
2本のスピーカーケーブルを通す小さな穴でのみ繋がっています。
仕切り板に円形のバーティクルボードが貼り付けられています。
回路部への振動の緩和のためかと推測しています。

日本ハモンドの1979年発売のプリアンプ-半導体、パワーアンプ-真空管の
ハイブリッドのベースアンプです。
ロッキンf 誌では1979年10月号にギターアンプ OZ-660 と共に
広告が初掲載されています。定価 ¥99,800.

この頃、日本ハモンドは Jugg Box シリーズが好調で、前年の Stuff 060G,
Stuff 020G に続いて同年7月には Micro Jugg を発売しています。
1979年は国産アンプの当たり年で、YAMAHA F100, JX シリーズ や
 Guyatone FLIP1500, FLIP500, Roland Bolt-30, Bolt-60 などが
次々と発表されます。
このような状況のもと、OZ-660 と OZ-660B は Jugg Box シリーズと
区別された形で発売されています。

とは言え、開発チームはおそらく同じ。Jugg Box シリーズと共通の
回路技術や部品が多く使われています。なんらかの事情によって
「Jugg Box」のブランドに区分されなかったモデルなのかもしれません。
共通点も多く、Jugg Box シリーズの進展を知る上で重要と考え、
本BLOG の「Jugg Box」カテゴリに分類することにします。

1980年6月の ACE TONE (日本ハモンド)のカタログに掲載されています。

DSC06718A

以下、カタログから仕様を抜粋します。

--- ここから ---

仕様
■出力/60W (R.M.S) 8 Ω負荷
■入力/1CH、2 INPUT
■感度/HIGH: 6 mV、LOW : 18 mV (1kHz)
■コントロール/ボリューム1、マスター1、
 トレブル(プル・ブライト)1、
 ミドル2(レベル・フリケンシー)、
 バス(プル・ディープ)
■端子/ヘッドホンジャック1、
 ラインアウト1
■スピーカー/ヘル・フレイム(SD-1508B:38cm) x 1
■真空管/6CA7 x 2
■消費電力/120W
■外形寸法/670(H) X 620(W) X 400(D) mm
■重量/40kg

--- ここまで ---

Jugg Box シリーズでのベースアンプは年代順に
BASS-100, STUFF 060B, CB100, JBX-60B, JBX-100B。
OZ-660B は STUFF 060B と CB100 の間のリリースになります。
このうち真空管ベースアンプは BASS-100, OZ-660B, JBX-100B の
3機種のみ。
これまでBASS-100, STUFF 060B については入手して回路図を
採取・公開しておりますが、CB100, JBX-60B, JBX-100B は
未着手。
OZ-660B で採用された HELL FLAME スピーカー SD-1508B は
その後 CB100, JBX-60B, JBX-100B にも採用されています。
ギターアンプである OZ-660 にも HELL FLAME スピーカー SD-1265 は
採用されましたが、その後の Jugg Box シリーズには採用されていません。
その意味ではベースシリーズに影響を与えた機種と見ることが
できるかもしれません。

日本ハモンドのベースアンプ OZ-660B の回路図を採取したので
公開いたします。

DSC06646A

回路図
  
  20231213  初出
  20231223  電源:C6 削除
         プリアンプ: C129 訂正

   PNG:

     電源  Power Supply




   PDF:


schematics   OZ-660B.pdf

さて、メンテナンスの仕上げはアイドリング調整、
いわゆるバイアス調整です。

DSC05286A

よく知られた AB1級のアイドリング電流(カソード電流)の計算式は以下の通り。

 下限電流 = (最大プレート損失 x 500 ) / プレート電圧

 上限電流 = (最大プレート損失 + スクリーン損失 ) x 635 /  プレート電圧

最大プレート損失 (W), スクリーン損失 (W), プレート電圧(V)。
上限電流、下限電流は mA。

6L6GC であれば最大プレート損失は 30W, スクリーン損失は 5W。

まずはプレート電圧を測定します。Eb = 486V。
これで計算すると下限電流が 30.8 mA、上限電流が 45.7 mA。
この範囲内になるように設定すれば 6L6GC が適正に設定され、
真空管の寿命も長くなります。

ただし Jugg Box シリーズではアイドリング電流を 60 mA ~ 75 mA 程度に
設定するようになっています。
バイアス固定の Jugg Box ONE (Rev. 0) などでは 60 mA 付近、
バイアス自動設定が搭載された Micro Jugg, JBX-40, JBX-60 では 70mA 付近に
設定されます。
明らかにアイドリング電流が大きいのですが、これに準じます。
このように大きめのアイドリング電流に設定するのは Jugg Box に限らず、
Guyatone の FLIP シリーズなどでも同様です。

以下のように設定しました。

 Eb = 486V
 Eg2 = 478V
 Eg1 = -46.5V

の条件下で

アイドリング電流
6L6GC (1) Ik = 64.4 mA
6L6GC (2) Ik = 60.0 mA

アイドリング電流に差が生じていますが、許容範囲でしょう。

最後にスピーカーの代わりに 8 Ω のダミーロードを接続し、
出力電圧波形を確認します。

DSC05287B

ファンクションジェネレータを接続し、1kHz の信号を入力します。
出力電圧の波形を観測し、電圧ゼロの付近が滑らかになっていることを
確認します。バイアス電圧が深すぎるとゼロ電圧付近が平らになることが
あり、歪みの原因になります。

これで Stuff 060G のメンテナンスは完了です。
電解コンデンサを交換したアンプは中音から高音の出音が復活します。
メンテナンスが終了した Stuff 060G はぜひクリーントーンで確認して
いただきたいと思います。

位相反転段基板 PW-40A と終段 6L6GC プッシュプルの周辺を
メンテナンスします。

Stuff 060G はプリアンプが半導体で位相反転段以降の
パワーアンプ部が真空管のハイブリッドアンプです。
パワーアンプ部は Jugg Box ONE や V-1 と共通の回路に
なっています。なのでこれから書く内容は V-1 のメンテナンスでの
記事と重複する部分があります。

位相反転段 PW-40A 基板
DSC05232A

部品面
DSC05241B

ソリッド抵抗が9本。これらを1/2W のカーボンフィルム抵抗と交換します。

用意するもの
 カーボンフィルム抵抗 9 本
  100kΩ  1/2W    R58
  82kΩ  1/2W    R57
  1.5kΩ  1/2W x 2  R61, R62
  220kΩ  1/2W x 2  R59, R60
  100Ω  1/2W    R52
  15kΩ  1/2W    R53
  680Ω  1/2W     R56

交換した状態
DSC05266C

続けて 6L6GC のカソード抵抗 10Ω 1/2W も交換します。
DSC05233D

交換後
DSC05261E

スピーカー出力ジャックを交換します。
DSC05280F

最後にヘッドフォンジャックのソリッド抵抗 2.2kΩ 1/2W x 2 を
交換します。
DSC05281H

次にプリアンプ基板 PA-39 の部品交換を行います。

DSC05234A

DSC05235B

用意するもの
 電解コンデンサ 合計 13 個
  47uF 63V  x 3  C11, C13, C15,
  470uF 16V x 2  C40, C41
  100uF 16V x 4  C12, C14, C22, C47
  47uF 16V x 3  C43, C46, C49
  1uF 50V x 1   C29

 カーボンフィルム抵抗 合計 4 本
  2.2Ω 1/2W   R39
  22kΩ 1/2W   R14
  3.9kΩ 1/2w x 2 R11, R15

回路図上では電解コンデンサの耐圧は 25V や 35V を指定して
いるものがあります。これは回路図を採取した Stuff 060G が
初期のバージョンであったためのようで、少し後期になると
上記のように 16V 耐圧のものに整理されたようです。
電源トランスや回路構成が変わっていないので初期バージョンでも
16V 耐圧に変更しても問題はないと考えられます。
またリバーブドライブ IC BA521 の電源を作る倍電圧整流回路に
使われている C40, C41 は 220uF 25V x 2 から 470uF 16V x 2 に
変更されています。

電解コンデンサを交換する前に現状の電解コンデンサ(交換対象)に
赤マジックでマークをしておきます。
DSC05268C

これにより交換作業がどこまで進捗したかがわかります。途中で作業が中断して
数日経過する可能性を考慮しています。
また基板上にシルク印刷等がないので電解コンデンサのマイナス側 の端子に
印(ー)を付けておきます。極性を間違えると電解コンデンサが破裂するので
忘れずにマーキングします。

電解コンデンサの交換は「形状の大きい物」から交換していくことに
しています。上記の用意する電解コンデンサのリストも形状の大きい順に
並べています。
DSC05269D

電解コンデンサの端子のはんだを除去して取り外します。
Jugg Box のプリアンプ基板に搭載されている松下製の電解コンデンサは
液漏れを起こしていることが多く、撤去後に上の写真のように
基板が変色していることがあります。基板が割れたりしていない
限り変色に対しては特に処置する必要はありません。
電解コンデンサの足が通るよう裏面の余分なはんだを除去し、
新品の電解コンデンサをハンダ付します。

電解コンデンサ 13 個の交換が終わったらソリッド抵抗 4 本も
交換します。特に注意点はありません。

基板上の部品を交換した状態がこちら
DSC05272E

 PA-39 基板上で残ったメンテナンス対象はポット類。
ポットの隙間から抵抗体とブラシに少量の接点復活剤を塗布します。
隙間というのはポットの端子(三本)の側にあるので基板に取り付けられた
状態ではスプレーしにくい状態にあります。接点復活剤スプレーに
添付されている長いノズルを曲げて吹きかけることも辛うじて可能ですが
不要に大量に塗布しがちになることと、周囲(基板と他の部品)に
接点復活剤が散乱することが問題です。そのためポットを一つずつ
基板から取り外して適量塗布します。
ポットの端子3本のハンダを除去し、基板から取り外します。
外れたら端子側から見える隙間に対して接点復活剤をほんの一押しして
(少量)塗布します。
塗布後、ポットのシャフトを持ち 0 位置から 10 位置の間を往復させて
馴染ませます。私の場合 40 ~ 50回を目安にしています。

接点復活剤については過信しないこと。
上記の作業を行なってもガリがとれないようであれば新品のポットに
交換すべきです。 Stuff 060G の場合、24Φ の基板取り付け端子のポットが
使われていますが、同じ形状の新品のポットは入手困難です。
交換すべきポットが3個までであれば 16Φのポットをワイヤーで接続して
対処することも可能かと思います。それ以上だと PA-39 基板を
ポットのネジで支持することが難しくなります。

DSC05277F

あと、入力ジャック 1, 2 も交換しておきます。入力ジャックは
スイッチ付きのモノラルジャックを使用します。
絶縁型である必要はありません。ただもともとのジャックに
黒いプラスティックのワッシャが2枚ついており、ジャックと
フロントパネルの間を絶縁しています。このワッシャを捨てずに
利用して新しいジャックでの絶縁を確保します。

Stuff 060G のメンテナンスをする機会があったので、
その過程を記録に残すことにします。

Stuff 060G は 1977年に発売され、1981年ごろまで製造されていた
ようです。製造から少なくとも 40 年以上経過しているため、
経年劣化を起こしている部品があります。それらの部品を交換することで
本来の性能を復活させることが目的です。

経年劣化を起こしている部品の代表は電解コンデンサ。
そしてソリッド抵抗(カーボンコンポジット抵抗)。
さらに接点を有する部品:スイッチ、可変抵抗、ジャック。
半導体部品やフィルムコンデンサ、タンタルコンデンサは
ここでは交換しません。

メンテナンス第1回の今回は電源周辺のメンテナンスを行います。

まずはフロントパネルの電源スイッチとスタンバイスイッチを
交換します。

交換前の状態
DSC05230A

フロントパネルの後方からの写真です。
左が電源スイッチ、右がスタンバイスイッチです。
スタンバイスイッチの端子間には 0.01uF 600V のフィルムコンデンサが
接続されています。これは「スパークキラー」です。
この個体にはスパークキラーが電源スイッチには付いていませんでした。
これまで見てきた Jugg Box シリーズのアンプでは必ず両方の
スイッチに付いていたので、スイッチ交換のついでに電源スイッチにも
取り付けることにします。
また、ここでは 0.01uF 630V のフィルムコンデンサの新品を取り付けます。

スイッチは 125V 3A の 2P スナップスイッチを2個使います。
DSC05244B

正面からスイッチをみるとこんな感じ。
DSC05245C

もともとのスイッチの比べると少しレバーが長くなっています。

続いて電源基板 PS-40a のメンテナンスに移ります。
DSC05246D

ここでは電解コンデンサ4本とソリッド抵抗1本を交換します。
この基板に搭載されている抵抗はその両端に大きめのコンデンサが
接続されているため、基板に接続されている状態では正しい抵抗値が
測定できないことがあります。
電解コンデンサは必ず交換すべきなので、これらの抵抗の抵抗値は
電解コンデンサを基板から外した状態で測定します。

基板を固定するネジ5点を外し、基板をひっくり返して裏面が見られる
状態にします。

PS-40a 裏面
DSC05247E

基板上の電解コンデンサ 4本を外します。
DSC05248F

電解コンデンサ C01, C02 100uF 350V x 2, C03, C04 33uF 500V x 2 を
外しました。(この写真では交換予定だったソリッド抵抗 R04 も
すでに取り外しています。)
電解コンデンサを取り外した状態で R01, R02 150kΩ 1W、R03 1.5kΩ 10W、
R04 56kΩ 1/2W の各抵抗値を測定し、断線或いは抵抗値が誤差範囲以上に
なっているようであれば交換します。R03 はセメント抵抗で基板上にはなく
放熱を兼ねてシャーシに取り付けられています。

カーボンフィルム抵抗であれば経年劣化することはそれほどないのですが、
ソリッド抵抗は抵抗値が上昇したり断線を起こしたりするので、現時点で異常が
なくてもカーボンフィルム抵抗(1/2W)に取り替えることにしています。

Jugg Box シリーズに限らず、この時代の真空管アンプの電解コンデンサには
いつも悩まされます。アキシャルリード(チューブラー型)を使っているものが
多いのですが、現状ではラジアルリードが主流のため交換用電解コンデンサの
選定が難しいのです。C03, C04 の 33uF 500V に関しては UNICON の
アキシャルリードが使えるし常備しているので取り付けに問題はありません。
C01, C02 の 100uF 350V はちょっと難しい。350V のものは品数が少ないし、
アキシャルリードとなると絶望的。100uF 400V のラジアルリードで代用できれば
安価に入手できるし常備もしています。取り付けを工夫すれば実装できそう。

ラジアルリードの電解コンデンサを搭載するために基板にラジアルリード用の
穴(1mmΦ) をドリルで4箇所開け、新たに開けた穴の周囲のグリーンレジストを
カッターで削って剥がしておきます。
DSC05253G

基板上の電解コンデンサ4本とソリッド抵抗1本を交換した状態がこちら。
DSC05258H

電解コンデンサは基板に取り付けた後、振動対策にホットボンドで
基板に固定しています。

なお、上述の R03 1.5kΩ 10W のセメント抵抗は上の写真の電源基板の右側に
写っています。こちらのチェックもお忘れなく。


交換した部品
C01, C02 100uF 350V x 2 → 100uF 400V x 2
C03, C04 33uF 500V x 2
R03   56kΩ 1/2W

久しぶりに Jugg Box ネタを。

本日、知人と話をしていて「Jugg Box に付いていた真空管のメーカーは
RCA と 松下 と、あと何だっけ?」という話題になりました。
知人も Jugg Box V-1 のオーナーで、V-1 の回路採取に協力していただいた方。
V-1 の新品からの 40 年来のオーナーでご自身でもメンテナンスをされて
いましたが、 真空管の交換も行っており上記のメーカー以外のものも
あったとのこと。
そういえば私の Jugg Box  ONE もオリジナルに近い状態なので
メーカーがわかるかもしれない、時間があったら調べときます、と答えて
帰宅しました。

気がついたのは ONE に関する写真などの情報を掲載していないこと。
既に回路図は採取して公開しておりますし、スピーカー違いの同等のモデル
である Jugg Box V-1 でのメンテナンス方法も示しております。
ただ回路図を公開したのが 2014年で、回路図(PNG, PDF)のようなファイル
を配布するために応急処置で Yahoo! ブログで開設したばかりの時期。
それ以降あまり情報の追加がなく、Jugg Box シリーズの中でも相対的に情報が
少ない機種になっていました。

程度の良い ONE を入手したのが 10 年ほど前。オリジナルに近い状態で
使っていましたが電解コンデンサの劣化によるノイズが激しくなったので
8 年ほど前にメンテナンスを敢行。電解コンデンサとカーボンコンポジット
抵抗の交換を行いました。
なので既にオリジナルの状態ではないし、前のオーナーが真空管を交換している
可能性も否めないのですが、現状での写真を撮影して記録に残すことに
しました。


前面。
DSC03225A

綺麗な個体で、大きな傷や汚れはありません。
インプットジャックやスイッチ等もオリジナルのままです。

DSC03227B

入力ジャックは 1, 2 の二つ。入力1は12AX7 によるプリアンプを通過したのち
入力2と合流しており、Volume 1 は 入力1専用のボリュームになっています。
この回路は Mesa/Boogie Mark I に搭載されてさまざまなアンプに影響を与えた
もの。入力インピーダンスの大小で High と Low に区別する Fender の回路と
異なり、入力1で歪みを作る意図が明確になっています。とはいえ、
Volume 1 を上げてもシングルコイル PU ではなかなか歪みません。

コントロールは左から VOLUME1, VOLUME2, MASTER, TREBLE, BASS, REVERB.
Jugg Box  TWO と同様、MIDDLE がありません。

背面。
DSC03231D

左から GROUND 端子、AC 電源コード、AC アウトレット、GROUND スイッチ、
ヒューズ(3A)、LINE OUT, MAIN SP, EXT SP, REVERB の各ジャック。
EXT SP は内部スピーカーと同時に音を出す時に使います。4〜8Ωで
80W 以上のスピーカーを接続するようになっています。

バックパネルを取り外します。
DSC03234E
出力管は RCA の 6L6GC x 2 。位相反転段は松下の 12AU7 が使われています。
奥に ALTEC 417-8H が綺麗な状態で搭載されています。

DSC03241F

初段 V1 は東芝の 12AX7 でした。ゴムのクッションで振動を和らげたアングル上に
搭載されています。マイクロフォニック対策でしょう。
V2 は松下の 12AX7, V3 は Sylvania の 12BH7A 。12BH7A はリバーブのドライブに
使われています。Jugg Box  ONE の初期バージョン(Rev. 0)では 12AU7 が使われ
ていますが、後期バージョン(Rev. 1)では 12VH7A です。 12AU7 に比べて
少し背が高い真空管なので Rev. 0 と Rev. 1 を見分ける目印になります。

シャーシ内部。
DSC03246G
電解コンデンサの交換が済んでいるので、コンパクトな電解コンデンサが
搭載されています。

DSC03248H

シャーシには2つの(半固定抵抗的な)ポットがあり、写真上は
MASTER ボリュームの範囲を制限する「隠し MASTER ボリューム」。
このポットに関しては動かしたことはありませんが、過大な
振幅の信号がパワーアンプに加わらないように、あるいは発振の
防止のためにあるのかもしれません。
写真下のポットは REV. 1 ではバイアス調整に使われます。
REV. 0 ではリバーブからの出力信号を制限するポットとして
搭載されています。リバーブでの発振対策かと思われます。

40年以上前に製造された個体だと思われますが、前のオーナーが大切に
保管されていたのか、シャーシ内に埃などの汚れが全くない綺麗な状態です。
入手して 10 年ほどになりますが、とても良い状態で鳴ってくれています。
ストラトキャスターで弾くと鈴鳴りが美しく、まるでアコースティックギターを
弾いているような感覚を覚えます。弾いていて気持ち良くなる大切な一台です。

↑このページのトップヘ

ライブドアブログでは広告のパーソナライズや効果測定のためクッキー(cookie)を使用しています。
このバナーを閉じるか閲覧を継続することでクッキーの使用を承認いただいたものとさせていただきます。
また、お客様は当社パートナー企業における所定の手続きにより、クッキーの使用を管理することもできます。
詳細はライブドア利用規約をご確認ください。