長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: HummingBird

キャビネットからシャーシを取り出します....  ん?
DSC01702A

背面パネル取り付けのためのブロックと電源トランスが干渉してしまいます。
製造工程でシャーシを固定したあとでこのブロックを取り付けたようで、
これを外さない限りシャーシを取り出すことはできません。
コの字型の釘2本でキャビネットと固定しているので比較的簡単に取り外せます。

回路図の採取、メンテナンスの作業に邪魔になるのでスピーカーケーブル(2本)と
リバーブの入出力ケーブル(2本+シールド1本)はシャーシを取り出す時に
ニッパーで切断します。これらの線は新しいケーブルに取り替える予定。

リバーブユニットを取り出しました。
DSC01708B

前出の EAV-100D です。
上部の金属カバーとリバーブ本体が白いゴム枠で保持されていますが、
このゴム枠が劣化していました。グロメットというゴム製の枠で代用することに
しました。
ゴム枠を外してリバーブ本体を見てみます。

DSC01714C

シングルスプリングの磁気式リバーブですね。
右側が入力、左側が出力です。鉄心が錆びて汚くなっていますが、動作には
問題はないと思われます。入力側には 8 Ω の表記があります。
(20220807 追記: EAV-100D は特許番号から松下製と判明。)

次は電源トランス。

DSC01721D

TK-5 という型式。
入力(白) AC 100 V に対し、二次側(灰色) 110 V、50MA の表示が
あります。真空管 B 電源の電圧としては 110 V は低いですが、
電源回路側で倍電圧整流で電圧を上げています。
ヒーター電源(青、黒)は 6.3V 1.2A。

電源回路。
DSC01723E
左側の電解コンデンサが平滑用コンデンサ。
電解コンデンサにルビコン、ネオンランプにサトーパーツ、
オイルコンデンサはエルナ。国産メーカーの部品オンパレード。
アンプのメーカーが不明ですが、国産パーツを使っていることから国産の
アンプであると判断しました。


DSC01728F

出力トランス。 
6BM8 によるシングル出力のアンプなのでシングル用のトランスです。
小さいですね。これも3W 程度ではないでしょうか。東栄変成器の
T-1200 (2.5W)などに比べても小さいです。出力インピーダンスは4Ω。


回路基板。

DSC01719G
ソリッド抵抗が多いですね。
右上にあるトランスがリバーブトランス。
左側にある大きなセラミックコンデンサ(3個)はトレモロ回路の
低周波発振に使われています。セラミックコンデンサは劣化が少ないので
交換しません。

左端、シャーシに "4305017" というスタンプがあります。
昭和43年5月の意味かもしれません。ということは 1968 年製?

基板裏面。
DSC01729H

プリント基板を使っている割にはごちゃごちゃしています。
真空管3本のヒーターは青と橙の2本の線で別途配線されています。
流れる電流が大きいのでプリントパターンでは不安だったのか、
ハムノイズの混入を避けるためか、理由はいろいろ考えられます。

基板の上の方に出力管として ”6BQ5” と記述されていますが、
"6BM8" の誤りですね。



DSC01686E

真空管は右から 12AX7, 12AX7, 6BM8 の3本。三極管と五極管の
複合管の 6BM8 はテレビ用に開発されたもので、もともとは
オーディオ用途にはあまり使われていませんでした。
ノウハウがあったためか、エレキブームの時に参入した家電メーカー
(日本コロンビア、ビクター等)がよく使った真空管です。
すべて松下製がついていました。

DSC01694F

真空管を取り外した様子。
プリント基板を使った回路です。コンパクトにまとまっています。
抵抗はソリッド抵抗が使われており、大部分は劣化して抵抗値が
誤差範囲以上に上昇しています。これらは交換対象。
基板の奥のほうに緑の絶縁テープが巻かれたトランスが装着されて
います。これはリバーブトランス。基板に取り付けられるトランスといえば
サンスイのトランスが有名でトランジスタの時代になってもしばしば
見かけたものですが、これはそれより二回りほど大きい。
でもリバーブトランスとしては小さい。電力的には非力な 12AX7  で
磁気式のリバーブをドライブするので入力インピーダンスが高めに
なるように設計されているのかもしれません。

DSC01692G

回路を観察しているうちにどこにも接続されていない線が2本あるのに
気がつきました。よくよく見ると Volume のポットに導線がなにも
繋がっていません。Volume ポットを回すとナットが緩んでいるために
空回りしていました。ナットが緩んだまま操作して導線を引きちぎった
ようです。(私のせいぢゃありません。)
この個体では異常箇所はこの点だけでした。


謎だらけのアンプです。

おそらく 60年代後半から 70 年代前半にかけてのモデルだと
思いますが、情報がまるでありません。
Humming Bird という名前自体、メーカー名なのかモデル名なのかも
はっきりしません。電気製品としてあるべき銘板自体もないのです。

オークションで入手したのですが、ちょっと場違いなジャンルで出品されて
いました。私の記憶の片隅にHumming Bird という名前が引っかかりました。
エレキブームの頃の文献に名前があったように思うのですが、確認できていません。
オークションに掲載されていた写真には回路が見えるような構図もないため
ほとんど謎のまま。たぶん真空管アンプであろうと予想して入札。
競合もなく落札できました。

記録に残すためにも写真を掲載します。
前面操作パネル。
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エレキブームの頃のアンプの典型的な操作パネルです。
入力ジャックは2つ。 Volume,  Tone, Reverb, Tremolo の各コントロール。
レバー式の電源スイッチ。
操作パネル真ん中に E.P. という名の 3.5mm モノラルジャックが
あります。 日本コロンビアの当時のアンプのように外部オーディオ機器からの
LINE IN 入力かと思ったのですが、回路解析して分かったのは
SEND - RETURN の SEND ジャックに相当するものだということ。
このアンプをプリアンプとして出力するのに用いるようです。
ちなみに RETURN に相当するジャックは用意されていません。

んん? これを書きながら気が付いたのですが、Ear Phone の意味か?
マッチングも取っていないので回路的には気がつきませんでしたが。
60 年代だったらロッシェル塩のイヤホン(高入力インピーダンス)が
一般的だったのでこんな回路でも音が聞けたはず。
とりあえず仮説にしておきます。(使わないに越したことはないと思いますが。)

背面。
DSC01678B
普通、背面を見れば製品情報を掲載した銘板なりラベルなりがあるはずですが、
そんな跡もありません。
背面パネルの裏側に回路図でも貼っていないかと期待したのですが、
パネルを外してみても何もありませんでした。

DSC01681C

回路がすっきりとまとまっていることがわかります。回路の設計や製作に
手慣れている感じがあります。配線の取り回しなどもノウハウがありそう。
ただ、ギターアンプとしての構成に慣れているかというとそうでもなく、
シャーシをキャビネットから取り出そうとすると電源トランスと左の木製の
ブロック(背面パネル取り付け用)が干渉して取り出せません。
修理やメンテナンスのことを考えていないかのよう。
木製ブロックは U 字型の釘2本で固定されているので取り外すことにしました。

スピーカーとリバーブユニット。
DSC01684D

スピーカーにも何も記述がありません。インピーダンスとか定格出力とか。
リバーブユニットには EAV-100D という型式の印刷があって、入力インピーダンス
8 Ω の表示がありました。8 Ωということは磁気式のリバーブですね。
あぁそうだ。これも今気がつきました。 Firstman  Vanguard 2000 の
リバーブと同じものです。どこかでみたような、と思っていたのですが。
(20220807 追記:EAV-100D は特許番号から松下製と判明)

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