長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: MAXON

MAXON GX20 のフロントパネル。

DSC01351B

入力が HIGH, LOW ではなく、OVERDRIVE, NORMAL という名称に
なっています。また、3ボリュームの最初が GAIN でなく OVERDRIVE。
OVERDRIVE という言葉自体が目新しかった時代です。
トーンコントロールはまったくの Fender Tone Stack. 定数まで同じです。

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背面にはヘッドフォンジャック、外部スピーカージャック、LINE OUT が
並びます。

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スピーカーは 8 inch。周波数特性がラベルに印刷されていますが、
あんまり特徴はなさそう。平均出力 20W、最大出力 40W。

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電源トランス。「1次ヒューズ最大 1.5A」の記載がありますが、
Guyatone の電源トランスにも同様の記載があるものがあります。
変圧器としてはあまり見かけない記述なので、トランスの製造会社が
同じなのかと考えています。

シャーシ内の回路。
DSC01360F

メインの基板 MP-GX0101B (1) と背面のジャック類をまとめた基板 
MP-GX0101B (2) の2枚の基板で構成されています。
メイン基板には電源、プリアンプ、リバーブ、パワーアンプと、アンプの
主要回路が一枚にまとめられています。そのため配線がとてもすっきりして
います。プリアンプ部は OVERDRIVE チャネル専用の 2SK30A 1段プリアンプ
と NORMAL チャネル 2SK30A 3段で構成されています。

パワーアンプはディスクリートで構成されており、オーソドックスな回路に
なっています。差動増幅段に 2SA798 というエミッタコモンのデュアル
トランジスタが使われています。特性が揃った2つのトランジスタが
入っているため、回路からDCオフセット調整を省いています。
まだまだ若松通商に在庫があるようなので、壊れても安心。

結論:チューブスクリーマーは入っていません。

82 年の MAXON のアンプカタログに GX シリーズの
低価格モデルとして掲載されています。
以下、カタログからの抜粋。

---- ここから ----
GX20    ¥29,800
大型アンプの機能をそのままスケールダウン。小型アンプの概念や常識を完全にく
つ替えしたコンパクトアンプの新しい顔。それが GX20 だ。ノーマル/オーバードラ
イブの2入力方式。ウォームディストーションからファジーなトーンまで自由にクリエ
イトできる3ボリュームコントロール、3バンドイコライザー。ヘビーデューティな
エンクロージャーに特別設計の 20cm(SP-GX0101) を搭載。パワー、サウンドメイキ
ングとも並のアンプとわけが違う。ヘッドホンジャックはもちろん、このクラスで外部
スピーカージャック、ラインアウトまでも装備した、贅沢すぎる「使えるGX20」。

FEATURE
・オリジナル20cm(SP-GX0101) 高性能スピーカーを使用。20W(RMS) とは思えぬ
力感あるパワーコンパクトアンプ。
・ノーマル/オーバードライブの2チャンネル方式を採用。加えて、オールラウン
ドな音づくりが可能な3ボリュームコントロール、3バンドイコライザーシステム。
・外部スピーカージャックによるスピーカーの増設、ラインアウトジャックによる
録音や PA、他のアンプへの接続が可能。
・ヘッドホンジャックを装備。真夜中でも練習ができます。

SPECIFICATIONS
出力: 20W (RMS) 40W(PEAK) 8Ω
スピーカー: 20cmSP-GX0101 x 1 8Ω
入力: NORMAL / OVERDRIVE
コントロール: OVERDRIVE
NORMAL、 MASTER
REVERB
イコライザー: BASS、MIDDLE、
TREBLE
定格電圧・周波数: 100V 50/60Hz
定格消費電力: 17W
付属装備: ヘッドホンジャック、ライン
アウト、 EXT. SP ジャック
寸法: 340(W) x 370(H) x 230(D) mm
重量: 9.6kg
---- ここまで ----

ネットで資料を探すと GX シリーズ (GX20, GX30, GX60, GX100) 
について語られるのが「チューブスクリーマー内蔵」ということ。
TS-808 や TS-9 の製造元として知られる MAXON が製造している
アンプですし、TS-9 が世界的に認知された時期とも重なるので
憶測が憶測を生んでいるようです。

今回、回路図を採取して昨日公開したわけですが、回路のどこにも
TS-9 (その他 TS-808 なども含めて)に類似の回路がないことが
わかりました。
上記のようにカタログの文言を引用したのはカタログにも
チューブスクリーマーについての言及がないことを示すためです。

プリアンプは J-FET 2SK30A によるディスクリート構成で、
回路定数も含めて Guyatone Zip-100 によく似た構成になっています。
唯一異なるのが OVERDRIVE チャネルの末端にダイオードクリップ回路が
付加されていることですが、これにしても基板上に搭載されているのでは
なく、 OVERDRIVE ジャックのスイッチに空中配線で搭載されています。

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見えづらいですが、入力ジャックのビニールチューブの中にある部分が
ダイオードクリップ回路。なんというか、思いつきで付けたんでは?
と疑いたくなるような構成です。ユーザーが改造で付けたというわけでも
なさそうです。手を加えた形跡がありません。

DSC01365H

基板の右の方に JRC の NJM4558 いわゆる「艶あり」が搭載されていますが、
これはあくまでもリバーブのための回路に使われており、歪み・音色を
作る部分には何ら関与していません。
この OPアンプが憶測を生む原因にもなっているのでしょう。

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