長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: NIHON COLUMBIA

ポットのシャフトは悩ましい課題でしたが、解決策を決めたらあとは実行するだけ。

めんどくさいとは思いながら、抵抗およびコンデンサを全て交換することにしました。
特にコンデンサは電解コンデンサ、オイルコンデンサ、フィルムコンデンサとも
劣化が激しい。交換するしかない。
抵抗も当時の円筒形をしたもので、現在の同等の抵抗に比べて大きいので交換することにしました。
ラグ板で配線するため、大きな抵抗は配線の邪魔になります。現在の小型の抵抗に交換します。

部品の交換に際しては、古いラグ板と同等の新しいラグ板を用意し新しい部品を搭載したあとに
古いラグ板と交換するという方法をとりました。
古いラグ板とそれに搭載されていた部品はそのまま廃棄しました。

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ブロックコンデンサの代替は 47uF x 2  と 22uF x 2 それぞれのコンデンサを
平ラグ板に組み込むことで解決しました。

電源部のフューズホルダ、電源ランプは保存しました。電源スィッチ(波型ロッカスィッチ)は
交換しようにもサイズに合うものが見つからなかったため、トグルスィッチに交換しました。
ここだけが外観的に変わってしまいました。

ポットで頭を悩ませたということ、意味がわかりにくかったと思います。
ちょっと詳しく説明いたします。

この個体はネットオークションで入手したものですが、これまで見たこともない機種でした。
宅配便で送られてきた荷物の梱包(段ボールとエアキャップ)から取り出すと
想像していたものよりひとまわりコンパクトな本体。そして軽量。
オーディオメーカーのコロンビアらしいデザインを含めて外観全体を気に入ってしまいました。
また貴重な60年代の機体です。できる限り外観を改変したくはありませんでした。
ちょっと汚れている大きめのノブもできれば交換したくないですね。

下に操作面のノブの周辺の写真を示します。
この写真は外観維持の対策を施したあと(本日撮影)のものですが、
オリジナルの状態を再現できているのでこの写真で説明します。

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ノブを外すと、上の写真のようになります。ノブとポットのシャフトはローレットで嵌合されます。
後年のギターアンプで採用されているような操作パネルにポットが設置されているわけではなく、
ポット自体は操作パネルから 5cm 奥のシャーシに取り付けられています。
オリジナルのポットは 5cm のシャフト(ローレット付き)付きの仕様のもので、
当時は一般的な部品だったのでしょう。(現在は入手困難です。)

ポットは消耗品です。もう50年以上前の回路なのでポットは全部交換するに越したことは
ありません。ポットは全部で6個。すべて 1MΩ Aカーブなので入手に難はないのですが、
上の写真でわかるように操作パネルに開いている穴が大きいため、操作パネルにポットを
設置することはできません。
操作パネルにアルミパネルなどを裏打ちしてポットを取り付けられる
穴をあけて取り付けることも考えられますが、オリジナルのノブを取り付けると数センチ
飛び出した形になります。(かっこわるい。)また、オリジナルのノブのローレットは
現行のポットのローレットと微妙に異なり、取り付けるとスカスカ。ノブの脱落が気になります。
オリジナルのノブを使わない、という選択をすることも可能ですが、ノブが変わると外観イメージが
大きく変わります。それは避けたい。オリジナルのノブはなんとか使えるようにしたいものです。
また、アルミパネルを裏打ちするとなると操作パネルの何箇所かに固定用ビスを取り付ける穴を
開けなければならないので外観が少し変わってしまいます。

悩んだ末に行ったのが、シャフトの延長という手段でした。
下の写真にその様子を示します。

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新しいポットは ALPS の 16φのものに全て交換しました。シャフトの長さはおよそ15mm。
もちろん長さは足りません。このシャフトに延長ジョイントを使って5 cm の長さにします。
延長ジョイントはここから入手しました。


オリジナルのポットは廃棄しましたが、それに付いていたシャフトを34 mm の長さに
切断し、シャフトだけ延長ジョイントに接続しました。これで 5cm のシャフト付きポットの
出来上がり。なんとかなりましたが、シャフトを6個切断(金切鋸でガリガリ)は
結構しんどかった。

実はこのアンプ、入手から修理に着手するまで時間がかかりました。
次にお見せする写真の回路構成を見て気持ちが萎えてしまった、というのが正直なところ。

真空管回路を構成するにはこの時代なら当然といえば当然なのですが、
ラグ板(平ラグではない)を使った空中配線。
Fender のようなタレットボードで回路を組んでいるはずはないよなぁ。
プリント基板が使われるようになるのはこれから5、6年先か。

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これは電源周辺。ブロックコンデンサは交換必須。
電解コンデンサ、オイルコンデンサも間違いなく劣化しているので交換しなければなりません。
それにしてもこの部品密度。

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左から 6AQ8, 12AX7, 6BM8 x 2。
6AQ8 は ECHO (リバーブ)の送受信を担当しています。
12AX7 は入力プリアンプ(初段)、トーンコントロールと信号増幅。
6BM8 x 2 の5極管部はプッシュプルを構成し、一方の三極管は PK 位相反転回路を、
もう一方の三極管はトレモロの LFO (低周波発振回路)を構成しています。

結構複雑なことをしているのですが、6BM8 周辺に回路がごちゃっと集中しています。

写真中にところどころにある緑色に見える物体がフィルムコンデンサ。
表面の樹脂がベタベタになっており、値も充分に読み取れないばかりか樹脂が剥がれ落ちて
内部の電極が露出しそうなものさえあります。

あぁぁあ。部品全部取り替えかぁ? (めんどくさいなぁ)

修理にあたって、今回もっとも頭を悩ませたのが、ポットです。
Vol, Treb, Bass, (Tremolo) Depth, Speed, Echo (Reverb) の6つの可変抵抗は
すべて 1MΩ の A カーブ。
ところが、写真を見てください。ポットの取り付け場所と操作部(ノブが取り付けられている場所)
の間に5cm ほど距離があります。5 cm の長さのシャフトがついたポットを使っているのです。
新品はほぼ入手不可能。
ノブとシャフトの取り付けはローレット。シャフトに溝が切っているタイプ。
ところがこのローレットが現行のポットに施されているものと微妙に異なっています。
現行のポットのローレットにノブを付けると、取り付けられるけれどフィットしない。
というか、スカスカ。簡単に外れてしまいそう。
なんとかならないものか。

では実際の回路を見てみましょう。

電源部は次の写真の右側。
変圧器と右上隅手前に真空管(整流管 5R-K16)と奥にブロックコンデンサが見えます。

ブロックコンデンサには

 50 MFD 300WV
 50 MFD 300WV
 20 MFD 300WV  RED
 BALCK-NEGATIVE

と記入されてています。
50 MFD は 47uF、20 MFD は 22uF で代用できそうですが、
この組み合わせのブロックコンデンサは現時点で入手できるかどうか。 

整流管 5R-K16 は日本規格の真空管で、東芝製でした。これはロシアや中国で製造している
種類ではないので、取り替えるとなると現存のものを調達しなければなりません。
まだまだ真空管ショップには在庫があるようです。
もっとも最悪の場合でも、半導体ダイオードで代用する回路に変更できるんですけどね。
 
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信号増幅、電力増幅部の真空管のラインナップはこちら。

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左から 6AQ8, 12AX7, 6BM8 x 2 です。

6AQ8 はあまり聞くことがないけれど、双三極管です。
(6V6 互換の 7pin MT管 6AQ5とは別物です。)
これも ElectroHarmonix の現行品 (6AQ8EH) が入手可能です。

6BM8 はギターアンプでは聞くことはありませんが、12AX7 相当の
三極管と 五極管の複合管です。オーディオならこれ一本でモノラルアンプが
(2本でステレオアンプが)作れる便利な真空管なので、
最近のオーディオ用真空管アンプのキットによく採用されている球です。
これも ElectroHarmonix が製造しているので安定して入手可能です;

とりあえず、大物部品で入手困難なのはブロックコンデンサだけのようです。
もっともブロックコンデンサのようにコンデンサが集合体である必要はありません。
47uF 400V x 2 + 22uF 400V x 1 を個々に揃えて配線して使うのが現実的でしょう。

さて、アンプの修理には回路図が必要になります。
この時代(エレキブーム)の国産アンプは幸運なことに回路図が公開されており、
「初歩のラジオ」などの雑誌に掲載されていたようです。そのため、web で検索すると
それらしい回路図が入手できることがあります。

今回の CGA-131 の回路図は以下のムックに掲載されています。
誠文堂新光社「おとなの工作読本 No.5」(2004年1月5日発行)

もともとは昭和41年(1966)の「初歩のラジオ」に掲載された「市販品のギター・アンプ」という
記事を復刻したものです。

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CGA-131 の写真と回路図は上記ムックの p.71 に掲載されています。

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この記事によると、スペックは以下のとおり。

  最大出力 10W, 無歪出力 8W
      外形寸法  幅 500 x 高さ 380 x 奥行 160 mm
  重量 7.6 kg
      定価  ¥22,000

重量 7.6 kg は真空管アンプとしてはとても軽い。リバーブとトレモロが付いているので
ブルースやジャズに使えそうな仕様です。

日本コロンビアのギターアンプ CGA-131 の修理が完了しました。

音が良いらしい、という噂を(オークションで)見かけるので以前から注目していたのですが、
今年ようやく入手できました。昭和40年代のベンチャーズブーム(エレキブーム)のころの
アンプです。

思ったよりコンパクトでした。これらの写真は修理を手がける前の状態です。

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