長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: NIHON COLUMBIA

CGA-131 の Rev.0 と Rev.1 でどこが変わったかといえば
リバーブ周辺回路が大きく変わっています。

DSC02704S

Rev.1 では V1 に双三極管 6AQ8 (9pin) が搭載されていましたが、今回の個体では
6AV6 (7pin) が搭載されています。
また左のアウトプットトランスから2本(白と黒)の線がシャーシ内に
引き込まれています。これは以前の個体にはなかった線。

シャーシ内部からみると
DSC02788B

ソケットは以前の修理でセラミック製に交換しているようですが、
シャーシの穴と7pin ソケットがフィットしています。つまりこの個体は
製造時から 7pin ソケットが使われていたということで、9pin の 
6AQ8 の代わりに 6AV6 を取り付けた、というわけではないと推測しました。

V1 はリバーブ周辺回路を担っており、 Rev.1 では 6AQ8 中の2つの
三極管を使ってリバーブユニットの入力へのドライブと出力からの
信号増幅を行なっていました。オーソドックスな回路です。

Rev.1 V1_6AQ8
もともと搭載していたリバーブユニットの入力の巻線直流抵抗が 750Ω。
入力インピーダンスは 3 kΩ くらいと推測できます。
この入力インピーダンスの高さはこの時代では珍しく、そのため CGA-131 では
インピーダンス変換用のリバーブトランスを省いて 6AQ8 で直接リバーブ
ユニットをドライブしています。

これに対し、Rev.0 ではこのような回路になっています。
Rev.0 V1 6AV6
リバーブドライブの三極管がありません。
リバーブ出力側の電圧増幅を6AV6 が担っています。 
 図中、SPOUT の記号で示されているのはパワーアンプの出力トランス
からの線で、最初の写真のシャーシに引き込まれている白い線。
これはスピーカーを鳴らす電力の一部でリバーブをドライブして
いるのです。
このような回路の例はあまりありませんが、 Fender Champ 12 でも
同様な方式が採用されています。
ただし欠点があります。音声出力がリバーブを介して入力にフィードバック
しているので、設計時にレベル設定を間違うとアンプ内部でハウリングを
起こすことがあります。場合によってはハウリングが増大し、故障に至る
可能性もあります。
おそらく Rev.0 は発売後トラブルが生じたので、リバーブ回路を見直して
改良した(Rev.1) のだと思います。

日本コロムビアの60年代のギターアンプ CGA-131 の回路図を
公開して3年ほど経過しました。

先日、回路図を採取した CGA-131 と別の個体を預かって
回路を探る機会がありました。
その結果、今回取り扱った個体はより古いバージョンのものだと
いう結論に達しました。

そこで CGA-131 のオーナーの了解を得て、この個体の
回路図を公開することにしました。
今回の CGA-131 は Rev. 0, 従来公開していた回路のもの(改良版)
を Rev.1 と呼ぶことにします。

CGA-131 回路図
Rev.0 回路図

20220510 初出

PNG:
電源部
プリアンプ部
パワーアンプ部

PDF:


Rev.1 回路図

20220510 旧版を Rev.1 に名称変更
20220514 プリアンプ部:リバーブユニット巻線直流抵抗 実測値記入

PNG:
電源部
プリアンプ部
パワーアンプ部

PDF:


まず修理ではないけれど気になる部分を改善します。
CGA-81 のスピーカーには出力トランスが搭載されており、端子が剥き出しに
なっています。


DSCN2917A

赤い線がつながっている端子には300V ほどの直流電圧が加わっています。
これがアンプ背面から手の届くところにあるのです。怖いですね。
感電の危険性がある部分には安全対策をしておきましょう。
熱収縮チューブを被せて端子が露出しないようにします。

DSCN2918B

ではコンデンサの交換にはいります。

今回悩みのタネだった C1 のコンデンサ 0.005uF 400WV の交換から
始めます。耐圧 400V の必要はなく安価なオイルコンデンサを
使ったものと判断し、4700pF 50V のフィルムコンデンサで代用します。

DSCN2920C

PICK UP 端子にどのような機器をつなぐはずだったのかは不明ですが、
それほど高電圧がかかるような機器とは考えられません。
PICK UP 端子を使用禁止にすれば問題にはならないと思います。

DSCN2921D

ブロックコンデンサ C2  20uF x 2 250V は 22uF 350V 2本で代用。
カップリングコンデンサ C6  0.01uF 400WV のオイルコンデンサは
0.01uF 640V のフィルムコンデンサに変更。
あとの電解コンデンサは耐圧、容量の同等なものに入れ替えました。

取り外した電解コンデンサ・オイルコンデンサを回路図中に
配置してみると以下の様になります。

DSCN2924E

とりあえず、これでメンテナンス終了。9個のコンデンサを交換しました。

さて、再度組み立ててみてギターを繋いで鳴らしてみます。
ある程度予想はしていたのですが、音量が上がりました。
シングルコイルで鳴らした時の音量が確実に大きくなりました。
ボリュームノブを3時の位置まで上げないと練習にも充分な音量には
なりませんが、フルボリュームでやっと、という以前の状態よりは
確実に改善しています。

また、高音のベルトーンが出る様になりました。
もっさりした、というようなくすんだ音ではなかったのですが、
シングルコイルのシャキシャキした音は出ていませんでした。
メンテナンス後はブライトです。良い感じ。
アンプの特性なのか、ちょっと低音が出過ぎるようにも思います。

さて、CGA-81 のメンテナンスも終了しました。
3.4kg ととても軽いので、ライブハウスに持って行って弾き語りにでも
使おうかと思っています。楽しみです。

さて、回路図を読み取ったので、アンプのメンテナンスに入ります。

入手した時点で試奏してみた感想は

(1) 音が小さい
 シングルコイルだとボリュームフルでやっと練習に使える音量

(2) 高音が伸びない
 音がこもっている、というほどではないけれど、ブライト感がない

の2点。
ハムなどのノイズは皆無でした。

メンテナンス前の回路の写真はこちら。
DSCN2902A

抵抗はおそらく巻線抵抗か酸化金属抵抗。中空の円筒形をしています。
このタイプの抵抗は精度もよく、経年劣化は大きくはありません。
同じ時代だとソリッド抵抗(カーボンコンポジット抵抗)も使われて
いましたが、このアンプでは使われていません。

コンデンサは1箇所、入力部のフィルムコンデンサ(緑色)を除いて
電解コンデンサとオイルコンデンサです。
どちらも経年劣化が生じるものです。

以上のことから、メンテナンスの方針を決めました。
経年劣化を起こすコンデンサの交換を行います。
抵抗に関しては抵抗値が劣化していない限り交換しないことにします。
同じコロンビアの CGA-131 を修理した時には上記の円筒形の抵抗を
交換しました。これは基板ではなくラグ板による空中配線での回路なので
部品を小さいものに交換することで構成の簡素化を狙ったものです。
実際、使用されている抵抗は大きいのですが、基板に搭載されているので
他の部品を搭載するのに邪魔になることはありません。
今回は抵抗は劣化がないかぎり交換しないことにします。

前回、回路図を公開しました。
回路を読み取っている時に気になった点が2点あります。
そのうち理由も判明するかもしれませんが、今後のために
明記しておきます。

(1)  R11  1MΩ の抵抗
6BM8 の三極管プレートと五極管プレートがこの抵抗で
繋がれています。おそらくフィードバック抵抗なのだろう
と思いますが、他のアンプでこの構成は見たことがありません。

(2) C1  0.005uF 400WV のコンデンサ
このアンプには PICK UP 入力というモノラルの RCA ピンジャックが
ついています。CGA-131 にも同様に Player Jack がありました。
この入力に付いているコンデンサの意味がよくわかりません。
それも耐圧 400 V のオイルコンデンサをなぜ使うのか?
ただ単に安価なコンデンサを使っただけなのかもしれませんが。

背面パネルを留めるネジ4箇所を外すと中の回路が現れます。

DSCN2887E

底面にあるのは電源トランス。出力トランスはスピーカーに取り付けられています。
真空管は東芝の 6BM8 が付いています。
ざっとみた限りでは修理や改造など手が加えられた形跡がありません。
オリジナルのままのようです。回路を探って回路図を作ることにします。

ところで真空管の 6BM8 ですが、三極管と五極管が一本に収まっている複合管です。
以前修理した コロンビア CGA-131 では 6BM8 をプッシュプル出力に使っていました。
複合管はこの頃の小出力の国産ギターアンプではよく使われていたようで、
エーストーンでは 6GW8 (ECL86) が使われていました。
これらの真空管はこの一本だけでプリアンプとパワーアンプが構成できるので
近年のオーディオの真空管アンプキットでよく使われています。
オーディオアンプであればライン入力を取り扱うため、プリアンプ部に
それほど大きなゲインは要らないのですが、ギターアンプとなると入力電圧が
小さいため、プリアンプが最低でももう一段必要です。
ということで普通は 12AX7 や 6AV6 などの高 μ の三極管がもう一つ付いている
ものなのですが...     ないですねぇ。

DSCN2895F

基板の左側をみてください。抵抗やコンデンサに混じって円筒形の素子が
ありますね。これって、もしや...

DSCN2911K

トランジスタでした。
2SB33  ゲルマニウムの PNP トランジスタ。
TEN(現・富士通テン)のマークがあります。
このアンプはハイブリッドアンプだったということです。
当時としては画期的な回路構成であったと考えられます。
これは面白い。

埃まみれのプリント基板をエタノールで洗浄して
回路パターンを撮影したものがこちら。
DSCN2910J

DSCN2908H

この状態で回路図を読み取ります。

以前修理した日本コロンビアのギターアンプ CGA-131 がとても良い
クリーントーンを出すので、それ以来、コロンビアの60年代のアンプに
興味が湧いてきました。

60年代のエレキブームの頃に当時のオーディオメーカーがこぞって
ギターアンプに参入した時期がありました。コロンビアはその時に
参入しましたが、数年後、この分野から撤退しています。
そのため残っている資料は少なく、製品の全容も明らかではありません。

今回入手したのは CGA-81 というアンプ。

DSCN2880AJPG

小型で軽量。練習用アンプですね。
3W 程度の出力かと思います。スピーカーは6インチのようです。

DSCN2916A

大きさを VOX の Pathfinder 10 と比べてみました。
上に載せているので若干大きめに見えますが、Pathfinder より
ひとまわり小さいです。
重さは 3.4 kg。

シングルコイルのギターを繋ぐと音量不足に感じます。
ボリュームをフルにしてやっと適当な音量。
ハンバッカーだとまあまあ。まぁこんなものか。

操作パネルはこんな感じ。
DSCN2883C

入力が MIC になっているので、ギター用のアンプではないのかとも
思いましたが、

DSCN2875B

銘板にはちゃんと Guitar Amp  と書かれています。
ここで モデル名の  CGA  が  COLUMBIA Guitar Amp の略だと
気がついた次第。




抵抗とコンデンサ、ジャックをすべて新品に交換しました。

もともと付いていた抵抗は円筒形のもの(おそらく酸化金属皮膜抵抗)。
取り替えたあとに抵抗値を測ってみるとあまり劣化していません。
そのまま使い続けてもよかったのかもしれませんが、なにぶん大きい。
そうでなくても空中配線がごちゃごちゃして整理がつかないので、
抵抗も交換して現在の小さな部品で代替することにしました。

さてすべての作業が終わり、試奏を行いました。
すべてのポットが機能し始めたのを確認。トレモロもエコー(リバーブ)も動作しています。
完成。

と思っていたのですが、数日してリバーブが効かなくなりました。
確かに日によってリバーブが弱くなったりしてました。
どうしたものか?
回路を確認しましたが、問題はなさそうです。 うむむ。

こういった場合はリバーブユニットを開けてみるしかありません。
CGA-131 のリバーブユニットはアンプ底面にあり、木ネジで固定されています。
おそるおそる木ネジ5箇所を開けてみると...

イメージ 1

なんと、木製の板(木ネジで固定していた部分)にリバーブユニットが搭載されていました。
リバーブユニットは4本のスプリングで装着されています。
写真の状態はリバーブユニットを裏返しにしている状態なので、リバーブが動作する状態は
リバーブユニット(金属のケースで囲まれている部分)が下を向いて4本のスプリングに吊るされて
いるべきです。

イメージ 2

リバーブユニット自体は上の写真のようになっています。スプリングは1本だけですね。
右側が入力側で、本体から茶色の線と赤い線が繋がっています。この茶色の線には200V 以上の
電圧が加わっているので、通電中にリバーブユニットを触ると感電するので要注意です。
リバーブユニットは木ネジで止められていますが、密閉されている訳ではなく、手を伸ばせば
触ることができます。

赤い線は 6AQ8 のプレートに直接つながっています。
普通、真空管でリバーブユニットをドライブする場合、インピーダンス変換のための
トランスを仲介させるものですが、この機体ではリバーブユニットを直接ドライブして
います。入力インピーダンスが高いのかもしれません。

当時のグヤトーンなどのアンプに採用されていたリバーブはドライブ部がコイルでなく、
入力インピーダンスの高い圧電素子を使ったものがありますが、この機種はコイルを
採用しています。

リバーブが効かなくなっていた原因はすぐにわかりました。
リバーブユニットの下にスポンジがあります。リバーブユニットが捻れて、リバーブのスプリングに
スポンジが接触していました。捻れをとり、ユニットが4本のスプリングのみで吊られている
状態にするのが正解です。

以上の作業を行い、リバーブの試奏をおこないました。
エコーのノブをいっぱいに上げると、リバーブが激しく効きます。
7分目くらいがちょうど良いくらいです。

さて、これで CGA-131 の修理が完了しました。
音はすばらしい。クリーントーンがとても気持ち良い。
トーンコントロールはフェンダートーンスタックではなく、オーディオで使われる
一般的なものです。
特徴的なのは BASS をフルにすると歪むことなく音圧のある低音が出ることです。
この低音は他のギターアンプでは聞いたことがありません。
10W 程度なので、ドラムスが入ると少々力不足になるかもしれませんが、
練習用や弾き語りなどには充分な音量だと思います。

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