長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Roland

販売しているブランドが違っていても中身はそう変わりは
ないだろうと正直タカをくくっておりました。

背面を見てみます。
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おや? AC117V ?
モデル名は MA-12CU。MA-12C だと思っていたのですが、末尾に U が
付きます。輸出仕様なのでしょうか。

ケースを開けてみて気づいたのがスピーカー。防磁タイプです。
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MA-12AV で使われていたものと同じ PD-10328A (6Ω)。
ということは回路も MA-12AV と同じか?

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基板には BOSS のロゴがあります。基板の半田面のパターンを見てみます。
DSC03189D

う〜ん。 MA-12AV と全く同じですね。
基板上で違うところと言ったら M5218L (8pin) の変わりに uPC4570HA (9pin)
が使われていることくらい。uPC4570HA は 1pin と 9pin が V+ 電源に
なっており、5pin (V-) で左右対称のピン配列になっています。
これは uPC4570HA を逆向きに接続しても正常に動作する配列で、
この基板では 1pin (V+) を使用しないで 2pin 以降を使っています。
回路図では uPC4570HA の 1pin が output になっていますが、回路図中の
ピン番号は M5217L などの一般的なものとの互換性のために敢えて
ピン番号を1つずらして表記しています。

MA-12AV との大きな違いはパワーアンプ IC。
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MA-12 や MA-12AV では製造終了品の uPC1238 が使われていました。
MA-12CU では TDA2030A  が使われています。
改造や修理がされている形跡がないので工場集荷時に TDA2030A が
搭載されていたのだろうと思います。

MA-12 の記事の中で uPC1238 の代わりに TDA2030 が使えないかと
いうことを書きましたし、 MA-12AV では TDA2030 に取り替える実験を
して正常に動作することを確認しました。
今回、MA-12CU で TDA2030A が使われているのを見て、妥当な考え
だったんだと納得すると同時に、MA-12 シリーズの修理の可能性が
広がったと思いました。

Roland MA-12CU の回路図を採取したので公開いたします。
BOSS ブランドで販売されていたモニタースピーカー MA-12 の
Roland 版です。


DSC03193A

回路図

20220628  初出

PNG:

PDF:

CUBE-20 のメンテナンスが終わりました。
主な作業は基板上の電解コンデンサ 18 個を新しいものに
交換することでした。一部カーボンコンポジット抵抗も搭載
されていましたが、抵抗値測定の結果劣化がなかったので
そのままにしています。

メンテナンス後の基板
DSC02029A

メンテナンスが終了しました。
インプットジャックにファンクションジェネレータからの 1kHz を
つないで音出し確認をします。

.... 音が出ないねぇ。

ボリューム、マスターボリュームを操作してもノイズも出ません。
まずはスピーカーを疑います。CUBE-20 ではスピーカーの端子を
保護するためにキャビネットから板が取り付けられています。
分解時に端子を外すのにちょっと手間取ったものですが、
そちらに気を取られてスピーカーの導通チェックするのを忘れて
おりました。
テスターで導通チェック。導通なし。故障確定。
以前 Behringer のアコースティックアンプから取り出した 8 inch 60W 8 Ωの
スピーカーが余っていたのでそれを取り付けて動作確認。
今度は問題なし。ちゃんと音が出ています。

最後にギターを接続して試奏。
パリッとした高音が出ています。
真空管アンプだけでなく、CUBE-20 のようなトランジスタアンプでも
電解コンデンサが劣化していると高音が冴えないこもった音になります。
元気の良いクリーントーンです。弾いていて楽しくなります。

CUBE-20, CUBE-40 は1970年代後半のトランジスタアンプですが、
いまだにファンの多いアンプです。私も気に入っていて、何度か
入手してはメンテナンスしています。もっともそのたびに知人に
譲ったりしているので手元に残ってないのですが。

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入力ジャックは OVERDRIVE と NORMAL の二つ。
左から VOLUME, TREBLE, MIDDLE, BASS, REVERB, MASTER VOL. 
のオーソドックスなコントロール。
背面中段にヘッドフォンジャック、パワースイッチ、ヒューズ(1A) が
配置されています。

背面パネルとシャーシを取り外します。
DSC02009D
電源トランスはキャビネット底面に配置されており、シャーシとは
9ピンのコネクタを介して接続されます。
スピーカーは8インチ。この個体はこのスピーカーが断線しており、
メンテナンス後に手持ちのスピーカーと交換しました。
リバーブユニットはキャビネットの上段に設置されています。
設置されている、といっても2本のスプリングの上に取り付けられており
キャビネットから振動が伝わりにくいようになっています。
リバーブユニットには HOKUSEI DENKI のラベル。この時代、
Roland のみならず国産のアンプによく採用されていました。
密度の違うスプリング2本のリバーブで、小さめながら奥深い残響が
えられます。

シャーシの中。
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プリアンプ、リバーブ回路、パワーアンプを一つの基板にまとめています。
リバーブは TA7200 というパワーアンプ IC でドライブされています。
製造終了品ですが、まだまだ入手が容易な IC で、サトー電気には
在庫があるようです。

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パワーアンプの終段トランジスタはシャーシに取り付けられており、
基板の裏に配置されています。Roland のアンプの特徴ですが、終段トランジスタは
3ピンの Molex コネクタで(半田付けなしに)接続されています。
上の写真のラグ端子 E (緑)、C (橙)、B (黄) に 2SD526 がつながっています。
メンテナンス中、この端子につながっている導線が簡単に切れてしまうので
作業に入る前に写真を撮影して記録しておくことをお勧めします。

回路を探って回路図を作成するまで、というか回路図が
できてからも疑問が残っています。
Tube Logic Technology って何なんでしょう?
特筆すべき回路構成が見当たりません。
Blues Cube のように J-FET を多用したアンプかと思っていたのですが
2SK30A がいくつかあるものの、アナログスイッチとして
使われているだけなので音響的には全く関与していません。
フィルター等による周波数特性の設定方法なのかもしれませんが、
深く考察しなければ特徴が現れないでしょう。

LM1875_poweramp

パワーアンプは LM1875 を使用しています。
この機種は出力 20W とちょっと大きいので、Roland のアンプでよく
使われる日電の μPC1238 (10W) (製造終了)ではないのですが、
ピン配列は同じです。
同じ Roland の MA-12AV では μPC1238 の代わりに TDA-2030 を
取り付けて互換性があることを確認しましたが、LM1875 でも
動作するかもしれません。
LM1875 というと National Semiconductor だと思っていたのですが、
Texas Instrument から販売が続けられているようです(現行品)。
セカンドソースの UNISONIC であれば秋月で ¥70。
壊れてもまだまだ大丈夫。

Roland GC-405 は出力 20 W のトランジスタアンプで、コンパクトな
ボディに 5 inch スピーカーを4本搭載したモデルです。
前面パネルに誇らしげに表示されているのが...

DSC01174A

"Tube Logic Technology HOT" を搭載しているということです。
それと

DSC01176B
 
"Tuned by Roland Audio Development Corp, California, U.S.A" だそうで、
アメリカ法人の開発グループが寄与しているということらしいです。

ところで "Tube Logic Technology" ってどういったものでしょう?
10年ほど前に中古の Blues Cube, BC-30 を入手した時にも "Tube Logic" 
なるマークがあり、興味を持ちました。その当時も分解して基板を
眺めましたが、特に回路図を起こすようなこともしていませんでした。
ディスクリート回路で J-FET を多用していたことは記憶しています。
J-FET の増幅特性が真空管のそれに似ているということは良く知られて
いたので J-FET を使って真空管アンプの音を再現した回路のことかなと
うすうす考えておりました。ギターアンプの回路図を採取して公開する
ようになると、同じ理由で J-FET を使ったアンプは 1970 年代後半から
あったことがわかります。その意味ではわざわざ "Tube Logic" という
名前を冠するにはもっと違った技術があるのかもしれない、と思うように
なりました。
そういえばここ数年、Blues Cube がリイシューされて "Tube Logic" が
復活しています。いったいどう言った技術なのでしょう。

前面パネルの操作部を示します。
DSC01155C

左から入力ジャック, CH SELECT, CLEAN VOLUME, LEAD PRE VOL,
LEAD POST VOL, BASS, MIDDLE, TREBLE, PRESENCE のコントロール。

背面はこちら。
DSC01150D

DSC01151E

左から PHONES, EXT SP OUT,  RETURN, SEND, FOOT SW の
5つのジャックが並んでいます。
このクラスのアンプで SEND, RETURN が付いているのはなかなか
珍しい。
この個体の型式は GC-405X となっており、販売された時には外部キャビネット
(5inch sp x 4)とセットだったようです。

背面パネルを開けてみます。
DSC01157F

8Ωの 5inch SP を2本直列にしたものを2組並列に接続しているので
インピーダンスとしては8Ω。

シャーシ内部は以下のようになっています。
DSC01160G

パワーアンプ IC は LM1875。ちょっと大きめなアルミの放熱フィンが
付いているのがそれです。
基板自体はちょっと大きめですが構成はシンプルそうです。

シャーシを取り出します。

DSC01166D

電源回路とプリアンプ部が一枚の基板に納められています。
リバーブなどのエフェクトも搭載していないのでとてもシンプル。

DSC01168E

パワーアンプ IC は日電の μPC1238 。
 Roland の10W 前後のギターアンプでは良く使われたIC です。
これまで解析した機種の中では JC-20, MA-12, MA-12AV など。
現在製造終了の IC ですが、TDA2030 で置き換えが可能
です(音がちょっと変わりますが)。

DSC01169F

基板の部品面。
やはりシンプル。能動素子は M5218L (三菱の 4558)ひとつだけ。
ギターアンプとしての音作りが必要なので、MA-12 のように μ PC1238 に
信号増幅までさせるような設計ではありませんが、必要最小限の構成と
言って良いでしょう。
10W クラスの Jazz Chorus として設計されたという噂もありますが、
回路構成を見る限りそのような特徴は見当たりません。

MG-10 の操作部。
DSC01136AA

INPUT は一つ。GAIN, VOLUME, MASTER VOLの3ボリュームに
BASS, MIDDLE, TREBLE, PRESENCE のトーンコントロール。
前面にヘッドフォンジャックを配置しています。


DSC01132B

背面にはジャック等はありません。背面がほぼ密閉された構造になっています。

DSC01139C

スピーカーは5インチが2本。接続は単なる並列接続です(4Ω)。
Jazz Chorus シリーズのようにスピーカーごとにパワーアンプがある
というわけではないようです。
背面を密閉型にしたため前面下部に丸穴が配置されています。
ダクトがなく共振周波数を設定していないもののバスレフ構造になっています。

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