長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Polytone

Teeny Brute のメンテナンスが停滞しておりました。

例によって経年劣化を起こしているであろう電解コンデンサの
交換をメインに行うのですが、電源平滑コンデンサ 4000uF 40VDC  x 2 の
入手に手間取りました。

交換前の電解コンデンサはこのように取り付けられています。
DSC04206B

このでかいブロックコンデンサ2本。

基板側
DSC04213C

でかい4本のマイナスのネジがありますが、このネジでコンデンサの
電極と基板パターンを接続させています。

ちなみにプリアンプとパワーアンプの小さな電解コンデンサはさっさと
交換を済ませております。
故障箇所であった 0.15Ω 5W のセメント抵抗も交換しました。
(色が白い!)

ブロックコンデンサのネジを外すと、こんな状態でシャーシに取り付けられて
います。

DSC04216D


このブロックコンデンサの代替を手配している間にあらかたの
メンテナンス作業を終えていたので、現状のブロックコンデンサのまま
組み上げて電源を入れてみました。
Volume を絞った状態でもスピーカーから無視できないレベルのハムノイズが
出ていました。やはり電源平滑用のブロックコンデンサが劣化していると
判断しました。

通販で注文していた代替のコンデンサが到着したのが昨日。
4000uF 40VDC そのものは入手できないので、代替として手配したのが
4700uF 50V。すこし大きめの容量。
DSC04204A

実物が届くまで代替できるかどうかの確信が持てませんでした。
というか、届いてからも本当に取り付けられるか疑問でした。
届いたブロックコンデンサの直径が 35 mm。現状のものと変わりません。
ネジ端子の形状、間隔等、調べて注文してはいるのですが。

実際には取り付けてみると全て間違いなくフィットしました。ほっ。
DSC04219E

シャーシ上部。
DSC04221F

コンパクトになりました。
なんとか無事とりつけ完了です。

これでキャビネットに組み込み試奏してみます。

メインヒューズは 1A の SLO-BLO に取り替えています。
電源 ON。ヒューズは飛びませんでした。ほっ。
電源平滑コンデンサを 4000uF から 4700uF に変更しています。
容量が大きいとノイズ低減などのメリットもあるのですが、
デメリットとしては電源投入時の突入電流が大きくなります。
SLO-BLO ヒューズが耐えられるか気になっていました。
問題ないようですが、しばらく注意しておきます。

ハムノイズは低減しました。皆無ではありませんが、気にしなければ
気にならない程度。
ブロックコンデンサ交換前と比べると音にハリがあります。
高音に伸びがあります。ボリュームを目盛り4位に上げると近所を気に
しなければならない程度の音量になります。これ以上は上げられませんが、
ヘッドルームの高さを感じます。
トーンコントロールの変化幅も大きいです。やはり NFB トーンコントロール。
DISTORTION の音は月並みかなぁ。レベルを絞った位置でも歪んでいるので
クリーントーンにちょっと味付け、という感じで加えることを意図している
ようです。
アコースティックギターを繋ぐと素直な音が出てきます。色付けされてない、
という感じ。使えそうです。

Polytone のアンプはクリーントーンに定評があり、おもに
Jazz ギタリストに人気があります。

初段の回路

FirstStage
BRITE - (OFF) - DARK の3段切り替え(実際には4接点の
スライドスイッチ)が付いています。
中間(OFF)に設定するとおよそ3倍のゲインしかありません。
BRITE にすると広域が 10倍程度に強調されます。
DARK では C114 と C106 がフィードバックに加わり、
低域が強調されます。
DARK ポジションの方法はあまり見かけません。
歪みを意識したアンプならブーミーな歪みになるので低域は
できるだけカットします。また初段のゲインはもっと大きく
設定されています。

初段の次の段はNFB トーンコントロール
NFB_tone

一般的な BASS-TREBLE のトーンコントロールに OP アンプに
よるフィードバックをかけてコントロールのキレを良くしています。

Distortion はトーンコントロールの次段で作ります。

Distortion

典型的なオーバードライブ回路ですが、歪みに関する調整(GAIN や TONE)
がなく、固定された音質の歪みを生み出します。調整できるのは
DISTORTION ツマミのみ。歪みのレベルだけのようです。

おそらく Polytone の特徴と思われる Mixing 部。

Mixing


トーンコントロールからの信号(クリーン)とディストーションの信号を
ミキシングします。下の OP アンプ回路は2つの信号をミキシングして
リバーブドライブに渡します。上の OP アンプ回路は上記2つの信号に
リバーブ出力を加えてパワーアンプに渡します。

クリーントーンとディストーションをミキシングして音作りをすると
いう方法は他に目にすることはありません。
おそらくクリーントーンを主体にして、歪みを DISTORTION ツマミで
さじ加減しながら加える、と言う使い方になると思います。

またリバーブはドライブ回路とミキシング部が独立しており、
リバーブ出力がリバーブ入力に対して影響を与えません。
Fender に代表されるリバーブ回路ではリバーブ出力を強くすると
ハウリングを起こす構成になっているので、リバーブを適切なレベルに
抑えるよう設計されています。
それに対し Polytone の回路ではハウリングを起こす畏れがないので
深いリバーブをかけることができる構成になっています。

パワーアンプは同一基板上にあり、プリアンプと分離されています。

DSC04092A

この基板の電源回路はパワーアンプ専用の電源で、プリアンプには電源トランスの
別の巻線から電源が供給されています。

手前にある16ピンのIC は LM391N-80。
パワーアンプIC というよりドライブ IC。ドライブ段と終段のトランジスタを
コントロールする IC で 80W までのパワーアンプを構成できるもの。


パワーアンプにつきもののでかい電解コンデンサが基板上に見当たりません。
基板の下に大きなブロックコンデンサ 4000uF 40VDC が2本。

DSC04094B

基板とはネジ端子で接続されていますが、1枚目の写真ではネジを外した状態で
撮影しています。実際には M4 のネジ4本で電解コンデンサ2本と接続すると
同時に電解コンデンサのコンデンサバンドを介して基板を固定しています。
1枚目の写真で基板を固定するネジ穴などが他にないことに注意してください。
基板を保持する役目も兼ねているので、ここの電解コンデンサは
ネジ端子のものでなければならないのです。入手が難しい部品です。

回路を探っている段階で、抵抗値がわからないセメント抵抗がありました。
抵抗値を表示している面が手前の半固定抵抗に隠れて値が読めません。
DSC04095C
終段プッシュプルの過電流防止抵抗なので対称となる抵抗の値(0.15Ω 5W)
から同じものだと推測はできるのですが、抵抗を測ってみます。
おや。抵抗がないねぇ。
そういえばこのアンプを分解する前にちょっと試奏したけど Distortion を
かけていないにもかかわらず歪んでいました。あ、これかな。
基板から取り外して再度抵抗測定。
DSC04097D

やっぱり断線してますね。
5W 0.15Ω であることも確認しました。手持ちがないので通販で注文しました。

この基板を取り囲むシャーシはアルミ製です。
アルミ板を折り曲げて作っているのですが、4つのコーナーが溶接されています。
DSC04102E
スポット溶接はたまに見かけますが、これだけ広い範囲で溶接している例は
あまり見かけません。おそらくノイズ対策でしょう。

前回の記事でリバーブがキャビネット側面にあって吸音材で囲まれている、
ということを書きました。リバーブユニットを見るためには吸音材を
キャビネットから外さなければなりません。
吸音材はタッカーでキャビネットに取り付けられており、リバーブユニットの
片面だけで6ヶ所のタッカーを取り除きました。
やっと目にすることができたリバーブユニットがこれ。

DSC04108F

Accutronics ですね。スタンプがかすんでいて文字が判別しにくいですが、
1DB2D1C のようです。
なお、RCA ジャックは上が OUTPUT,  下が INPUT です。

キャビネットとは2本のネジで留められています。キャビネットから
取り外した写真がこちら。

DSC04111G

2スプリングですね。コイルの断線もスプリングの脱落もない正常な
ユニットです。

リバーブユニットの縁に振動対策のスポンジが貼っていましたが、
経年劣化のためボロボロです。触れば崩れて粉になります。
埃のもとになるので丁寧に剥がし、新しいスポンジテープに貼り替えました。

1A のスローブローヒューズに交換すればよいのですが、どこに仕舞ったやら。
Fender などの海外の真空管アンプではお馴染みのスローブローヒューズ
(タイムラグヒューズとも言う)なので、機会があるたびに余分に購入して
ストックしていました。ただここ数年、国産アンプばっかり扱っていたので
久しくスローブローヒューズを使っていませんでした。
秋葉原に行った時にはラジオセンターの小沼で同じ電流値の5本セットを
数種類買ったりしていたのですが。

見つけられなかったので、1A の通常のヒューズを取り付けて動作確認を
してみました。
電源 ON。
あれ? 歪んでる。DISTORTiON は使ってないのになぁ。
とりあえず電源スイッチ(ON-OFF-REVERSE)を REVERSE 側に
してみよう。。。ブチっ
ヒューズが飛びました。仕方ないなぁ。やはり スローブローヒューズを
注文するか。

回路図を採取するために分解します。
まずは前面の灰色のスポンジでできたスピーカーグリル(?)を外します。
何年前の製品かまだ調べてはいませんが、30年は経過しているように
思います。スポンジはまだ劣化していないようですが、丁寧に取り扱います。
DSC04046A
スポンジはマジックテープで留められていました。

(20221025 追記)
スピーカーは12インチ。メーカーを示唆するマーク等はありませんが、
エミネンスのような形状をしています。リバーブを搭載しているので
Mini Brute II に分類される機種のようです。


次に密閉型の背面パネルのネジ留め14点を全て外します。
DSC04052B
最初に目につくのがプリアンプ基板。
頑丈そうな筐体に囲まれています。基板上には LM301A や RC4739 が
見えます。LM301A とはまた古風な。RC4739 ?? 見たことがないなぁ。
設計は70年代か?

キャビネット内はグラスウールの吸音材(ピンク色)がびっしり。
ギターアンプで吸音材を敷き詰めたモデルは初めてです。

DSC04054C

キャビネット底部には電源部とパワーアンプのシャーシがあります。
パワーアンプの終段トランジスタ2個はそれぞれ大きな放熱フィンに
取り付けられています。密閉式で吸音材がこれだけ密接していれば
大きなフィンも必要なのでしょう。

そういえばリバーブはどこにある?
DSC04082D

スピーカーを取り外さないとわからない位置にありました。
それも吸音材でリバーブユニット全体を包んでいます。
RCA プラグが2つあるのでやっとリバーブと気がついた次第。

う〜ん。メンテナンスに苦戦しそうだ。

海外アンプの回路図を公開した経緯は先に書いたので今回は本題。

Polytone のアンプはジャズギタリストに人気がありますが、
なかなか目にする機会がありません。
人気の秘密がどこにあるのか、回路的な考察を行なってみたいと思いました。

DSC04033A

背面側にまとめられたコントロール。
左から Power SW, BASS, TREBLE, VOLUME + DISTORTION, 
BRITE / DARK スイッチ、HI, LO の2つのインプット、
REVERB。配置も独特です。

VOLUME と DISTORTION は二軸二連ボリュームが使われており、
独特です。さらに DISTORTION の ON / OFF スイッチ(DISTORTION が
ゼロの位置で OFF)がついており、これが壊れたら代替部品は
手に入らないだろうと予想してます。

背面。

DSC04032B

背面は完全に密閉型です。シャーシの固定も兼ねているのでしょうが、
背面パネルは14本の木ネジで頑丈に留められています。

背面のジャック類はこちら。
DSC04044D

左から DISTORTION と REVERB 兼用のフットスイッチ、
MAIN OUT、 外部スピーカーとジャックが並びます。

このアンプに限ったことではないのですが、中古の個体を入手した時に
私が最初にすることは「ヒューズを確認する」です。
もちろん電源を入れる前にです。
ヒューズは前のユーザーに交換されていることがあります。それが
指定外のものに交換されていた場合、火災などの重大な事故に繋がる
可能性があります。まず最初にチェックすべきです。

で、今回、指定外のヒューズが取り付けられていました。
15A。
家庭用のコンセントやテーブルタップで供給される最大電流が 15A です。
ということはこのヒューズは家庭で使っている限り、「溶断することはない」
という大変危険なものなのです。

さて、では安全なヒューズは?
DSC04037C

"1A のスローブローヒューズを使え” ということのようです。

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