長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: YAMAHA

F-30R の前面パネルのコントロール。

DSC00912B

入力ジャックは一つ。CH SELECT スイッチで A チャネルと B チャネルを
切り替えます。A チャネルは VOLUME のみ。B チャネルは GAIN, MASTER VOL の
組み合わせで歪みを調整できます。

DSC00913C

トーンコントロールは TREBLE, MIDDLE, BASS。 REVERB 搭載。
オーディオ入力の AUX IN とヘッドフォンジャックが前面に装備されてます。

背面:
DSC00915D

入出力ジャックは全て前面に集めているので、背面はとてもシンプル。

DSC00917E

スピーカーは X2788A0、リバーブユニットには 2DA3C1B というラベルが
付いています。Accutronics の型式名称を思わせます。

シャーシを開けてみます。
DSC00922F
電源+プリアンプ部の基板とパワーアンプ部の基板に分かれています。

パワーアンプ部
DSC00925G

パワーアンプは TDA2030A を2つ使って BTL を構成しています。


やっと F50-112 のメンテナンスが終わりました。
回路図は採取して公開したものの、160V 耐圧のコンデンサとか
100V 2200uF のブロックコンデンサとか、結構入手先を
探さなければならない部品が多く、時間がかかりました。

メンテナンス前の状態から提示します。
まずは操作部。この機種の特徴であるパラメトリックイコライザの操作部。
DSCN3808A
3つのコントロールで操作するパラメトリックイコライザです。
真ん中の Q はフィルターの Quality factor です。共振周波数周辺の
鋭さ/なだらかさをコントロールするパラメータです。
OZ-660 にもパラメトリックイコライザが搭載されていましたが
Q は調整できませんでした。
回路図を採取する時に結構苦戦しました。パラメトリックイコライザの
定番的な回路ではなく、OP アンプを6回路(IC 3個)も使った複雑な構成。

DSCN3811B
背面はこんな感じ。バックプレートの間から大きな放熱フィンが伺えます。
バックプレートを取り外すと

DSCN3812C
放熱フィンには2つのトランジスタ 2SC2261 が取り付けられています。
トランジスタをさらに放熱フィンで取り囲んでいるのは感電対策でしょう。
パッケージ(コレクタ)に直流高電圧がかかっているので触ると危険です。
スピーカーの下にリバーブバッグに入ったリバーブユニットが見えます。

さてシャーシの中を見ます。まずは電源部。

DSCN3816D
中央のトランジスタ付近の抵抗に粉を吹いているようだったので撮影して
しまいましたが、これは異常ではありませんでした。シャーシを開ける前に
アンプのハンドルを取り付ける作業をしたのでその真下に埃が落ちたようです。
そちらに注意が行ってしまったので元々の電源基板の写真はこれしか残っていません。(^^;)

DSCN3819E

シャーシの中身。横幅が長いので全体を捉えることが難しいですが、
電源トランスやブロックコンデンサ、スピーカーカップリングコンデンサが見えます。
手前がプリアンプ部。写っている部分は左からトーンコントロール、チャンネルセレクト、
リバーブ(出力)、パラメトリックイコライザ、リバーブ(入力)のそれぞれの回路。


DSCN3820F
入手難のIC がありました。Toshiba TA7220。リバーブをドライブする IC です。
データシートも入手できていませんので、該当する回路図の部分が
ピン接続図になっています。

(20230323 追記 TA7220P は最大出力 1.9W の小出力低周波増幅器。
電源電圧 12 ~ 45V。CQ出版「最新リニヤIC規格表 '79」pp. 70 )

次にパワーアンプ部。
DSCN3835H
写真上部のコネクタが電源基板と接続されており、電源とプリアンプ部からの入力が
供給され、スピーカーへの出力を供給します。基板とパワートランジスタ 2SC2261 とは
トランジスタソケットを介して半田付けされています。メンテナンス性が良い構成です。

リバーブを開けてみます。リバーブバッグはネジで4点留められています。
リバーブバッグからリバーブユニットを取り出してみると

DSCN3839J
Accutronics 4EB3C1B が搭載されていました。
ちょっと感動したのが外部からの衝撃を緩和するための発砲スチロールの
専用容器に入っていたこと。
他のメーカーだと段ボールとかスポンジが貼り付けられているだけとか、
結構ラフな構造になっていることが多いのです。
リバーブだけでなく全体的に丁寧に作られているなというのが本機の印象です。

YAMAHA F50-112 の回路図を採取したので公開いたします。

DSCN3803A

パラメトリックイコライザを搭載しており、かなりの分量になりました。
リバーブとパラメトリックイコライザの回路をまとめて Effects という名称のファイルに
まとめました。

回路図

 20200625  初出
 20220326  エフェクツ部:誤り訂正
 20230108  エフェクツ、パワーアンプ:タグ誤り修正
 20230131  パワーアンプ:R306, R321, C310 訂正
  
 PNG:
    電源  Power Supply

    プリアンプ Pre-Amplifier

    エフェクツ  Effects

    パワーアンプ  Power Amplifier

 PDF:


schematics  F50-112.pdf

YAMAHA J-25 の回路図を更新しました。(ver.20200307)

変更点:
電源電圧の測定値の記入
+B : 65V
Vcc1: 36V
Vcc2: 29V
Vcc3: 28.5V
Vcc4: 28V

スピーカーの型式(JA3015  8Ω)記入
その他、誤りの訂正。


入手した J-25 は音づまり以外に大きな問題はなかったのですが、
出てくる音にハリがありません。なんか元気がない。ちょっと不安定。
さすがに40年経過しているので、電解コンデンサの交換をすることに
しました。
基板に搭載されている電解コンデンサは問題なく交換できました。

問題になるのは電源用の 80V 2200uF とスピーカー結合用の
75V 1000uF のブロックコンデンサ。
DSCN3154A

最近の電解コンデンサは小型化が進んだため、同容量で写真のサイズと
同じものは手に入りません。同じ時代の同等品が手に入ったとして、
それが未使用品であっても電解コンデンサは劣化が進んでいるので
交換には適しません。
ブロック型に拘らず、新品の電解コンデンサに交換します。

私がよくやるブロックコンデンサの代替はラグ板を使う方法です。
DSCN3156B

ラグ板に縦型電解コンデンサを取り付けて、ブロックコンデンサが付いていた
ねじ穴に固定します。
電解コンデンサは左が 75V 1000uF の代替 100V 1000uF (茶色)、
右が 80V 2200uF の代替 100V 2200uF (黒) を取り付けています。

これに配線を接続してシャーシにねじ止めしたのが次の写真。
DSCN3159C

このあと電解コンデンサをホットボンドでシャーシに固定しています。

これで J-25 のメンテナンスは終了です。
仕上がった J-25 は動作が安定し、クリーントーンにハリがでました。
ディストーションはダイオードクリップ回路とブライト回路を加えた
だけのシンプルなもので、70年代らしい音です。

今となっては音にこれと言った特色があるアンプではないのですが、
当時のギターキッズとしては思い入れがあるアンプでした。

本体から回路を取り出してみます。

DSCN3139F

大きなブロックコンデンサ2つが目に着きます。
上が電源平滑用の 2200uF 80V, 下がスピーカー出力用(直流カット)の
1000uF 75V です。おそらく交換することになるかと思いますが、
現在の部品を使えばかなり小さくなることでしょう。

フロントパネルにポットと入力ジャックのネジで止められているのは
プリアンプ部の基板 YAMAHA LC80794 です。

手前にあるのが電源部とパワー・アンプ部の YAMAHA LC80652 基板。
ちょっとアップにしてみると
DSCN3143H

電源とパワー・アンプという発熱しがちな部分をコンパクトに
まとめ、アルミ板に固定することで放熱しています。
出力トランジスタは上が 2SD526, 下が 2SB596 です。
トランジスタの間にあってアルミ板にねじ止めされているのは
ダイオードで型式は不明です。出力トランジスタの熱暴走
対策のためにトランジスタと同じ温度になるように
アルミ板に取り付けられています。

さて、入手したばかりの状態のこのアンプの問題は音づまりでした。
音が出たり出なかったり。よくあるのは Volume の劣化。俗に言う「ガリ」。
ただこの個体ではポットの操作に関係なく音づまりが出ていました。
問題となっていたのは DISTORTION ポットでした。

DSCN3145I

ポットの位置が0から上げるとスイッチが入る、スイッチ付きボリューム。
電源のオン・オフと連動するような単純なものであれば、一般のパーツ屋
でも入手できるかもしれませんが、アンプに使われているものは
少々複雑で入手困難なことが多いのです。

J-25 の場合、このスイッチ付きボリュームはまず入手不可能といっても
過言ではないと思います。スイッチが2回路2接点。いわゆる DPDT。
おそらくヤマハ が特注でボリュームメーカに作らせたもの。
それも10kΩの C カーブ! 
これが壊れたら代替はありません。(とはいえ対策は可能です。)

音詰まりの原因はこの2回路2接点スイッチでした。
これが接触不良を起こしていました。外部から端子にテスタを当てて
導通をチェックしてもまるで反応がありません。
仕方がないので基板から取り外し、ポット側の爪4点を開けて
分解し、接点復活剤を少量吹きかけました。
DISTORTION が ON か OFF にかかわらず、信号がこの接点を
必ず通る回路になっています。
とりあえず、この処置で音づまりは解消しましたが、
このアンプはこのスイッチ付きボリュームによる故障が多いだろうなぁと
考えてしまいました。

今回解析した YAMAHA J-25 は40年以上前に発売されたモデルです。


DSCN3121A

前面コントロールは左から Power スイッチ、 High 入力と Low 入力。
DSCN3123B

パワースイッチはグランド切替スイッチを兼ねています。
中点がオフ。上下どちらかに傾ければオンになりますが、
ハムノイズが酷い場合、反対側のオンに切り替えるとノイズが低減される場合が
あります。

パワースイッチが本体の左側にあるのは珍しい。
私自身、電子機器を設計するときには電源スイッチは右側に配置します。
理由は

 (1) 非常時に素早く電源をオフにできること
 (2) 電源電圧がスイッチに漏れている場合に心臓に近い左手で
  操作しないように

ということを考えてのことです。
(1) は右利きが多いからという理由ですね。

DSCN3124C

コントロールは左から VOLUME, BASS, TREBLE, DISTORTION, REVERB の順。
近年の一般的なアンプでは TREBLE, BASS の順なので、ちょっと戸惑います。
また Master Volume は搭載されていません。

DISTORTION はスィッチが連動されており、0の位置に合わせると
スイッチがオフになり、クリーンチャンネルとして動作します。
このクラス(出力 25W)のアンプだと練習用という位置付けでしょうが、
ライブ時には使いにくい仕様だったことと想像します。
フットスイッチでオン・オフできる機能もありません。
もっとも、ギターアンプにディストーションの機能がついた、
ということ自体が目新しくて嬉しい時代だったので、あまり
問題にはならなかったのでしょう。

DSCN3134D

背面のレイアウトは上の写真のとおり。
左から REVERB FOOT SW, HEADPHONES のジャック。
当時、ヘッドフォンを使って夜中にも練習できる、というのが
YAMAHA の J シリーズの特徴でもありました。
真空管アンプからトランジスタアンプへ移行しようとする時代で、
真空管アンプではヘッドフォンジャックを搭載しているモデルは
皆無でした。 Jugg Box の Staff シリーズや Micro Jugg に
ヘッドフォンジャックがあるのはこれらのモデルの影響と考えられます。

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