長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: ロッキンf エフェクタ復刻

ちょっと間が開きましたが、ケース加工が完了したので
配線に取り掛かります。

ケース加工も慎重に進めましたが、配線も慎重に行います。
ケース内部には AC100V ないし AC220V の交流電圧、
また 300V を超える直流電圧が存在します。
これらの電圧ラインに部品等が接触した場合、火災や感電などの
事故が生じかねません。これは絶対に避けなければ。

Tube Distortion では部品の取り付けがケース上部と底部に分離され、
シールド線などでの配線で接続しなければなりません。
回路のメンテナンス性を重視すると、配線を長く引き回してケース底部の
回路基板に手が入りやすいようにするのが得策です。
ただ配線を長くするとケースを閉じた時に配線自体が邪魔になり、
回路を圧迫するという欠点も生じます。痛し痒しです。

いずれにせよ、電源周辺は部品の干渉による短絡が起きないように
注意します。
DSC02276A
交流電源の取り出し口とヒューズホルダ、電源スィッチ。
端子が露出しないように、配線の半田づけ後に熱収縮チューブをかぶせて
絶縁します。
パネル上面に取り付けた電源スィッチの LED への配線も行います。

DSC02278B
電源トランス(上)とヒータートランス(下)。
一次側 AC 100V を近づけて配置します。
両トランスとも、使用しないタップには熱収縮チューブを被せて
熱を加え絶縁しておきます。短絡を防ぐ意味もありますが、
配線ミスをなくす効果もあります。

DSC02283C

電源トランス、ヒータートランスから電源基板(手前)に撚り線(赤と青)で
配線し、電源基板からメイン基板の電源(+B1:赤、+B2:橙、Heater: 青、
GND: 黒) を接続します。

DSC02288E

パネル上面のトーンコントロールポット(上段)の基本的な配線をしておきます。
上段の右から Treble, Middle, Bass の順。下段左は Master Volume。
Middle, Bass のポットでは 2-3 端子間を短絡させておきます。
あとで気がつきましたが、写真の右上の Treble のポット(250kA) の配線が
間違っています。青の線が繋がっているのがポットの3端子(左)ですが
1端子(右)でなければなりません。3端子にはこのあと黄色の線を接続する
ことになりますが、以後の写真でも間違っているので注意してください。

ポットの下準備ができたら、平ラグ板に作ったトーンコントロール回路を
組みつけ、配線を完了させます。
DSC02291F

このあとはシールド線による配線になります。
入出力ジャックとフットスィッチ、メイン基板と Gain, Volume,
トーンコントロール回路、Master Volume の間をそれぞれシールド線で
配線していきます。
この作業はただただ地道にシールド線を繋いでいくだけ。

DSC02295G

かなりごちゃごちゃしてしまいます。細めのシールド線を使った方が良いかも。
なかなか大変。

すべての配線を終え、なんとか部品の干渉もなく上部パネルを被せることが
できました。

動作確認をする前に、間違った操作をしないように
ポットにノブを取り付け、ラベルを貼っておきます。

DSC02298H

背面にもラベルを貼ります。
DSC02304J

さあ、次は動作確認です。

さて、ケースの穴あけです。

メイン基板と電源基板の取り付けは L字金具を使う予定でした。
DSC02228A

これを使って基板を底面に対して垂直に設置することを考えていました。
ところが前回でも述べたようにメイン基板では底面に取り付けるのが難しい。
また、これを使うと基板が5mm ほど底上げされてしまうので、
上面パネルに取り付けるポットなどの部品と基板が干渉するおそれが
あります。
それとこの L 字金具は地元のホームセンターを何軒か回ってやっと見つけた
もので2つで¥240。ちょっと高い。もう少し大きいものだといくつか
あるのだけれど、これがおそらく最小サイズでかつ基板に合ったサイズ。
入手が難しいかも。

そこで秋月で売っている垂直取付用ブロック CB3-10 を使うことにしました。
DSC02230B

これだと 5 mm ほど基板の背が低くなります。
電源基板に取り付けたのがこちら。
DSC02233C
DSC02237D

メイン基板は 10 mm のスペーサーを使って、
左側面に設置することにしました。
左面
左側面に基板を留める 3.2 mm の穴を2つ開けます。
側面から基板を支えることになりますが、底面の制約から
逃れることができます。

底面の穴あけ箇所は6箇所。
底面
加工面にマスキングテープを貼り、ポンチで位置決めをして、
2.0 mm のドリルで最初に穴を開け、2.5, 3.2, 4.0 と少しずつ
ドリルの径を大きくしていきます。
底面と側面は鉄製なのでなかなかドリルが通りませんが、
あせらずに。

穴を開け終わり、部品を仮組みしたのが次の写真。
DSC02239A
なんとかまとまりました。

左側面
DSC02240B

底面
DSC02241C


次にパネルの加工に入ります。

パネルに取り付ける部品はできるだけ背の低いものが望ましいです。
電源スイッチは電源トランスと干渉する可能性があるので、端子まで
含めて背が低いものを選びました。
DSC02272D

波型ロッカースイッチも考えたのですが、角穴を開けるのが面倒なので
丸型を選びました。 赤 LED 付き。直径 20 mm。

上面パネルの加工
上面

フットスイッチを取り付ける斜面の加工斜面
最後に背面
背面
パネル表面にマスキングテープを貼り、その上に寸法線をひいて
穴の位置を確定します。
DSC02249A

ドリルは2.0 mm から始めて、2.5 mm, 3.2 mm, 3.5 mm, 4.0 mm と
少しずつ大きなドリルに取り替えながら穴を広げていきます。

電源スイッチの 20 mm の穴も中心に 2.0 mmの穴を開けるところから
始めます。 6mm まで穴を広げた後、19 mm のホールソーを使います。
DSC02252B

20 mm のホールソーがあるならそれがベスト。私の場合、19 mm が
手持ちの中でいちばん近かったのでこれを使いました。
DSC02253C

現物と合わせて穴の大きさが
足りない分はテーパーリーマーで広げます。

DSC02254D

さて、ドリルの刃は 10 mm まで。パネルの加工には 12 mm の穴が
4箇所。10 mm の穴を開けたあとに、12 mm まで広げるには
ステップドリルを使います。

DSC02256E

このステップドリルは最大で 12 mm なので誤って削りすぎることが
ありません。

全ての加工が終わったら部品を使って仮組みしてみます。
電源スイッチ
DSC02257F

フットスイッチ、ポット、トーン用平ラグ板の仮組み。
DSC02259G

ケース内側の仮組みの様子
DSC02261J

入出力ジャックの奥にあるのがトーンコントロール回路。
Volume ポットを跨ぐ形で 15 mm の樹脂スペーサーを介してパネルに
設置しています。

仮組みしたら、もう一つのシャーシ(底面、側面)と合わせて部品の
干渉がないか、パネルがちゃんと閉まるのかを確認します。

DSC02265K

だいじょうぶそう。

DSC02268M

部品の干渉もなく、無事にまとまりました。ほっ。

基板に部品を搭載したら完成間近、と思うのは早計。
今回作った基板をケースに組み込まなければなりません。
部品が搭載された状態でないとケース内部の配置が検討できない
ので、先に基板を完成させています。
特に今回はシールド付きの真空管があるため、3次元での配置を
考えなければなりません。

今回使用するケースはオリジナルの記事と同じ リード社の GTS-2。
DSC02156A
40年経過してもなお現行機種というのはすごい。
私は東京ラジオデパート2F のエスエス無線で通販で購入しましたが、
他にも取り扱う通販が見つかりました。
例えばマルツ。ここではケースのデータシートも入手できます。
おおまかな寸法は 200(W) x 70(H) x 150(D) (mm) 

側面はこんな感じ。
DSC02159B
これだけ大きければレイアウトも容易だろうと思うかもしれませんが、
DSC02160C
メイン基板と比べると、余裕があまりないのがわかると思います。
ケース上面にポット6つとパワースイッチを搭載するわけですが、
基板の上の縁と干渉しないように配慮しなければ。
ポットは本体が厚いもの、たとえば通信用のΦ24 の密閉型などだと
基板や真空管シールドケース、トランスなどに干渉する可能性があります。
よってΦ16 のポット(厚さ 10mm くらい)を選ぶのが妥当です。

底面。
DSC02224D
通風口が付いています。4すみにゴム足。

ケース内側から見た底面と側面。
DSC02226E
底面と側面(2つ)は鉄製。側面は板金を折り曲げて作ったものを底面に
溶接しているようです。強度的には充分だと思います。

ただ、基板を L 字金具等で搭載するには制約が多い底面です。
問題点は2つ。

一つは側面付近の
側面の折り返し部分には穴を開けられないし、ゴム足の範囲内(直径21mm)
には穴を開けられてもゴム足とネジ頭が干渉してしまいます。
上の写真の左側面近くにメイン基板を設置しようとしましたが、
困ったことにメイン基板のマウントホールの間隔(110mm)がゴム足の
間隔と同じなので、ゴム足との干渉しないポイントを探すだけでも大変。

2つめは通風口。
底面に基板やトランスを取り付けるわけですが、通風口を避けて
穴を開けなければなりません。それも強度的には通風口と通風口の間の
真ん中あたりに開ける必要があります。

結局、基板やトランスをあれやこれやと動かして、あーでもない、
こーでもないと悩んだ挙句、日曜日一日かけてレイアウトが決まりました。
次回に報告します。

基板が到着し、大まかな問題点もわかったので、基板に
部品を搭載していきます。

まずは前回に指摘した問題点をどう解決するか。
メイン基板の問題点はシールド付き真空管ソケット(VT9-PT-C)の
スペーサーの取り付け穴。
シールドなしのソケット(VT9-PT) にすれば何の問題もないのですが、
オリジナルの記事でシールドを指定しているので、シールド付きに
チャレンジすることにします。

スペーサーの取り付け穴を開けます。
まずは現物を取り付けてみて穴を開ける場所に赤ペンで印をつけます。
DSC02166A

電動ドライバに 1.0 ミリのドリルを差し込み、印をつけた位置に穴を
開け、次に1.5 ミリのドリルで穴を広げます。

DSC02168B

シールド付きソケットをはめ込んで確認します。
DSC02169C
うん。うまく行きました。ちゃんと装着できそうです。

基板の裏面はどうなっているかというと
DSC02170C

見事に(?) パターンが切断されてますね。パターンが切断されているのは本当は
良いことではないのです。でも今回はシールドの GND をこの穴で接続するのと
切れているパターンが GND ラインであるので、ジャンパ線を接続しなくても
使えそうです。
切断したパターンの両側の緑色のレジストをカッターなどで剥がして銅箔を
露出させます。
DSC02171D

ソケットを装着するのは基板上の他の部品を搭載した後になるので
それまでの間に銅箔表面が劣化しないように半田を盛っておきます。
DSC02172E


さて、次は電源基板の問題点。
アキシャルリードの電解コンデンサにするか、ラジアルリードにするか。
ラジアルリードの方が入手性、価格、占有面積の点でメリットが大きいのですが、
高さが高くなるのでケースへの取り付けの際に他の部品と干渉するなどの
問題が起こるかもしれません。できれば低いに越したことはない...

ただアキシャルリードにしたからといって高さが低くなるというわけでも
ありません。両方の部品(47uF)を基板に取り付けてみて比較してみました。
DSC02173F
DSC02174G

思ったより背が高くはないですね。7mm ほどの差か?
寸法上は アキシャルリード F&T 47uF 500V は 直径 21 mm
ラジアルリード 47uF 350V は高さ 26 mm。
これくらいの差なら特に大きなデメリットではないだろうと判断します。

(20220221 追記)
ここでは手持ちの 47uF 350V を使いましたが、ラジアルリードの
電解コンデンサで私がしつこく (^^;) 話題にしている秋月電子の
47uF 400V ラジアルリード(ルビコン PX) は高さ25mm。
ほぼ同等の高さになりそうです。 
(追記 ここまで)

というわけで、ラジアルリードの電解コンデンサを使うことにしました。


方針が決まったので、基板に部品を搭載します。
まずは電源基板。

抵抗から搭載していきます。
R6  3.0Ω 2W が手に入らなかったので 2.7Ω 2W で代用しています。


(20220305 訂正)

R6  3.0kΩ 2W が地元のパーツ屋で手に入らなかったので、
2.7kΩ 2Wで代用しています。

これを作っている時には R6 が 3.0Ωだと思い込んでました。
3.0kΩが正しいです。写真の抵抗値(2.7Ω 2W)は間違いです。
また R10  (10kΩ 1/2W) も写真では間違って 100kΩ 1/2W を付けて
しまっています。10kΩ 1/2W が正しいです。 
(20220305 訂正 ここまで)

DSC02176G

次に整流ダイオード。
D1 ~ D4  10D10,  D5 ~ D8 10D1 の指定ですが、これらを全て
1N4007 で代用しました。
DSC02179H

ラジアルリードの電解コンデンサは高圧のかかるプラス側のリードに
エンパイヤチューブを被せて基板に取り付けます。DSC02185H

半田でリードを接続したら、電解コンデンサを固定するために
基板との間にホットボンドを溶着します。
DSC02186J

これをラジアルリードの電解コンデンサ3個について行い、電源基板完成。
DSC02190K
DSC02192L

さて次はメイン基板。
まずは抵抗を取り付けます。
この基板中、R3, R5, R8  100kΩ、 R13  47kΩ  については 1/2W、
その他の抵抗は 1/4W を選んでいます。

DSC02197M

次にフィルムコンデンサ C2, C4, C13 の取り付け。
C2, C4 0.047uF 450V の入手したものはリード間隔が 10mm と
基板上のピッチ 5.0 mm より大きかったのでリードを加工して取り付けます。
DSC02199N

DSC02201P

電解コンデンサ C1, C3, C8  22uF 15V を取り付けます。
DSC02206Q

最後にシールド付き真空管ソケットを搭載します。
スペーサーと基板の間に隙間がないように設置して、
DSC02208R

基板をひっくり返して、スペーサーの接続端子を確認します。
DSC02209S

スペーサーの端子と切断したパターンの間を半田で盛って接続します。

DSC02210T

ここまでうまくいったら、ソケットのpin9本をすべて半田付けして
メイン基板は完成。

DSC02212U


これで基板2枚が完成しました。
先に6pin の平ラグ板で作ったトーンコントロール回路を加えて
回路基板3枚が揃いました。
DSC02217V


つぎはこれらの基板を使ってケースレイアウトを行います。。

2月8日に発注した基板3種が本日(2月16日)到着しました。
春節明けで注文が集中していたためか、普段より製造に時間が
かかりました。

DSC02117A

このメーカーは10枚発注すると1枚余分に作るので各々11枚の基板が
真空パックされています。

まずメイン基板表面。
DSC02131B
裏面
DSC02145C

電源基板 上: 改良型(ラジアルリード)、下:オリジナル(アキシャルリード)
DSC02143C
電源基板 裏面

DSC02149C

見た目には大きな問題はなさそうです。

問題なのはここから。部品が合わない、搭載できない、などの問題がないか
確認します。

メイン基板では 9ピンの真空管ソケットを BELTON VT9-PT
(garrettaudio 型式 V9PCBEL) のフットプリントを使いましたが、ちゃんと
合うかどうか...

DSC02133D

OK です。よしよし。基板から少し浮いた状態で取り付けられるんですね。

ではもう一方のシールド用のソケット VT9-PT-C 
(garrettaudio 型式 V9PCBELC) では...

DSC02135E

ありゃ。気がつきませんでした。シールドを支えるスペーサーが片方に
付いており、そのための穴がもうひとつ必要なようです。
ドリルで穴を開けてもいいのですが、穴の位置の裏面に GND パターンが
あるので切ってしまいそう...

あぁそうか。(これを書いている時に思いつきました。)
穴を開けてしまって、シールドを GND に接続してしまえばいいんだね。
さっきまで「これでは使えない」と思っていましたが、応急処置ながら
使えないこともないですね。
ただ基板パターンとしては改良が必要なことですね。
完全版基板への改善点として明記しておきます。


さて次は電源基板。
実は気になっているのがアキシャルリードの電解コンデンサ。
「エフェクター百科」の記事中では 47uF 350V x 2 と 22uF 350V の
3本の電解コンデンサを搭載するのですが、アキシャルリードにこだわると
実装するコンデンサの選択の幅が極めて狭くなってしまいます。
実際、耐圧 350V のアキシャルリードは探し出せず、500V のドイツ F&T の
ものを選ばざるを得ませんでした。これでも小さいものを選んだのですが。

仮に取り付けてみると一目瞭然。太さのため、他の部品に干渉しそう。
DSC02121F

いちばん左の 22uF 500V が太くかつ長いのです。 47uF 2本だけだと、
DSC02124G

なんとかぎりぎり使えそうな感じ。2本の間に 3Ω 2W の抵抗が
ぎりぎり入ります(寸法テストのため抵抗自体は 8.2Ω 2W を使用)。
この抵抗が発熱するようだと電解コンデンサにも悪影響を及ぼします。
この抵抗は基板裏面に取り付けることになるかも。
でもやはりこの状態で 22uF のアキシャルリードの電解コンデンサを
つけるとなると厄介です。

ラジアルリードの電解コンデンサを使うとどうなるか。
DSC02126H
DSC02129H


耐圧 350V のラジアルリードの電解コンデンサが手元にあったので
仮に搭載してみるとこんな感じ。基板上の部品と干渉することは
なさそうです。すっきりしますね。
ただし高さが出てしまうのでトランスなどの基板外の部品と
干渉しないか基板のレイアウトに注意が必要です。
またこの基板はケースに垂直に立てるので、振動対策として
コンデンサをホットボンドなどで基板に接着しなければなりません。

もうひとつの改良型電源基板はラジアルリードの電解コンデンサを
搭載することを前提にレイアウトを考えたので、小型になりスッキリと
まとまりました。こちらは高さの点は同様ですが、他には特に問題は
なさそうです。

DSC02139J



Tube Distortion の基板を発注した後、予想通り製造が遅れて
います。昨日全工程を終えて現時点では出荷待ち状態のようです。
基板到着まであと2、3日かかりそう。

その間に、ちょっと違うことを。

一昨日、とっても嬉しいことがありました。
ロック雑誌「ロッキン f 」1976年11月号が手に入ったのです。
DSC02093A

なにが嬉しいんだ? と思う方も多いことでしょう。
ロッキン f は創刊当時からエフェクタの製作記事が毎号掲載されていました。
この号では「ロッキン VCF」というエフェクタが掲載され、当時話題騒然
大ヒット企画になりました。この数ヶ月後にロッキンf の購読を始めた私は
評判を知り、当時この号のバックナンバーや古本を探しました。
探したものの見つかりません。現在のネットオークションでさえ見かける
ことがありません。
今回は非常にラッキーなことに、リサイクルショップで展示されていたものを
譲っていただきました。ありがたいことです。

問題の「ロッキン VCF」ですが、ロッキンf 別冊「エフェクター自作&操作術 '81」
(立東社、1981, pp. 157 - 161) にも再掲載されています。また、ロッキン f 1977年
8月号の pp. 162 には改良版の回路図のみ掲載されています。
それでもオリジナル(1976年11月号 pp. 110 - 113)の回路図と製作記事を
読んでみたかった。

製作記事は次の写真のようになっています。

DSC02096B

製作・設計は井上ヒデキ氏とロッキンf エレクトロニクス研究班。

右ページに回路図が掲載されています。
ただ、回路図の背景に(意味のない)オシロスコープの写真があり、
回路図が一部不鮮明になっています。おそらくコピー機を通しても
この写真が邪魔をして回路図が読めないことでしょう。
原本であっても老眼には見るのが辛い....
(老眼になる歳にこの回路を見ることになるとは)

この回路図を復刻しました。
原本は雑誌の1ページに収まるよう縦長に描かれていますが、
信号の流れや機能がわかりにくいので私の解釈を入れて
レイアウトを構成し直しました。

(20221008 VR1, VR3 接続修正)
005_RockinVCF_orig


PDF 回路図

このエフェクタのポイントは2つあるフォトカプラ。
電球と CdS によるフォトカプラ・モリリカ MCL723 または
MTL703 を使っていること。当時でも(製造終了のため)入手が
難しい部品だったようで、製作のネックになっていました。
(1977年8 月号の改良版では 電球の代わりに LED を使った
MCD-521 を搭載していました。)
電球と LED ではエフェクトのかかり具合が変わるとのこと。
電球にこだわるならフォトカプラを自作するしかないようです。

調達する際に探しにくい部品2点について。

本機では 300V 超の直流高電圧を扱います。そのため、
耐圧の高いコンデンサが必要になります。
高圧フィルムコンデンサ C11 0.1uF 400V, C2, C4, C12 0.047uF 400V は
秋月で耐圧 450V のものを扱っているので問題なし。
問題は高圧セラミックコンデンサ C10 250pF 400V。
250pF という値は現在では手に入らないので、近い値である
220pF で代用します。もし 240pF や 270pF が手に入るのであれば
それでも構いません。ただ耐圧 400V 以上の制限があるので
入手しやすいのは 220pF がいちばんでしょう。

入手しやすいのはマルツオンラインでしょう。ここでは
耐圧 1kV のものが1個 ¥33 で購入できます。
セラミック220pF

部品表の中に、「モールド端子板」という部品があります。
なんだこれ? と思うかもしれません。こんな部品です。
DSC02065A

絶縁された端子をケース等に取り付ける際に使います。
Tube Distortion ではこの端子板を使って空中配線でトーン回路を
作ることになっています。Treble, Bass, Middle のポットの端子と
この端子板の間にフィルムコンデンサなどの部品を空中配線で
設置するわけです。上の写真は 5 pin の例です。
私はこの端子板を10年ほど前に町田のサトー電気で購入しました。
ML3182-5P という型式のようです。

ただこの端子板でなければならない訳ではなく、代替として
ラグ版を使っても構いません。
DSC02066B
左がモールド端子板、真ん中が6ピンのラグ板、右が6ピンの平ラグ板。

構成するトーン回路は Fender Tone Stack と同じものです。
FenderToneStack
回路的には6ピンの平ラグ板を使うとわかりやすい構成になるので
平ラグ板を使ってこの回路(ポット類は外付け)を作った例を示します。

この部分は Tube Distortion の全体回路図には記入されているものの、
2枚のプリント基板の中にも含まれておらず、実体配線図の中で
ようやく現れる部分なのです。実体配線図なしには説明がとても
むずかしい部分です。
実体配線図の代わりにはならないとは思いますが、平ラグ板で
トーンコントロール部をブロックとしてまとめることができるので
理解はしやすくなるのではと思います。

必要な部品は5点。
DSC02077D

左から R9  100kΩ 1/2W, 中の上から C10  220pF 1kV, C11  0.1uF 400V,
C12  0.047uF 400V。右が6ピンの平ラグ板。

これらの部品を平ラグ板に搭載したのが次の写真。
DSC02083E
DSC02086F

ちょっと密集したように見えますが、端子間の距離が適切に保たれて
います。
これにトーン入力のシールド線、Treble (VR3) の3番に接続する線(黄色)、
Treble の1番と Bass の 2-3 番に接続する線(青)、Bass の1番と Middle の
2-3 番に接続する線(緑)をつけ、平ラグ板に15mm のスペーサをつけた
のがこちら。
DSC02088G

これをトーン回路のポット付近に設置します。


東栄変成器20220210

おっと。
もう少しだけ入手先が限られる部品がありました。トランス。
Tube Distortion のオリジナルでは2種類のトランスを用意しています。
B 電源用の電源トランス(220V 20mA) とヒーター用のヒータートランス
(12V 0.5A)。
今回はオリジナルに沿って製作するので、これらもそのままの仕様で
調達します。
ただし、上記の仕様を両方満足する真空管用電源トランスがあれば
それ1台でも構いません。
12AX7 のヒーターを直流点火する仕様なので、ヒータートランスの
代わりに 12V 1A 以上の AC アダプタ(スイッチング式)を
使うのも良い手だと思います。(普段の私ならそうします。)

12AX7 2本に必要なヒーター電源の仕様は 4 pin と 5 pin の間に
接続するのであれば 12V 300mA。もし 4 pin と 5 pin を短絡し、
9 pin との間に接続するのであれば 6V 600mA。
真空管用電源トランス(B電源+ヒーター電源)1台で済ますなら
6.3V のタップしかないことが多いので、 6.3V 1A 程度が
出せるものを選び、12AX7 の 4 -  5 pin と9 pin に接続します。

トランスは東栄変成器で購入することにしました。
通信販売で購入します。トランスは重量があるので送料が高くつきます。
2つのトランスを別々の店で買うと送料が2倍になるので、
一つの店でまとめて買うことにします。

ヒータートランスは J-1205 (12V 0.5A) ¥1,110 を選びました。
6V のタップもありますが、オリジナルの通り12V のタップを
使うことにします。

電源トランスは ZTU-5VA (200V/220V/240V 5VA) ¥1,150 を
選定。5VA であれば定格で 20mA 、ダイオード整流すると
しても 10mA 程度は流せるので 12AX7 2本のプレート電流
4 mA には充分でしょう。

というわけで東栄変成器に発注した画面が上記の画像。
配送料が ¥1,364 。配送料は地域によって異なりますので、
発注の際はご確認ください。

garrettaudio


「エフェクター百科」を持っている方はそう多くはないはずなので、
回路図と基板パターンだけあっても製作には支障があります。
実体配線図を示せればよいのですが、「エフェクター百科」の
図を載せると著作権の問題が生じます。
そのうち実体配線図かそれに準じるものを作成して説明したいと
思いますが、いまのところはご勘弁。

基板を発注して一日経過しましたが、まだ製造中のようです。
春節が終わってバックオーダーに時間がかかっているようです。
コロナ禍での輸送や税関の取り扱いの遅れなどが加わるので
基板到着は来週になりそう。
明後日からの三連休に製作とはなりそうにありません。

基板が到着するまでに、他の部品を発注して揃えておくべきでしょう。
まずは部品表を掲載いたします。この部品表はオリジナルの記事をもとに
作成しております。オリジナルでは 50kΩ の抵抗が指定されていますが、
ここでは 47kΩ にしています。50kΩにこだわりたい方は 100kΩの抵抗2本の
並列接続で作れます。
部品表

部品表.xls

さて、この部品表の中で入手先が限られる部品は4種類6点。

(1) ケース   GTS-2 (リード) 1
(2) 真空管ソケット 9 pin シールド付 2
(3) 電解コンデンサー 47uF 350V 2
(4) 電解コンデンサー 22uF 350V 1

(1) のケースは「エフェクター百科」(1983) で使用しているものと同じものが
現行機種で残っていました。これは秋葉原ラジオデパート 2F のエスエス無線
在庫があったので発注しました。¥4092 (+送料 ¥1,320) 。

(2) は KiCAD でフットプリントに使ったソケットが BELTON VT9-PTなので
garrettaudio で V9PCBELS (シールド付)  ¥340 を 注文。

アキシャルリードの電解コンデンサーを探して、基板のサイズに合いそうな
(3) F&T  47uF 500V (Φ21 x 36 mm )  ¥ 1,200 x 2
(4) F&T 22uF 500V (Φ18 x 39 mm )  ¥ 580 x 1
garrettaudio で注文。

真空管ソケットに関しては2個でよいのですが、失敗を見越して4個、
さらにシールドなしの V9PCBEL ¥280 も4個追加で注文しました。
garrettaudio に支払った金額は送料 ¥250 も含めて ¥5,710。

アキシャルリードの電解コンデンサー(F&T) 3本で ¥2,980。
秋月電子のラジアルリード(47uF400V ¥80 x 2, 22uF400V ¥40)
だったら 3本で ¥200。(涙)

この Tube Distortion の製作記事はリアルタイムで進行しています。

私の記事は普通だとある程度の作業が終了して情報の整理が
ついたところで投稿します。たとえばギターアンプの回路図の
採取の場合だと、アンプの入手から分解、回路分析、回路図清書
までが終わった段階で記事を投稿します。入手して分解してみたら
原型をとどめてないような改造がされてたとか、修理不能だったとか。
その場合は記事にすることを断念します。稀にですけどね。

今回は Tube Distortion の製作は試行錯誤の過程も隠さずに
記事にしようと思っています。なので、「このエフェクター、
すっごく良いよ」などと言うことは現時点では言えません。
まだ完成してないんですから。

実際、基板パターンは設計したものの、どんな部品を搭載するか
などの細々としたことは決めていません。ある程度の目星は付けて
おりますが、詳しくは追々決めていけば、と思っています。
「寸法が合わなかったので、部品が載せられない」などの
失敗もあると思いますが、そのあたりの試行錯誤も記事にする
予定です。

基板パターンを設計していて困ったのはアキシャルリードの電解コンデンサ。
電源平滑用の 47uF 350V x 2 と 22uF 350V の3本。
「エフェクター百科」(1983) の当時はアキシャルリード(チューブラー型)が
電解コンデンサの主流だったのが、80年代中盤から産業界のいわゆる
「軽薄短小」の流れが加速し、基板上で大きな面積を占める
アキシャルリードに代わってラジアルリードが主流になります。
特に日本製の電解コンデンサはほとんどがラジアルリードになって
しまっています。
アキシャルリードの電解コンデンサは入手先が限られてしまいます。
今回のものは耐圧 350V 。これも希少。450V とか 500V で代用しなければ
ならないかも。そうすると基板のスペースが足りなくなる可能性もあります。
それにアキシャルリードは外国産になるため、高価です。一本 ¥1,000 超。

そこで電源基板については別バージョンを作成することにしました。
「エフェクター百科」に掲載されていた内容をまずは愚直に再現すること、
オリジナリティを出すのは一度完成してから、と思っていましたので
別バージョンで並行して作成することにしました。
このバージョンではラジアルリードの電解コンデンサと一体型のダイオード
ブリッジを使うことにしました。
なんといってもラジアルリードなら 47uF 400V が秋月で ¥80。
22uF 400V が ¥40。 (涙)

作成した基板の部品面
TubeDistortion_PSa1
基板パターン
TubeDistortion_PSa2

前回の記事で作成した基板パターン2種(電源基板、メイン基板)と
この基板パターンの合計3種類を本日発注しました。

3種類とも片面基板で各10枚で中国の基盤メーカーに発注。
メイン基板(120x50) $21.76, 電源基板(80x50) $5, 別バージョン電源基板(65x40) $5,
配送料 $ 22.5、合計$54.26 。
メイン基板が高いのは横幅が 100 mm を超えているため。
もう少し小型化して 100x50 くらいに収まれば $5 で済んだのでしょうが、
とりあえずオリジナルに忠実に、ということで良しとします。

基板が出来上がるのは来週あたまくらいか。
春節が明けて大量の注文が入っているはずなので製造に時間がかかると
予想しています。

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