長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Jugg Box

バックパネルを取り外すと、出力真空管 6L6GC が顕わになります。


DSCN2606

6L6GC もスピーカーもオリジナルのままのようです。

Micro Jugg でちょっと謎なのは、出力真空管 6L6GC 。
真空管自体には 6L6GC とだけしか記入されておらず、
製造元や製造地域などの記入はありません。


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1970年代後半だと、すでに国内の電機メーカーは真空管の製造を
終了しています。海外の製品か国内の在庫かと予想しますが、
はっきりしたことが言えません。
真空管をよく見ると、ガラスの形状が微妙に違うことに気がつきます。
左が丸い形状なのに対し、右の方が角ばった形をしています。
別々のメーカーで作られてるのでしょうか?
これまで取り扱ってきた Micro Jugg の(オリジナルの)真空管は
例外なく写真のように2本の形が異なります。謎です。

真空管自体には特に問題はなさそうです。ゲッターも減りぎみですが
まだまだ使えると思います。急いで交換することはないでしょう。

今回、メンテナンスする Micro Jugg はこのような個体です。

前面:
DSCN2584

後面:

DSCN2585

実際にギターを繋いで操作しても、大きな問題があるわけでは
ありません。強いて挙げれば以下の3点。

(1) 入力ジャック 1, 2 とも接触不良による音切れがある。
(2) 各コントロールには大きなガリはないが、操作に不連続感がある。
(3) 電源コンセントのプラグが曲がっている。 

いずれも軽微な問題です。
見た目が少しくたびれているというのが正直な感想ですが、
アンプとしての程度は良い状態であると考えられます。

ただ、製造されてほぼ40年が経過しています。(発売1979 - 1981 )
いろいろな点で経年劣化を起こしているはずです。
ここでメンテナンスをして、あと10年は確実に元気な状態で使えるように
しようというのが今回の目的です。

この個体は後面で見られるバックパネルも外したことがなかったようで、
汚れやコントロールノブの割れなどがあるけれども、極めてオリジナルに
近い状態でした。
バックパネルの取り付けは上の後面の写真の状態が正しい。
バックパネルの切り欠き(凹部)が上にある状態。
真空管のヒーターの点灯が確認できる窓、発熱する真空管を冷却する
空気の流れを妨げないための窓があの切り欠きです。
Micro Jugg や Jugg Box シリーズに限らず、中古の
真空管アンプであの切り欠きが下にある場合は改造や修理などなんらかの
手が入った状態であると考えて間違いないと思います。

今回、この個体が製造後に手が入っていないと判断したのが次の写真。

DSCN2587

スピーカーコードとリバーブケーブルがワイヤで美しくまとめられています。
おそらく製造後に解いたことがないと考えられます。一度解いたらこんなに
綺麗にまとめられる自信は私にはありません。

リバーブは下の写真のように接続されています。
右が赤 (Reverb Input)、左が白 (Reverb Output)ですね。
DSCN2588

RCA プラグを抜いてしまうと、入力と出力を間違えやすいので、
この状態で赤と白のマーカーをつけておきます。

DSCN2590

気をつけなければならないのは 入力 と 出力 という言葉。
アンプ本体からの(リバーブに対する)出力は リバーブの入力です。
逆に リバーブからの出力は アンプへの 入力です。
どのデバイスが主体になるかで 入力 と 出力 は変わります。

#コンピュータだったら CPU への入力を READ、CPU からの出力を WRITE と
#して外部装置とのデータの方向を統一的に表しています。

少なくとも、ケーブルのつなぎ方で間違いを起こさないために
上のようにマーカーを付けておきます。
リバーブが動作しない、という障害はけっこう頻繁に起こりますが、
その原因で多いのがリバーブケーブルの不良、リバーブとのコネクタで
ある RCA ピンの接触不良。
その修理にはケーブルや RCA ピンの交換が必要になります。
その場になって、入力・出力の混乱から免れるためにもマーカーは重要です。

以前(2016年4月)、Mixi の Jugg Box コミュニティ

https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=250418&id=9435572

に Miciro Jugg (MJ-3) のメンテナンスを投稿しました。

このたび、まったく手の入っていない Micro Jugg 
(改造、修理、部品交換などが行われていないと考えられる)
を入手いたしました。
40年前後のアンプですので部品交換等のメンテナンスが必要
です。そこで、この Micro Jugg に対する作業を通して
メンテナンス法を改訂したいと思います。

40年も前の国産アンプをわざわざメンテナンスする意味があるのか
という方も多いかと思います。 
最近、私の周りでは Micro Jugg を欲しいという人が少しずつ
増えているのです。いわく、
「真空管アンプの音が欲しい。でも重いアンプはいやだ。」
Micro Jugg はコンパクトで軽量(12kg) な本体に 6L6GC x 2 による
40 W の出力を備えています。片手で持ち運びできますし、
車での移動もラクラク、置き場所に困りません。
室内であればドラムスに負けない充分な音量を叩き出します。
そして何よりクリーンが気持ちいい。
こんなアンプ、他にありますか?
そんな Micro Jugg をメンテナンスして、
元気な状態をあと10年は持たせよう、というのが今回の趣旨です。

メンテナンスに移るその前に。
申し訳ありませんが、これまでの Micro Jugg の回路図に
いくつかの誤りがありましたので、回路図の修正を行いました。
旧版の回路図を更新願います。

PDF

PNG:
電源部
プリアンプ部
パワー・アンプ部

1977 年の Jugg Box カタログでは TWO の重量は
48 kg と記載されています。
以前の記事でも書きましたが、1974 年頃の
Fender Twin Reverb (100W) でも 32 kg くらい。
1.5 倍?ちょっと重すぎやしないか?

確かに ALTEC スピーカーは重い。
Jugg Box V-2 (42 kg) と TWO の違いはスピーカー
のみ(のはず)。カタログでは重量の差は 6 kg。

ぢゃ、測ってみようか、ということで体重計で
計測。

DSCN2574

39 kg でした。
この個体はバックパネルが欠品しているので、1 kg くらいは軽い
と思います。カタログの 48 kg というのはちょっと重い。
付属品や元箱を含めてということなのでしょうか。

Jugg Box TWO はこんなアンプです。

お断りしておきますが、搭載スピーカーは ALTEC ですが、オリジナル
ではありません。私が持っていた ALTEC 417-8H と ALTEC 417-8C を
搭載したものです。

正面
DSCN2567

スピーカーグリルを外したところ

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向かって左が ALTEC 417-8H, 右が ALTEC 417-8C です。

背面

DSCN2572

キャビネット前面にはバーティクルボード(合板)が設置されており、
この個体には2箇所のひび割れがありました。
とりあえずALTEC スピーカーの重量に耐えられるよう、補修を行なった
あとに2基の重量級スピーカーを搭載しました。時間のかかること。

ALTEC スピーカーはともにネットオークションで数年前に入手。
417-8H は  Stuff 060G に搭載しておりました。 でも元々は
ALTEC 搭載仕様ではないいんですけどね。
417-8C はどのキャビネットに搭載しようか迷うこと数年。


出来上がった TWO は....


すっげぇ。(絶句)

回路図を採取し、40年以上経過して劣化した部品(電解コンデンサ、
カーボンコンポジット抵抗等)を交換し、キャビネットのひび割れを
補修し、新品の真空管を取り付け、手持ちの ALTEC スピーカーを
搭載して、なんとか TWO が動作しはじめました。

と、なにか忘れ物が。
そうだ、そうだ。プッシュプルアンプに付き物のバイアス調整を
しなければ...
と思って、採取した回路を見ると .....  ない。
バイアス調整用の可変抵抗がない。 そういえば ONE の回路にあった
10kΩ B の可変抵抗が 6.8kΩ の抵抗になっていたので、おや? と
思ったものですが、基板外に可変抵抗を接続しているのだろうと
特に気に留めずに回路を追っておりました。

再度、バイアス回路周りを確認しましたが、バイアス調整用の
可変抵抗はありませんでした。
つまり、TWO はバイアス電圧が固定であるということです。

電源回路の 6.8kΩ の固定抵抗の両端から外部に線を引き出すための
ラグ端子(2個)が付いているので、バイアス調整用可変抵抗を
接続できる設計にしてあるようです。 ONE ではこの端子に
10kΩ B の可変抵抗が接続されていました。
私の個体では固定バイアスの仕様になっていましたが、
マイナーチェンジでバイアス調整が可能なバージョンの TWO も
あるかもしれません。

もっとも、 ONE や TWO は Mesa Boogie Mark I を模して
設計されているので、固定バイアスは当然といえば当然なのかも
しれません。

固定バイアスなので、設定されている電圧を測定しました。
使用真空管は JJ の 6L6GC です。

プレート電圧  Vb :  468 V
スクリーン電圧 Vg2 : 445 V
グリッド電圧 Vg1 : -38 V
カソード電流 Ik : 85 mA

バイアス電圧(≒ グリッド電圧)が浅いですね。このプレート電圧
ではカソード電流を最大 48 mA までに抑えるべきでしょうが、
これが仕様のようです。
出力管の寿命が短くなることが予想されます。

そうは言っても、 Jugg Box シリーズはだいたいバイアス電圧浅め
です。 Micro Jugg 以降のハイブリッドアンプではバイアス自動調整
機構が出力管ごとに設置されていますが、カソード電流が
60 ~ 70 mA になるように設計されています。
そういう意味で上記のバイアス電圧設定は理解できる値と言えます。

Jugg BOX TWO の回路図採取は比較的簡単でした。

何年か前に Jugg Box ONE (JB-1) の回路図を採取していたので、
プリアンプ部に大きな変化はないだろうと予想しておりました。
 TWO が真空管が欠落した個体だったので、V3 の問題は残りましたが、
それ以外はほとんど問題がなく解析が進みました。

ONE と TWO で異なるのは何か。
際立って異なるのは出力。60W と 100W。
6L6GC x2 のプッシュプルと 6L6GC x4 のパラレルプッシュプル。
違いはトランスにあります。電源トランスと出力トランス。

型名での違いで言えば
電源トランス
ONE: 01-097,  TWO: 01-098

出力トランス
ONE: 307-03012, TWO: 03-008

サンプルした2機種とも製造時期がはっきりしないので、
型名だけでは単純には比較できませんが、2機種でトランスを
同一のものを使っていないということは留意してください。

さぁ。Jugg Box の最高機種 TWO です。

発売当初定価 28万円で、 当時(1977年)Fender Twin Reverb よりも
高かったという伝説の機種です。
まずお断りしなければならないのは、今回の回路図で真空管に関する
情報が欠落していることです。私が入手した個体がスピーカーと真空管が
抜かれた状態であったことに原因があります。スピーカーは ALTEC 
417-H8 x2 であることは有名なことなのですが、真空管のラインナップに
ついては必ずしも明確ではありません。
1977 年の日本ハモンドの Jugg Box カタログでは RCA 6L6GC x 4 としか
記述がありません。 (ちなみに重量は 48Kg と書かれています。 当時の
Twin Reverb の 1.5 倍ですね。@_@; )

回路図の作成には以前回路図を採取した Jugg Box ONE (JB-1) を参考に
しました。ONE はいまでも手元にありますので、比較検討できます。
この ONE はかなり程度のよい状態で入手でき、全く修理や改造の跡が
ないものでした。そのため疑問もなく(オリジナルの回路として)回路を
追うことができました。

今回の TWO も修理や改造が施された形跡は見られません。ただ一点、
V3 の真空管に疑問があります。 ONE では V3 には 12BH7A が搭載されて
いました。12BH7A はピン配置は 12AU7 や 12AT7 などと同様で、
管の長さがちょっと長い(ピンを含まず60mm前後)のです。なので、
その長さに対応する針金式のステーが付いているので  ONE の V3 が
12BH7A であることには疑問を持っていませんでした。
ところが今回の TWO では 12AU7 や 12AT7 などの短い(ピンを含まず
50mm 程度)の針金式ステーが付いていました。ステー自体を変更した
という可能性は残るのですが、ONE とは、少なくとも私の所有する 
ONE とは V3 が違うものである可能性があるのです。

というわけで、今回の回路図では V3 として 12AU7 を指定しています。
V3 はトーンコントロール後の電圧増幅ならびにリバーブのドライブに
使われる三極管で、リバーブのドライブのためには 12AX7 ではなく
適切な電力増幅ができるものが必要です。候補としては 12AU7, 12AT7,
12AY7, 12BH7A などが挙げられますが、一般的なのは 12AU7 でしょう。
というわけで、V3 には 12AU7 を指定しています。

V3について、情報をお持ちの方はコメントをいただければ幸いです。

パワーアンプ部には若干の変更があります。

位相反転段以降には変更はありません。
Micro Jugg から搭載された自動バイアス調整機能はこの機種にも
受け継がれています。すでに70年代前半には国産メーカーの
真空管は製造中止。現在のように旧東欧圏製の新品の真空管が
潤沢に入手できる状態ではありません。特性の揃わないペアの
6L6GC であっても製品に使わざるをえない状況だったはず。
自動バイアス調整機能は真空管アンプを作り続けていくためには
必須の機能であったと予想します。

変更があるのは位相反転段手前のドライブ回路。
Micro Jugg の回路では 2SC2534 のベースバイアス電圧を +B2 
(340V) から 820kΩと56kΩでの分圧で得ています。
この 820kΩが 1/4W のカーボン抵抗なのですが、ディレーティング
(定格電力の 1/3)の値を超えており、劣化が激しい部品です。
Micro Jugg を入手したら 1/2W の抵抗に交換するべきです。
これが問題になったのか、JBX-40 では位相反転段のエミッタ電圧
(おそらく100V程度の直流電圧)からベースバイアス電圧を
作るという方法に変更しています。なかなかトリッキーな方法に
見えますが、信頼性は上がったのでしょう。
この部分に関する変更のため、PW-66 基板には若干の変更があります。

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