長田(猫舌)のblog

主にギターアンプの解析、回路図の採取と公開を行っております。 回路図の公開は自身で読み取った回路図に限っており、主に国産のアンプを対象にしています。修理やメンテナンスなどにご利用ください。ただし公開している回路図は無保証です。内容の正確性には万全の注意を払っておりますが、誤記入や誤解の可能性は免れません。本サイトで公開している回路図によって生じた事故や損害については一切責任を負いかねますのでご了承願います。 また、電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。同様な作業を行って生じた事故・傷害に対して当方は一切責任を負いません。

カテゴリ: Jugg Box

出力管以外の真空管は次の2本。
ともに松下の 12AX7 です。

DSCN2797A

プリアンプ部(PA-40基板)と位相反転段(PW-40基板)にそれぞれ一本ずつ
搭載されています。

プリアンプ部 PA-40 基板
DSCN2774A

Jugg Box ONE や TWO のプリアンプ部の基板 PA-40 と同じものが付いていますが、
使用しているのは真空管 12AX7 一本分の回路だけ。空きパターンが目立ちます。
実際に使っているのは基板の1/3 です。
もっとも、エレキギターに比べると入力レベルの大きさでは比べ物にならない
エレキベースを対象にしていますし、ゲインを大きくして変に歪んで仕方がない
という意味ではこの構成もうなづけます。

部品面から見ると

DSCN2798A
こんな感じです。
ここにプリアンプの初段とトーンコントロールが構成されています。
ONE や TWO だと、マイクロフォニック対策のために、二階建てにした
クッション付きのアングルにわざわざ真空管を設置していたのですが、
BASS 100 では基板直付けです。おそらく BASS 100 がヘッドアンプなので
スピーカーからの振動が真空管 12AX7 に直接には届かないからでしょう。

この基板には 1/2W 100kΩ のカーボンコンポジット抵抗が3本付いています。
いずれも300V 近い直流電圧がかかっていた部品なので、抵抗値が変動しています。
1/2W のカーボン皮膜抵抗に交換しました。

ではケースを開けてみましょう。

DSCN2766A

すっきりとまとめられています。
電源トランスは Jugg Box TWO と同じ型式 ACE TONE 01-098。

DSCN2770A

電源基板は ONE, TWO と同じ PS-40a。
搭載されている部品も同じ。
DSCN2771A

使われている電解コンデンサは
主電源用  100uF 350V x2, 33uF 500V x3
バイアス用 47uF 63V x2

バイアス電圧は固定で、調整箇所はありません。これも TWO と同じ。
おそらく PS-40a 基板は一律に製造されて ONE, TWO, BASS-100 で
共通に使われていたのでしょう。
(おそらく、V-1, V-2 も共通だと思いますが確認できていません。)

ひとつだけ他の機種と違うのが、写真なかほどの抵抗 5.6kΩ 3W が
基板の外で短絡されていることです。ONE や TWO などより
高めの電圧で真空管をドライブしているようです。

Jugg Box のベースアンプを目にすることはなかなかありません。
Stuff 060B (060G ではない!) はたまにオークションに出品されるますが、
BASS 100 となるとオークションでも10年ほどで2、3回くらいしか
見た覚えがありません。やたらとレアです。
1977年のカタログによると、当時定価 235,000円。
伝説的な Jugg Box TWO (280,000円) に比べるとまだお安いですが、
当時の Fender Twin Reverb (silver face)とほぼ同じくらいの価格。
上記の価格はキャビネット込の価格。
今回入手したのはヘッドアンプのみ。キャビネットはありません。
なおアンプ部の型式が JB-100A, スピーカー部が JB-100S だそうです。

アンプ前面は前記事で写真を掲載したのでそちらを参照してください。
操作部は左から 入力1、入力2、Bright スィッチ、Volume,  Master,
Treble, Medium, Bass,  ランプ, Standby, Power の順。

アンプ背面を示します。
DSCN2743A

左から、インレット、Ground スィッチ、フューズ (5A)、Main SP, EXT SP, Line Out です。
出力は 100W のはずですが、スピーカージャックの下の黒いラベルには
「4Ω 80W 」と書かれています。
DSCN2762A
背面パネルを外すとオリジナルの  RCA 6L6GC x4 が現れます。
ゲッターも残っていますし、まだまだ使えそうですね。

Micro Jugg のメンテナンスは今回が最後になります。
今回は出力管 6L6GC のアイドリング電流の計測を行います。

普通の真空管アンプだったら
「出力管 6L6GC のバイアス調整を行います。」
というのが妥当です。もっと丁寧に言えば

「プッシュプル方式の出力管(6L6GC)のグリッドバイアス電圧
を調整し、6L6GC のカソード(アイドリング)電流を適正レベルに
整えるとともに2本のカソード電流を揃えます。」

面倒ですね。

Micro Jugg の場合、バイアス電圧自動調整機構が PW-66 基板に
搭載されており、自動的にカソード電流が制御されています。
そのため自動調整機構が正常に動作しているならば、いわゆるバイアス調整の
作業は不要なのです。
もっとも「カソード電流を適正レベル」に整えられているか、というと
実際には 6L6GC にしては 60 ~ 70 mA という大きめの電流に設定されるので
適正とは言い難いのです。真空管の寿命は短くなると予想されます。

ちなみに、このバイアス電圧自動調整機構が搭載されているのは、
私が確認している限り、Micro Jugg と JBX-40 の2機種です。

(追記 20231218  Micro Jugg, JBX-40, JBX-60, OZ-660, OZ-660B の5機種を
確認しています。)


DSCN2801A

本当に自動調整されてるのかいな?
と、疑問に思っている方もいるかと思いますので、本機を使って確認してみます。

写真、向かって左側の真空管を①、右の真空管を②、左の(真空管)ソケットを S1, 
右のソケットを S2 とします。

すべての測定に共通の電源条件は以下の通りです。
ヒーター電圧: AC 6.37 ~ 6.42V
プレート電圧 Eb 400 ± 2 V
スクリーン電圧 Eg2 386 ± 2 V

電源の変動は測定を通していずれも 1% 以下です。
またこれ以降に真空管のバイアス電圧、カソード電流を測定しますが、
いずれも人為的に調整、変更する部分はないことを明記しておきます。

(1) S1 での真空管①の特性を計測しました。
バイアス電圧 Eg1 -32.3 V
カソード電流 Ik 71.4  mA

(2) S2 での真空管②の特性
バイアス電圧 Eg1 -36.5 V
カソード電流 Ik 74.0 mA

最終的な制御の結果はアイドリング時のカソード電流です。
真空管 ① と ② のカソード電流はディジタル電流計で測れば
差がありますが、(74.0 - 71.4) / 71.4 = 0.0364   差は 3.64 % です。
これが大きいかといえばそうでもありません。
むしろ、この時代(1970年代後半)であればこの誤差は「上出来」と
言ってよいでしょう。
注目すべきはバイアス電圧(カソード電圧 Eg1) を -32.3 V  ~  -36.5 V と
大きく変えているところです。これだけバイアス電圧を変動(13%)させて
カソード電流の差を 3.64% 程度まで揃えたというのはよく制御が効いていると
言えます。

では、もともと付いていた真空管①②以外のものを装着した時には
どうなるのでしょう?
中古の JJ の 6L6GC (真空管③)を S2 に着けて測定してみました。
もともと中古で購入したので詳しいスペックはわかりません。

(3) S2 での真空管③
バイアス電圧 Eg1 -30.2 V
カソード電流 Ik 72.3 mA

カソード電流がよく揃ってますね。

次にマッチドペアとして販売されていた JJ の 6L6GC 2本(真空管④⑤)で
測定しました。

(4) S2 での真空管④
バイアス電圧 Eg1 -32.5 V
カソード電流 Ik 72.8 mA

(5) S2 での真空管⑤
バイアス電圧 Eg1 -32.7 V
カソード電流 Ik 72.7 mA

Eg1,  Ik ともに非常に近い値で、2本の特性が似通っていることがわかります。

最後にもともとあった真空管①②をソケット S1, S2 に交換して測定してみます。

(6) S1 での真空管②
バイアス電圧 Eg1 -37.6 V
カソード電流 Ik 71.3 mA

(7) S2 での真空管①
バイアス電圧 Eg1 -33.0 V
カソード電流 Ik 72.3 mA

最終的に(アイドリング)カソード電流が 72 mA 前後に制御されていることが
わかります。

これまで (1) ~ (7) のケースでバイアス電圧とカソード電流の関係を示してきました。
通常、プッシュプル方式の真空管アンプ(代表は Fender Twin Reverb か?)であれば
適切な(アイドリング)カソード電流になるようにバイアス電圧を手動で調整します。
真空管は製造過程に依存するバラツキが大きいデバイスです。Micro Jugg ではある程度
任意に選んだ真空管を装着しても自動的にカソード電流が 72mA 程度に収まるように
制御していることが確認できました。

プリアンプ部の基板 PA-43 はパネル前面の Volume 1, Voulume 2 等の
7つのコントロールのノブを外し、固定しているナットを外して
下の写真のようにパネルから取り外します。

DSCN2713AJPG

この基板で行うメンテナンスは主に電解コンデンサの交換です。
ほとんどが半導体部品の電源安定化のためのコンデンサです。
見た目には問題がないように見えますが、電解コンデンサを
基板から外してみると電解液が漏れていた、コンデンサのリードが
錆びていた、などが見つかることがよくあります。
やはりこの基板も40年近く経過しているのです。
使用している電解コンデンサは入手しやすく安価ですので、
これを機会に全部取り替えてしまいましょう。

搭載されている電解コンデンサは6種類12個。

C2 10uF 16V
C8 1uF  50V
C16, C30, C31 100uF 16V
C24, C27, C28 47uF 16V
C32, C33 47uF 63V
C34, C35 470uF 16V

上の写真はすでに C34, C35 を交換済みの状態ですが、
作業の前に交換する古い電解コンデンサの頭の部分にペンで色を塗っておくと
交換済みのものと区別することができます。
作業を始めたが新しいコンデンサが足りなかった、などの理由で作業を後日に
延期するときに便利です。

入力ジャックも交換しておきます。
スィッチ付きのモノラルフォーンジャックを2つ用意します。
Micro Jugg の場合、入力1と入力2の違いは入力インピーダンスの違いだけです。
また入力インピーダンスを決定する抵抗は PA-43 基板中にあるので、ジャックは
単に配線を取り付けるだけです。スィッチ端子と GND を短絡する線(写真では黒)
をあらかじめ接続しておきます。

DSCN2784AJPG

ガリというほどではないけれど、操作に不連続感があったので、
可変抵抗に接点復活剤を塗布します。
接点復活剤をあまり信用してはいけません。最初に使った時には効果が
顕著なのですが、何度も使っていると効き目が鈍ってきます。
また乾燥しにくいので基板等に残りやすく、埃がたまる、却って接触が
悪くなるなどの悪影響もあります。使うなら限定的に少量だけ使います。

可変抵抗を基板から取り外し、抵抗とブラシの間にかかるように
隙間に当てて少量スプレーします。

DSCN2788A

接点復活剤を着けたあと、シャフトを回してなじませます。

接点復活剤を使っても可変抵抗のガリなどのトラブルが繰り返すようで
あれば、新しいものに交換することも視野にいれるべきです。

最後に、OVER DRIVE フットスィッチのジャックを交換します。
あまり使うことはないかもしれませんが、このジャック(スィッチ付き)の
スィッチ接点が接触不良を起こすと Volume 1 が効かなくなります。
これもよくある故障の一つですが、Volume 1 自体の不具合と勘違いするため
盲点になってしまいます。

DSCN2789A

スィッチ付きモノラルフォーンジャックに交換します。フォーンプラグを
差し込んでいない状態で、スィッチがちゃんと短絡していることを
確認してください。

DSCN2791A


PW-66 基板のメンテナンスを行います。
出力真空管 6L6GC が2本装着されている、パワー・アンプ部の基板です。

この基板はプリアンプ部(PA-106 基板)からの信号を一段電圧増幅したあと
位相反転を行って 6L6GC をプッシュプル方式でドライブします。

まず、この基板に搭載されている電解コンデンサも交換します。
用意する電解コンデンサは
C1, C10 : 47uF 63V
C2, C9 : 47uF 6.3V
の4個。

DSCN2621A

写真中程にあるのが C1 47uF 63V。  C2 47uF 6.3V は黒いワイヤの影に隠れてます。

DSCN2622A

こちらは C10 47uF 63V (右) とその左下、ワイヤの影にあるのが C9 47uF 6.3V。

DSCN2696A

C1, C2 を交換。

DSCN2695A
C9, C10 を交換。
電解コンデンサの極性を間違えないように注意しながら交換します。

PW-66 基板には 6L6GC 周辺以外にも高電圧がかけられています。
電圧増幅部にも 340 V がかかっています。そのためいくつかの抵抗にも
高電圧が加わっており、抵抗が経年劣化していることがあります。
その抵抗は次の6本。

R11 820 kΩ
R14 100 kΩ
R17, R20 68 kΩ
R18 330 kΩ
R19 680 kΩ

R11 はもともとは 1/4W のカーボン皮膜抵抗が付いていますが、
定格に対して余裕がないのでよく壊れます。この抵抗は
1/2 W のカーボン皮膜抵抗に交換します。

R11 は Q1 の 2SC2534 のすぐ近くにあります。
DSCN2697A

R11 が断線するとQ1 の 2SC2534 にバイアス電圧がかからなくなるため、
プリアンプ部からの信号のうち、正電圧のみを増幅します。
従って真空管も V1 の6L6GC (片側)だけしか動作しなくなるので、
小さな音量でも激しく歪んでしまい、クリーントーンが出ません。
上記抵抗のうち、R19 も断線(あるいは劣化による抵抗値の上昇)が起こると
同様な症状を生じます。

上の写真では R14 も(抵抗値は正常でしたが)発熱したのか変色しています。
これも取り替えます。

あと、Q2 の周りの抵抗 R17 ~ R20 も取り替えます。
DSCN2702A
 
抵抗 R17 ~ R20 を取り除いたところ
DSCN2705A

交換する抵抗は 1/4W でも良いのですが、余裕をもって全て 1/2W に交換
しました。
DSCN2710A




 

電源スィッチとStand-by スィッチを交換します。
今回メンテナンスしている Micro Jugg はかなり程度の良い
個体だったので、スィッチ関係も特に問題はありませんでした。
そうは言っても、これからもう10年使い続けることを考えると
心もとない部品であることには間違いない。

DSCN2676

埃を払って、パネル面のネジを外します。
Micro Jugg の Power / Stand-by スィッチに使われるスィッチには2種類あって
このタイプは新しい方のスィッチです。

Power スィッチ(右)とStand-by スィッチ(左) を外します。
各スィッチの端子に付いているのは 0.01uF 600V のフィルムコンデンサ。
これはスパークキラーと言って、スィッチの ON / OFF 時に接点に生じる
スパークを抑制する働きがあります。高い電圧がかかっているスィッチの
接点を保護し、劣化を防ぎます。今回はこのスパークキラーも交換します。

交換するスィッチはこちら。
DSCN2675
レバーの長さが少し長め。
これにスパークキラー用フィルムコンデンサ 0.01uF 600V をあらかじめ
半田付けしておきます。

DSCN2678

これをこれまでのスィッチと交換します。
今回は Power スィッチ、Stand-by スィッチどちらも交換するので
作業のしやすいように (手前が空いている方が良い) Stand-by スィッチを
先に交換しています。

DSCN2679

あとは Power スィッチ。
DSCN2681

パネル面からネジを締めて完成です。
こんな感じになりました。

DSCN2683
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電解コンデンサは通電しようがしていまいが経年劣化を起こします。
どれだけ経ったら寿命になる?と言われてもなかなか数字を答える
ことは難しいですが、20年程度が交換の目安ではないかと
個人的には思っています。
(メーカーによっては5年というところもあるかもしれません。)

とはいえ。真空管アンプの電源に使われる電解コンデンサは実は結構高価です。
47uF 500V のアキシャル型の電解コンデンサだと、1個 500 円程度します。
大した額ではないように思いますが、まずどこで売っているかを探すだけでも
大変です。上の価格は秋葉原の東京ラジオデパートの2F 瀬田無線での価格。
地方ではこの価格で買えないどころか、電子パーツ屋自体が廃業に追い込まれ
ている現状です。通信販売に頼らざるを得ないのですが、ブランド等選択肢が
かなり限られます。
というわけで、私の記事では電解コンデンサのブランド等にこだわりません。

それでも電源部の電解コンデンサの交換はアンプの音質の向上につながります。
ノイズの低減につながるのはもちろん、高音のハリであるとか、クリーン音の
伸び、巻弦のリアリティなど、細かな部分で音が確実に良い方向に変わります。
そのため製造後時間が経っているアンプについてはまず真っ先に電源の電解
コンデンサを交換するのが定石なのです。

下の写真は作業後に取り出した電解コンデンサ(左側)と
それらの交換に使った電解コンデンサ(右側)です。
いちばん下の C1 47uF 500V のコンデンサは大きさに変わりがありませんが、
C4 33uF 350V, C3 47uF 450V の2種類は(年代が進んでいるので)小型に
なっていることがわかります。
 
DSCN2664

Micro Jugg にもともと付いていた電源用電解コンデンサは
アキシャルリードタイプである、というところに問題があります。
アキシャルリードというのは円筒形の電解コンデンサの円筒の
両端からリードが出ているタイプで、リードを基板に半田付け
すれば自然とコンデンサの位置が固定されます。
ライブ会場などへの移動に際して振動が生じますが、
電解コンデンサの脱落などのトラブルが少ないのがこのタイプ。
1980年代までは主流だった形です。
ただし、電解コンデンサのでかい図体が横に寝る形で搭載
されるので、電解コンデンサが基板上で占める面積が大きいのが
欠点。

現代的な電子回路であれば、部品の設置面積はできるだけ
小さくするのが常識。「軽薄短小」というのはもう死語だと
思いますが、電解コンデンサとて基板上を占める面積は
小さいことが要求されます。そのため、アキシャルリードではなく、
円筒形の片側だけに2本のリードが出ているラジアルリードという
タイプが電解コンデンサでは主流です。設置に要する面積は
円筒形の底の円の面積だけになるため、アキシャルリードの
数分の1の面積しか占有しません。ただし、コンデンサを立てて
使わざるをえず、コンデンサの振動対策が必要です。

現在、入手できる電解コンデンサのほとんどがラジアルリードです。
アキシャルリードは品数が限られる上に、高価であるのが現状です。

上の写真でも、C1 47uF 500V (UNICON製) だけはアキシャルリードが
手持ちにあったので使うことにしますが、C4 33uF のアキシャルリードは
入手困難でした。 C4 33uF 400V はラジアルリードは入手が容易でした。
C3 47uF 450V はラジアルリードが手持ちにあったので使うことにします。
どちらも nichicon 製。結果的には日本メーカーの製品になっています。

では作業に入ります。
Jugg Box シリーズの電源構成は電解コンデンサに蓄積された電荷が
電源オフ後に電解コンデンサに止まらないような仕組みになっています。
それでも人体に対して安全な電圧に減衰するまで5分程度かかります。
電源オフ後、充分な時間が経過していることを確認して作業をしてください。

まず、このままでは電源基板 PS-101 基板を(ネジ4点を外しても)
裏返すことができません。半田作業をするには基板を裏返して
プリントパターンが見えるようにしなければなりません。

DSCN2629

動かせない理由は PS-101 基板に接続されている各種のワイヤーが
何点かのタイラップでまとめられてがんじがらめになっているから。
基板の手前2点、奥の1点のタイラップを上の写真のようにニッパで
切ります。(ワイヤーまで切らないように。)

PS-101 基板を止めている4つのネジを外し、基板の裏面にアクセス
できることを確認したら、電解コンデンサーのリードを切断します。

DSCN2635

電解コンデンサは基板と接着剤で固定されています。両端のリード
とも切断しても簡単には取り外せません。電解コンデンサを転がす
ようにして基板から剥ぎとります。

DSCN2637

接着剤のあとが残っています。またリードを切ったので基板の穴に
まだリード線の残骸が残ったままになっています。
DSCN2639

3つの電解コンデンサについて同様の作業を行いました。
リード線の残骸を除去します。

DSCN2643
基板裏面からコンデンサのリードが接続されている部分を半田ごてで
加熱し、

DSCN2644

半田吸い取りで、半田を除去しリードを撤去します。
このあと新しい電解コンデンサを設置するので、リードを撤去したあと
新しい部品が取り付けられるよう、穴が塞がれていないかを確認します。

3つの電解コンデンサの撤去が完了したら、基板表面の接着剤あとを
カッター等で除去します。

DSCN2661

まずはいちばん大きな C1 47uF 500V を半田付けします。

DSCN2665

これに振動対策を施します。コンデンサと基板の間にホットボンドを
流し込み、固定します。

DSCN2666

同様に C3, C4 の取り付けも行いますが、この2つはラジアルリードなので
ホットボンドでの固定は念入りに行います。
DSCN2672

以上で電源回路 PS-101 上の電解コンデンサの交換作業が終了しました。
基板を止める4点のネジを締めて固定します。
ただワイヤを縛っていたタイラップ3点は次以降の作業でも障害になります
ので、そのままにして作業を続けます。

出力菅 6L6GC 2本を取り外し、シャーシ内部の回路を検査します。

まず、スピーカーケーブル2本、リバーブケーブル1組をそれぞれの
コネクタから外し、前々回の3枚目の写真に示したワイヤ(ケーブルを結束する)を
外しておきます。

次に本体側面にある4箇所のネジを取り外したのち、シャーシを後面に向かって
引っ張り出します。

そうして取り出したシャーシとその内部がこちら。

DSCN2616

埃っぽいですねぇ。埃はハケやブラシで適切に払います。
プリアンプ部(上部緑色の基板)は回路裏側(半田面)がこちらを
向いているので部品が異常な状態であってもこのままでは
確認できません。
とりあえず見える範囲で異常がないか確認します。

(高温になって)燃えた部品は見当たりません。
異常がある場合は火花が飛んだ跡やススが出た跡などが見えることも
あります。抵抗が熱で変色してカラーコードが読めなくなることも
あります。アンプが動作しないなどの異常がある場合は
回路の隅々まで異常がないかをよく観察してください。

まず注目すべきなのは PS-101 電源基板上の電解コンデンサー3本。

DSCN2627
左から C1 47uF 500V, C4 33uF 350V,  C3 47uF 450V です。
(C2 はもともと搭載されていません。)
ちょっとわかりにくいですが、3本とも膨れています。
いちばん顕著なのが左から2番目の C4 です。こちらから見える
端子(+側)の周辺が盛り上がっていますね。
コンデンサ内部にガスが溜まっている状態です。すぐには
破裂しないでしょうが、早めに交換するに越したことはありません。
また製造後 40 年経過してコンデンサを交換した形跡がありません。
劣化(容量抜けなど)が進んでいる可能性もあるので、交換するに
越したことはありません。

次回は電源コンデンサの交換作業です。

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