カテゴリ: Jugg Box
Jugg Box JBX-60 (3)
点があります。それは前面の黒いパネル。とてもスタイリッシュ
なのですが、良く見るとジャックを固定するナットが見当たりません。
ジャックが壊れたら、どうやって修理、交換するんだ?
もっとも、ナットが隠されているのでジャックが壊れる原因のひとつである
ナットがゆるむことは少なくなるでしょうが。
はじめて JBX-40 を入手した時はこの謎が解けず、回路の採取も中途半端に
終わっています。send - returnジャックなども取り外すことができないので
基板の裏を見て回路を読むことができませんでした。
昨年になって謎が解けました。
電源スイッチとスタンバイスイッチ、これが黒いパネルを押さえて外れない
ようにしていました。
これら2つのスイッチは黒いパネルの前面から取り付け、上の写真の
真ん中上側の垂直に取り付けられた基板(sw-118基板)に半田付け
されています。半田を外さないと基板からスイッチを取り外せません。
スイッチの端子は3つ。合計6つの端子の半田を除去します。
なかなか半田が除去できず、苦労します。それでも丁寧に作業を進め、
なんとか外れました。力任せに外そうとするとスイッチが壊れることが
あります。JBX-40 の時に経験済みです。特にこれらのスイッチは
高圧がかかるのでスイッチ内部で火花が飛ぶためか、劣化しています。
電気的だけではなく、端子付近のベークライトが脆くなっているので
取り外すときは丁寧に。
この2つのスイッチを前面パネル側から取り外すと、黒いパネルが
鉄製シャーシの前面にあり、二重構造になっていることがわかります。
黒いパネルと鉄製シャーシは接着されているので、上部の隙間から
大きめのカッターナイフの刃を少しずつこじ入れて接着を剥がしていきます。
剥がし終えると黒いパネルを外せて、シャーシの前面が現れます。
入力ジャック付近は次の写真のようになっています。
このようにケースに段差を作っており、その段差にナットが収まるように
してナットを隠しています。これだけの作業をやって、やっと入力ジャックの
交換作業を始めることができるのです。面倒です。
Jugg Box JBX-60 (2)
出ました。位相反転段+パワーアンプ PW-66。
改良型の 418-24076e です。6L6GC x2 が搭載される基板です。
Micro Jugg で採用されたバイアス自動調整が付いています。
回路の定数は JBX-40 と変わっていません。
ということは JBX-40 (40W) と JBX-60 (60W) の出力の差は
電源電圧(電源トランス)と出力トランスの違いだけしかない、という
ことですね。
プリアンプ部は JBX-40 と同じ PA-106 基板がついています。
基板自体は変わっていませんが、チャンネル切替のための
Channel フットスイッチとアナログスイッチ、リレーのための
回路が加えられています。JBX-40 では基板上のパターンはあったけれど
部品を実装していませんでした。
以前指摘したリレーの端子にまたがる半田によるジャンパーは
JBX-60 ではなくなっています。あのジャンパーはリレーで切り替える
はずだった CHOUT という端子を無効にするためのものでしたが、
JBX-60 ではこの端子が使われています。
CHOUT 端子にはシールド線を介して次の FL-106 基板が接続されて
います。
JBX-40 に比べて拡張された Ch1 のコントロール (Volume, Treble, Bass)が
独立した基板になっています。
ただこの基板にはトランジスタや OP アンプなどの増幅素子は搭載されて
おらず、単に Ch2 と違う設定を(フットスイッチや MASTER のプルスイッチで)
切り替えて使うだけのようです。
Jugg Box JBX-60 (1)
1977年にフルチュープアンプとして登場した Jugg Box シリーズ。
1978 年に半導体プリアンプと真空管パワーアンプを組み合わせた
ハイブリッドアンプである Stuff シリーズを発売、1979 年には
小型ながら 40W の Micro Jugg が追加され、ハイブリッドシリーズは
人気商品になります。
その後継として 1981 年に発売されたのが JBX シリーズ。
Micro Jugg の後継に 40W の JBX-40, Stuff 060G の後継としてJBX-60。
JBX-60 の当時の定価は¥98,000。
ただ、JBX-40 も JBX-60 もあまり評判を聞きません。
いまとなってはネットオークションに出品される頻度で当時の人気を
推測するしかありませんが、 JBX シリーズは Stuff シリーズの出品数に
比べかなり少ない。
当時の定価は Stuff 060G ¥75,000, Micro Jugg ¥53,500 に対し、
JBX-60 が ¥98,000, JBX-40 ¥75,000。
当時の物価の上昇率を考えると妥当なのかもしれませんが、
どちらも二の足を踏む値上げ幅ですね。
JBX-60 は 2ch 分のコントロールがあり、前面に 10 個のノブが並びます。
左の3つのノブが JBX-40 にはなかった CH1 のコントロール。
CH1 の Volume, Treble, Bass が増えています。
JBX-40 と同様に Gain Foot Sw, Head Phone, Send, Return などのジャックが
前面に配置されています。
背面を示します。
入手した個体は真空管 6L6GC が抜かれた状態でした。
ヒューズは 2A。なのですが、ヒューズを確認すると 15A という
とんでもないものが付けられていました。この状態で使っていた?
通常(2A)のヒューズを装着するとすぐ飛んでしまうような故障が潜んでいる
可能性があります。
これを書いている時点ではメンテナンスの途中なので、まだ
電源を繋いでの動作確認はしてません。注意が必要です。
シャーシを開けてみます。
手前に電源基板。Micro Jugg で見慣れた電源基板 PS-101 が装着されて
います。
PS-101 基板と奥の変圧器との間に見慣れないラグ板があって縦型の
電解コンデンサが3つついているのが見えます。ラグ板は真空管アンプを
修理したり改造したりする時に回路を追加するときに便利なので
私もよく使います。なので最初にこれをみた時に「改造されてる」と
思い、嫌な気がしました。回路図を採取することが一つの目的なのですが、
オリジナルの回路、またはそれに準じた回路でなければ回路図を採取して
公開する意味がなくなるからです。
ただよく観察してみると、他に手を入れられた形跡がありません。
また手前の電源基板の電解コンデンサを固定する(振動対策)茶色い
接着剤がラグ板上の青い電解コンデンサにも繋がって塗布されていました。
つまり、JBX-60 が製造された時点でこのラグ板は存在していた、ということ。
というわけで、この回路はオリジナルのままである、という判定をしました。
これで安心して回路図を採取する作業に進めました。
Jugg Box JBX-60 schematics
Jugg Box ONE, V-1 schematics(Rev. 0, Rev.1)
ONE, V-1 と回路の違いが数カ所あることがわかりました。
これまで見てきたものが後期バージョンで、今回の V-1 は
初期バージョンのようです。以前解析した TWO がやはり初期バージョンの
ようで、回路定数も一致しています。
差異は多くはないのですが初期バージョンと後期バージョンを一つの
回路図でまとめてしまうのも混乱のもとのようにも思えます。
そこで、ONE, V-1 の回路図をバージョンによって2種類作ることに
しました。
ただメンテナンス時には初期バージョンと後期バージョンという言葉で
区別しておりましたが、回路構成にバージョンという言葉を使うと
回路図のバージョンと混乱しそうなので、Rev. 0, Rev. 1 と呼ぶことに
します。
Jugg Box ONE, Jugg Box V-1 回路図
Rev. 0 回路図
PNG
電源部
プリアンプ部
パワーアンプ部
Rev. 1 回路図
PNG
電源部
プリアンプ部
パワーアンプ部
schematics Rev. 0 JB-1_r0.pdf
Rev. 1 JB-1_r1.pdf
Jugg Box V-1 メンテナンス (9)
発振が突然始まるということにヒントが隠されていました。
それまでは正常に動作している、ということは回路の発熱が関連している
と考えられます。電源投入後、熱が上昇することにより回路中の状態が
何か変化して発振が生じる。そう考えました。
電源を切った後状態が元に戻るのもそれで説明が付きます。
普通の電子回路において発熱が問題になるのは半導体です。
回路素子、抵抗やコンデンサーは熱によって値が変わります。
ただその変化は緩やかで突然大きく変化することはありません。
ただこのアンプには半導体は電源部の整流ダイオードしかありません。
発振時でも電源電圧(B電源、バイアス電源とも)が変化していない
ことは確認しているので、ダイオードではなさそう。
残ったのは能動素子としての「真空管」。
真空管は前のユーザーがすべて Ruby ブランドのものに変更してました。
プリアンプ、位相反転段の真空管(12AX7, 12AU7)はあまり痛まない
のでそれほど頻繁に入れ替える必要はありません。交換されているので
(ほぼ)新品がついていると理解していました。
プリアンプ部の真空管を一本ずつ交換して確認するつもりでしたが
一本目の初段プリアンプの 12AX7 を交換すると症状が収まりました。
とりあえず15分程度の通電で症状が生じませんでした。
本当にこれが原因かを確認するにはより長い時間通電しなければ
なりません。
次の日の昼間、2時間連続通電し症状は出ないことを確認しました。
(実はこれを書いている間も通電して状況をみています。)
犯人と断定した真空管 12AX7 です。
真ん中に特徴的な形の金属板が見えます。曙光(中国製)ですね。
ギタリストがアンプの修理を依頼するとなると楽器店に持ち込むので
ブランド(GT, Messa, Ruby, TAD等)の真空管を選ぶことが多くなると
思います。しかしながらこれらのブランドは実際には真空管を
作っているのではなく、真空管をいろんなメーカーから買い集めて
ブランド名を印刷して販売しています。ブランドが品質をある程度
保証してはいるのですが、実際のメーカーは隠されてしまいます。
私自身は中国製は選びません。中国製 12AX7 はまだ寿命とは思えない
使用で突然壊れたり不具合を生じる、というケースを何回か経験
しているからです。それもどういう壊れ方をしたかが毎回異なります。
今回の異常も真空管が突然不具合を起こしたケースと考えております。
というわけで V-1 が正常に動作し始めました。
これでメンテナンスは終了です。
Jugg Box V-1 メンテナンス (8)
遅ればせながら、お約束。
☆★☆★ 注意 ☆★☆★
★☆ このコンテンツでは電子回路とくに真空管に関する高電圧回路を ★☆
☆★ 取り扱っています。電子回路の知識や経験がない方が同様の作業 ☆★
★☆ をすると感電により生命に危険を及ぼすことがあります。むやみ ★☆
☆★ にこのコンテンツの内容を真似しないように。もし同様な作業を ☆★
★☆ 行って生じた傷害に対して当方は責任を負いかねます。あくまで ★☆
☆★ も自己責任であることをご理解ください。 ☆★
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
本当はこのメンテナンスの記事の第1回目に書くべきでした。
これまでに示したように劣化している部品を交換して本来の性能を
取り戻そう、という意図だったので危険は少ないと考えていました。
もちろん、電源を切ってからしばらく(10分くらい)経過して
コンデンサに溜まっている電荷が抜けるのを待って作業を開始すべきです。
そういう意味でこれまでの作業についても危険は隠れていました。
遅ればせながら、第1回目からのメンテナンスを実施する際には
必ずこの注意書きを読んで作業に取り組んでください。
それでも今回この注意書きを提示するのは、これから先の作業はこれまで
以上に危険を伴うためです。また、このような事態になるとは予想して
いなかったのも事実です。
これから先は通常のメンテナンス作業ではなく、「修理」作業に
なります。今回取り扱った V-1 の個体特有の事情によるものですので、
これから先の作業は誰もが行うべきものではないことをご理解ください。
発振が起こっているようです。突然大きな発振音がしたので Stand by
スイッチを切ってスピーカーが破損するのを防ぎました。
一度電源を切ってしばらくして再起動すると発振はとまります。
発振を止めなければなりません。
発振現象は真空管アンプではよく起こる現象です。
「そんな経験をしたことはない」と思うギタープレーヤーは多いと
思います。ところが真空管アンプを自作してみると、とても簡単に発振が
起こることに愕然とします。
配線の配置を変えるだけで発振が起こったり収まったり。
ゲインやボリュームを上げるだけで発振が起こったり。
発振が生じている状態での現象を観察して異常な振る舞いがあった
としても、その振る舞いが原因なのか結果なのかを特定するのが非常に
難しいのです。実際の原因は「なんだこんなことか」と思うような
思いがけない点だったりします。そのため発振の解消には怪しげな部分を
シラミ潰しで改善していくことになります。それが発振対策の難しいところ。
発振が止まったところが発振の原因だった、と解決したあとに
(シラミ潰しのあとに)ようやくわかるのです。
電源を繋いでアンプを動作状態にして現象を観察します。
そのため回路中の高電圧部分を顕にして信号を追わなければなりません。
さわれば命に関わる部分があるので慎重になりますし、緊張します。
(というわけで作業中に写真を撮っている余裕はありません)
スピーカーの代わりに 8 Ω 200W のダミーロードを接続し、
ギターの代わりにファンクションジェネレータを入力に繋ぎ、
1kHz 0.1Vpp の正弦波電圧を印加します。
ダミーロードの端子電圧をオシロスコープで観察します。
Treble と Bass をフルにして、ボリューム1、2、マスターを上げていきます。
オシロスコープの波形(正弦波)が崩れ、発振が起こることを確認しました。
本当なら全てのコントロールをフルにしても発振が起こるはずはないのです。
発振しやすい状態であることは間違いありません。
これまでメンテナンスで行った作業のあと(半田付け部分など)を目視で
確認する、バイアス電圧を確認・調整してみる、電源電圧を確認する、等等。
怪しげな部分を考えては確認、改善してみますが発振が収まりません。
目についたのが V-1 の2つあるスピーカージャック。
外部スピーカー(Ext. SP) ジャックのマイナス側は通常のジャックと異なり
GND と絶縁されていなければなりません。この絶縁にはプラスチックの
薄いワッシャ一枚を挟んでいるだけです。古くなっているので劣化している
かもしれません。シャーシから外して絶縁を確実にした状態で動作させると...
発振が収まりました。
全てのコントロールをフルにしても、発振しません。オッケー!
絶縁ワッシャがコンデンサになってたのか。
これが原因であれば、対策は簡単。絶縁型のジャック(スイッチ付き)に
交換してシャーシとの絶縁を確実にします。絶縁型ジャックは径が大きいので
リーマーで取り付け穴の直径を広げて取り付けました。
さて、発振が止まったよ。やれやれ。
シャーシをアンプキャビネットに納め、ギターを繋いで試奏します。
数分後。
ガツン、キュイーーーン
をい。まだかよ。
Jugg Box V-1 メンテナンス (7)
動作確認を行います。
今回はバイアス調整回路を追加したので、バイアス設定が
必要です。とりあえず、10kΩB の調整用可変抵抗をオリジナル
(固定バイアス)と同じ 6.8kΩ に設定しておきます。
この状態で 6L6GC のカソードに流れるアイドリング電流は
およそ 60mA。大きめですが、Jugg Box シリーズはこのくらいが
標準になっているようで、 Micro Jugg や JBX-40 のバイアス自動調整
での設定が 70mA 前後。
とりあえずこの状態で電源投入して動作確認します。
ギターを繋いで電源 ON。
しばらくして ST. BY を ON にします。
ここまででヒューズが飛んだり、火花や煙が出たり、異臭がしたり、
異音がしたりしないか確認します。
ギターを触って感電しないのを確認します。触るのは右手から。
ここまで問題はないようです。
ギターを弾いてみます。
私の場合、アンプの試奏に使うギターは決めており、ストラトキャスターを
使います。Fender 54 strato pickup を載せており、出力が小さいものの
クリーンのベルトーンが美しい。これをアンプに通してノイズや歪みのない
クリーントーンが出るかを確認します。
メンテナンスの終わった V-1 からブライトなクリーントーンが飛び出しました。
低音も高音もバランスよく出ています。
よしよし。 Jugg Box ONE に比べるとちょっと篭り気味かなぁ。充分ブライト
だけど。でもこれはスピーカーの差だよなぁ。ONE の ALTEC 417H8 には
敵わないよなぁ。
と、気持ちよく弾いていたのですが、数分後。
ゴリッ、 キュイーーーーー
突然轟音。思わず、スタンバイスイッチを切ります。
発振のようです。ううっ。
Jugg Box V-1 メンテナンス (6)
終段の 6L6GC x 2 の周辺が残っておりますが、スクリーン抵抗 470Ω 1W x 2 の
抵抗値チェックだけで終わってしまいます。正常でした。
ONE (後期バージョン)だと、カソード抵抗 10Ω 1/2W が接続されていましたが
この V-1 の個体にはなく、カソードは GND 直付けでした。
これも初期バージョンの特徴でしょうか。 TWO も同様でした。
さて、実際の使用に関して問題になるのは「接点」です。
40 年経過していると接点が錆びたり汚損したりと不安定になります。
これらの対象になるのが、ジャックとポット。
今回は入力ジャックの交換を行います。
V-1 には入力1と入力2があり、入力1は 12AX7 による信号増幅を
通し、入力2はそれをバイパスするものです。
入力1はプラグを挿した時だけスィッチが ON になって信号が通じるように
なっているので普通より少し複雑なスイッチ付きジャックが必要です。
上の写真の左が入力1、右が入力2のジャックです。
入力1のジャック、長いこと使っていると接点不良を起こしそう。
もう少し接点に耐久性のありそうなジャックに交換したいのですが、
ジャック接点と独立したスイッチがあるジャックというと選択肢が
限られてしまいます。仕方がないので、接点復活剤などでお茶を濁さず、
さっさと新しいものに交換してしまいます。
ついでに入力2のジャックも交換しますが、こちらはもう少し耐久性の
あるジャックに変更します。入力2のジャックは接続が簡単なので、
先にこちらを交換します。
このジャックはスイッチ付きジャック。スイッチと GND の間に
220kΩの抵抗を接続します。またオリジナルでは接続していない
GND のラインも追加しています(黒線)。オリジナルではシャーシに
接触させることによって GND に接続しているのですが、腐食などが
起きると動作が不安定になります。接続を確実にするために GND ラインを
設けています。
同じ型式のスイッチ付きジャックが手持ち部品の中にあったので、オリジナル(右)と
比較しながら一つずつ線をつなぎ変えていきます。
つなぎ替えた状態がこちら。前述の入力2の GND のラインも入力1の
GND 端子に接続します。
これで接続終了。シャーシに取り付けます。
あとポットのガリ等の対策がありますが、この時点でギターを繋いで
音出し確認をします。