「ええと……主武器の剣だろ、はぎ取り用の短剣……着替えに、干し肉、塩……その他諸々、全部あるな。よしよし」
ロレーヌの家で、持ち物を全部広げながら頷く俺。
もちろん、全部と言っても魔法の袋に入っている全て、というわけではなく、明日から始まる王都への往復の旅に必要なもの全部、ということだ。
今の俺の魔法の袋、容量が大きいから無駄なものが大量に入っているんだよな……。
どっかで拾ったきらきらする石とか、見た目のかっこいい流木とか。
何の役に立つのか、と聞かれたら困るが、まぁ……もうものが入りきらないとなったらそのとき捨てるからいいのさ。
「……うきうき明日からの準備をしているところ悪いんだが、怪しくないか?」
ロレーヌが家の柱に寄りかかりながらそう言ってくる。
この、怪しい、というのは俺のやっていることが怪しい、と言いたいわけではなく……。
「……まぁ。色々な。分かってるよ」
「だとしたら何故すんなり受けて帰ってきたのか……」
ウルフからの依頼のことについてである。
若干あきれたようでいながら、しかし俺がやりそうなことだと諦めているようでもあるロレーヌである。
俺は言う。
「王都にはどうせ行かないとならないだろ? 用事もあるわけだし。それに、ウルフには色々迷惑をかけているわけだからな……。たまには頼みを聞いてもいいだろうと思って」
「たまにどころではなく、結構聞いている方だと思うがな」
「そうか?」
……そうかもしれない。
まぁ、人間持ちつ持たれつである。
いつかこうやってウルフに売りつけておいた恩が、うまいこと返ってくる日もあるだろうし、そのための種まきだと思えば悪くはないだろう。
俺は人間じゃないけどな。
「そうだろうが……しかし、
「そうなのか? 銀級なら一度くらい、と思ったが」
「ヤーランではどうなのか知らないが、帝国の
「なるほど……」
国内の冒険者の元締めなのだ。
金どころでなく、
ウルフのように元冒険者、という肩書きの
加えて
ニヴ・マリスを思い出してほしい。
あいつは金級だが、いずれ
ああいうのばかりだと思えば、その内実も分かろうというものだ。
……俺って何に憧れてるんだっけ?とちょっとだけ思わないでもない。
いや、人格者の、すばらしい
それこそが俺の憧れるものである。うん。
「……ちなみにだが、ロレーヌはウルフからの依頼について、何が怪しいって思うんだ?」
それを聞いたからって別に受けないことにする、ということにはならないが、参考としてである。
これにロレーヌは、
「色々とあるが……そもそも
確かに、そこまでとは言わないが、貴族なんかはそうやって王都からたまに来たりする。
そのように来るのが、まぁ、なんというか普通である。
ただ、これについては……。
「一応、マルト
「要は形式の話か?」
「まぁ、そういうことだってウルフは言っていたな。
「……分からんでもないが、若干弱いような……」
一応は納得できる理由を言ったつもりだが、ロレーヌ的にはまだ、しこりが残っているらしい。
なんだよ、わがままな奴め、と思うところかも知れないが、実際のところ、これは俺も同感だった。
「……だよな。なんだかこじつけのような気が……」
「他に理由がある、と。お前もそう思っているわけだ」
「勘だけどな。ただそれが何なのかはよく分からん。ただの気にしすぎかも知れないし、そうじゃないかもしれないし……こればっかりは行ってみないと」
実際に王都に行ってみれば否応なく分かることだ。
もう行くことは決めてしまったわけだし、気にしてもしょうがないと開き直っている部分もある。
そんなことをロレーヌに言うと、
「ま、お前が納得しているならそれでよしとするか。あとは……以前の、王都での約束のことだな」
「あの王女さまを助けたことだろ? 俺とオーグリーだけで王城に行ってもいいんだが、そうするともう一人冒険者がいただろう、連れてこいって言われそうだしな。ロレーヌも来た方がいいだろうと思うが、どうする?」
「また旅をしてもいいとは思うが……リナのことがあるからな」
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