「……流石に、
ライズはニヴの言葉にがっくりと来ていた。
その理由は極めて分かりやすい。
銅級になったばかりの新人冒険者に、
ニヴが手際よく
そもそも
仮に
ニヴがそれを出来るのは、ほぼ確実に
そしてそんなものは、駆け出しの冒険者がそうそう持ちうるものではない。
だからこそのライズの落胆だった。
「……ライズ、別にそんなに無茶なことしなくてもコツコツ頑張っていけばいいんだよ。レントさんも前そう言ってたでしょ?」
ローラがパーティーメンバーをそう言って慰める。
俺は……そんなこと言ったかな?
雑談とかしているときに言ったかもしれないが、あまり覚えていない。
覚えていないとはいえ、別に適当に言ったわけではないと思うが。
本当にそう思っているしな、俺は。
なにせ、コツコツやり続けて十年の俺である。
結果として、イレギュラーな方法によって強くなってしまったが、結局、冒険者でもなんでもコツコツやるのが一番効率的で近道なのだ。
特殊な才能や能力を持っているなら話は別だろうが、そういうものに漠然と期待しているだけだと結局何もできずに終わってしまうからな……。
「へぇ、レントさん、いいこと言いますね。私もそう思いますよ」
と、意外なところから賛成される。
言ったのはニヴであった。
彼女は続ける。
「もちろん、
……凄いまともなこと言ってる……。
などと思うのは、ニヴのネジが外れたところばかり見てきたからだろう。
ロレーヌも似たようなことを思っていることが、彼女のニヴを見る表情から分かる。
ただ、同時に、流石は上位冒険者なだけあるな、という賞賛の色も見える。
ライズとローラは憧れの金級冒険者が言った言葉に感銘を受けたようだ。
「そうなんですか……レントの言ってたことは、やっぱり正しいんだな……コツコツ頑張ろうぜ、ローラ」
「うん。無茶しないで、ね」
ローラの方はニヴにありがたそうな顔をしている。
この二人だと、無茶するのはライズだろうからな。
ニヴがちょうどよくそのライズの無鉄砲なところを抑えるようなことを言ってくれたのが都合が良かったのだろう。
それから、ニヴは、
「……それで、ですね。これからお二人には後輩として頑張っていただきたいところなのですが、少しばかり確認をしたいのです」
と本題に入る。
珍しく説明する気なのは……二人が無自覚であるから、かな。
二人は自分がそういう風になる可能性がある、とも分かっていないから。
自覚ある
ぶれないな、ニヴ。
「確認? 何のですか?」
ライズが尋ねると、ニヴは言う。
「お二人が、
語るニヴの表情は、笑顔だ。
形だけ見ると、ただ微笑んで説明しているだけだ。
けれど、その赤い瞳に宿る感情はかなり厳しいものである。
あの目の前には立ちたくないものだが、ライズとローラにはそれは感じられないのだろう。
それでかえってよかったな。
分かってたら逃げたくなるから。
ことの重みが分かっていない二人は、顔を見合わせて、素直に返答する。
「別に構いませんよ、俺は。ローラも、なぁ?」
「うん。痛いこととかなければ……」
そんな二人にニヴは、
「問題なければ痛いことなどありません。同意もとれたということで……失礼しますね」
と言い、その掌に青白い炎を現出させた。
人の頭ほどの大きさの火炎が燃え盛る。
ライズにもローラにもそれは見えていないようで、手のひらを上に向けるニヴを不思議そうに見ていた。
それから、ニヴは二人に向かって、その炎を放つ。
そして、青白い炎は二人を包み込むように燃え盛るが……。
二人は、特に反応は見せなかった。
何か微妙な違和感はあるようで、首は傾げているが、それだけだ。
苦しむそぶりも、火傷を負うこともなく、問題はなさそうである。
その様子を見たニヴは、若干がっかりしたような表情をしたが、最初からその可能性は低いとは思っていたのだろう。
頷いて、手を再度二人に向けて、握りつぶすような仕草をすると、炎はぽっと音を立てて消えた。
「ありがとうございます。特に、問題ありません。お二人が
ニヴはそう言って、今度こそ、穏やかな瞳で笑いかけたのだった。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。