- 1二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 13:55:38
「…ちょっと。」
そう言いながら私は赤い暖簾に手をかけようとするあの人を軽く目線で刺した。確かに一緒に温泉に入ろうと言ったのは私だ。でもそれは浴場まで一緒に歩いて行こうという意味で言ったのであって、断じて浸かる浴槽を共にしようだとか裸の付き合いをしようという意味などではない。そもそも仮にもれっきとした成人男性であり中央トレセン学園トレーナーであるはずの彼は今一体何をしようとしているのだ。もはや抜けているとかとぼけているという言葉で済むものでもないだろう。すると彼はようやく自分の行動を認識したのか、反射のように赤いのれんから手を離して距離をとる。
「アハハ!ゴメンゴメン、ホント何やってんだろうな俺…」
笑いながらそう言うけれど、その表情に落胆の色を全く隠せていない。分かりやすいのやら分かりにくいのやらそれすら分からなくなりそうだ。さっきのも疲れているからだったのかもしれないし慰めでも言おうかと思ったが、そうしているうちに人の目も集まってくる。
「他のお客さんの迷惑になるでしょう。ほら、早く男湯の方に行きなさい。」
私の言葉に生返事を返したあの人は明らかに気落ちしていて、もし彼にウマ耳や尻尾が生えていたなら垂れ下がったそれから誰もが彼の心情を察せただろう。こういう姿を見るとこっちとしても罪悪感が湧き出てくる。私は小さなため息をついてから彼に向かってピンと背伸びをした。動揺する彼のことは気にも留めずに、目標の右耳のそばで着物にしがみつきながらこう囁く。
「後で個室の露天風呂、一緒に入ってあげるから。」
言い終えるとすぐにあの人に背を向けて赤い暖簾の向こうに消えていく。呆然とする彼のことなんて構わない。私はわざとらしいくらい大股で更衣室を進んでいった。少しだけ、生まれながら持っているこの耳と尻尾のことを恨む。だって、他の人が見たならば私が一体どういう心情なのかすぐに察してしまうだろうから。 - 2二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 13:56:36
なんかすぐにスレが消されたので再々掲。また消されるかもなので気に入ってくれたらコピーでもして下さい。