確かにそれは親玉の居場所を推測するのに重要な情報だな。
だが……。
「その辺りは俺も今一分からない」
俺にはそう答えるしかない。
ウルフは首をかしげて、
「なぜだ? お前は……じゃないのか?」
気遣いが身に染みる。
そして確かに彼の言う通り、俺は
けれど……。
「いや、よく考えてみろよ。俺は人を襲ったことがないんだぞ。
つまりはそう言う話だ。
言われてウルフもはたと気づいたらしく、
「……そうだったな。言われてみれば、人を襲わない
腕を組んでそういうウルフだったが、別にヒントゼロと言うわけでもない。
俺は言う。
「まぁ、それについてはちょっと待て。確かに
そう言って肩に乗っかっているエーデルを指さす。
するとエーデルは二本足立ちになり、腕組をした。
……鼠の癖して器用だな。
ウルフはそれを見て目を丸くし、
「……ただのペットかと思ってたぜ」
と呟く。
鼠なんて好き好んでペットにする奴は少ないだろ。
なんで俺がそうすると……あぁ、あれか。変人扱いか。
誰も肩に乗ったこいつに突っ込んでこないのはそういうことか?
「仮に百歩譲ってペットなんだとしても、わざわざこんな状況の中、肩に乗せて愛でたりはしないだろうが」
「まぁ……お前ならそういうこともありうるかと。なにせ、突然わけわかんないことやりだすことには定評があるからな。昔からそうだったろ。とは言え、後になって考えてみると、どれも意味があることばかりだったりしたが……まぁ、昔話はいいか。それより、そいつが使い魔だとして、それがどうした?」
「ああ。
俺の言葉にウルフは頷いて、
「……なるほど」
そう言った。
それから、
「で、どれくらいの距離なら操るのが可能なんだ? ……おい、本当に操れているのか」
俺の肩の上で謎の動きをし始めたエーデルを見て、胡乱な目を向けるウルフである。
お前、何やってんだ? ……暇つぶし? 好きにしろよ……。
ともかく。
「まぁ、普段は好きに行動させてるんだ。これでも命令すればしっかりその通りに動く。それで……それが可能な距離だが、少なくともマルトのどこかにいれば普通に意思疎通は可能だな。マルトの外に出ても……簡単な指示くらいなら出来る」
「おい、そんなに広範囲にわたるのか……具体的にはどのあたりまでだ?」
「そうだな……まぁ、《新月の迷宮》くらいまでなら、大丈夫だろうな」
実際にやったことはないが、感覚的にそんなものだ。
流石に細かい指示を出したり、タイムラグ一切なしでの連絡はとれないが、大まかな指示くらいならその程度の距離でも可能だ。
それに……俺は見ているからな。
それについてもちょうどいいから伝えるべく、口を開く。
「ついでだが、俺はこいつとある程度感覚を共有できるんだが、こいつ自身も自分に従う同族の視点を共有できるらしくてな。それを使って、ちょっと気になることを掴んだんだ」
「……ついでに言うことじゃねぇな、それは……。視点を共有? 見ればそいつは色や大きさはかなり違うが、
ぶつぶつ独り言を言いながら、その意味を理解していくウルフ。
最後に、
「……いやはや、お前を
と言った。
それに対して俺は、
「いや、そこまでじゃない……けど、かなり色々なところに入り込んで情報を得られるのは事実だ」
「お前……
ウルフの質問に、俺は答える。
「……《新月の迷宮》で人に噛み付く
「なるほどな……。行方不明事件が起こってたのは、主に迷宮だ。街中でも起こってはいたが、迷宮の方が頻度は高かった。ただ、
街が燃えて、
とは言え、俺の伝えた話から、親玉が迷宮にいる可能性はそれなりに高まった。
この状況でどうするかだが……。
ウルフは少し考えてから、
「……まぁ、そうはいってもあんまり人員は割けねぇな。街中がなんとかなりつつあるとはいえ、それでもまだまだ終息には遠い。となると……何人か人を選抜して行かせることになる。レント、お前は行ってくれるか?」
ウルフの言葉に、俺は頷く。
どれだけ上位の存在なのかは分からないが、ある意味で俺が一番精通していると言える。
だからウルフも俺に行けと言っているのだろう。
「あとは……ロレーヌもいた方が良いよな? それと……」
ロレーヌは俺がボロを出さないようにするため、というのと、マルトでもそれほど多くない銀級だからだろう。
そして、
「……私も連れてってくれるんですよね?」
「うぉっ!?」
ウルフの後ろからそう言ってにゅっと顔を出したのは、言わずと知れた
……来るなよ。頼むから。
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