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第13章 数々の秘密
第274話 数々の秘密と転移魔法陣の危険

 とりあえず、かなり数ある転移魔法陣すべてを今日回るわけにもいかないので、あくまでもいくつかを回ってみることにした。

 どの転移魔法陣を回るかはガルブとカピタンの選択に丸投げだ。

 というのも、彼らは俺たちが使っていない転移魔法陣をいくつも使っていて、その出口についても知っているからだ。

 《アカシアの地図》の効力を試すのにはうってつけ、というわけだな。

 その結果は……。


「……ううむ、《行ったことのある場所がマッピングされる》というのは本当のようだね。ただ、転移魔法陣については、使わない限りは詳しくは行き先が表示されないと言うことか」


 ガルブがそう呟く。

 彼女が覗く《アカシアの地図》には、《至ライナ王国辺境都市アルハザ》と記載されているところと、《至ソーン共和国ダリスの島、商人ダリスの見捨てられた倉庫》と記載されている部分があった。

 どちらも地図上の転移魔法陣の下に記載された文字であり、これによって分かったことがいくつかある。


「転移魔法陣を使えば詳細に出口の場所が記載されるが、使っていないものについては国名と属する自治体の場所が記載されるに留まる、ということだな」


 カピタンがそう言った。

 つまり、《至ライナ王国辺境都市アルハザ》と記載してある転移魔法陣の方はまだ使っておらず、前に立っているだけで、《至ソーン共和国ダリスの島、商人ダリスの見捨てられた倉庫》と記載してある転移魔法陣の方はガルブ達と使ってみて、実際に出口に一回行って戻って来たのだ。

 もちろん、使う前にも地図を確認してみたが、そのときは《至ソーン共和国ダリスの島》とまでしか表示されていなかった。

 使って戻って来たら、記載が増えていたのだ。

 ちなみにダリスの島は風光明媚なところでした。

 ソーン共和国って確か南の方にある島国だったからな。

 数千の島で構成された国で、海運が発達しているらしい。

 そのうち暇になったら海水浴でもしたいところだ。

 ……まぁ、別に今も忙しくはないんだけどな。

 やることは山積しているが、期日が決まってるわけでもないし。

 もちろん、早く神銀(ミスリル)級にはなりたいけれど、気合を入れすぎても足を掬われる。

 その辺りは適度に休養を挟んだ方がいいだろう。

 ……怠け者か。


「そのうち全部片っ端から使って正確な出口を地図に記載しといた方がいいかな」


 俺がカピタンの言葉を受けてそう言うと、ロレーヌが悩んだ顔で、


「……可能ならそうした方がいいかもしれないが……出口が安全かどうかがな」


 と不安を口にする。

 これにはガルブも同感のようで、


「……確かにその心配はあるね。と言っても、出口側ががれきに埋まっていたりする場合、転移魔法陣を発動させると岩と融合する、なんてことは起こらないらしいからそこまで心配せずともいいとは思う。ただ、それでもいきなりどっかの国の玉座の間に転移する、くらいのことはありうると思っておいた方が良い」


 と、恐ろしいことを言う。

 岩と融合しない、壁の中に転移しない、というのは安心材料だが、玉座の間に転移と言うのは……。


「なんとなく分かるだろう? ハトハラーへのものや、王都ヴィステルヤへのものは古いと言っても数百年で済んでいるが、他のものは……ここの古代都市と同じくらいに古いものである場合も少なからずあるだろう。むしろ、大半ではないか? となると……転移魔法陣があるとは知らずにその上に建物を建てたりしている場合もあるだろう。転移魔法陣は知っての通り、壊れない。正確には壊れても復元される、だが……一応色々と実験がされていてな。塞がれた場合に転移魔法陣を発動すると、出口側の出現位置が縦移動することがあることは分かっている」


「ん? それはどういうことだ?」


 ロレーヌの言葉に首をかしげると、ロレーヌは説明する。


「わかりやすく言うと……出口側の転移魔法陣が床に書いてあったとする。その床の上に、転移魔法陣を覆う形で石畳を敷いたとする。この状態で入り口側の転移魔法陣を使うと、さて、どうなる?」


「……どうもならないんじゃないか? 転移魔法陣は壊れないんだし……そのまま床の上にあり続ける。結果、転移できない……」


「確かに、理屈の上ではそうなりそうだな……この場合、完全に転移魔法陣は塞がれているわけだものな。しかし、こういう場合、転移魔法陣は面白い挙動を見せる」


「それは?」


「積まれた石畳の上に移動してしまうのだ。勝手にな」


「……それは……」


 便利だなぁ、と思ったけれども、俺たちの置かれている立場からすると怖いかもしれない。

 それはあれだろ。

 転移魔法陣の上に建物が立っていたら、その建物のどこかに転移する可能性があるということだろう。

 つまり、ガルブの言う玉座の間にいきなり転移、とはそういうことなのだ。

 しかも、出口側の転移魔法陣は塞がれている。したがって……戻って来れない。

 ガルブが付け加えるように言う。


「そういう場合もあるだろうし、それに古い砦や城を修復して使っていることも少なくないからね。貴族の城の来歴なんかたまに聞くと、嘘つくんじゃないってくらい古代の歴史から始めることもある。もちろん、そのほとんどは箔をつけるための見せかけの歴史だろうが、その全てが嘘と言うこともあるまい。いくつかは事実だろう……そういう建物に、転移魔法陣が普通に残っていることもなくはないと私は思うね。なにせ、ハトハラーのあの砦にあったんだ。ああいう砦や城が他にあって、普通にそれと知らず使われていてもおかしくはない。稼働しない転移魔法陣なんて絨毯で埋められてそのままってこともあるだろう。となると……というわけさ」


「絨毯が敷かれている場合、絨毯の上に乗った状態で転移魔法陣は発動するのか?」


 俺がふっと気になった疑問を口にすると、ロレーヌが呆れた顔で、


「お前……今聞くことがそれか?」


 と言って来た。

 仕方ないじゃん。気になるんだもん。

 そんな顔をしていると、ロレーヌはため息を吐きつつもちゃんと説明してくれる。

 こういうところが好きだね、俺は。


「……絨毯のような布なんかで塞いでいる場合には石やなんかで塞がれている場合とは違って、発動するらしい。そして、出口側の転移魔法陣が塞がれている場合には、絨毯の上に移動する。もちろん、私はやったことがないから本当かどうかは分からないが……だから、それが事実だとすれば、いきなり玉座の間に転移、はやはり十分にありうる話だ」


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