王都の
他の国の
クラスや依頼達成状況などについて共有し、別の国に行っても依頼を受けられるようになっているわけだ。
なぜ緩やかな協力関係かと言えば、それぞれの国の
他国の情報を流したり、仕入れたりすることは日常的にやっているし、
だからこそ、
ま、俺みたいな低級冒険者が考えることでもないのだが、そういうのは噂話でも色々聞くと面白いからな。
結構楽しんで話したりしているものだ。
そんな
受付カウンターも高級感があり、安物の木造りだったマルトとは大違いである。
受付にいる職員たちも、なぜか美人が多い。
マルトの職員も美人じゃないと言う訳ではないのだが、なんというか……都会的な美人ばかりと言うか。
「……おい、見とれるなよ」
ロレーヌからそんな声が飛んできたので、
「見とれてないって。ただ、随分、感じが違うなって思っただけだ」
実際は多少見とれていたが、それはご愛嬌と言うものだろう。
ロレーヌもそれは分かっているのだろうが、呆れて鼻を鳴らすだけで済ませてくれたのはありがたい話だ。
「とりあえず、案内してやろう……まぁ、そうは言ってもあるものはマルトと大して変わらんがな。そこが
そうやって言われると、確かにどれもマルトにあるものばかりだ。
机や椅子、内装がマルトのそれと一線を画する高級感を有するので全然違うところに来ている感じがするが、改めて説明されると何も変わらない。
依頼掲示板にも寄って行ってみるが、それこそマルトと同じだ。
ただ……。
「……やっぱり結構難しそうな依頼が多いな。お、この薬草採取は簡単そうだ」
「お前にとっては簡単なんだろうが、それは見分けるのが難しいからな。王都の冒険者にとってはかなり難しい依頼だぞ。依頼日を見てみろ」
「……三日前じゃないか。俺なら速攻とるぞ、こんなの」
「マルトの冒険者なら三日は放置しないだろうな……お前の教育の賜物か、薬草とかに詳しい冒険者が多いからな」
教育とは、俺がマルトの
講義と言っても、何か特別に難しいことを教えたりはしなかったが、初心者冒険者にとって稼ぎの大半になるだろう薬草採取のために、その辺りの見分け方とか、どんなところに生えているかとか、山や森の歩き方についてはかなり教え込んだ覚えがある。
実際に俺が薬草をとってきて、見分けさせたりしたし、似ているが間違った薬草を使うとどうなってしまうかなど試させたこともあった。
腹を壊すとか調子が悪くなるくらいなら講義を受けてる冒険者本人に食わせてみたりしたな。
死にかねない奴は、
そんな場面を見たからか、その講義を受けた奴らは薬草の見分けや採取にかなり真剣に取り組むようになり、マルトにおいてはよほど生えている場所や季節などが限定されていない限りは、薬草関係の採取依頼は即座に掲示板からもぎ取られるようなってしまい、結果、俺の首を絞めた。
まぁ、初心者同士で譲り合っていたみたいだからいいんだけどな。
俺にはゴブリン・スライム・
「……困ってるなら受けてやりたいが、流石にな……」
掲示板に張ってある依頼票を見つつ、困っているだろうな、と思ったのでついそんなことを口にしたが、今の俺の身分で依頼を受けると記録に残ってしまうし、そんな危険を踏む気にはなれない。
ロレーヌも流石に冒険者証は自分のものしかないだろう。
「ま、仕方がないだろう……。さて、そろそろ
ロレーヌがそう言いかけたところで、
「……やぁ、君たち、ちょっと、その依頼簡単だとか言わなかった?」
と、後ろから声がかかった。
一体誰が……と思って振り返ると、俺は息が止まった。
なぜなら、そこにいる人物は酷く派手な服装に身を包んでいたからだ。
虹色のひらひらとした服に、クジャクの羽の突き刺さった帽子、腰に下げた剣の柄には極彩色の文様が描かれていて、目がちかちかする。
さらに言うなら、その人物の顔を俺は良く知っていた。
なぜなら、少し前までマルトにおいて活動していた冒険者の内の一人だから。
「……いや、それは……」
なんとなく俺が口ごもっていると、その男は言う。
「いやぁ、僕もその依頼、張り出された日から見てたんだけど、誰も取らないからさぁ。僕って薬草の採取依頼とか地味なのは昔から不得意で、出来るだけ回避してたんだけど、流石に三日放置はかわいそうじゃない?
あぁ、そうだ、こいつって喋るときはひたすらに喋る奴だな、とそれで思い出した。
俺はとりあえず、
「……事情はなんとなく分かった。だが、その前に名乗ってくれ」
名前は知っているが、話を止めるためだけにそう言った。
すると男は言う。
「ああ、ごめんごめん。僕はオーグリー。銀級冒険者オーグリー・アルズさ。よろしくね」
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。