「……魔石と杖の結合はさっき見ていた通りだ。だから説明しなくても出来るだろう……」
とロレーヌが言ったところで、
「おいおい、ちょっと待て。杖頭を魔力で動かして魔石を固定する、というのは分かるが、あのバチバチした雷みたいな光の方はどうなってるんだよ」
と俺が突っ込む。
ロレーヌはそれに笑って、
「まぁ、そうなるだろうな。冗談だ」
と言う。
それから、
「あの光が大事なんだ……さっきは、まとめてやってしまったが、魔石と杖の結合にはいくつか工程があってな。それをこれからやってもらう。まず、一つ目は、杖に
「
アリゼが尋ねると、ロレーヌは言う。
「読んで字のごとく、だな。要は、杖が完成したときの魔力の通り道のことだ。まぁ、何もしなくても魔力は通るんだが、それだと非効率だからこの工程がある。杖の中にもともとある、魔力の通り道を束ね、太く、まっすぐにするのだ」
言っていることは分からないでもないが、どうやるのかは謎だ。
アリゼもそうなのだろう。
微妙な表情で、
「……どうやるんですか?」
と尋ねていた。
これにロレーヌは、
「大分抽象的な感じがするだろうが、実際やってみるとそれほど難しくはないぞ。さっき杖を形成したのとあまり変わらない。杖の下の方から、ゆっくりと、魔力を流して、どう魔力が流れているか集中して感じ取ってみろ」
言われて、俺とアリゼは先ほど自分で形成した杖に魔力を流した。
すると、魔力は杖の下から杖頭の方へ、分散しながら流れているのが感じられた。
まるでいくつも分岐のある通路に水を流したかのごとく、他の方向に魔力が流れていくのだ。
非効率、とはそういうことか、と納得する。
アリゼにもそれは分かったようで、
「これが、
とロレーヌに尋ねた。
彼女は頷き、答える。
「そうだ。ただ、分かっただろうが、素材の形をただ杖の形に形成しただけだと、
出来るかどうかは分からないが、やり方は分かった。
そう言う意味で、俺とアリゼはロレーヌに頷き、それから作業に取り掛かった。
やってみると、確かにロレーヌの言った通り、さっきやったこととほぼ同じだ。
杖の内部にある見えない
ただ、もともと杖に通っている
それでも俺は単純作業は割と好きだ。
しっかりと人間だったころ、毎日のように《水月の迷宮》で同じ魔物を狩り続けてへこたれなかったくらいだからな。
これくらいは余裕である。
しかしアリゼは……。
かなりイライラした顔をしていた。
それを見てロレーヌが、
「……面倒になって来たか?」
と尋ねると、はっとして、
「い、いえ……あの」
とバツの悪そうな顔をする。
ロレーヌはそんなアリゼに笑って、
「いや、気持ちは分かるぞ。私も始めて杖を作った時は、似たような顔をしていたからな。師匠の顔面目がけて杖をぶん投げたものだ……」
と衝撃の思い出話を披露する。
「が、顔面目がけて……」
アリゼはとても自分にはそんなことは出来ない、という表情でつぶやく。
ロレーヌは続ける。
「ま、それくらい面倒くさい作業と言うことだな。ただ、これは杖の良し悪しに大きくかかわる作業だから、頑張れ」
「はいっ」
元気よく返事をしたアリゼは、そうして作業に戻った。
今度はイライラせずに、一生懸命取り掛かっている。
……しかし、俺としてはその励ましよりも気になることがある。
「……その師匠はどうなったんだ?」
ぼそり、とロレーヌに尋ねると、ロレーヌは俺の耳元に口を寄せて、
「烈火のごとく怒った。あれは恐ろしかった……もう思い出したくない」
とぶるりと震えた。
ロレーヌにそこまで言わしめる師匠と言うのがどういう人物なのか気になるが、俺と同じでロレーヌもあまりここに来る前の話はしないからな。
これ以上突っ込むのはやめておいた。
それから、俺とアリゼは
出来の方は……。
「……よし、いいだろう」
と、ロレーヌが俺とアリゼの杖に魔力を流して確認し、そう頷いた。
ロレーヌは続ける。
「二人とも初めてにしては良くできている。アリゼはしっかり
それで気になったのか、アリゼがロレーヌに、
「ちょっとレントの杖を見せてください!」
と言って俺が作った杖を貸してもらい、それから魔力を通した。
そして、
「……うわっ。なにこれ、私のと全然違う……」
と唖然とした表情を浮かべる。
ロレーヌはそれに笑って、
「まぁ、そうかもしれんが、落ち込むなよ。さっきの人形作りでも分かったと思うが、こいつは普通より遥かに器用だ。あんなの私にも出来ないからな。この杖の
と言う。
アリゼは、
「師匠でも難しいのですか……」
と驚いていたが、ロレーヌは、
「難しいと言うか、面倒なのだ。やってみてわかったと思うが、これは根気よくやればいずれほぼ完璧に出来る作業だからな。ただ、この短時間ではここまで出来ないという話だ」
それからロレーヌは、
「ま、これはこれでいいだろう。次に移る。最後の工程だな。魔石と杖の結合だ。これは少し難しい。なにせ、片手ずつ別の魔力の扱いをしないとならないからな。どちらの手でもいいが、片方は魔石を、片方は杖に魔力を注ぐ。杖の方は
そう言われて、俺とアリゼは杖を魔石を手に持ち、魔力を注ぎ始めた。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。