「
と、ニヴは言う。
なんとなく、
気になって尋ねる。
「……いいのですか? 私が倒してしまっても」
するとニヴは頷いて、
「ええ。私が一般的な
と驚くべきことを言う。
余暇の楽しみで、あれだけの執着を見せているのか?
これは聖女ミュリアスも初耳のようで、意外そうな表情だ。
シャールもである。
商人の耳でもってしても知ることの出来ない話か。
もしかしたら、価値がある情報かも知れない……。
そもそもニヴと関わり合いを持ちたい人間がどれだけいるか、という気もするが、関わらないようにするために使える情報かも知れないな。
ニヴは続ける。
「ですから、レントさんが見つけた
ただ、があるわけだ。
なんだろうな。
金は要らなそうだし、権力はすでに
酒……は飲まなそうと言うか、飲んでも全く酔わなそうだし、ギャンブルもしなさそう……いや、したら鬼のように勝ちそうだな。
じゃあ残るは……女? いやいや、本人が女だし……じゃあ男か。これもなぁ……こう、男に寄りかかって甘えるとかまるで想像がつかない。
こいつにそういうものは必要なさそうだ。
分からん……。
そう思っていると、ニヴは言う。
「レントさんが、
「……それは、一体どういう……」
意図が分からない言葉だった。
求めているところは明確だが、何のために?
まぁ、最終的にはニヴが倒すため、なのだろうが……。
俺が勝てないと思って見逃すことを危惧しているのか?
確かに勝てそうもないなと思ったら見逃すだろうが、そういう場合は言われなくても倒せそうな奴に伝えるだろう。
どれだけニヴと関わるのは勘弁してくれ、と思っていてもこの人は
その辺の冒険者に伝えて、被害を拡大させるよりかは、仕方がなく思ってあの連絡先に伝えることだろう。
それくらいのことは、ニヴには簡単に想像が出来そうだ。
なにせ、吸血鬼が嫌がるような手管をこれだけ細かくやれる人間なのだから。
人がどうすればどう動くか、について、詳しく理解しているのだろう。
お願いの事だって……。
タラスクの報酬が決まってから言い出した辺りにニヴの狡猾さというか、うまさがあるように思える。
先ほどまでだったら相当印象が悪かったし、頼まれても絶対いやじゃ、とそっぽを向きたくなるような心情だったが、今に至っては……。
あれだけ払ってくれたのだ。
ちょっとくらいなら頼みを聞いてもいいかな、という気分になっている。
しかもそれが、これほど簡単な頼みなら……。
ただ、その背後に巨大なリスクがちらちらと見えてもいるのだが……しかし避けたところでな、というのもある。
ニヴは噛み付いたら離さない猛獣のようなところが、ここまででよく理解できている。
何をしようと関わりたいところに全力で関わってくる。
だから、避けても無駄だろう、と思ってしまう。
それなら、別に頼みを聞いても……。
葛藤していると、ニヴは俺の質問に答える。
「深い意味はないですよ……と言っても、レントさんには通じなさそうです。ご説明しましょう」
この言い方が、また俺の無言を勘違いしての過大評価だったら楽なのだが、別にそんなことはないのだろうな。
というか、さっきのも……別に本当に勘違いしていたわけでもないだろう。
ただ、支払う額を吊り上げることを最初から決めていたのだろうと言う気がする。
まぁ、そのこと自体は別に俺にとって悪いことではないのだが、ここに来て、あまりいい方向には作用しないのだろうな、と強く感じる。
かと言って、もう今更どうしようもないが……。
ニヴは続ける。
「まぁ、そんなに身構えなくても大した話じゃないですよ?」
と、ニヴは微笑み、場の緊張を解くように促すも、そう簡単には解けない。
俺もミュリアスもシャールも、ニヴが次の瞬間にいったい何を言い出すのかと不安だ。
俺は仮面があるし、表情にも出すまいと心を砕いている。
それに加えて
が、他の二人は、少しばかり冷汗が見える。
誰も知らない
ニヴは言う。
「……私は、ずっと一体の
「一体の
特定の
身内や知り合いを、血を吸われて殺された、とか
普通にありうる話だ。
まぁ、それは
復讐のためにその相手を探し求めているに過ぎないのだから。
ただ、疑問があるとしたら、ニヴがそのような行動を果たしてするのだろうか、というところだろう。
他人をどうこうされたからと言って、恨みを……なんていうタイプにはまるで見えない。
周囲のことなど気にしない究極の傍若無人であるように俺には思える。
たとえ友人が死のうと家族が死のうと気にしないのではないか。
偏見かも知れないが、そう思ってしまうくらいだ。
しかし、事実として彼女は一体の
その理由は……。
「なんでしょうねぇ。浪漫ですかね? レントさんも古い遺跡を漁って古く強力な魔道具が欲しい、とか思うことはあるでしょう?」
と突然おかしな方向に話が飛んだ。
俺は首を傾げつつも、答える。
「ええ、まぁ……古い変わった魔道具なんかは好きですね」
飛空艇模型とかな。
そこまで言う必要はないだろうが。
ニヴにはどんな情報でも言いたくないな。
飛空艇模型が好き、と言ったら次来た時はそれを手土産に何か理不尽な要求がされそうで嫌だ。
「私もそれと同じです」
「というと?」
「私が追いかけている
――
ニヴは、そう言って微笑んだ。
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