普通の人間からすればそれでも非常に素早く、捕まえるのには難儀することだろう。
しかし、冒険者にとってはそうではない。
魔力や気によって強化された身体能力の前に、
飛び掛かって来た
それだけで吹き飛んでいくほどの威力があるのは、魔力と、そしてこの身の持つ人間離れした身体能力のお陰だった。
そのまま壁に衝突し、ずるずると滑り落ちた
まだ息はあるようだが、ほとんど虫の息だ。
あとは止めを刺すだけ……と思ってゆっくり近づき、ナイフを振り上げたところ、まだ少し元気が残っていたようで、跳ねるようにこちらに向かって来た。
あまり大した速度でもなく、避ければいいか……と体を捻ろうとしたところで、今日は後ろに人がいるのだ、ということを思い出した。
ソロで戦っている日々が長すぎたのが良くなかったのかもしれない。
自分の安全ばかりに気を取られて、一瞬判断に迷ってしまった。
もちろん、背後にアリゼがいる以上、そちらに魔物を通すわけには行かず、かといってナイフを引き戻すのも微妙な位置だった。
仕方なく、ナイフを持っていないもう片方の手で殴りつけることを選択したわけだが、急いで手を突き出したからか、
手に軽くぴりりとした感触を感じたが、今はそれよりも魔物の方である。
吹き飛んだ
「……? なんだ」
奇妙に思って距離をとる。
一体これから何が起こるかわからないからだ。
ばたんばたんと
そして、それと同時に、俺は奇妙な感覚を覚える。
はっとして、ゆっくりと起き上がった
目が合い……そして、俺は理解した。
俺はナイフを下して、しかし警戒は解かずに静かに近づく。
「……え、ちょっと何? どうなったの?」
後ろからアリゼの困惑した声が聞こえる。
俺もよくは分かっていないのだが……とりあえず、静止している
「……そのばで、さんかいまわれ」
と、言ってみた。
すると
それを見て、アリゼの困惑はさらに深まったようで、
「えっ? えっ? どういうこと?」
と言っている。
けれど、俺にはなんとなく理解できた。
先ほど、
一応、血である。
まぁ、それでも、切ってもほとんど流れないんだけどな。
そして、その血が、
その結果が今の状態なのだと思う。
その眷属の一種が、
一般的には出来ない、とされている。
しかし、それは、本来、
いや、眷属を作っても、指示を出さないから結果として、眷属がいないように見えるのでは?
だが、
眷属を作り、
そしてその方法は、
体を無理やり作り替えるのだ。
そして、あの
それによって体が作り替えられて、だからこそあんな風に苦しんでいたのではないか。
そして今、俺はあの
なんだか妙に近しい感覚と言うか、今この体を本体とすると、そこから分けた小さな自分がそこにいる感じと言うか。
そんな感覚だ。
あの
そういうことではないか。
そう思った。
けれど、そんな話をアリゼにするのはよろしくないだろう。
なにせ、そんなことをできるのは
しかし、この状態を説明しないわけにもいかない。
なにか変なことにはすでに気づいているわけだし。
まぁ、ちょうどいい説明と言うのもないではない。
俺は言った。
「おそらくだが、あのまものと、おれとのあいだに、いま、ぱすが、つながったらしい」
《
ちなみに、これは、
彼らは魔物を従えるとき、特殊な魔術でもって魔物との間に《
つまり、俺は、眷属化したことを、従魔化した、ということで乗り切ることにしたのだ。
「えっと……つまり、どういうこと?」
しかし、アリゼには
俺の台詞からすぐに思い浮かぶということはなかった。
俺はそれに頷いて、もっと詳しく説明する。
「おれは、あのまものを、じゅうまとすることができた、ということだ」
「……あなた、
これで初めて理解したらしい。
俺は別に
ただ、少し調べれば俺が
だからその辺は色々と濁しつつ話すことにした。
「いや、おれはけんしだが、いぜん、もんすたーていまーに、じゅうまのつくりかたをきいたことがあってな。すこし、やってみたんだ」
「へぇ……やっぱり冒険者って色々と出来るのね? すごいわ」
あとあと俺のことを調べても、そういうことが絶対にありえないとまでは言い切れないので問題はないだろう。
アリゼは言う。
「じゃあ、この魔物は、もう襲い掛かってきたりしないの?」
この質問には特に誤魔化すことなく、ちゃんと答えられる。
俺は彼女に言った。
「あぁ。それどころか、いうことをきくぞ……ちょうどいいから、このちかしつはこいつにまもってもらおう。ここは、ていきてきにまものがはいりこむんだろう?」
だからこそ、リリアンがここを聖気でもって浄化できないために困っていたのだ。
ちょうどいい番人が手に入った、と思えば悪くない話である。
これにアリゼは、
「本当に襲ってこないならいいけど、大丈夫なんでしょうね?」
と疑い深く尋ねるも、アリゼがその
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