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5.不可解な〝日本一〟騒動

 タイトルに「騒動」とうたってみたものの、どれほどの国民がこの騒ぎを知っていただろうか。
 プロ野球の日本一であるとか、初詣や祭りの動員数だとか、ビルの高さだとか、商品の売上高とか、自治体でいえば人口とか面積とか長寿とか、あるいは物産の生産高とか、いわゆる社会で認知され話題となっている『日本一ランキング』というものはある。
 ところが、ほとんど認知されてはいない『自治体のYouTube公式チャンネル登録者数日本一争奪戦』というものが、一般にはほとんど知られないままこっそりと昨年末から先日にかけて行われていた。もちろんその結果が公式に認められた訳でもなく、「行われていたことになっていた」といったほうが妥当だろう。

 この日本一競争のレースにエントリーしていた自治体はほかになかったようなので、いいだしっぺの安芸高田市の石丸市長が自分で勝手に「よーい、ドン!」の号砲を鳴らして、じぶんひとりがトラックを走り、一番でゴール(当然そうなるだろう)し、「日本一になりました!」と狂喜乱舞(文字通り下の写真のように名状しがたい舞いをしていた)して、おひとり記者会見で報告し、それが〝犬笛〟となったか、彼のファンだけが「石丸市長すごい!」の合いの手コメントで賞賛していたという奇怪な騒動がネットの片隅で起きていたのだ。

「東京都に勝って日本一になった!」と狂気乱舞する石丸市長
じつはそのときはまだ…

企画・実行・表彰をすべておひとりで


 ことの発端は昨年の12月11日。石丸市長のXに唐突に次のような投稿が踊った。

「公式チャンネルの登録者数が6千増えました。自治体日本一まで3.4万人です!!」13.9万人(東京都17.3)

 この投稿によって、石丸市長は「自治体の公式チャンネルの登録数で日本一を目指す」と宣言したのだ。
 このランキング、前述したように自治体の間で競っているという話は聞いたこともなかったし、ランキング上位をことさら自慢している自治体があるとも知らなかったから唐突の感は否めなかった。
 そのときは「わが人気を誇示し、そのためには他人の誹謗中傷も上等の彼が、またぞろ思いつきで人気取りのパフォーマンスをはじめたのだろう」ていどに見ていた。しかし、わざわざそんなことをはじめたということは、そこになにがしかの思惑、意図があってのことだったはずだ。
 そのことには、のちほど考察してみたい。

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この投稿でおひとりランキング競争を宣言

 ところで、そのときの安芸高田市の公式チャンネル登録者数は13.9万人だった。この夜にやったMeet-Upオンライン中継からの登録者の推移を、レースの主催者兼唯一の参加者であった石丸市長がXで申告した数字をもとに確認してみよう。(数字は万人単位)

12月10日 
5回目のmeet-upオンライン開催
12月11日 
「公式チャンネルの登録者数が一晩で6千増えました」(13.9に)
「自治体日本一まで3.4万人です!!」(東京17.3)
12月12日 
「ライブ配信から僅か2日で登録者数が1万人も増えました」(14.3)
12月22日 
【日本一まで残り2.5万人】(14.8万人に)
12月24日 
第6回meet-upライブ開催
12月31日 
第7回meet-upライブ開催

2024年
1月14日 
「16.8万人まで来ました。東京まで5千です」
第8回meet-upライブ開催
1月15日 
「登録者数が茨城県民の力も借りて単独2位となりました」(16.9)
1月16日 
「朝起きると17.1万人に」
「そうこうしているうちに」17.2万人に」
「ついに東京に並びました」17.3万人に
1月17日 
「晴れて日本一になりました」と発表し「喜びの舞い」を披露
18日に第9回meet-upライブを開催することを予告
1月18日
「昨日、(東京都を抜いて)ジャイキリは達成したものの、日本一は未達成だったようです…神戸市(19.5万人)の皆さん、大変失礼しました」
第9回meet-upライブを開催して「いやー、苦労しました」と、ご満悦

 石丸市長が勘違いしたまま「日本一になりました!」とXの投稿で発表したころ、ちょうど『石丸伸二研究』の第4弾を書き上げたところだったので、そのタイトルに掛けて「その数字(登録者数)もでっちあげかと疑いつつ…」と冗談を混じえて公開を下記の投稿で告知した。それが16日8時過ぎのことだった。

 翌日の17日、石丸市長は日本一の達成(じつは空振りだったのだが)を無人の市役所のロビーかどこかで緊急記者会見と称して発表した。ちょうどその日は阪神淡路大震災があった日で、能登半島の被災が深刻になっていたことでもあり、曲がりなりにも首長たるもの弔意を示して自重するものだろうが、ひとり芝居ならぬ〝おひとりレース〟の勝利だけが頭にあったらしい石丸市長は前掲のような奇怪な踊りまで披露して喜んで見せたのだ。しかも、そのとき実際にトップだったのは、震災で大きな被害に遭った神戸市だったというのだから、公人としての自覚の欠如はいうまでもなく、行政を司るに資質もセンスも、そして運も持ち合わせていないのをこの騒動は示唆したといえるかもしれない。

「でっちあげ」に過剰反応した石丸応援団

 それはさておき、この緊急記者会見での発表直後から、まるで申し合わせたかのように「でっちあげ投稿」に対して絡みのコメントが飛び込んでくるようになった。
 下にそのいくつかを紹介してみよう。きっと石丸市長を応援している側
も批判的に見ている層もおなじみのアカウントのはずだ。

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17日午後6時前後のスクショ
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上とつづけてのスクショ

「でっちあげ」はタイトルに掛けたシャレのつもりだったのだが「ww」を書き込むのを忘れて(笑)、本気に取られたしまったのかとも考えたが、もともと絡むことが目的なのはわかっている。やれやれ面倒な方たちに難癖つけられたものだ、と苦笑しながらネットをチェックしていた。すると、安芸高田市の登録者数はじつは日本一ではなく、まだ上に神戸がいるという投稿がXにあがりはじめた。
 まさかと思って確認してみたところ、たしかに神戸の公式チャンネル登録者数は19.5万人、その時点で安芸高田市を2万人あまり上まわっていたことがわかった。(とくに神戸市からクレームがあったわけでもないのは、もともと大して意味のない数字だからだ)
 石丸市長にすれば緊急記者会見まで開き、ひょうきんな踊りまで披露しちまったのに、なんと、その時点では目標だった東京のそれは凌駕していたものの、安芸高田市は日本一にはなってはいなかったことが明らかになった。冗談でXに書いた〝でっちあげ〟が現実のものになってしまったわけだ。

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会見で日本一を発表した直後には嘘がバレてしまった
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思わず間抜けな事態に

 私も上の投稿を見て哄笑しながら、先にご紹介した〝絡みコメント〟へ向けて応答として下の投稿をした。

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まさか冗談が本当になるとは…

 それからは個別にコメントに答えすることにして、まず石丸市長の応援団長を気取っているらしい〈SST@安芸高田市応援団〉の返信をチェックした。すると、そこにぶら下がっていた〈かのんキャンパス@毎週火水木22時〜〉(どうやら拙noteの『「恥を知れ、恥を!」のブーメラン』のコメント欄に「駄文でも書いてろ」と、ありがたいご意見をお寄せくださった方らしい)の「事実は受け入れるのが「かっこいい大人です」^^v」とのお調子コメントはブロックされて削除されていた。どうやらアカウントの主は〝順位でっちあげ〟の事実が受け入れられなかったようなのだ
〈てる!石丸市長応援〉
ほかの〝難癖コメント〟も、その時点でほとんどブロックされて消えていた。
〈SST〜〉は踏ん張ってコメントが残してあったので、下記のように返信した。

 どうやってでっち上げるのか → 順位そのものを偽装する
 実際に可能なのか → やってましたね
 疑う根拠はどこにあるのか → 過去の言動から

 
(そうこうしているうちに、ある事実が判明したことが原因だろう、このアカウントにもブロックされて、この返信への答えはもらってはいない)

 それにしても、どうしてこんな初歩的なミスを石丸市長は犯したのだろうか。もし安芸高田市が執行部をあげて企画・実行していたのであれば(そんな自治体があるとも思えないが)、こんな失態を犯すことはなかったはずだ。つまり石丸市長がいつものように独走し〝専決〟したということのようだ。
 後日の記者会見で記者に問われて「千人あまりのチェック体制を敷いていた」とかいっていたと記憶するが、あいも変わらず小学生も騙せないようなホラを吹いてもいたのだが、Xのユーザーがひとり調べても速攻でわかるようなことをチェックできないような個人的な思いつきで、この遊びをはじめていたことは明らかだった。

不気味に肥大して行った登録者数


 17日の夜半になってこの〝順位でっちあげ〟が露見してからのX上の動向は興味深かった。情弱と断じては失礼か、一般の石丸市長ファンらしきアカウントは、いつものように彼の発表を無自覚に鵜呑みにしていて、あいも変わらず「日本一おめでとうございます!」をポストするばかりで、『石丸劇場』の被害者ぶりが哀れを誘ってもいたのだった。
 さすがに石丸応援団を自認するアカウントは、その事実に気がついたものの、とくに騒ぐわけでもなく、解決方法を知ってでもいるかのように下記のようなのんきな投稿をしていた。そして当の石丸市長本人はといえば、ひたすら沈黙を守っていたのだった。

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17日の真夜中
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上と同じころの投稿

 しかし、ほんとうに興味深かったというか奇異だったのは、それからの登録者数の動向だ。神戸市に2万人あまり足りない事実が判明してネットの一部がざわついてきたのは17日の夜半だった。そして、そのころから登録者数は突然に異様な伸びを見せはじめることになる。

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 千単位の数字が秒を刻むように見る見る更新されていって、あっという間に1万、2万と増えていった。そして上のポストが予言したように、ライブ配信が予定されていた18日の午前4時前後には、あっという間に神戸市と並んで19.5万人を数えていたのだ。

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18日午前4時半ごろの投稿

 前述したように、その間に市長から新規登録を懇願する投稿はなかった。そして、ほとんどの石丸ファンはすでに達成したと思い込んで祝福のポストをしているばかりだった。石丸応援団からも、とくに登録の協力を呼びかけた形跡はなかった。ただただ登録者数だけが不気味な生物のように、ひたすら肥大をつづけていたのだ。
 その異様さを数字で見てみよう。夜中の12時から翌日の午前4時までの4時間に2万人の登録があったわけで、文字通り秒を刻む毎にひとり以上の登録がこの時間だけに、全国民が寝静まっている深夜に集中していたことになる。前の表でもわかるように、追い込みをかけた16日ですら、1日3千前後の登録しかなかったのだ。にわかには信じられない現象が起きていた。その爆発的な増加の起爆剤になったものは何もなかったし、そんな兆候はネット上のどこにも見られなかったにもかかわらずだ。

 その過程で、どうもこの増加ぶりは不自然だという声がネットに上がってくるようになった。そしてその疑問に動かされて調べたXユーザーから、とんでもない事実が投稿されるようになった。なんと「YouTubeの登録者数は買える」ことを示唆する内容の投稿が散見されるようになったのだ。

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日本一騒動のあとも買い取り疑惑は尾を引いて

 どうやら、これらの投稿がはじまった直後に〈SST@安芸高田市応援団〉にブロックされたようだ。「どうやってでっち上げるのか?」の解答のひとつが公になってしまったからだろう。
 参考までに、あるサイトの価格表をご覧いただこう。ここなら16万円で2万人の登録者が買える。そして赤で囲ったように24時間対応だから夜中の発注も可能だった。もちろん秘密厳守だ。

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この表はチャンネル登録数を競う愚かさを示している

 ここで、「安芸高田市、もしくは石丸市長はYouTubeの登録者を買ったのだろう」と決めつけることはエビデンスがない以上はできない。それはこれらの状況を勘案して、それぞれが判断してもらえればいいことだ。

あらたに浮かんだ疑問

 ここで、さらにこの問題を深掘りしてみたい。それは「なぜ石丸市長は自治体のYouTube公式登録者数などという、買おうと思えば買えるような数字を持ち出してきて空疎なイベントを展開したのか?」という疑問だ。とるに足らない数字を持ち出してきて、もっともらしい演出をした理由とはなんなのか?
 そんなことを思っていたとき、ふとある推測が頭をよぎった。
「もしかして…」
 それで作ってみたのが下の表だ。前掲のものと重複になるので必要な要素だけ列挙してみた。

12月11日 「公式チャンネルの登録者数日本一まで3.4万人です」
12月12日 「ライブ配信から僅か2日で登録者数が1万人も増えました」
12月13日 〝ポスター代金未払い訴訟〟で敗訴
      
原告の実名を投稿に晒して憂さ晴らし?
12月14日 熊高議員のYouTubeチャンネル開設を投稿してご機嫌とり
      母親から晩飯の差し入れがあったと、お涙ちょうだい投稿
12月20日 高校の生徒会会長に100万円を託して人気取り
12月22日 【日本一まで残り2.5万人】 14.8万人に
12月26日 〝恫喝裁判〟で敗訴
2024年
1月4日 年初の投稿は石川県の復旧・復興の案内をリポスト
1月10日 市民グループが市長の辞職要求
1月11日 前日の報道でテレビ局のRCCにいちゃもんつけて〝犬笛〟?
1月13日 まとめ、切り抜き動画を推奨して人気の底上げを図る
1月16日 「ついに東京に並びました」17.3万人に
1月17日 阪神淡路大震災の日に「日本一になりました」とタコ踊り
1月18日 早朝までに登録者が激増して19.7万人に
     第9回meet-upライブまでに〝偉業〟達成が間に合う

 この表の冒頭を見て、ほとんどの方がピンときたことだろう。石丸市長は明らかにふたつの裁判を意識していたはずだ。そのどちらも敗訴が予想されるなか、その汚名を注ぐ方法を必死で模索したことだろう。そこで浮かんだのが、前記のスケジュールで達成可能だった『自治体のYouTube公式チャンネル登録者数日本一』だったのだろう。

 その結果が功を奏したかどうか、かえって失態を晒してしまっただけに思えるのだが…

(一部敬称略)

◉この原稿は推敲中です


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元手作り野球場DREAMFIELD管理人。ホーリー農園オーナー兼物書き。主な著書に『わしらのフィールド・オブ・ドリームス』(メディアファクトリー)、『衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?』(洋泉社)、『初優勝』(プレジデント社)、『ズムスタ、本日も満員御礼!』(毎日新聞出版)など。
5.不可解な〝日本一〟騒動|堀 治喜の楼人日記