え、え、どうしようどうすればいい?
好きって俺のことを?
どういう意味で?
何で?どうして?
「私は、楽郎さんが、好きです。恋愛的な意味で好きです!私は楽郎さんの恋人になりたいんです!」
目をキラキラさせて、初対面のはずの女の子が、俺に迫っている状況。
いやいやどうすればいいんだこれ?
俺の恋愛知識にはこんなシチュエーションはない。
まあ、俺の恋愛知識は大半がピザ留学で構成されてしまっているんだが。
とにもかくにも、(クソゲーを)攻略する経験ばかりで、される経験など俺には絶無である。
とりあえず、いったん持ち帰っていただいて後日返事する方向で。
「ええと、ね、隠岐さん」
「……あ」
ああ、いや、ダメだ。
それはダメだ。
こいつの、この子の目を見てしまったら、目が合ってしまったら、そんな選択肢は取れない。とるわけがない。
この子はーー秋津茜は以前俺に訊いてきたことがある。
「どうしてそんなに頑張れるんですか?」と。
きっとあれは、本気で思ったことを問うただけなのだろう。
だから、かもしれない。俺は、本心からの願いで答えた。
未来に誇れる自分でいたいと、カッコつけたいと、そう思ったから。
だから、この場で決めなくてはならない。
この子に、そんな不安そうな顔をさせてはいけない。
そうでないと、カッコがつかない。
「あー、隠岐紅音さん」
「は、はい」
「俺は、君のことを全然知らない。多分、君も俺のことをよく知らないと思う。リアルで会うのは、今日が初めてだから」
「はい……」
とりあえずしゃべりながら頭を回して答えをひねり出す。
うん?なんか沈んだ声になってる
あれ、この言い方だとまずい、何か断る流れみたいになってる!
違う違うそうじゃなくて!ああ待って!そんな捨てられた子犬みたいな顔しないで!
「だから、お互いのことをこれから知っていきたい、と俺は思ってる」
「え?」
それは本心だ。
「俺と、付き合ってもらえますか?隠岐紅音さん、ってうおっ」
え、え、抱き着いてきた。
どうしよう。
え、え、何?
「はい!はい!はい!よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく」
ああなるほど、感極まったんですね。
冷静に考えると恥ずかしいな。
「……で、私はこの状況でどうすればいいのお兄ちゃん?」
「はっ」
ヤバいヤバいがっつり瑠美に見られていた。
というか、瑠美のことが正直頭から抜けてた。
ペンシルゴンたちの鳥頭発言を無視できない可能性がある。
「いや、まあ」
「あ、あの陽務さん!私たちお付き合いすることになりました!よろしくお願いします」
「うんまあ、知ってるよ。その、見てたし」
「はっ、そうでした!」
そうだね、がっつり見られてたね。
というかどうしよう。
こいつに見られたってことは十中八九ペンシルゴンに伝わるだろうし、外道共に今のやり取り見られたら、絶対後でイジられるやつなんだよなあ。
「えへへへへ」
「…………」
何だろう。
この可愛い生き物は。
すごいドキドキするし、顔が熱い。
ああ、浄化される。
この子の笑顔を見てたら、なんかどうでもよくなってきた。
この子と一緒なら、この子と一緒に走っていけたのなら、この先何があっても楽しくなりそうだって、そんな気がするから。
To be continued