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第131話・ボッチサバゲーマーの仲間開拓

 

 《勝者、新海3尉及び坂本3曹》


 演習場へ響いたアナウンスを、坂本と久里浜の2人は狭いキルハウスの中で、大の字に寝っ転がりながら聞いていた。

 周囲には、大量のBB弾が落ちている。


「……四条先輩やられちゃったかぁ、相手があの新海隊長だったら仕方ないわよね」


「良い線行ってたとは思うぞ、少なくともお前よりはな」


「はぁ?」


 起き上がった久里浜は、近くに落ちていた金属製の筒を拾った。

 それは、久里浜の私物装備ではない。


「“グレネード”で自爆攻撃なんて、そんな手段でわたしに勝ったとは言わせないから! 男なら正面切って戦いなさいよね」


「嫌だよ、なんで特戦のお前と近距離でガチんなきゃいけないんだ。僕の役割は、お前と一緒に退場することだったんだよ」


 身を起こした坂本が、ちょっと悪い笑みを浮かべる。


「騙されたな、ガキンチョ」


「ッ……!」


 そう、坂本と久里浜の勝負はたった30秒でケリがついた。

 レンタル品しか持たないはずだった坂本に接近したところ、彼は久里浜が視界に入った瞬間––––私物のグレネードで即自爆したのだ。


 BB弾を高圧ガスで撒き散らす手榴弾の威力は凄まじく、当然だが2人揃ってヒットコールを言うこととなった。


 不満で顔を真っ赤にした久里浜が、立てかけてあったM4A1を抱く。


「私物グレ持ってたんなら言いなさいよ。せっかく良い銃貸してあげたんだから……、楽しく撃ち合ってくれても良かったじゃない」


「なんだお前、そんなに僕と銃撃戦したかったのか?」


 顔を背けながら、ちょびっとだけ頷く久里浜。

 しかし、今回のようなゲームだからできる自爆攻撃でないと……近距離戦で久里浜に勝てないのも事実。


 透と四条をタイマンさせることが今回の目的だったので、別に後悔はしていないが……。


「ねぇ、定例会って興味ある?」


「なんだよそれ」


「サバゲーフィールドに不特定多数のゲーマーが集まって、1日中みんなでサバゲするの。楽しいわよ?」


「僕が陰キャなの忘れたか? お座敷シューターだよ。そんなところ行くわけ––––」


 言いかけた坂本の手を、ガッと掴む久里浜。


「わたしが一緒なら文句無いでしょ!? 一緒に行ってあげるから!」


「いや、僕……泥まみれになるのは仕事で十分だし」


「ちょっと前に横浜に大きい室内用CQBフィールドができたから、そこだと汚れないし大丈夫。しかも駅近!」


「もう8月だぞ、暑くない……?」


「施設中に冷房掛かるから心配しないで、無料のドリンクサーバーだってあるから飲み物飲み放題だし、コンソメスープもある。レンタル銃だって豊富だし、それに……」


 顔を赤らめた久里浜は、手を強く握った。


「今回は敵だったけど、今度はチームで一緒に戦いたい……FALとかいう古い銃で、わたしに挑む人間……そうそういないから」


「ッ……!」


 なんだこいつは、自分のことがキモいんじゃなかったのかと。

 数瞬問答するが、今そこは問題じゃない。


「サバゲーって運動になる?」


「も、もちろん! たくさん動くから下手なランニングよりカロリー消費できるわ」


「あーなるほど、お前が良いスタイル保ってんのも……ダンジョン来る前は自衛隊の訓練とサバゲー両方やってたからか」


 元々坂本は運動が嫌いじゃない。

 よくレンジャー自衛官に混ざって、一緒に駆け足をするくらいには身体を動かす。


 それに……。


「わかった、ちょうど次の休日なにするか考えてなかったし……良いよ。付き合う」


 久里浜の顔が、一気に明るくなった。


「本当!? 嘘じゃないわよね!?」


「疑うなよ……本当だって」


「じゃあさ、来週の休暇で一緒に行きましょう! 予約はわたしがしとくから、あっ。レンタルする銃も選ばないと」


 ウキウキで携帯をつける久里浜に、坂本は淀みつつ呟いた。


「銃、なんだけどさ……お前が良かったら。またこのFALを貸してもらえないかな? 下手なレンタルより……お前の銃の方が信頼できる。もちろん嫌なら––––」


「当日までにチューニングしとく!!」


 2人の週末の予定が決まる瞬間だった。


131話を読んでくださりありがとうございます!


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