「坂本、あの2人ならどう来ると思う?」
試合開始まで残り2分。
銃を持った透が、念入りに得物をチェックしている坂本に聞いた。
彼の銃––––『FN-FAL』は、実銃だと7.62ミリ弾を使う強力なバトルライフルだ。
銃器ヲタの久里浜が選んだだけあって、確かに64式と極似している。
まぁ言ってしまえば、古い銃であった。
「久里浜と四条2曹じゃ性格が違いすぎますからね、立ち回りも正反対と見た方が良いでしょう」
「っとなると、久里浜が前衛で……四条が後方支援か?」
「一番濃い線はそこです、でも……」
重いマガジンを銃に差した坂本は、疑わしげに呟いた。
「それが見せかけの可能性も捨てきれません」
「だが久里浜は間違いなく接近戦を仕掛けてくるだろう? アイツ、CQBなら錠前1佐に次ぐ実力だぞ。どうする?」
同じくマガジンを差した透に、坂本は振り向いた。
「ならば、取るべき対応は1つですね。久里浜の方も僕が後方支援に立つと思ってるでしょう」
アイアンサイトを近距離用に設定して、坂本が呟く。
「だったら、その頭をぶち抜きます」
両陣営の準備が完了したことで、いよいよカウントダウンが始まる。
頭のライブカメラを調整して、銃のコッキングレバーを引く。
ザリザリ感の無い、スムーズなボルトの動き……さすがは国産だった。
この銃を作ったメーカーのためにも、負けられない。
《3、2、1––––試合始め》
ブザーの音が鳴り響く。
まず我先にとダッシュしたのは、久里浜だった。
スリングの掛かった『M4A1 RⅢ』を持って、やはりというかとんでもないスピードで走って行く。
しかもただ突っ走るのではなく、バリケードの“上”までキッチリとクリアリングしていた。
以前、透と戦った時にやられたバリケード超え対策を、しっかり対策している。
「千華ちゃん、戦線中央に達したら側面から奇襲を。まずは後衛と予想される坂本3曹を潰します」
無線の声に反応して、久里浜はバリケードの少ない広場へ出た。
銃口を向けた先には、天井近くまで建てられた“スナイパータワー”がある。
そこへ照準を向けた。
「来なさいクソ陰キャ……、アンタがそっから遠距離で仕留めようなんて、こっちはわかってるんだから」
久里浜の持つ台湾製エアガンは、ハッキリ言って箱出しで使えるほどよく出来てはいない低品質品だった。
しかし、そこは娯楽に対して一切妥協をしない日本人。
日本規格の低圧ガスを使えば弾があらぬ方向に飛ぶ、いわゆる鬼ホップと呼ばれる現象。
これを防止すべく、彼女はチャンバーパッキンを高品質な日本製に交換。
BB弾が通るインナーバレルも、同様に高品質なサードパーティ製ヘと変更。
使うガスは透たちと違い、低圧ガスのHFC134ではなくより高圧のCO2ガス。
これは真冬だろうと、圧倒的な作動性能を誇るのだ。
さらに初速調整のため、ノズル側に加工までした––––まさに“トレーニング・ウェポン”と名乗るに相応しい銃。
久里浜の手に掛かれば、40メートル離れたタワーの上まで、ワンショットで仕留められるのだ。
「来い……、来なさい……」
バリケードの影から、僅かに身を出して銃を構える久里浜。
だが、待てど暮らせど……坂本は一向に現れない。
さすがに不審に思い、四条へ連絡しようとした刹那––––
「ッ!!?」
特戦群の勘が、久里浜を横に向けさせた。
突き抜けたキルハウスの奥で、こちらを見ていたのは……。
「あっぶ!!」
即座に横へジャンプし、弾を避ける。
BB弾を放って来たのは、『FAL』を構えた坂本だった。
彼は久里浜の対角線上に展開し、不意を突いたのだ。
「おっ、今のかわすか……やっぱチビは侮れないな」
「ヤツは1階! じゃあタワーはブラフ!? やってくれたわね!!」
即座に『M4A1』を構え、CO2の爆音と共に発射。
彼女の銃は70万円掛けてるだけあって、通常のエアガンなら動作不良を起こすパワーにも関わらず、軽快に動く。
久里浜は、坂本に対して20メートルの距離で激しく撃ち合った。
そしてここに来て、ようやく敵の全貌が見える。
「ッ……!! 四条先輩! こっちに新海隊長がいません!! 気をつけてくださ––––」
彼女の無線に一歩先んじる形で、四条はそれを目にする。
「よう、来てやったぞ」
バリケードを上から飛び越えて、通路に入って来る透を……。
『20式』のエアガンは、空中で四条を捉えていた。
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この作品を書き始めた時2万が大体の目標値だったので、驚くことに2倍で達成できました。
しかもコミカライズまでして頂くことにもなり、ここまで導いてくれた読者の方には感謝してもしきれません。
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