【特級射手って、かなり凄い人間しかなれないんじゃなかったっけ?】
【小隊交流戦って、このメンバーで戦うってこと!?】
【自衛隊がガチの対抗戦出すの、滅多に無いぞ」
【すげえ、よく許可取れたな!】
湧き上がるコメント欄。
彼らの言う通りで、自衛隊はこれまで練度をある程度隠して国民に公開して来た。
有事の際、敵に正確な能力を測られないよう……。
しかし、ダンジョンでの戦闘も合わさって、むしろより公開した方が良いのではと防衛省は考え始めた。
そこにメスを入れたのが、陸将の娘である四条の影響力だった。
元々第1特務小隊は、防衛大臣が直々に指名した精鋭自衛官が配属される。
その中でも、四条は現場でも広報でも特級クラスの存在。
地本で鍛えた手腕によって、このような公開演習を可能にしたのだ。
手に取った89式を持って、四条は説明を開始した。
「これは俗に言う“エアガン”というやつです、目に当たらない限りは安全ですので、まずそこはご安心ください」
人数分の防護用ゴーグルが出され、各々まず最初に着用する。
「これエアガンなのかよ、本物かと思ったわ」
透が持ったのは、自衛隊の最新アサルトライフル。
『20式自動小銃』のエアガンだった。
見た目は殆ど本物であり、刻印まで正確に再現されている。
「これって市販品?」
「透さんの物は、国内最大手のエアガンメーカーが訓練用で納める銃です。一般にはまだ販売されていませんが、品質は世界一ですよ」
四条の言葉に、コメント欄のサバゲーマー達が歓喜した。
【すげえ!! 存在自体はしてると聞いたが本当にあったとは!!】
【レア物過ぎる、配信でこんな良い獲物が見れるとは】
聞けば、透が持ったこれはガスブローバックと呼ばれる物で、ガス圧を利用して本物同様の動作を可能にしたエアガン。
四条の89式も、同じガスブローバックエアガンで、同じメーカーのライフル。
動力ソースはHFC134Aというガスで、マガジン内に気化した物を入れて動かす銃だ。
それでも、たかがエアガンと侮るなかれ。
コッキングレバーはフルストロークで動き、各部ギミックも本物を完全再現。
実銃規格なので、透が普段使うエイムポイント社製ドットサイトや、フォアグリップ、ダミーの銃剣まで付いていた。
しかも国産なので、弾道や射撃性能は世界最高峰。
銃器大国アメリカのサバゲーマー達が、“高級品”として憧れる天下の日本製エアガンだ。
「まぁ、透さん以外の銃は全部千華ちゃんの私物なのですけどね」
「久里浜……、お前サバゲーマーだったのか」
透の視線に、ビクッと震える久里浜。
何を隠そう、エアガンというのはかなり高額の玩具だ。
それをこれだけ揃えているのだから、透としては驚きである。
「お、オフでも勘が鈍らないように毎週定例会へ参加しただけよ! 必要物資! 自己研鑽! その範疇!」
必死に言い訳する久里浜を見て、坂本が一言。
「その割には、随分と凝ってるじゃん」
坂本が言った通りで、久里浜の持つ銃はあまりに金が掛かっていた。
獲物の名は『M4A1』。
有名な銃なのだが、国産メーカーが売っているモデルにこれは無い。
彼女の銃の本体には『RⅢ』と書かれており、この刻印が施された銃は現状殆ど無い。
つまり––––
「どこのメーカー……?」
「台湾のメーカー……。レシーバーの刻印は、神戸にあるお店で入れて貰った特注品。塗装はセラコート仕立て。内部はCO2で動かすから全部スチールに換装して、チャンバーも弄った……」
さらに言えば、外装はイオテックの実物ホロサイト。
マグプルのアイアンサイトにグリップ、ストックや内部チューブに至るまで実銃用。
手を加えていない部分を探せと言う方が無理だった。
「言いたくなかったら良いんだけど、何万注ぎ込んだんだ……?」
「……この銃は70万くらい」
「完全に沼ってんじゃねぇか」
坂本の感想と同時に、コメント欄も加速する。
【久里浜ちゃんガチヲタで草】
【ガスブロに70万はガチ過ぎる】
【こんな可愛い子なのにえっぐい銃で草】
【自己研鑽とか言うレベルじゃねえ】
総ツッコミを食らう久里浜を尻目に、坂本は自分に与えられた銃を持ち上げた。
「『FAL』か……、これもエアガン?」
「そうよ……、64式はガスブロが無かったから一番似てる銃にしといた」
「フーン」
軽く握って、コッキングレバーを往復。
少し構えてから、頷いた。
「サンキュー、壊さないよう気をつけるよ」
「アンタのために用意したんじゃないんだからね!! 四条先輩に言われて、仕方なくなんだから!」
喚く久里浜は、とりあえず無視。
これで全員の銃が揃ったわけだが、ここで疑問点が湧く。
透がまず手を挙げた。
「浅学で申し訳ないんだが、軍隊って普通“電動ガン”を使うんじゃないのか? いわゆるトレポンとか、あと……韓国のメーカーが出してた反動があるやつ」
「あぁ、DASね。米国の大使館が使ってるし、なんなら89式もリリースしてはいるんだけど……」
「けど?」
「あそこの89式は寸法がオリジナルだから、自衛官が使うと違和感凄いのよ」
「なるほど、ちなみに全員ガスブロの理由は?」
「単純に電動ガンの持ち合わせが無かったのと、四条先輩がリアルな状況を再現したいからって」
そういうことならと、透はマガジンを持った。
「わかった、ルールは?」
「BB弾かダミー銃剣に当たった時点で死亡です、普通のサバイバルゲームですよ。しかし––––」
含むような言い方で、四条は微笑んだ。
「“体術”はいくらでもオーケーです」
チーム分けは透&坂本、四条&久里浜という陣容になった。
準備を終えた両チームが、フィールドの端につく。
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