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第128話・特級同士の公開戦

 

【特級射手って、かなり凄い人間しかなれないんじゃなかったっけ?】

【小隊交流戦って、このメンバーで戦うってこと!?】

【自衛隊がガチの対抗戦出すの、滅多に無いぞ」

【すげえ、よく許可取れたな!】


 湧き上がるコメント欄。

 彼らの言う通りで、自衛隊はこれまで練度をある程度隠して国民に公開して来た。


 有事の際、敵に正確な能力を測られないよう……。

 しかし、ダンジョンでの戦闘も合わさって、むしろより公開した方が良いのではと防衛省は考え始めた。


 そこにメスを入れたのが、陸将の娘である四条の影響力だった。

 元々第1特務小隊は、防衛大臣が直々に指名した精鋭自衛官が配属される。


 その中でも、四条は現場でも広報でも特級クラスの存在。

 地本で鍛えた手腕によって、このような公開演習を可能にしたのだ。


 手に取った89式を持って、四条は説明を開始した。


「これは俗に言う“エアガン”というやつです、目に当たらない限りは安全ですので、まずそこはご安心ください」


 人数分の防護用ゴーグルが出され、各々まず最初に着用する。


「これエアガンなのかよ、本物かと思ったわ」


 透が持ったのは、自衛隊の最新アサルトライフル。

『20式自動小銃』のエアガンだった。


 見た目は殆ど本物であり、刻印まで正確に再現されている。


「これって市販品?」


「透さんの物は、国内最大手のエアガンメーカーが訓練用で納める銃です。一般にはまだ販売されていませんが、品質は世界一ですよ」


 四条の言葉に、コメント欄のサバゲーマー達が歓喜した。


【すげえ!! 存在自体はしてると聞いたが本当にあったとは!!】

【レア物過ぎる、配信でこんな良い獲物が見れるとは】


 聞けば、透が持ったこれはガスブローバックと呼ばれる物で、ガス圧を利用して本物同様の動作を可能にしたエアガン。

 四条の89式も、同じガスブローバックエアガンで、同じメーカーのライフル。


 動力ソースはHFC134Aというガスで、マガジン内に気化した物を入れて動かす銃だ。

 それでも、たかがエアガンと侮るなかれ。


 コッキングレバーはフルストロークで動き、各部ギミックも本物を完全再現。

 実銃規格なので、透が普段使うエイムポイント社製ドットサイトや、フォアグリップ、ダミーの銃剣まで付いていた。


 しかも国産なので、弾道や射撃性能は世界最高峰。

 銃器大国アメリカのサバゲーマー達が、“高級品”として憧れる天下の日本製エアガンだ。


「まぁ、透さん以外の銃は全部千華ちゃんの私物なのですけどね」


「久里浜……、お前サバゲーマーだったのか」


 透の視線に、ビクッと震える久里浜。

 何を隠そう、エアガンというのはかなり高額の玩具だ。

 それをこれだけ揃えているのだから、透としては驚きである。


「お、オフでも勘が鈍らないように毎週定例会へ参加しただけよ! 必要物資! 自己研鑽! その範疇!」


 必死に言い訳する久里浜を見て、坂本が一言。


「その割には、随分と凝ってるじゃん」


 坂本が言った通りで、久里浜の持つ銃はあまりに金が掛かっていた。


 獲物の名は『M4A1』。

 有名な銃なのだが、国産メーカーが売っているモデルにこれは無い。


 彼女の銃の本体には『RⅢ』と書かれており、この刻印が施された銃は現状殆ど無い。

 つまり––––


「どこのメーカー……?」


「台湾のメーカー……。レシーバーの刻印は、神戸にあるお店で入れて貰った特注品。塗装はセラコート仕立て。内部はCO2で動かすから全部スチールに換装して、チャンバーも弄った……」


 さらに言えば、外装はイオテックの実物ホロサイト。

 マグプルのアイアンサイトにグリップ、ストックや内部チューブに至るまで実銃用。


 手を加えていない部分を探せと言う方が無理だった。


「言いたくなかったら良いんだけど、何万注ぎ込んだんだ……?」


「……この銃は70万くらい」


「完全に沼ってんじゃねぇか」


 坂本の感想と同時に、コメント欄も加速する。


【久里浜ちゃんガチヲタで草】

【ガスブロに70万はガチ過ぎる】

【こんな可愛い子なのにえっぐい銃で草】

【自己研鑽とか言うレベルじゃねえ】


 総ツッコミを食らう久里浜を尻目に、坂本は自分に与えられた銃を持ち上げた。


「『FAL』か……、これもエアガン?」


「そうよ……、64式はガスブロが無かったから一番似てる銃にしといた」


「フーン」


 軽く握って、コッキングレバーを往復。

 少し構えてから、頷いた。


「サンキュー、壊さないよう気をつけるよ」


「アンタのために用意したんじゃないんだからね!! 四条先輩に言われて、仕方なくなんだから!」


 喚く久里浜は、とりあえず無視。

 これで全員の銃が揃ったわけだが、ここで疑問点が湧く。

 透がまず手を挙げた。


「浅学で申し訳ないんだが、軍隊って普通“電動ガン”を使うんじゃないのか? いわゆるトレポンとか、あと……韓国のメーカーが出してた反動があるやつ」


「あぁ、DASね。米国の大使館が使ってるし、なんなら89式もリリースしてはいるんだけど……」


「けど?」


「あそこの89式は寸法がオリジナルだから、自衛官が使うと違和感凄いのよ」


「なるほど、ちなみに全員ガスブロの理由は?」


「単純に電動ガンの持ち合わせが無かったのと、四条先輩がリアルな状況を再現したいからって」


 そういうことならと、透はマガジンを持った。


「わかった、ルールは?」


「BB弾かダミー銃剣に当たった時点で死亡です、普通のサバイバルゲームですよ。しかし––––」


 含むような言い方で、四条は微笑んだ。


「“体術”はいくらでもオーケーです」


 チーム分けは透&坂本、四条&久里浜という陣容になった。

 準備を終えた両チームが、フィールドの端につく。


128話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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