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第119話・少尉、尋問の時間です

 

「どういう……ことだ!? 貴様、部下は全員殺したんじゃ……」


「やだなぁ、僕がそんなエグい狂人に見える? 超マトモな思考回路の健全人間だよ? 皆殺しにするわけないじゃん」


 何度も映像を見直す。

 そこには確かに、少尉の部下の1人が映っていた。


 自分が愛情をもって育てた、広東省出身の若者だ。


「少尉、君が喋んなかった時のプランくらい、僕が考えていないとでも……?」


「ま、まさか……っ。やめろ!」


 少尉が言うやいなや、椅子に縛られた中国人が激しい悲鳴を上げた。

 全身を痙攣させ、ビクビクとのたうち回る。


「電気椅子ってやつ、知ってる? 処刑用の出力もできるんだけど……今はタダ苦痛だけを与えるモードにしてある。中古のを秘密で買ったんだよ」


「やめろ!! やめてくれ!!」


「あーそう? わかったわかった、ワガママだなぁ」


 痙攣が止まり、グッタリと項垂れる若者。

 そこに生気は無く、誰がどう見ても瀕死だった。


「10秒で喋れ、じゃないとさらに出力を上げてこいつに地獄を見せる」


「ッ…………!!!」


 究極の選択。

 少尉は国から、こういった尋問に対して訓練を受けていたので耐えられる。


 だが彼は違う、まだそういった訓練を受けていなかったはずだ。

 本来なら国家への忠誠心から、断固拒否する場面だが……。


「…………新潟県の中央区、桜木ICから南へ徒歩5分の所に延々募集中のテナントがある。そこが武器庫だ……」


「新潟県ね、まぁ予想通りか……荷揚げしやすいもんなぁ」


 張少尉は遂に喋ってしまった。

 もし本国が全力で救助してくれるなら黙秘したが、中国政府は自分たちを見捨てた。


 もう、忠誠心なんぞとうに消え失せたのだ。


 そこからは矢継ぎ早である。

 錠前の質問に対し、少尉は次々アジトやセーフハウスの場所を吐いた。


 全ては、生き残った最後の部下を守るために……。


「ふぅ……、いやーこんなにあったとはね。驚いた、君たち大陸人の図々しさは相当だよ」


「どうとでも言え、それより……これで全部喋ったんだ。部下の身の安全を要求する」


「あぁわかってるさ、でも––––」


 タブレットを置いた錠前は、ホルスターから『M500』マグナムリボルバーを取り出す。

 銃口を近づけ、少尉に向けた。


「責任は取ってもらわなくちゃ……ダメだよね?」


「……私を殺す気か?」


「察しが良い、君はもう用済みなの。中国政府は君たちの存在を認めていないし……ここで消してもまぁ大丈夫ってわけ」


「………………」


 いつかはこういう日が来ると思っていた。

 任務を失敗するつもりは無かったが、いざ最期の瞬間を迎えると……なぜか清々しさが(まさ)った。


 もうどうでも良い、だがせめて譲れない部分だけは。


「部下の安全を保障しろ……、それだけお願いしたい。後は好きにしろ」


「ほぉ。肝が据わっている人間は嫌いじゃない、じゃあ最後に僕からも1つだけ……」


 銀色のハンマーをコックし、銃の撃鉄を起こす。


「新宿で戦ってみて……君自身はまぁまぁ強いと思ったよ、僕と戦ったのが運の尽きだっただけ。よく10年潜伏したとも思うし、根性は本物だ。誇って良いよ」


「フンッ、敵の貴様に褒められても嬉しくなぞ無い。サッサと撃て」


「言われなくても」


 引き金がひかれた。

 巨大なマグナム弾は少尉の心臓を粉砕し、瞬時に出血性ショックで死亡させた。


 亡骸を尻目に、錠前はタブレットを持ってドアを開ける。


「終わりましたか?」


 部屋の前で待っていたアーチャーが、強面を向けた。


「終わったよ、じゃあ行こうか」


 まるで食事を終えたかのような軽さで、錠前は歩き出す。

 様子を遠隔で見ていたアーチャーは、つい気になったことを聞いた。


「例の少尉の部下……生かしてたんですね。貴方にしては意外でした、処遇はどうします? アメリカにでも亡命させますか?」


 アーチャーの純粋な問いに、錠前は「必要ない」と返した。

 直後に––––狂人はドス黒い、暗黒のような笑みを浮かべる。


「だってそいつ、最初から“死んでる”し……僕最初に言ったでしょ? 結界内の中国人は皆殺しにするってさ」


 アーチャーの背を、ゾッと悪寒が走った。


 すぐに錠前の端末をつける。

 タブレットには、確かに椅子へ座った張少尉の部下が映っていた。


 呼吸……脈拍、間違いなく生きている。

 狙撃手の眼が、これは本物だと言っていた。


119話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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