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第112話・平壌郊外航空戦

 

「なぁライトニング7、例の配信映像は見てるか?」


 殿(しんがり)を任された2機が、高空を飛行しながら無線で喋る。

 彼ら2人は、共にアメリカでF-35Aの訓練プログラムを受けた者同士で仲が良かった。


 米国で知り合ってから、今日まで相性抜群のコンビだ。


「ん? あぁ見てるよ。大ファンだ。新海3尉や小隊員たちが個性的で本当に面白い。余暇時間の楽しみさ」


「俺も俺も、いやー……ほえドールちゃんマジで可愛いんだよなぁ。あんなに可愛い子がいたら、おじさんいっぱいご飯奢ってあげたくなるよ」


「おじさんって……、お前まだ20代だろ。第1特務小隊のメンバーとほぼ同世代じゃん」


「でも俺は地上戦無理だよ、陸さんはすげぇや。東京であんなにドンパチやったのに……死傷者ゼロなんだから」


 今回の新宿決戦を見て、彼らも奮い立つものがあった。

 同時に、激しい怒りも湧いてくる。


「他国の首都で、女の子を拉致するために銃撃って……これ許しちゃダメだよな?」


「当然だろ、だから俺たちがこうして飛んでる。北朝鮮のヤツ––––逆ギレで弾道ミサイル撃とうとしてたし。まぁ阻止したけどさ」


 レーダーに反応がある。

 このF-35のパッシブセンサーは世界一の性能で、圧倒的な遠距離から敵を確認できるのだ。


「レーダーコンタクト、9機確認。さっきより機影が小さいな?」


「最新のMIG-29はもう落としたからな、旧式機が大慌てで発進したんだろ」


 北朝鮮は持っているMIG-29の数が元々少ない上、整備も満足にできないせいで稼働率は最悪と言って良い。


 さっき落とした8機が、北朝鮮軍の最強戦力だったのだ。


「なぁ、統幕からはどこまで許可されてたっけ?」


「メインは弾道ミサイルの破壊、自衛のためなら交戦も許可だ」


「じゃあ行けるな、弾って何発残ってる?」


「サイドワインダーが2発と、機銃500発」


「よっし、エンジンふかせ! 時代錯誤な連中に––––現代の戦闘機の恐ろしさを教えてやるぞ」


 旋回したF-35は、真っ直ぐに接近中の敵機(バンデット)へ向かった。

 ステルス性能によって全く気づかれることはなく、僅かな時間で目視範囲に到着した。


「おぉー……、アレって確か……」


 上空から編隊を見下ろしたライトニング6が、思わず呟く。


「MIG-21か? 嘘だろ本物だぜ、70年前の骨董品だ……なんで飛べるんだ?」


 見えたのは、旧ソ連製の超オンボロ機。

 今となっては博物館でしか見られない、超旧型戦闘機だった。


「敵さん、こっちに気付いてるかな?」


「多分まだだろ……、そもそも戦闘機って、機首にしかレーダー付いてないし」


「そうか、じゃあいっちょ––––」


 ライトニング6は、F-35専用のヘッドマウント・ディスプレイ・ヘルメットを被り直した。


「トップガンの時間と行こうか!」


 操縦桿をガッと押し込み、ライトニング6は急降下。

 アフターバーナーを全開にして、なんと––––MIG-21編隊のど真ん中を突っ切ったのだ。


 突然の奇襲に不意を突かれ、MIGは大慌てで散開した。


「旧式でも運動性能は良いな、けど––––」


 ライトニング6の視界には、なんと真後ろの敵機が映っていた。

 彼が付けているヘルメットは、F-35の全センサーと完全同期している。


 そのため、通常見られない機体の真下や後ろを見れるのだ。


「それで勝つのは、将軍への忠誠心だけじゃ無理だぜ」


 真後ろの敵を、ロックオン。

 ウェポンベイを開き、『AIM-9Xサイドワインダー』を発射した。


 あり得ない超高機動で旋回したミサイルは、ライトニング6の背後にいたMIGを撃墜してしまった。


 一時期––––F-35はドッグファイトで劣ると言われていたが、アップデートによって機動性が向上。


 この真後ろの敵もロックできる機能のおかげで、近接戦においてもあのF-16Vを凌駕する。


「FOX2」


 ライトニング7が放ったサイドワインダーが、2機のMIGを捉えた。


 ––––バババババッ––––!!


 ロックオンアラートを聞いた敵機は、熱源妨害用のフレアを大量に射出。

 全力で回避しようとするが––––


「命中、キル確認」


「グッキル!」


 ミサイルは、MIGを簡単に後方から貫いた。

 このAIM-9Xは、赤外線画像誘導を採用している。


 故に、従来のフレアなどカウンターメジャーでは撹乱できないのだ。


 360度高解像度の視界を得られるアドバンテージを元に、F-35はドッグファイトでも敵を圧倒。


 一瞬でケツにつき、逃げ惑うMIG-21を25ミリガトリング砲でドンドン撃墜していく。


 戦闘は一方的であり、機体の残骸が雨のように山へ降り注いだ。

 やがて、最後の1機が機銃で仕留められる。


「全機撃墜、残り燃料は……」


 この機体は、北朝鮮本土に侵入する直前に空中給油を受けていた。

 その時点でサイドワインダーを2発しか搭載していなかったこともあり、まだ少し余裕があった。


「ちょっと寄り道していくぞ、ライトニング7」


「寄り道? どこへ?」


 問われた疑問に、第1特務小隊の映像に魅せられたパイロットは答える。


「こっちは東京で派手にやられたんだ、なら俺たち日本人も挨拶すべきだろう? 北朝鮮の首都––––“平壌(ピョンヤン)“の人たちにな」


112話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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