正式には電磁投射砲ですが、やっぱ漢字にするならこっちですよね
––––試験艦『あすか』。
海上自衛隊が保有する試験用艦艇で、あらゆる先進兵器を運用するためのテストベッドだ。
本艦は長年自衛隊で使用されて来ており、古くはVLSからあきづき型の対空レーダー。
最近だと––––世間を賑わせた“ある砲”を試験していた。
「『あすか』現着!!」
「よしっ!! 間に合ったか……! 射線上の『おおなみ』は至急退避せよ! ここで決めるッ!!」
艦隊が陣形を即座に変更する。
『あすか』が放った砲弾を受けて、リヴァイアサンは大量の血を吐き出していた。
明らかに、今までとダメージ量が違う。
動揺するリヴァイアサンの目には、こちらを指向する1門の砲が映った。
「ッ…………!!」
たった1門に過ぎないそれは……防護カバーすらされていない、発射機構を剥き出しにした物。
『あすか』の前部甲板で旋回していたのは、もう無効武力と化した速射砲などではない。
あの超大国アメリカが、何億……何兆という金額と世界最高の頭脳を結集しても、ほとんど作れなかった兵器。
世界最強にして最速、この世で唯一日本のみが開発に成功した砲。
名を––––『試製・127ミリ
名前の通り、従来使われてきた火薬ではなく、電磁気力によって砲弾を発射する次世代兵器だ。
『あすか』CICで、砲術員が叫ぶ。
「初弾命中! 目標に多量の出血を認む!」
モニターには、悶え苦しむアノマリーの姿。
このレールガンは、2023年に防衛装備庁が洋上試験を実施した、40ミリ対空レールガンの発展型だ。
対空はもちろん、対艦攻撃もできるよう設計されている。
「艦内電力の80%をレールガンに送る、バイパス開け!!」
「非常用電源起動! FCS、および推進装置以外の全電力を送ります!!」
艦内の灯りが落ちて、一斉に暗くなる。
レールガンは発射に膨大な電力を使用するため、軍艦の巨大な発電機でも全く足りないレベルだ。
この他にも砲身寿命などを克服できず、世界中の国が開発をやめている。
しかし、日本はそんな無理難題を克服して、米中でも辿り着けなかった領域に達していた。
「目標にロック完了、エネルギー充填95%!!」
23年は40ミリだったが、25年の今はさらに進化。
口径を127ミリにまで大幅拡大し、弾種は水平線から敵艦を簡単に貫けるAPFSDS徹甲弾。
さらに弾頭には、劣化ウランと並ぶ比重のタングステンを採用。
中国海軍の055型ミサイル駆逐艦を、ぶった斬れる威力にまで上げていた。
「第2射––––撃てッ!!」
––––バチンッ––––!!!
ローレンツ力により加速した砲弾は、信じられない速度で撃ち出された。
これまで最速を誇った高速徹甲弾が、秒速1500メートルなのに対し、このレールガンは––––
「ゴガァッ!!?」
砲口初速––––“秒速4キロメートル”。
これを音速である343メートル/秒で割ると、なんと約マッハ11.6に相当。
威力にして、251.7メガジュールにも達するのだ。
この凄まじい運動エネルギーをまともに食らったリヴァイアサンは、血飛沫を上げ––––激しい断末魔を上げて海に倒れ込む。
「効いてるぞ!!」
「これがレールガン……! なんて威力だ!」
「行けっ! そのままぶっ倒せ!!」
規格外の威力を目にして、護衛艦隊のボルテージは最高潮へ。
必死に起きあがろうとするリヴァイアサンは、見れば––––再生が止まっていた。
吐血し、鱗がボロボロと剥がれ落ちる。
自衛隊が榴弾をぶつけ続けたのは、この時のためだ。
適応を“爆発にのみ”特化させて行き、いよいよ進化が終わったタイミングで最大級の運動エネルギー弾をぶつける。
無限に再生する化け物を殺すための、自衛隊が考えた必殺の討伐プラン。
これが、蒼雷作戦の全貌だ。
「艦内電力、90%を喪失! 現在機関を全力で回していますが、再充填まで350秒掛かります!!」
「さすがに2射連続は厳しいな……、原子力機関があれば苦労しないんだが……」
2度の全力射撃で、レールガンは溜め込んでいたエネルギーを殆ど使い果たした。
機関を使い潰す覚悟で回せば、あと1発なら5分ほどで撃てるだろう。
だが––––
「目標! 背びれの発光を確認!!」
「マズイ!」
初めて死に瀕したリヴァイアサンは、持てる魔力全てを攻撃に回した。
レールガンの充填を援護しようにも、護衛艦隊は主砲の即応弾が尽きている。
イージス艦隊のトマホーク攻撃は時間が掛かり過ぎ、上空のA-10も燃料切れ。
リヴァイアサンのレーザー攻撃が放たれようとした瞬間––––
「ッ!?『ひゅうが』の飛行甲板が大きく発光!」
「被弾か!?」
「いえ、『ひゅうが』––––速力30ノットへ増加。真っ直ぐリヴァイアサンへ突っ込んで行きます!!」
大波を切って走る護衛艦『ひゅうが』。
その飛行甲板の先端で、1人の少女が立っていた。
「こっちを向け!! リヴァイアサンッッ!!」
持ちうる魔力を最大出力まで引き上げた執行者テオドールが、眩いオーラに包まれながら叫んだ。
アノマリーは、ダンジョンよりも濃度の高い魔力に思わず振り向く。
––––レールガンの充填完了まで、あと300秒。
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