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正式には電磁投射砲ですが、やっぱ漢字にするならこっちですよね

第104話・超電磁砲

 

 ––––試験艦『あすか』。


 海上自衛隊が保有する試験用艦艇で、あらゆる先進兵器を運用するためのテストベッドだ。


 本艦は長年自衛隊で使用されて来ており、古くはVLSからあきづき型の対空レーダー。

 最近だと––––世間を賑わせた“ある砲”を試験していた。


「『あすか』現着!!」


「よしっ!! 間に合ったか……! 射線上の『おおなみ』は至急退避せよ! ここで決めるッ!!」


 艦隊が陣形を即座に変更する。

『あすか』が放った砲弾を受けて、リヴァイアサンは大量の血を吐き出していた。


 明らかに、今までとダメージ量が違う。

 動揺するリヴァイアサンの目には、こちらを指向する1門の砲が映った。


「ッ…………!!」


 たった1門に過ぎないそれは……防護カバーすらされていない、発射機構を剥き出しにした物。


『あすか』の前部甲板で旋回していたのは、もう無効武力と化した速射砲などではない。


 あの超大国アメリカが、何億……何兆という金額と世界最高の頭脳を結集しても、ほとんど作れなかった兵器。


 世界最強にして最速、この世で唯一日本のみが開発に成功した砲。


 名を––––『試製・127ミリ超電磁砲(レールガン)』。


 名前の通り、従来使われてきた火薬ではなく、電磁気力によって砲弾を発射する次世代兵器だ。


『あすか』CICで、砲術員が叫ぶ。


「初弾命中! 目標に多量の出血を認む!」


 モニターには、悶え苦しむアノマリーの姿。


 このレールガンは、2023年に防衛装備庁が洋上試験を実施した、40ミリ対空レールガンの発展型だ。


 対空はもちろん、対艦攻撃もできるよう設計されている。


「艦内電力の80%をレールガンに送る、バイパス開け!!」


「非常用電源起動! FCS、および推進装置以外の全電力を送ります!!」


 艦内の灯りが落ちて、一斉に暗くなる。

 レールガンは発射に膨大な電力を使用するため、軍艦の巨大な発電機でも全く足りないレベルだ。


 この他にも砲身寿命などを克服できず、世界中の国が開発をやめている。

 しかし、日本はそんな無理難題を克服して、米中でも辿り着けなかった領域に達していた。


「目標にロック完了、エネルギー充填95%!!」


 23年は40ミリだったが、25年の今はさらに進化。


 口径を127ミリにまで大幅拡大し、弾種は水平線から敵艦を簡単に貫けるAPFSDS徹甲弾。

 さらに弾頭には、劣化ウランと並ぶ比重のタングステンを採用。


 中国海軍の055型ミサイル駆逐艦を、ぶった斬れる威力にまで上げていた。


「第2射––––撃てッ!!」


 ––––バチンッ––––!!!


 ローレンツ力により加速した砲弾は、信じられない速度で撃ち出された。

 これまで最速を誇った高速徹甲弾が、秒速1500メートルなのに対し、このレールガンは––––


「ゴガァッ!!?」


 砲口初速––––“秒速4キロメートル”。

 これを音速である343メートル/秒で割ると、なんと約マッハ11.6に相当。


 威力にして、251.7メガジュールにも達するのだ。


 この凄まじい運動エネルギーをまともに食らったリヴァイアサンは、血飛沫を上げ––––激しい断末魔を上げて海に倒れ込む。


「効いてるぞ!!」


「これがレールガン……! なんて威力だ!」


「行けっ! そのままぶっ倒せ!!」


 規格外の威力を目にして、護衛艦隊のボルテージは最高潮へ。

 必死に起きあがろうとするリヴァイアサンは、見れば––––再生が止まっていた。


 吐血し、鱗がボロボロと剥がれ落ちる。


 自衛隊が榴弾をぶつけ続けたのは、この時のためだ。

 適応を“爆発にのみ”特化させて行き、いよいよ進化が終わったタイミングで最大級の運動エネルギー弾をぶつける。


 無限に再生する化け物を殺すための、自衛隊が考えた必殺の討伐プラン。

 これが、蒼雷作戦の全貌だ。


「艦内電力、90%を喪失! 現在機関を全力で回していますが、再充填まで350秒掛かります!!」


「さすがに2射連続は厳しいな……、原子力機関があれば苦労しないんだが……」


 2度の全力射撃で、レールガンは溜め込んでいたエネルギーを殆ど使い果たした。

 機関を使い潰す覚悟で回せば、あと1発なら5分ほどで撃てるだろう。


 だが––––


「目標! 背びれの発光を確認!!」


「マズイ!」


 初めて死に瀕したリヴァイアサンは、持てる魔力全てを攻撃に回した。

 レールガンの充填を援護しようにも、護衛艦隊は主砲の即応弾が尽きている。


 イージス艦隊のトマホーク攻撃は時間が掛かり過ぎ、上空のA-10も燃料切れ。


 リヴァイアサンのレーザー攻撃が放たれようとした瞬間––––


「ッ!?『ひゅうが』の飛行甲板が大きく発光!」


「被弾か!?」


「いえ、『ひゅうが』––––速力30ノットへ増加。真っ直ぐリヴァイアサンへ突っ込んで行きます!!」


 大波を切って走る護衛艦『ひゅうが』。

 その飛行甲板の先端で、1人の少女が立っていた。


「こっちを向け!! リヴァイアサンッッ!!」


 持ちうる魔力を最大出力まで引き上げた執行者テオドールが、眩いオーラに包まれながら叫んだ。


 アノマリーは、ダンジョンよりも濃度の高い魔力に思わず振り向く。


 ––––レールガンの充填完了まで、あと300秒。


104話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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