挿絵表示切替ボタン

配色








行間

文字サイズ

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
103/136
第103話・VSリヴァイアサン⑤

 

「A-10C、間に合いました!!」


 間一髪での到着に、『ひゅうが』艦内の士気は高まった。

 直掩機が付いてくれるだけで、これほど心強いものは無い。


 第二次世界大戦における、帝国海軍の坊ノ岬沖海戦とは違うのだ。

 今の海上自衛隊には、あの時無かった強力な支援態勢がしっかり整っている。


 後は––––


「主砲、撃ちー方始めっ!」


「撃ちー方始めッ!!」


 この怪物へ、可能な限りの砲弾を浴びせるだけだ。

 祖先たる帝国海軍が夢見た漸減作戦からの、砲撃による艦隊決戦。


 それを––––この現代で蘇らせるッ!


 ––––ドパァンッ––––!!!


 3隻の護衛艦が76ミリ、127ミリ速射砲の全力射撃を敢行した。

 現代の艦船に付いた主砲は、戦車以上の口径の弾を凄まじい速度で発射する。


 15ノットの速力で移動しながら、速射砲の名の示す通りに連射した。


「ガァァアアッ!!?」


 リヴァイアサンを爆炎の猛攻が襲った。

 嵐のように撃ち込んでいるのは、対地砲撃用の“榴弾”だ。


 水中に逃げられなくなったアノマリーを、左右からサンドバッグのように痛めつける。


「まだだ! 後7分––––ここへ釘付けにしろ!!」


 この距離であのデカい的に、弾を外す訳もない。

 100%の命中率で、大口径砲弾がリヴァイアサンを殴り続けた。


 それでも敵は再生を常時続けており、剥がれた鱗はより強靭なものへ進化。

 攻撃の損傷を、回復が上回るのは時間の問題だった。


「目標!! 再びレーザー充填の気配あり!!」


「これだけ浴びせてもまだ抵抗するか……! 上空の米軍に通信! 再度の航空支援を要請せよ!!」


 無線士が回線を開き、英語で伝えた。

 返事は即答。


「オーケー、叩き込んでやるぜッ!!」


 被弾を続けながらもエネルギーを充填するリヴァイアサンへ、『ひゅうが』の真後ろからA-10攻撃機が高速で突っ込んできた。


「Fire!!」


 翼下から発射された、AGM-114ヘルファイア対戦車ミサイル8発がリヴァイアサンへ命中。

 大きく仰け反らせ、海へ倒れ込ませた。


「FOX3!!」


 さらにおまけとばかりに、7砲身・アヴェンジャー30ミリ機関砲をオーバーヒート直前まで斉射。


 劣化ウラン弾の嵐が、ミサイルで開いた傷をさらに抉り取る。

 信仰心にまみれた通信が響いた。


「アヴェンジャーを讃えよ!!」


 攻撃を終えたA-10が、上空を大きく横切った。


「畳みかけるぞ!!」


 追い込む形で、護衛艦隊が水上へ速射砲を次々に叩き込む。

 水面に露出しながら浮くリヴァイアサンを、砲弾が容赦なく襲った。


 血が飛び散り、肉片が弾ける。


「後5分……! まだかっ」


 立て続けに上がる水柱を見ながら、砲術長が呟く。

 主砲残弾は、もう半分を切っていた。


 だが、ここで見張りからの報告が入る。


「敵アノマリー、再生速度が増加! 起き上がります!」


 護衛艦隊の中央で、リヴァイアサンがゆっくりと起き上がった。

 見れば、さっきまでと見た目が明らかに変わっている。


 青色だった鱗が、墨で塗ったような真っ黒に染め上がっていた。

 間違いなく、“爆発”に対して進化を遂げた姿だ。


 しかし、これで良い。

 自衛隊の最後の狙いは、ここにあるのだ。


「予定通り作戦をフェーズ4に移行する! 後方へ通信、ありったけの爆発兵器を奴にぶつけろ!」


 リヴァイアサンから100キロ離れた千葉県沖に、5隻の軍艦が展開していた。


「『ひゅうが』より通信です」


「うむ、ワイバーンの時とはやはりまるで違うな……。総員、対水上戦闘! トマホーク––––攻撃始めッ!!」


 海上自衛隊 イージス護衛艦『まや』と『きりしま』が、後部VLSハッチを開く。

 この2隻は、今年に改修が済んだばかりの艦だった。


「バーズアウェイッ!!」


 猛炎を上げて、最近日本が購入した巡航ミサイル。

 通称『トマホーク・ブロックⅤ』が発射された。


「戦術データリンク16に接続、米軍も攻撃を開始!」


 同様に、海自と艦隊を組んでいた米海軍第7艦隊所属のイージス艦。


 巡洋艦『ロバート・スモールズ』、駆逐艦『ラファエル・ペラルタ』、並びに『ミリアス』がトマホークを発射。


 計25発が、亜音速でリヴァイアサンへ向けて飛翔していく。

 ミサイルにとって、100キロなどあっという間の距離。


 水平線ギリギリで突入してきたトマホークは、上空のP-1哨戒機によって誘導。

 迎撃は飛んで来ず、全弾がリヴァイアサンに直撃した。


「トマホーク、全弾命中!!」


 対艦巡航ミサイルの直撃を、耐えられる存在など普通いない。

 だが、黒煙の中からはさらに進化・適応したアノマリーが出てきた。


 姿はより仰々しくなっており、恐怖心すら覚える。

 なるほど……、ダンジョン勢力が逃げ出す訳だ。


 こんな異次元の化け物、とてもではないが魔法じゃ倒せない。

 トマホークの攻撃に耐えたということは、もう爆発に対して完全に適応したのだろう。


「主砲再照準、攻撃を続行せよ!」


『あさひ』、『むらさめ』、『おおなみ』が距離を保ちながら主砲を発射。

 予想通り、もう榴弾ではノックバックすら起こさない。


 既に予定時間を6分もオーバーしており、さすがに全員が汗をかき始めた時。


 ––––その艦は現れた。


 ––––バチッ––––!


 走る電磁気の音……。


 水平線ギリギリから、トマホークなど比べ物にならない––––極超音速を遥かに超えるスピードで飛んできた砲弾があった。


 僅か1発に過ぎないそれは、リヴァイアサンの首元をアッサリ“貫通”した。

 通信が鳴る。


「こちら、試験艦『あすか』。これより作戦に参加する」


 戦場に姿を見せたそれは、本来戦闘用の艦船ではない。

 だが敢えて言うなら––––


「本艦の主砲は……“通常にあらず”!」


103話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


と思った方は感想、いいねでぜひ応援してください!!

ブックマーク機能を使うには ログインしてください。
いいねをするにはログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
※感想を書く場合はログインしてください
X(旧Twitter)・LINEで送る

LINEで送る

+注意+

・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
▲ページの上部へ