「VLA発射始めッ! サルボーッ!!」
護衛艦の前部VLSから、爆炎と共にアスロックが発射された。
次々と撃ち上がったそれは、瞬く間に30発を越える。
ロケットブースターから分離した魚雷が、パラシュートを開いて海に落ちた。
「第一波着水、弾着10秒前––––!!」
しばらくして、20キロ前方の海域で大爆発が発生した。
ロケットに運ばれ、海中に放り込まれた魚雷がリヴァイアサンの付近で炸裂したのだ。
「命中! 続いて第二波、着弾!!」
本来、アスロックは敵に向かって1発ずつ撃つのが鉄則だ。
でなければ、搭載するアクティブ・ソナーの乱反射により命中が難しくなる。
しかし今回は、既に18式魚雷でダメージを負った水中呼吸器官への追撃が目的。
指定した座標へ、大量にばら撒く必要があった。
「全艦、衝撃に備え!!」
アスロックの爆発により発生した波が、護衛艦隊へぶつかった。
艦が大きく揺らされ、乗員はあちこちに必死でしがみつく。
「アスロック第三波が着弾! 目標––––ソナーからロスト!」
爆音でソナーが使えなくなる。
本来ならこんな火力勝負は対潜戦闘においてタブーだが、敵は潜水艦ではない。
しばらくして、前方を飛行中だったSH-60K対潜ヘリから通信が入る。
「目標健在!! 浮上して来ます!!」
海面が隆起、遂に艦隊の正面へリヴァイアサンが顔を出した。
神話に出てくる竜のような顔を、不気味にこちらへ向けている。
その巨躯はかなりズタズタに見えたが、ボコボコと再生をしていた。
それでも、熟練の『ひゅうが』艦長は冷静にモニターを見る。
「やはり、再生速度が聞いてたものより随分と落ちているな……。
「艦長、では––––」
「あぁ、随伴部隊に伝達! 怪獣狩りの始まりだ! “キルゾーン”へ釘付けにするぞ!!」
命令を受けて、それまで保っていた輪形陣を自衛隊は崩した。
『あさひ』と『むらさめ』が、リヴァイアサンの正面右弦へ前進。
『おおなみ』が左舷側へ展開、『ひゅうが』は真正面へ布陣した。
まさしく“網”を形成する形で、艦隊は動き始める。
「右弦、短魚雷発射用意!!」
未だ傷の治癒へ専念するリヴァイアサンへ、艦隊は畳み掛けた。
再び潜ろうとする敵へ、そうはさせまいと艦側面の兵器を指向する。
「短魚雷発射始めッ!!」
「
圧縮空気により押し出された太い魚雷が、リヴァイアサンを左右から挟むように放たれる。
水中を航行していく3本の魚雷は、すぐに敵へ命中した。
「ゴアアァァアアアッ!!?」
原子力潜水艦も一撃で沈める魚雷が、水中呼吸器官を直撃。
リヴァイアサンを海面へ押し戻した。
さすがにこれだけの攻撃を受ければ、再生能力持ちでも無事では済まない。
危機感を覚え始めたらしいリヴァイアサンの全身が、淡く光り始めた。
L-RASMを全滅させた、レーザーが発射されようとしている。
「主砲、発射用意!!」
「主砲発射
護衛艦が艦前部の主砲を旋回させるが、一歩––––リヴァイアサンの方が早かった。
死を覚悟する場面だが、海自側は微塵も動揺していない。
正体は、護衛艦の対空監視レーダーに映ったもの。
敵レーザーの照準は、『あさひ』と『むらさめ』だ。
いよいよ発射されようとして、背びれの輝きが最高潮に達した瞬間––––
––––バチバチバチッ!! ブゥゥゥゥンッッ––––!!!!
強烈な炸裂音と、遅れてガトリング砲の繋がった射撃音が響いた。
あまりの衝撃に仰け反ったリヴァイアサンが、レーザーの発射を中止する。
見れば、艦隊の上空を2機の航空機が甲高い爆音を立てて通り過ぎた。
ステルス性なんて欠片も無い、特徴的なエンジン配置のそれは、湾岸戦争で大活躍した米空軍の機体。
「来たな」
艦長が呟く。
それは……A-10CサンダーボルトⅡと呼ばれる、世界最強の対地攻撃機だった。
さっきの空爆は、機首に搭載されたアヴェンジャー30ミリ機関砲の斉射によるもの。
劣化ウラン弾を使ったこれは、堅牢な装甲を持つリヴァイアサンにも十分有効だった。
今回の作戦のため、本来日本にいないA-10をわざわざ韓国の在韓米軍基地から呼び出したのだ。
「主砲、撃ちー方ー始めッ!」
近接航空支援に勢いを得た護衛艦隊は、生じた隙を見逃さず––––主砲の照準を向けた。
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