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第102話・VSリヴァイアサン④

 

「VLA発射始めッ! サルボーッ!!」


 護衛艦の前部VLSから、爆炎と共にアスロックが発射された。

 次々と撃ち上がったそれは、瞬く間に30発を越える。


 ロケットブースターから分離した魚雷が、パラシュートを開いて海に落ちた。


「第一波着水、弾着10秒前––––!!」


 しばらくして、20キロ前方の海域で大爆発が発生した。

 ロケットに運ばれ、海中に放り込まれた魚雷がリヴァイアサンの付近で炸裂したのだ。


「命中! 続いて第二波、着弾!!」


 本来、アスロックは敵に向かって1発ずつ撃つのが鉄則だ。

 でなければ、搭載するアクティブ・ソナーの乱反射により命中が難しくなる。


 しかし今回は、既に18式魚雷でダメージを負った水中呼吸器官への追撃が目的。

 指定した座標へ、大量にばら撒く必要があった。


「全艦、衝撃に備え!!」


 アスロックの爆発により発生した波が、護衛艦隊へぶつかった。

 艦が大きく揺らされ、乗員はあちこちに必死でしがみつく。


「アスロック第三波が着弾! 目標––––ソナーからロスト!」


 爆音でソナーが使えなくなる。

 本来ならこんな火力勝負は対潜戦闘においてタブーだが、敵は潜水艦ではない。


 しばらくして、前方を飛行中だったSH-60K対潜ヘリから通信が入る。


「目標健在!! 浮上して来ます!!」


 海面が隆起、遂に艦隊の正面へリヴァイアサンが顔を出した。

 神話に出てくる竜のような顔を、不気味にこちらへ向けている。


 その巨躯はかなりズタズタに見えたが、ボコボコと再生をしていた。

 それでも、熟練の『ひゅうが』艦長は冷静にモニターを見る。


「やはり、再生速度が聞いてたものより随分と落ちているな……。漸減(ぜんげん)作戦は成功したらしい」


「艦長、では––––」


「あぁ、随伴部隊に伝達! 怪獣狩りの始まりだ! “キルゾーン”へ釘付けにするぞ!!」


 命令を受けて、それまで保っていた輪形陣を自衛隊は崩した。

『あさひ』と『むらさめ』が、リヴァイアサンの正面右弦へ前進。


『おおなみ』が左舷側へ展開、『ひゅうが』は真正面へ布陣した。


 まさしく“網”を形成する形で、艦隊は動き始める。


「右弦、短魚雷発射用意!!」


 未だ傷の治癒へ専念するリヴァイアサンへ、艦隊は畳み掛けた。

 再び潜ろうとする敵へ、そうはさせまいと艦側面の兵器を指向する。


「短魚雷発射始めッ!!」


()ェッ!!」


 圧縮空気により押し出された太い魚雷が、リヴァイアサンを左右から挟むように放たれる。


 水中を航行していく3本の魚雷は、すぐに敵へ命中した。


「ゴアアァァアアアッ!!?」


 原子力潜水艦も一撃で沈める魚雷が、水中呼吸器官を直撃。

 リヴァイアサンを海面へ押し戻した。


 さすがにこれだけの攻撃を受ければ、再生能力持ちでも無事では済まない。


 危機感を覚え始めたらしいリヴァイアサンの全身が、淡く光り始めた。

 L-RASMを全滅させた、レーザーが発射されようとしている。


「主砲、発射用意!!」


「主砲発射用意(よーい)


 護衛艦が艦前部の主砲を旋回させるが、一歩––––リヴァイアサンの方が早かった。

 死を覚悟する場面だが、海自側は微塵も動揺していない。


 正体は、護衛艦の対空監視レーダーに映ったもの。

 敵レーザーの照準は、『あさひ』と『むらさめ』だ。


 いよいよ発射されようとして、背びれの輝きが最高潮に達した瞬間––––


 ––––バチバチバチッ!! ブゥゥゥゥンッッ––––!!!!


 強烈な炸裂音と、遅れてガトリング砲の繋がった射撃音が響いた。

 あまりの衝撃に仰け反ったリヴァイアサンが、レーザーの発射を中止する。


 見れば、艦隊の上空を2機の航空機が甲高い爆音を立てて通り過ぎた。


 ステルス性なんて欠片も無い、特徴的なエンジン配置のそれは、湾岸戦争で大活躍した米空軍の機体。


「来たな」


 艦長が呟く。


 それは……A-10CサンダーボルトⅡと呼ばれる、世界最強の対地攻撃機だった。

 さっきの空爆は、機首に搭載されたアヴェンジャー30ミリ機関砲の斉射によるもの。


 劣化ウラン弾を使ったこれは、堅牢な装甲を持つリヴァイアサンにも十分有効だった。


 今回の作戦のため、本来日本にいないA-10をわざわざ韓国の在韓米軍基地から呼び出したのだ。


「主砲、撃ちー方ー始めッ!」


 近接航空支援に勢いを得た護衛艦隊は、生じた隙を見逃さず––––主砲の照準を向けた。


102話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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