「米空軍、L-RASM発射!!」
日米の狙いはここにあった。
水中呼吸器官を一時的にでも潰せれば、リヴァイアサンは浮上を余儀なくされる。
そこを、艦船もぶち抜く対艦ミサイルで攻撃するのだ。
さしものアノマリーも、直撃すればひとたまりも無い。
「できればこれで決まってほしいが……」
レーダー画面上で、16発のミサイルが南より接近する。
B-1Bはこの時点で、グアムのアンダーセン空軍基地へ引き返していた。
上空で監視を続けていた海自P-1が、異変を目にする。
「……!? 目標が発光を開始! 剣山のような背びれが輝いています」
これを聞いた厚木のコントロールセンターは、すぐさま声を出した。
「今すぐ敵から離れろ!! 例の攻撃が来る!!」
無線を聞いたP-1は、意味があるかわからないが熱源デコイのフレアをばら撒きながら、180度反転。
全速で距離を取った。
リヴァイアサンの全身を紫色の光が覆った瞬間、それは起きた。
––––ゴッッッ––––!!!!
巨大な大口から、途方もない出力のレーザーが放たれたのだ。
真っ直ぐ伸びたそれは、なんと水平線から顔を出した瞬間のL-RASMに直撃した。
横へ薙ぎ払うように放射され、あらゆる角度からの同時弾着を狙ったミサイルは––––たった10秒で全弾が撃墜された。
海の向こうで、規格外の大爆発が発生。
衝撃波が約百キロの範囲で広がり、危うく周囲の航空機部隊まで落ちるところだった。
「L-RASM、全弾撃墜!!」
防衛省の地下で響いた声に、幕僚たちも思わず汗を流す。
「これが……中国駆逐艦を蒸発させた、異次元の熱線か……! まるで大火山の噴火みたいな威力だ」
「おい、L-RASMは中華イージスでも探知できないステルスミサイルだと聞いたが。なぜ生物ごときに捕捉されたんだ」
海幕長の問いに、武器運用課長が答える。
「おそらく、自身へ向かってくる飛翔体を、高精度で探知できる器官が備わった可能性があります」
「ではロングレンジ攻撃はもう意味が無いと?」
「それは半分というところかと、あの威力の熱線です……本当にヤバい時しか撃てないでしょう。しばらくは大丈夫だと思われます」
「うむ、しかしなぁ……」
それでも、ここで仕留めるチャンスを失ったのに変わりは無い。
グアムの爆撃機は、もう一度ここまで来るのに時間が掛かり過ぎる。
ステルスミサイルが捕捉されたということは、リヴァイアサンの体内にイージス艦のようなシステム。
いわゆる、フェイズド・アレイ・レーダーに似た物が生み出されたと見て良い。
アウトレンジからの中途半端な奇襲攻撃は、もう無理だろう。
さすがに……ダンジョンの雑魚とは、レベルが違った。
「アノマリー、再び移動を開始! 水上付近を泳ぎながら関東方面へ侵攻中!!」
だが、さすがに18式魚雷の直撃にはこたえたらしい。
それまでの爆撃と合わさって、水中での能力を大きく削ぐことができた。
ならば––––
「『ひゅうが』に連絡せよ、作戦をフェーズ3に移行。艦隊による直接攻撃でヤツを仕留める」
「了解しました」
「空幕長、“アレ”はもう厚木を離陸したのかね?」
「はっ! 統幕長。海さんの艦隊の直掩に回ってくれるそうです」
「そうか、なら良い」
頷く統幕長。
一方、千葉県沖まで進出した“ひゅうが対潜打撃群”も、いよいよ戦闘を開始しようとしていた。
「ソノブイに反応あり!! 本艦隊正面22キロ、アノマリーと推測されます!」
前方を哨戒中だったひゅうが艦載ヘリが、リヴァイアサンを捕捉した。
「あれだけの猛攻を食らって、まだ生きているとは……とても生物とは思えんな」
『ひゅうが』艦長は、CIC(戦闘指揮所)で無線を開いた。
「正面、対潜戦闘!! ここを突破されれば東京湾に侵入される、必ず我々でヤツを止めるぞ! 攻撃用意!!」
戦闘サイレンが響き渡る。
『むらさめ』、『おおなみ』のVLSハッチが開放される。
RUM-139A。
通称アスロック改対潜ミサイルの発射態勢に入ったのだ。
また、対潜護衛艦『あさひ』もVLSを開く。
中には、上述の物よりさらに高性能な07式アスロックが搭載されていた。
「全艦––––VLA発射始めッ!! サルボーッ!!」
3隻の護衛艦から、一斉に対潜ミサイルが発射された。
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