シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜


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作:トレセン暮らしのデュエリスト
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兎狩り。我は獣の戦士也


今更思った「ビャッコなのになんで狐のお面被ってるんだこいつ」。


「はーーー……にしても凄いなぁ、シャンフロ……買ってよかったなぁ……」

 

初心者、ノービス、ルーキー……呼び方は多々あれど便宜上「チュートリアル専用エリア」と呼称するこの森にて。

意気揚々とたった1人で踏み入ったゴリマッチョがいた。キョロキョロと周囲を見回す様と()()()()()()()()()()()を出す彼はまぁまず間違いなくVRゲーム自体に慣れていないのだろうと思わせるものだ。

本人的にはノシノシと歩いている様に見えて実のところ腰が引けたその歩き方は若干シュールさすら感じさせるが、襲いかかるモンスターをヒーヒー言いながら手に持った斧を振り回して薙ぎ倒す光景はシャンフロにゆっくりと慣れ始め、自信をつけてきたことの表れなのだろう。

 

 

 

この数分後、彼の自信は粉々に砕け散ることになる。

 

「…………あっ、も、もしかして結構奥まで来ちゃった……?」

 

気づけば森の奥深く、すぐにはファステイアに戻れない位置まで進んできてしまっていた。

引き返そうか悩む彼の目の前に飛び出してきたのは――――――――

 

「キュキュイッ?」

 

「…………えっ?兎?」

 

兎である。ただしその手には包丁を持っているなかなか物騒な兎ではあるが。彼は聞いていた、「首をぶった斬ってくるとても怖い兎がいる」と。その時の彼は「そんなわけないじゃんw」という心情だったのだが――――

 

「キュキュッッ!!」

 

「…………えっ?」

 

咄嗟に斧を自らの前に縦に構える、それは間違いなく彼の命を救った。

 

ギィィンッ!!

 

斧に包丁が叩きつけられ、思わず尻餅をつきながら斧から手を離してしまう。

 

「キュキュイッ、キュッ、キュッ?」

 

「ひっ!来るな!来るなよ!!来ないで、来ないでぇ!!」

 

言葉の腰はどんどんと柔らかくなり、遂に兎に懇願し始める彼に容赦なく兎は包丁を振りかぶり――――――

 

 

「よっしゃァァァァァァァァァァァァ!!その包丁寄越せやコラァァァァァァァァ!!」

 

首を刈り取るその前に首を刈り取られた。

 

「えっ??」

 

まさか、助かった?誰が助けてくれたのだろうか?恐る恐る顔をあげるとそこには上裸に狐の面を被り、二振りの剣を握りしめた危険人物(ビャッコ)が……

 

「ひっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

「えっ、ちょっ。君!!?」

 

「来るな来るな来るな来るなぁぁぁぁあ!!」

 

確実に己のステータス以上の瞬発力を発揮した彼は即座にその場から離脱、2度と1人では来ないと強く誓ったのだった。

 

 

なおその後彼は再び兎にエンカウント、2度目の偶然はなくきっちり首チョンパされたのだった。

その数分後どこかの家庭ではヘッドギアを投げ捨て「二度とやらない」と大泣きする少年の姿があったらしい。

 

◇◇◇◇

「いや、何だったんだマジで……」

 

なんか化け物にエンカウントしたみたいな様相で逃げていったゴリマッチョ……いや、声音的にそう見せてる子供かな?はは、根性足んねーぞー。

森に篭って大体4時間くらいだろうか、ゴブリン以外にも角の生えた兎(アルミラージ)、オーク、たった今大体二十羽ほど解体した二足歩行の首狩り兎(ヴォーパルバニー)なんかを倒してきた。

ヴォーパルバニーはどうも首以外狙わないのか動きが単調で慣れれば良い経験値稼ぎの生贄だった。

にしてもヴォーパルバニーが落とす「致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)」は中々良い性能をしている、初期武器の完全上位互換の上にクリティカル攻撃を出せばその攻撃に補正がかかる。ノーツを見切ってパーフェクトを出し続けた俺にとっては生き物の急所に攻撃をクリティカルに叩き込むなんて朝飯前だ、上手いこと噛み合ってる。

レベルも上がり、流石にこの辺の敵が弱すぎてつまらなくなってきたまである。

 

————————————

 

PN:ビャッコ

LV:15

JOB:戦士(二刀流使い)

6,000マーニ

HP(体力):45

MP(魔力):1

STM(スタミナ):30

STR(筋力):25

DEX(器用):20

AGI(敏捷):40

TEC(技量):25

VIT(耐久力):5(5)

LUC(幸運):30

スキル

・スピンスラッシュ

・スラッシュラッシュ

・ナックルスラッシュ

・ジャンプレッグLv.2

・タップステップ

 

装備

左右:戦士の双刃

頭:無し

胴:無し

腰:戦士のベルト(VIT+2)

足:戦士のズボン(VIT+3)

アクセサリー:ウカの狐面

————————————

 

まぁ、兎にも角にも戦士の双刃君にはぶっ壊れるまでは働いてもらおう。このゲームはレベルアップでステータスにポイントを割り振る事で強化されるシステムらしい。

15レベルになったので70ポイントゲット、取り敢えずSTRとAGI中心に振り、余ったポイントを適当に叩き込んでおく、LUCはどうも高ければ高いほどクリティカル率が上がったりドロップ確率が変動するそうなので気持ち多めに叩き込んでみた。

 

そしてスキルの方だが新しいスキルを3つ獲得することができた、レベルアップした時に獲得した1つと残り2つは兎解体ショーを18回繰り返したあたりで獲得した。どうも条件達成によるスキル獲得と単純なレベルアップでのスキル獲得の2種類があるらしい。

スキルは何度か使ってみた感想はまぁ何というか、「こう動けばいい」という確信を持って体が自然に動くというものだった。今主流の思考補助ってやつだな、音ゲーにも幾つかスキルというシステムがあったしこういうのは慣れてる。

 

最初から覚えていた二つは大振りすぎて自分には合わなかったがスラッシュラッシュは中々使い勝手が良かった。発生早め、連撃型、そこそこのDPSがある時点でとても素晴らしい。

ジャンプレッグはどうも跳躍力を上げるスキルの様なんだがレベル表記がある時点でお察しだった、レベル2程度じゃ大した跳躍力になってないんだよ!

タップステップは回避行動に補正がかかる仕様だった、一番使い勝手が良いのはこのスキルだな。

 

結論、まともに使えるのはスラッシュラッシュ、タップステップくらいのものだ。

 

それ以外?大振りな時点で使い道少ないですね、そもそも自前の剣術(二刀流)があるおかげでスキルを使うタイミングもあんまり見当たらないや。

 

「いやぁ、獣の子にまさかこんな隠れた効果があるとは。これなきゃ今頃ファステイアに行ってたな」

 

本来であれば生肉状態だと食べれないらしいのだが獣の子だとその問題は解決されている、なんと驚き生肉をそのままモグモグ出来るのだ、特段不味くもないが美味くもない。何というか……有難いんだが、人間としての尊厳が今著しく損なわれてる様な気がするや。

 

「…………うーん、だいぶ街から離れたんだなコレ。だったらもうめんどくさいし二つ目の街向かう方が良いだろうな」

 

簡易地図を眺めてそう判断した俺は二つ目の街、「セカンディル」に向かう事を決めた。

 




可哀想な彼は二度とシャンフロをプレイすることなく、アンチになってしまいました。誰だと思います?よく名前を間違えられる副団長の弟。
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